| {"novel_id": "n0001dl", "chapter": 28, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0001dl/28/", "title": "第22話:「愛してる」", "content": "『貴様の仲間であるお方は今、その資質を買われ龍神様の巫女として龍神様の猛りをお鎮めになっている』\n\n商船が龍神とその龍神が巻き起こした嵐から命からがら逃げ出し、近場の港にたどり着いてしばらくして、海より来た龍神の遣いはそう俺とコサメに告げた。\n生存は絶望的だと思っていただけに、その情報に俺とコサメは腰がぬけるような安堵を覚えた。\n\nではいつ帰ってくるのか。\n\nその問いに、人型の魚というべき龍神の遣いはしばし黙考すると、それは龍神様次第だと告げた。\nそれから数日、俺とコサメは毎日海辺に向かい、カエデの帰りを待った。\n\nそして。\n\n「カエデっ!!」\n\nふと気づけば、龍神からの遣いが、その傍にカエデを伴って海辺に現れた。\nまるで最初からそこにいたかのようにごく自然と現れた不可思議さは、カエデが無事に戻ってきたことの嬉しさにかき消えてしまった。\n\n「…あ、あぁ……ソーマ…コサメも……」\n\n駆け寄り、数日ぶりに再会したカエデは見るからに憔悴していた。\n嫌な予感が頭をよぎった。\nそういえば、龍神の猛りを鎮めるとはどのようなものなのか、俺たちは何も知らなかった。\nあのカエデをここまで憔悴させるほどに過酷な、そんな行為なのか…?\n見たところ、体に大きな傷などは見当たらない。\n\n「大丈夫か?カエデ……すまない…俺たちが不甲斐ないばっかりに……」\n\nコサメも不安そうにカエデの顔を覗き込んでいる。\nここまで暗い雰囲気のカエデを、俺もコサメも見たことがなかった。\n\n「ああ…大丈夫…こっちこそ、心配かけてごめん……」\n\nそう言って、カエデは力なく笑った。\nどう見ても大丈夫じゃないその様子に、俺はたまらずカエデをここに連れてきた龍神の遣いにことの詳細を聞こうとして…\n\n「カエデ殿、では明後日、再びお迎えに上がりまする」\n\n俺が何か言う前に、龍神の遣いがカエデのそう告げた。\n再び…?\nそんな、もう終わりじゃないのか…?\n\n「あ、あの、それって「わかりました…では明後日」…か、カエデ!?」\n\n俺の言葉は、今度はカエデの言葉で遮られる。\nしかもカエデは龍神の遣いの言葉に是と答えたのだ。\n現れた時と同様に、龍神の遣いは瞬く間にその姿を消した。\n\n「カエデ、再びって、どういう……」\n\n「まだ、龍神様の猛りが鎮まりきってないんだ…大丈夫、そんな辛いことを強いられてるわけじゃないからさ」\n\nそう言って、カエデはまた力なく笑った。\nその言葉の風韻は、確かに嘘を言ってるようには見えなかった。\nでも、じゃあどうしてそんなにも辛そうなんだ……カエデ……\n\n\n\n\nかつてないほどに燃え上がった情事を終え、寝台の上で俺は龍神様の腕の中にいた。\n未だ胎内はグツグツと燃えたぎるような熱を抱えているものの、体力が尽きてしまってはさすがにそれ以上の行為に及ぶことはできなかった。\nいや、龍神様はまだまだ体力は有り余っているから、しようと思えばいくらでもできるのだろうけど…\n龍神様は俺のことを慮って一旦行為を終えてくれたのだ。\nその気遣いが嬉しくもあり、同時に龍神様が相手であれば彼の思うままに道具のように俺の牝穴を使ってくれても良かったのだけど……\n\n「素晴らしかったぞ…カエデ…」\n\n龍神様の言葉に、思わず頬が緩む。\n自分の中の女が全肯定されているような、そんな気分になるのだ。\n\n早く、早くこのお方の子を孕みたい。\n\n俺は心地よい気だるさを感じさせる自身の身体をもどかしく思いながらもそう思った。\n\n「ああ、だが、そなたには言わねばならぬことがある」\n\n寝転んだまま、龍神様がどこか改まったように言った。\nその真剣な雰囲気に、俺も応じるように神妙な顔で龍神様の顔を見上げた。\n\n\n\n「そなたは、我の子を孕むことはできぬ。我が龍で、そなたが鬼の子であるゆえ、な」\n\n\n\nその瞬間、世界が凍りついた。\n龍神様が何を言っているのかわからなかった。\n浮かされていた熱が急に冷めるように身体が凍りつく。\n体から血の気が引き顔が一気に青ざめたことがわかった。\n\n「え…」\n\n頭が真っ白になり、呼吸が浅く、早くなる。\n遅れて言葉の意味を理解して、俺はいやいやと首を横に振った。\nじんわりと溢れてきた涙で視界が霞む。\n自らの肉体への、血筋への怒り、失望、絶望、龍神様への申し訳なさ、そして悲嘆が一挙に胸の内へ押し寄せる。\n\n「あ、あぁ……ああっ……ご、ごめ、ごめんなさ、ぁあ、ぅあああ……っ」\n\n口を突いて出たのは龍神様への謝罪の言葉だった。\n嗚咽まじりに、何度も何度も謝罪の言葉を口にする。\nなんて愚かな女だろう。\nなんて不甲斐ない女だろう。\n荒れ狂う感情の嵐で、何がなんだかわからなかった。\n\n「落ち着け、カエデ」\n\nさらり、さらりと背中をその大きな手でさすられる。\nなんてことだろう……孕めないばかりか御手を煩わせるなんて……\n\n「もとよりこの身は朽ちることなき龍の神。必ずしも血脈を残す必要はない」\n\n背を撫ぜていた手が、肩へと滑り上がり、そして俺の顎をつかんだ。\n\n「子がなせなくとも、我はそなたが欲しい、永遠にな」\n\nその言葉に、荒れ狂っていた感情の嵐がピタリと静まった。\n未だ悲嘆と不甲斐なさと怒りはこの身にあるけれど、それよりも今、自分が賜った言葉の方が大事だった。\n\n「そ、それは……」\n\n声が、震えた。\n\n「うむ…そなたを我の花嫁としたい」\n\n負の感情の渦巻いていた胸中に、今度は歓喜の感情もまた沸き起こった。\n龍神様ほどの雄、男からの求婚の言葉に、俺の中の女が舞い上がってしまっていた。\n\n「わ、私も……っ」\n\nすぐさまその求めに応じようとして、俺の脳裏に誰かの顔がよぎった。\n思わず顔を俯かせてしまう。\n本当にいいのだろうか。\nもし、ここで龍神様の花嫁となれば、それは……\n\n『永遠にな』\n\n先ほどの龍神様の言葉を思い出す。\n永遠、すなわちそれは……\n\n「然り……我が花嫁となれば二度と俗世へは戻れぬ。当然、そなたの同胞、家族との決別になろう」\n\nその事実は、俺に重くのしかかった。\nそう、俗世には残してきた大切な人たちがいる……\n生まれてから今まで、ずっと一緒にいたあいつとも、最後の別れになってしまうのだ。\n\nそれは……\n\nクイッと、再び俺の顎に手が添えられて、龍神様の顔を見上げることとなった。\nその深い色をした吸い込まれてしまいそうな瞳を見つめる。\n\n「そう、決断を急く必要はない……一度、俗世へ、そなたの仲間の元にそなたを帰そう」\n\n顎を支えている手の、親指が俺の涙が乾ききっていない頬を撫ぜた。\n\n「そして、再び、ここに呼ぼう。また、この猛りを鎮めてもらう」\n\nぐいっと下腹部に、龍神様の熱い怒張が押し当てられた。\nそれだけで、子を孕めないとわかっていながら俺の身体は火照りを取り戻した。\n\n「その時もまた、決められなければ仲間の元へ戻そう」\n\n龍神様の顔が、俺の顔に近づいてくる。\n俺は自然と目を閉じて、それを受け入れる。\n触れるだけの接吻。\nそれだけで背筋が歓喜に震えた。\n\n「そなたが決断できるまで、何度でも、神域と俗世を行き来させよう」\n\n再び、口づけ。\n今度は、ゆっくりと、舌と舌を絡み合わせる情熱的な接吻だった。\n唾液と唾液、舌と舌が絡み合う音が奏でられる。\n熱い吐息が漏れる。\n舌が性感帯になったかのように痺れ、悦楽を感じさせる。\nぬるり、と舌と舌が離れ、銀の糸が互いの舌を繋いだ。\n\n「無論、花嫁になろうと、ならなくとも、そなたの決断を尊重しよう」\n\n自然と、互いの腰が動き、俺のすでに愛液に濡れていた膣口に龍神様の巨大な逸物の先端があてがわれた。\n\n「いずれにせよ、我はそなたを愛しているぞ?」\n\nズプリ、と限界いっぱいにまで膣口が広がり、龍神様のそれを受け入れた。\n\n「あ、あ、あ、ああっ」\n\n龍神様の言葉と、逸物の侵入に、俺は背筋を逸らして歓喜する。\nどちらともなく腰をうごめかし、俺はどうするかの思考もそぞろに龍神様との行為に没頭した。\n\n\n\n\n\n戻ってきてからというもの、カエデはどこか上の空だった。\n何か悩んでいるようだったけど、聞いても困ったように笑うのみでその内容を教えてはくれなかった。\n\n「あんたのおかげで本当に助かったよ!!」\n\n今、俺たちは港にある、商船の元の商家が持っている施設で厄介になっている。\nカエデが戻ってきたことを知った商船の乗組員たちたっての願いで、カエデの帰還を祝い、またカエデの活躍に感謝する宴会を執り行うことになった。\nきっとカエデは疲れてると思ったのだけど、カエデも是非と言ったので俺とコサメも反対せずこうしてその宴会に参加していた。\n俺の視線の先では、カエデが乗組員たちに囲まれ口々に感謝の言葉と祝いの言葉を投げかけられていた。\n\n「そんな…できることをしたまでだよ」\n\nそう言ったカエデの顔に、海辺に帰ってきた時のような暗い雰囲気はない。\nきっと、乗組員たちの祝賀ムードを壊さないようにしているんだろう。\n\n飲めや食えやのどんちゃん騒ぎも、次第に落ち着いていく。\nカエデはもともと凄まじく酒につい良いので潰れることはなかった。\nそれでも頬を赤らめているのだからかなりの量を飲んだのだろう。\n屈強な船乗りたちに囲まれてずっと酒を飲んでいたのだから当たり前なのだろうけど……\n\n「カエデ、無理はしないほうがいいんじゃないか?」\n\n潰れてしまった周りの男衆の介抱をするカエデに、俺は声をかけた。\n\n「あ、ソーマ……別に無理はしてないよ、楽しかったし」\n\nそう言って朗らかに笑うカエデは、本当に疲れてはいないように見えた。\nカエデは椅子から立ち上がると、俺の胸に身を預けてくる。\n\n「え、ちょ、カエデ!?」\n\n突然のことに混乱して固まる俺をよそに、カエデは両手を俺の背中に回してくる。\nもしかしてやっぱり無理をしてたんじゃ……\nそう俺が心配になった時、カエデは口を開いた。\n\n「あー、帰ってきたんだなって」\n\nどこかホッとしたような声を聞いて、俺も肩の力を抜いて、カエデを抱きしめ返した。\n目の前にあるカエデの髪から、海の磯の香りがする。\nそれが、どこかカエデが遠い存在になってしまったことの証のような気がして……\n\n「ふ、風呂に……」\n\n「ん?」\n\n「風呂に行かないかっ」\n\n自分でもわかるほど顔が赤い。\n今まで何度も一緒に入浴も、それ以上のこともしてきたのに、なんだかこっぱずかしい。\n思えば、こういうことを誘うのはいつもカエデの方で、俺の方から誘うのは初めてのような気がした。\nカエデは俺をきょとんとして表情で見上げ、数瞬のあとぷっと吹き出した。\n\n「わ、笑うことないだろ!」\n\n「ふふふ…ごめんごめん……うん、風呂、入ろう。一緒にな?」\n\n一緒に、というのを強調するように言うと、カエデは俺から離れ、手を取った。\n\n「さ、案内してよ。どこに風呂があるかなんて知らないんだ」\n\n\n\n\n\n「なーんか昔を思い出すな」\n\n俺がカエデの烏の濡れ羽音色の髪の毛を、傷まないように洗っていると、カエデがぽつりと言った。\n\n「あ、ああ、昔ね。うん、確かに」\n\n「ぷぷ、何を動揺してんだよ」\n\nそう言って後ろを振り返ってくるカエデの顔にはいたずらっぽい表情が浮かんでいた。\nそのうなじから肩にかけてのラインの向こうに、重力に逆らうように存在を主張する双丘が垣間見えた。\n慌ててそれから目をそらしつつ、洗いづらいから前を向け、と告げる。\nくすくすと笑いながら再び前を向くカエデ。\nそのカエデの言う通り、こうしてカエデにからかわれながら2人で入浴するのは子供の頃を思い出す。\nいつもいつもどこからそんな知識を仕入れていたのか、そのからかいはエロいことばっかりだったし、時にはそれはからかいの領域を超えていたけど。\n\nそんな子供の頃のことを思い出したせいか、ここにきて急に、あるいは漸く、と言うべきか、カエデを失わずに済んだという実感が湧いてきた。\n胸が締め付けられるように辛くなる。\n嵐が過ぎ去った船上で目を覚まし、カエデが1人殿に残ったことを知った時の、あの絶望。\n\nもう、二度と味わいたくない……\n\n思わず、俺は衝動のままにカエデを後ろから抱きしめていた。\n\n「ソーマ?」\n\n「死んだと思ったんだ……もう二度と会えないかもって……」\n\nまるで、本当に子供の頃に戻ったような言葉が口を突いて出た。\n腕の中の体温がたまらなく愛おしい。\n\n「ごめん」\n\nぽつりと、カエデが言った。\nカエデの手が俺の腕に重なった。\n俺は、自分の顔をカエデの白い首筋に埋めた。\n優しく、口づけを落とす。\n\n「ん……」\n\nカエデが色っぽい吐息を零した。\n\n自分から、こういうことをするのは初めてかもな……\n\n失いそうになって初めて、今腕の中にいる女の本当の大切さに気づいた気がした。\n\n「ソーマ」\n\nするりとカエデが俺の腕から抜け出て、俺に向き直った。\nその顔は、普段見ないほどに真剣な表情をしていた。\nどちらともなく、互いの手を取り合った。\n胸が熱い。\nこの正体不明の衝動はなんだろうか。\nカエデは、いつしか縋るような表情をしていた。\nその体が火照っているのは酒や風呂場の熱気のせいか、それとも……\n徐々に、俺とカエデは近づいて、カエデの大きな胸が俺の胸板に触れる手前で互いに止まった。\n\nそして俺は\n\n\n→《胸の内の熱意のままに、カエデに「愛してる」と伝えた。》\n\n 《胸の内の熱意を、衝動をうまく言葉にできなかった。》", "preface": "分岐回\n\n更新遅れて申し訳ありませんでした。\n\n前書き、あとがきは近況報告などを行う場ではないと考えますので、よろしければ活動報告を見ていただけるとありがたいです。", "afterword": "エロゲ的分岐選択肢"} |
Xet Storage Details
- Size:
- 16.7 kB
- Xet hash:
- 54515d832e695e005b35f7c576d34c66a42d2c73dd8d8795cef1c9a9f9a38820
·
Xet efficiently stores files, intelligently splitting them into unique chunks and accelerating uploads and downloads. More info.