Krixter/Repo / n0001dl /20.json
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{"novel_id": "n0001dl", "chapter": 20, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0001dl/20/", "title": "第15話 領主の館にて:序", "content": "とある地方の領主の館のある街に俺たちは滞在していた。\n領主のお膝元とというだけあってなかなか栄えていていい街だ。\nはじめはそんな長いこといる予定はなかったんだけど、ある日、そうも言ってられない事態が起きてしまったのだ。\n\n突然冒険者ギルドの戸が勢い良く開け放たれた。\n備え付きの酒場で酒を飲んでいたもの、依頼を受けようと掲示板を見ていたもの、諸々の手続きのためにカウンターに並んでいたもの、皆が入り口の方を反射的に見た。\nにわかにギルド内のざわめきが大きくなった。\n俺とソーマとコサメはちょうど酒場で飯を食っていたところで、そのざわめきにつられて3人で入り口を見た。\n\n「おいっ、どうした!?」\n\n誰かの焦るような声が聞こえた。\nドアを開け放ったのは血まみれの男だった。\n身にまとっていただろう軽鎧は胸当ての半分を残してほぼ全損しており、右腕に関しては完全に潰れていて、くっついている方が痛ましいとさえ思えた。\nすぐに近くにいた冒険者が走り寄って、今にも倒れんとしていたその男を抱きとめた。\n\n「大丈夫か!しっかりしろ!!誰かっポーションか回復魔法をっ!?」\n\n抱きとめた冒険者はその言葉を、他でもないその瀕死の男に遮られた。\n胸元をぐいと掴まれ、頭を引き寄せられる。\nそれに続いた言葉は掠れ、すぐ近くにいた者たちにしか聞こえなかっただろう。\n冒険者の顔がさっと青ざめたことがわかった。\nそれでも俺の耳はその言葉をざわめきの中をかき分けて聞き取っていた。\n\n「カエデ姉…なんて…?」\n\n不安そうな表情のコサメが俺に聞いてきた。\nソーマも、コサメほど不安をあらわにしてはいないけど、俺を深刻そうに見つめた。\n次第にざわめきが薄れる酒場の席の中に、俺の言葉が妙に響いた。\n\n「トロールの大群がこの街に向かってる」\n\n\n\n\nトロールとは普段山に住む強力な魔物だ。\n熟練の冒険者がパーティで連携を密にしてやっと一匹倒せると言えばその脅威度はわかりやすいだろう。\nそれが大群で向かってくる。\n一時街は狂乱に包まれた。\nなんとか手に持てる財産を抱えて街を出るもの。\n絶望して泣き叫ぶもの、家に引きこもるもの。\n\n「おい、勝てると思うか……」\n\n街を防衛するとして残った数少ない冒険者のうちの1人が俺に聞いてきた。\n\n「お、俺にだってわからねえよ、そんなの……」\n\nじゃあなんで残ったか?\n単純だ、俺はこの街の出身なんだ。\n領主様だっていい人だし、その危機をむざむざ放って逃げられいに決まってる。\nここは大きな街だ。\n熟練の冒険者もそこそこ多くいた。\nそれでもその全員が特別ゆかりのあるわけでもない街を守るために命を賭けるなんてことはそうそうない。\nギルドと領主様は街の防衛に莫大な報奨金を出したけれど、それでも残ったのは少数の冒険者のみだった。\n報酬に目がくらんだ馬鹿に、この街に縁のあるやつ、それから冒険者には必要ない正義感から残った大馬鹿、それだけだ。\nあとは領主様の私兵たち。\nそれでもトロールの大群、それも数十じゃ済まない量のやつらを相手取るんじゃ心もとない。\nいや、絶望的だと言ってもいい。\n\n「へ、へへ、俺もここで死ぬのか……」\n\n「おい、縁起でもないこと言うな…」\n\n俺はそうは言ったが、同じ気持ちだった。\nきっと俺は、俺たちはここで死ぬんだろう。\nなんでも、領主様はお逃げにならなかったらしい。\n噂に聞くような腐った貴族様ならきっと真っ先に逃げてるだろうから、やっぱりうちの領主様はいい人だ。\nこの街のために、俺は死ぬんだ……\n\n\n「な、なんて数だ……」\n\n誰かが言った。\n俺も同じことを思った。\n一体全体なんだってこんな数のトロールが山を降りてきたんだ!?\n前方の大地を埋め尽くすトロール達。\n確かにこの街の西の山脈にはトロールの巣があることは知ってたけど、こんな量のトロールが一斉に降りてくるなんて聞いたこともないぞ!!\n\n「も、もうダメだぁ、おしまいだぁ……」\n\n兵士の誰かが、弱々しい声で言った。\nどんなに死の覚悟を決めていても、目を覆いたくなるような絶望は人の心を容赦なく折りに来る。\nそれでも現実は変わらない。\n俺たちは敵を見据えて、突撃を開始した。\n\nトロールの大群と俺たち人間の集団が衝突する寸前だった。\n\n「えっ」\n\n誰が言ったかはわからない。\nもしかしたら俺だったかもしれないし、他のヤツだったかもしれない。\nトロールが数匹、宙に舞っていた。\nしかも、上半身と下半身が綺麗に泣き別れした状態で。\nそのトロールたちがいた空間に、1人、娘がいた。\n異国風の装束に、反りのあるあまり見ない片刃の剣を携えて。\nまるでちょっと散歩をしにふらっと立ち寄ったような気軽さでそこを歩いていた。\nそして、すぐにその姿はかき消えた。\nバチリと何かが弾けるような音とともに、紫色の光がほとばしり、気づけばトロールの大群の一箇所に穴が空いていた。\nその穴は大群を貫通仕切ることはなくとも、その中央にまで続いている。\nその穴の終着点に、あの娘はいた。\n穴の入り口はすぐにトロールたちに塞がれて、彼女の姿は見えなくなった。\n紫の雷をまとい、変わらず散歩するかのように気楽な後姿のまま。\n\n「「ヴォオオオオオオオッ!!!!」」\n\n突然、人間側の集団の中から、赤い巨人と青い巨人が現れ、雄叫びをあげてトロールの大群に襲いかかった。\nトロールにも劣らないその巨躯を活かして、果敢にトロールを攻め立てていく。\nその巨人の赤いほうの肩に、小柄な少女が腰かけているのが見えた。\n\n「いっくよー!」\n\n可愛らしい言葉をあげると、何事かをつぶやき、次の瞬間彼女の口から燃え盛る紅蓮の炎が吐き出された。\nそれはトロールたちの身体を火だるまにしていく。\n\nさらにトロール側の異変は止まらなかった。\n突如としてあるトロールの身体が左右に一刀両断されたのだ。\n\n「カエデほど綺麗には斬れないなあ、やっぱり」\n\nそのトロールの前には、これまた異国風の装束を身にまとった青年の姿。\n剣を両手で正眼に構え、ぽつりと言葉を漏らしていた。\nその姿ははじめ、どこかゆるい雰囲気を纏っていたけれど、すぐにその周囲の空間が軋むように引き締まった。\n\n「だけど斬らせてもらう、あいにくそれしか能がない」\n\n一閃、剣が振られれば一つ、トロールの斬殺死体が出来上がる。\n\n「す、すげえ……」\n\n突如凄まじい力を見せつけた3人。\n服装を見るに同郷だろうか。\nその姿に勇気付けられて、俺たちも奮い立ってトロールたちに攻めかかった。\n\n\n\n無我夢中で戦い続けていれば、いつの間にかトロールの大群は掃討されていた。\n\n「は、はは……俺、生きてる………生きてるぞ…っ」\n\n俺は武器を手放して自分の血に染まった両手を見た。\n怪我はしてても、そこにはしっかりと疲労に震える生きた両手があった。\n思わず腰が抜けて座り込んでしまう。\n\n「あぁ……よかった……よかったっ…」\n\n自分で自分を抱きしめて我が身が無事なことへの喜びに打ち震えてる時だ。\nそういえば、あの3人は大丈夫だろうか。\n真っ先にトロールの大群に突っ込んだ彼らは……\n俺はまず街のある方を見た。\nそこには負傷者をあの巨人、今見ればトロールよりも怪物をしてる風貌のそれら、に運ばせているあの小柄な少女。\nそしてその運ばれてきた負傷者の応急処置の指揮を執っている青年がいた。\nでは、あの、雷を纏っていた彼女は……?\n\n「嘘だろ……」\n\n近くにいた生き残りの冒険者が、俺とは逆方向を見ながら呆然と呟いたのが見えた。\n俺は、それにつられて後ろを見た。\n\n「あ……?」\n\n\n死体の山。\n\nそこにあったのは、見上げるような死体の山だった。\nトロールの、死体の。\n焼け焦げたもの、五体の欠損したものが大半のそれら。\nそのうず高く積まれたトロールの死体の山の頂上。\nそこに、一本、あの反り返った刃を持つ剣が突き立っており、その傍らに、あの娘が立っていた。\nすでに時刻は夕暮れ。\n西に沈み行く太陽の光が、彼女のシルエットを浮かび上がらせていた。\n\n「あの大群の、一体どれだけを殺したんだ、あの女……」\n\n俺より先に死体の山と彼女の姿を見ていた男が、俺の背後でそう言った。\n俺たちが、俺たちの多くが生き残っていて当然だ。\nきっと、俺たちが相手にしていたのはあの大群のちょっとした一部だったんだ。\n夕日に照らされて彼女のシルエットが浮かぶ。\nその服と髪が風に吹かれて揺らめく。\n\n英雄。\nあるいは戦女神。\n\n俺の脳裏にそんな言葉がよぎった。\n俺はもしかしたら、英雄譚か神話の一場面を目の当たりにしたのかもしれない。\n\n\n\n\n\n\n「で、結局あのトロールの群れはなんで山を降りてきたんだろうな」\n\n戦後処理ともいうべき作業を終わらせた俺たちはまたギルドの酒場で食事を取っていた。\n無駄に正義感に駆られて防衛を手伝ったおかげでこちらの懐事情はなかなか暖かいものになったのでそこそこ高いお店にも行けるんだけど、残念ながらそういったお店はどこも店主やらが逃げ出してたりして開いてないのだ。\nそんな理由でギルドで食事を取っていたら、ソーマがやっと聞けると言った風情で俺に尋ねてきた。\n\n「ウチも気になる……また同じことが起きたりしたら大変だよ……」\n\nコサメも不安そうに言った。\nこの中では一番本人の戦闘能力が低いから、余計心配なのかもしれない。\nと言ってもコサメが弱いというわけでもないのだけど……\n俺は2人の視線を受けて、一つ咳払いをして口を開いた。\n\n「まず、もうトロールの大群の襲撃はないと思うよ」\n\n俺は戦っている最中のトロールたちの声、話を思い出す。\n正直自分が虐殺してる最中の断末魔とかを思い出したくはないのだけど、仕方ない。\n\n「それは、本当か?」\n\nいつになく真剣な顔でソーマが問う。\n正義感の強いソーマとしては、もし同じようなことが起きるならそれに備えなきゃいけないとか思ってるのかな。\nそれが悪いとは言わないけど、俺としては、俺や、コサメのことだけをもっと考えてくれてもいいんじゃないかとかちょっとわがままにも思ってしまう。\n\n「ほんとだよ。あいつらは、みんな新しく山の主になった魔物に追い出されてきたみたいだからな」\n\nトロール自体は、あれで打ち止め。\n俺はそう締めくくる。\nソーマもコサメも、少し顔を強張らせた。\nそりゃあそうだろう。\nあのトロールの群れを全て追い出せるほどの魔物が現れたってことなのだから。\n\n「ま、その新たな山の主も心配はいらないと思うぞ」\n\n「ど、どうして……?」\n\nコサメは俺の言葉に目を丸くした。\nまあ、ちょっと正確な言葉じゃないかなー。\n\n「正確には、心配しても仕方ないってこと。何せ新しい山の主はドラゴン!人間がいくら心配して警戒しても、天災の前にはどうしようもないだろ」\n\nドラゴン、動く天災、神話より続く化け物。\n伝承を聞くに、俺でも正直勝てるかわからん。\nまして、トロールがその群れの規模を減らさずに逃げ出してるってことは、奴らは戦わずに山から逃げ出したってことだろう。\nトロールの群れが戦わずに逃げ出す選択を取るレベルのドラゴンとか、想像もしたくない。\n俺の言葉にコサメはあわわわ、と本当に驚いてんのかわからん反応を見せ、ソーマは深くため息をつきながら椅子に深くもたれかかった。\n\n「なら、どうしようもないか……」\n\n天井を仰ぎ見ながらソーマはつぶやいた。\nお人好しの鬼人族代表のようなソーマでも、さすがにドラゴン相手では諦めがつくらしい。\nまあドラゴンは気まぐれって聞くし、その割に腰も重いらしいから移動してきたばっかの今の時期はすぐには動かないとは思うけどね。\n\nそこでギルドの戸が開けられ、1人、男が入ってきた。\n仕立てのいい燕尾服に身を包み、ぐるりと閑散としたギルド内を見渡す。\nそして一言、そのよく通るバリトンボイスを響かせた。\n\n「ここに鬼人族の御一行の方々はいらっしゃいますでしょうか」\n\nその言葉に俺たちはキョトンとして顔を見合わせる。\n真っ先にソーマが立ち上がった。\n\n「えっ…と俺たち、のことでしょうか」\n\nその男はこちらを見つけると、品のいい微笑みを浮かべてこちらにやってくる。\nそして俺たちの座るテーブルの前に来ると、口を開いた。\n\n「この度は街の防衛にご協力いただきまことにありがとうございました。皆様方のご活躍、それはもう目覚ましいものだったとか。ひいては我が主人、この領を治めるバロン伯爵が感謝の印に皆様を屋敷にて歓待したいとご要望です。よろしければ是非、いらっしゃっていただきたい。建物の前に馬車を待たせておりますので」\n\n「いや、俺たちはムググ!?」\n\n余計なことを言おうとしたソーマの口を塞ぐ。\n貴族の食事ならばそれはもううまいに違いない。\nこんなチャンスを逃したらもう二度とそんな機会は巡ってこないかもしれないし!\n\n「お、お言葉に甘えさせていただきますぅ!えへへっ」\n\n「わ、わーい!ウチとっても嬉しい!!」\n\n俺とコサメの言葉にその男はにっこりと笑って言った。\n\n「それではこちらへ」\n\n\n\n\n\n「おお!おお!ようこそおいでなさった!!いやあ私が自分でこの街の英雄たる皆さんをお迎えに上がるのが最善であったのでしょうが、申し訳ありませんなぁ、この度の事態で机から離れられず!どうぞどうぞこちらへ!」\n\n俺たちを出迎えたのは恰幅のいい、悪く言えば肥え太った男だった。\nかといって不潔感はなく、むしろその人好きのしそうな笑みも相まってかなりいい印象を持てる。\n確か、バロン伯爵だったっけ。\n大仰な仕草で俺たちを屋敷に迎え入れると、また大声で話し始める。\nちょっとその俺を見る視線が気になったけど、ほんとに今のところ好印象だ。\n\n「できることならば皆さんには私の出来うる最高のおもてなしをしたかったのですが、あいにく侍女らの多くが街から出てしまいましてな。私にそれを引き留める権利もありませんゆえ、こうして街が無事に事態が収まってみればこの屋敷はごく少数の使用人のみ残っているだけでしてな!皆さんは冒険者の身の上、なるべく早くご招待せねば街を出られてしまうかと思い、このような屋敷を回すのみでも一杯一杯の状態で皆さんにはいらっしゃっていただいた次第なのです!いやあお恥ずかしい限りで、お見苦しいところも多々あるでしょうが……」\n\n「い、いえ、バロン伯爵、お招きいただいただけでも自分たちには勿体無いほどでして……」\n\nソーマが謙遜するように言えば、バロン伯爵はとんでもない!と声を張り上げた。\n\n「私の兵からも、そして勇敢にもこの街防衛のため残ってくれた冒険者からも、貴方方の獅子奮迅、一騎当千の活躍は聞き及んでおりますとも!!きっと皆さんがいなければ今頃この街は更地と化していたでしょう!そんな皆さんに報いることなくば、私はこの土地を代々を受け継いできた先祖たちに顔向けできません!!ささ、こちらに、皆さんはすでに昼食をお取りになったとか。ですので我が領で取れる新鮮な果物をデザートとしてご用意させていただきました。それを食べながら歓談でも……」\n\nそうして、俺たちはその日バロン伯爵の屋敷にお世話になることになったのだが、その後しばらくお世話になってしまうことをこの時の俺たちは知るよしもなかった。", "preface": "まずは序章。\n\n頑張って色々練ってこの話は書きたいけど、リアルが忙しすぎてヤヴァイ。\n書く時間がねえ!", "afterword": "英雄譚か神話の一場面だと思った!?残念!!エロ小説の一場面でした!!!!\n\nいえあ!紳士の諸君なら今後の展開はわかるだろ?\nみんな大好き変態貴族の出番だオラァ!!\n変態(女側が)になるかもだけど大目に見てくれよな!!\nコサメちゃんにも活躍の場を与えたいぃぃん\n\n活動報告の「次の話と今後の更新」をよかったらちょっと見てね!\n\n感想・批評お待ちしてます!"}

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