| {"novel_id": "n0002fv", "chapter": 14, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002fv/14/", "title": "14話 女勇者をナンパする", "content": "クリス・エルタナはエルドゥーラの隣国サティアラの勇者である。\n歳は17。桃色の髪をボブカットにしており白の軽鎧に水色の布が巻かれていたりとオシャレに見えるが、仲間達がオシャレに五月蝿いだけでクリスはそういった事に興味はなかった。\n\nむしろ興味ある事は戦闘や魔王に関する情報ばかりで、落ち着いた性格も相まって他人からは冷たい人間だと思われている。\nクリス自身もそれに関しては否定しないし、他人の評価なんてどうでも良いとすら考える徹底ぷり。\n一行の仲間である他の女性3人も、この冷めた性格はなんとかならないかと頭を悩ませているほどだ。\n\n\nエルドゥーラにきてクリス一行がまずとった行動は勇者と他三人の別行動だ。\n何でもエルドゥーラには有名な服ブランドがあるらしく、他の三人はそれを目当てに散策しに行った。\nそんなオシャレとかはどうでもよく、そんな事に時間かけるなら周囲の地理や魔物の分布等を調べた方が有意義だとクリスは考える。\n\nしかし初めてきた土地で情報収集すらままならなかった。\n冒険者の集まるギルドの場所すら分からず、かといって人に話しかけるのも苦手なクリスは上手く道を聞き出す事もできない。\n決して人見知りというワケではないが、初対面の相手には睨んでると勘違いされるほどの眼力の強さが足を引っ張っている。\n\nこの人当たりの悪さだけは勇者として欠点だなと思ってはいるが改善する気はなかった。\n\n\n「おや綺麗なお姉さん。この辺りじゃ見ない顔だね、良かったら案内がてら一緒に遊ばない?」\n「……」\n\n\nしかしそんな自分にも話しかけてくる物好きはいた。\n身長は190cmほどありそうな。\n筋肉もしっかりついた逞しい男だ。\n\nしかし明らかに軽薄そうな雰囲気を漂わせており、クリスの苦手とするタイプでもある。\n口が上手ければ情報だけ聞き出して男を追い払う事もできるのかもしれないが口下手なクリスには難しい事だった。\n\n口下手なクリスがとる行動は至ってシンプル。\n背中に携えた聖剣を抜けば軽薄な男なんてのは逃げていくだろうと判断して、行動に移そうとした。\n──が。\n\n\n「おっとと!ごめんごめん!そんな怒らないで!道に迷ってたりするなら場所だけ口で教えるから剣抜こうとしないで!」\n「……っ!!!」\n\n\n男は一瞬で間合いの外にまで距離を置いた。\nクリスはまだ剣を抜くどころか構えてすらいない。\n少し重心を動かしただけでクリスがどう動くか察し、クリスよりも素早く行動したのだ。\n\n巨体からは信じられないほどの俊敏さと洞察力。\nもし彼が敵だった場合、剣を抜く前に間を詰められてなぶられていたかもしれない。\n街中という事もあり油断し、戦闘体制ではなかったとはいえ身体能力はこの男の方が格段に上だと一瞬で把握した。\n\n男だから優れてるとか、女だから弱いとか。\nそんな話しではなくクリスは勇者として場数もそれなりに踏んでいるのでこの実力差は正直ショックであった。\n\n\n「貴方……何者?」\n「んー……冒険者の括りかな一応。名前はグレイス。戦士やってる」\n\n\n戦士という事は魔法は苦手な接近戦のエキスパートか。\nおそらくこのレベルになると苦手なら苦手なりの対処法なども心得ており、それは素晴らしい戦闘技術を持っているのだろう。\n性格は軽薄そう、という印象は変わらないがクリスはグレイスと名乗った男に興味を持った。\n\n戦闘技術で相手への興味を持つなんてクリスらしい、とこの場にいない仲間達が見たら呆れるだろう。\n\n\n「何して遊ぶのかは知らないけど、少しだけ付き合ってもいい」\n「マジで!?」\n「その代わり貴方が満足したら今度は私に付き合ってもらう」\n\n\n男の遊びに満足するまで付き合う。\n女性としての警戒心が無さすぎる発言に流石のグレイスも驚き呆れかけたがクリスには知るよしもなかった。\n\nクリスは今まで男に襲われても返り討ちにしてきた。\nそのため警戒心が薄く、相手の方が強いと判断したばかりだというのに危機感があまりにもない。\n今彼女が考えているのはグレイスの遊びに少し付き合い、代わりに戦闘技術を見せてもらってその技術を盗む事のみ。\n\n悪い男に捕まったらどうなるのか。\nその身で知らしめられてもおかしくない状況だったが──。\n\n\n「あー……お姉さんの都合優先してくれて良いよ。何かオレに頼みたい事でもあるの?」\n「……」\n\n\n男は──グレイスはお人好しだった。\n深く考える事すらせず、自分の都合や権利より相手を優先する。\n本人は聖人でもなんでもなく、渋々対応しているだけなので人好しではないと思っているようだが──自分より他人を優先してる姿はれっきとしたお人好しだった。\n\n\nそのグレイスの態度に今度はクリスが毒気を抜かれた。\n冒険者は、人は。利己的に動くもの。\n何かメリット無しでは動かないのが常識だ。\nだから最初に報酬を与えてから自分の都合に付き合わせるつもりだったが、この男は違った。\n\n長年連れ添った仲間ならともかく、初対面の相手にも自分の損益考えず他人に手を差し出すのだから。\n人の良い者なら不思議でもない光景かもしれないが、無愛想なクリスにでも初対面で優しくしてもらえるのは珍しかった。\nそんな彼を見てクリスも──。\n\n\n「いや、急ぎの用事ではないから貴方に付き合う。私の名前はクリス。よろしく」\n「お、おう。よろしくクリス」\n\n\nグレイスの遊びとやらに付き合うのもやぶさかではないと思うようになった。\n\nおそらく仲間達が見たら驚き戸惑う光景。\n堅物のクリスが初対面の軽薄男と遊んでいるのだから。\n\n\n「ところで遊ぶとは──何をするの?鬼ごっことかかくれんぼ?」\n「えー……」\n\n\n何処までも警戒心のない無垢なクリスにグレイスは呆れる事しかできなかった。"} |
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