Krixter/Repo / n0002fv /12.json
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{"novel_id": "n0002fv", "chapter": 12, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002fv/12/", "title": "12話 戦士と僧侶の休息日", "content": "世の中全てが上手く行くとは限らない。\n特にリリアンヌ・ドゥルーシカ・エルドゥーラの身に起こる事は個人の苦労や苦悩では計り知れない事ばかり。\n彼女は──王女だから。\n\nリリアンヌことリリーナがグレイスの事を好きで。\nグレイスがリリーナの事を好きだったとしても一般的な男女のように気軽に付き合う事はできなかった。\n\n特に許嫁である勇者アルスの存在と──。\nその許嫁の関係を取り決めたリリーナの父親である王。\nそれにアルスの父親である王国騎士団長の存在が彼女を縛りつける。\n\n勇者と王女の婚約。\nそれは魔物蔓延る危険なこの世界では何よりも幸福なニュースとして王都に住む人々へ伝えようと何年も前から、下手したらアルスとリリーナが生まれた時から準備されてきた事だ。\nそれを足蹴にする事は──裏切る事は、ただの人間関係の縺れだけでは済まなくて国への裏切りにもなり得る。\n\n\nとはいえ、だ。\nグレイスはアルスの父親には会った事がないが、アルスは勇者というだけあって底無しのお人好しだし王も厳しくはあるが王女にとても甘い性格をしている。\n案外気に病む必要もなくてすんなりと事が成す可能性も──なくはない。\n国民の捉え方も決められた婚姻よりも好きあった人達が結ばれた方が良いと思ってくれるかもしれない。\n\nこればかりは打ち明けてみないとどうなるか分からない。\nもしかしたら絶対に許さない、と王に国に激怒されて非難されるかもしれないのだから。\n\n\nだが、リリーナは決めた。\n今後どうなるかは分からないが、必ず全てと向き合うと。\nリリーナは国もグレイスも大好きだから。\n有耶無耶にしたり誤魔化したりせずに向き合うと決めたのだった。\n\nグレイスもそんな幼馴染みの、恋人の、王女の。\n決意を見て覚悟を決める。\n例え周囲が自分を王女とは不釣り合いだと、彼女に手を出した最悪の存在だと非難されても逃げないと決めた。\nリリーナが全てに向き合うと決めたのなら、グレイスも全てに向き合うと決意したのだった。\n\n\n──そんな、決意をしはしたが打ち明けるタイミングについても色々と考える事はある。\nリリーナは一先ず自分からアルスにも王にも打ち明けると言った。\nこういう場合は一緒に立ち合うべきだと思うがリリーナは聞いてくれなかったのだ。\n\n運が良ければ何事もなく受け入れられる。\n運が悪ければ王女を誑かした罪人としてグレイスは処刑される。\n最悪逃げる準備をしておいてくれとまで言われてしまった。\n\n全てに向き合うと決めはしたが、リリーナはそれを許してくれない。\n最悪一人で──もしくはイーリスと逃げろと言って聞かないのだ。\n王女である自分は余程処刑まで持ち込む事はないだろうからと。\n\nそんな自分だけ逃げるような事はできないと言ってもリリーナは頑固で考えを聞かない。\n恋仲であっても全ての意見が一致するワケじゃないと、人間の面倒くささを当たり前だけども目の当たりにさせられてしまったのだった。\n\nいっそ──オレが勇者になれたなら何も問題はなかったのかなとか、そんな事を考えてしまうほど面倒な状況だ。\n\n\n\n◇◇◇\n\n「……とまぁ、色々と悩みがあってな。気分転換にプレゼントを贈ろうと思うんだけどその手伝いをしてほしいんだ」\n「どうして私がそのお手伝いをしないといけないんですか……」\n「プレゼントってのが服の予定なんだ。サプライズで贈りたいけどサイズとか分からないしさ、頼む!!!」\n「はぁ……仕方ないですね」\n\n\n文句垂れながらも頼み込めば断らないお人好し。\n我らが勇者一向の僧侶アイシャと共にEJBと呼ばれる店にやっきていた。\n正式名称はアース ジャパン ブティックだったか、聞きなれない単語の羅列だった気がする。\n\n嘘か誠か店を開業した先代の店主が異世界からやってきた人らしく、元の世界の服飾を取り入れた服を販売したら大盛況で今に至るとか。\n異世界云々は眉唾だが先代が持ち込んだ服飾のノウハウは老若男女問わずにウケて今のエルドゥーラがあると言っても過言ではない。\n先代曰くファンタジー溢れる世界にリアルな服飾が流行るなんて思わなかった──なんて言っているらしい。\n\nエルドゥーラでは人気のブランドとしてEJBは知れ渡っているが、他所の国には浸透していない。\n──と、言うよりエルドゥーラ国内に需要を行き渡らせるのに精一杯らしく他所の国にまで出店するほど手が回らないようだ。\n先代には何人か弟子もできたようだが、センスというのは一長一短に伝わるモノでもなく。\n数人の弟子達も国内の需要に答えるので精一杯らしかった。\n\n\n「ところで誰にプレゼント贈るんですか?」\n「イーリスとリリーナと、ネイナ。リリーナはアイシャにとっても幼馴染みだしよく分かってるだろ?イーリスも紹介した事あったよな?」\n「また珍しい組み合わせですね……」\n「まぁ、な」\n\n\nリリーナとネイナはよく一緒にいるイメージがあるが、イーリスはグレイスのお気に入りの娼婦としかアイシャは認識していない。\n本当は全員グレイスの恋人なワケだが──今はまだ打ち明けられない。\nリリーナ曰く今度の勇者と王女の都合が合い時間が取れた時に打ち明けるとの事だが……。\n\nとはいえアイシャにとって接点のなさすぎる組み合わせすぎたのか、グレイス縁の女性への片っ端からプレゼント計画だと勘違いしてくれた。\n\n\n「という事は私とリタもサプライズプレゼント期待していいんですね?」\n「う……。オレ何かにプレゼント貰っても嬉しくないだろうお前らは」\n「そんなことないですよー。きっと豪華で素敵でなプレゼントを貰えるんでしょうねー」\n\n\n勘違いから、アイシャとリタにもプレゼントを用意する流れになりそうだった。\nしかしオレにその気がなかったのもアイシャは気がついている。\nつまり、オレの都合に付き合わされての仕返しでタカり。\n\n穏やかで、お人好しなアイシャだが幼馴染みで気の知れた仲であるせいかオレには意地悪っぽい一面を見せる。\n予想していなかった追加プレゼントの出費に引きつらせているオレを見て小悪魔のように微笑むのだから。\n\n\n「いつも言っていますけど誰にでも良い顔するのは良くないですよ?今回は特に親しい女性へのプレゼントみたいですが、グレイスは女性にだらしなさすぎです」\n「うるせーなー。お前には関係ないだろ」\n\n\n小悪魔っぽくタカってきたかと思えば今度は説教が始まる。\nそもそも女性にだらしなくなったのはお前らが原因だろうに、と口にしたくなったがいつも通り飲み込んだ。\n\nリタの時に思い知らされたばかりだがオレはアイシャの事も結構好いている。\nやはりアルスの存在もあるので考えないようにしているが、アイシャも慣れ親しんだ幼馴染みという事もあり気が知れているし容姿も整っている女性だ。\n\n金髪のショートカットはリリーナに負けず劣らず綺麗だし、胸元は寂しいが小柄で小動物のようで可愛らしい。\nとにかく華奢で、触れたら壊れそうな芸術品のような美しさと儚さを兼ね備えている。\n幼馴染みのグレイスの前では儚そうな雰囲気も何処へやらって感じの性格になるが、細い腕や腰回りはグレイスのような馬鹿力持ちには恐ろしくなりそうなほどの精密さを感じていた。\n\n今の服装は水色のブラウスとピンクのミニスカートとかなりカジュアル。\n冒険中は露出の少ない教会シスターのような修道服ばかりなのでギャップを感じられる。\n\n\n「ともあれ、詳しい服のサイズ等は知らないので目分量ですよ?後で文句言わないでくださいね」\n「わーってるって。それでもオレよりはマシだろ」\n「もう、グレイスってば私やリタには扱い雑すぎません?」\n\n\n砕けた口調が気に入らないのか拗ねたように頬を膨らませるアイシャ。\nこれがまた一段と可愛らしいんだが、その発言はお前が言うなと返したくて仕方がない。\n\nアルスや他の人には慈愛に満ちたと言っても過言ではない優しい態度をとるくせにグレイスには雑な対応を取る。\n幼馴染みが故の、気の知れた仲と言えば聞こえは良いがぞんざいに扱うしリタの時みたいに何かとこき使ってくる事も多い。\n\n\n冒険に必要な物を買い揃える時なんかもいつもアイシャ主導でグレイスは荷物持ち。\nアルスは一番戦闘や人とのコミュニケーションで疲れが溜まるから休ませる。\nリタは商人の娘ではあるがケチな金持ちな一家なため買い物に付き合わせると面倒。\n\nそんな理由で買い物はアイシャとグレイスの二人でする事が多かった。\nアルスの休息はともかく、リタの買い物に関する面倒くささは酷い。\n\n安さと質の良さを兼ね備えた店探しだけで何時間もかけたりして買い物が終わらないのだ。\n冒険は買い物が主軸ではないのに、それに付き合わされるのはアイシャもグレイスもたまったもんじゃない。\n適度に安くて適度に質が良ければいい。\n安く済ませられればそれに越したことはないが、手間隙も考えてほしいものだ。\n\n\nそんな意見の一致もあってアイシャとグレイスが二人で買い物するのは見慣れた光景だった。\n\n\n◇◇◇\n\nアイシャ・クラリスはグレイスの事が好きではない。\n野暮ったくて、無駄に図体ばかりでかくて──。\n他人にばかり優しくて、私に優しくない。\n\n彼は私の事をお人好しと言う。\nけれど私の場合は僧侶としの役職や、処世術として表面上優しく見せかけているだけにすぎない。\nそんな卑しい自分だからか、彼の優しさがたまに眩しく映る事がある。\n\n\n彼のどこら辺が優しいかと問われれば返答に困るが──。\n彼は、私やリタがどれだけぞんざいに扱おうと見限らずに側にいてくれる。\n口では文句言いつつも、彼が頼み事を断る姿を見た事がない。\n\n側にいてくれる、という当たり前の事に私は気の安らぎを得るのだ。\n──決して、好きではないけれども。\n\n\nただ気に入らないのは彼の優しさが素直に私に対して向かない事だ。\n私達は彼をぞんざいに扱っているが、彼も大概だと思う。\nいつも彼の口から聞かされるのは他の女の話しばかり。\n\nこの間ナンパした女性の趣向がどうとか、今回のように他の女性へのプレゼントがどうとか。\nそんな話しばかり聞かされて──面白くない。\n\nもっと私を構え。\nそんな、聖職者にあるまじき身勝手な感情を沸き立たせられるのだ。\n\n\n『まったく……キミもか。最近はどうも「薄れ」が酷い』\n\n\nいつの間にかカレがいた。\n──ここは何処だっけ。\n──自宅の私の部屋だ。\n\nベッドの上には可愛らしい動物のぬいぐるみが何体も添えられていたりして、小柄とはいえ私も20歳だというのに少女趣味がすぎると悩んでいる。\nけど、今はそんな事はどうでもいいか。\n\n\n『キミ達はワタシの事だけを考え、ワタシだけを愛せばいい。そう言っているだろう?』\n「あ──」\n\n\nカレの瞳が、怪しく光る。\nその光は脳や心の奥にまで浸透してくるようで、頭の中がぼーっとしてくる。\nけれどそんな頭が真っ白になるような感覚は一瞬で。\n\n心が、身体が。\n高熱に魘されるように激しく熱を帯びていく。\nあぁ──。\n\n\n「魔王様♡魔王様魔王様♡いらしてくださったんですね!私寂しかったんですよ!」\n『こらこら抱きつくな。いつも一緒にいるだろう?』\n「だって普段は邪魔が多いじゃないですか♡今は私しかいないのですから沢山可愛がってください♡」\n『勿論そのつもりさ。けど、ちゃんとキミの立場は分かってるよね?』\n「勿論です♡私は魔王様の──肉奴隷ですから♡」\n\n\n私は魔王様の肉奴隷。\n魔王様にオナニーの道具として使ってもらうためだけの存在だ。", 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