Krixter/Repo / n0002fv /21.json
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{"novel_id": "n0002fv", "chapter": 21, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002fv/21/", "title": "21話 二人の在り方", "content": "エルドゥーラの国から離れてしばらく経った。\n王女誘拐だ魔性召喚だ何だの騒がれ追っ手に苦労する逃亡生活──かと思いきや、何故かその手の影は一切見えず安堵できる日々が続いていた。\n\nしかし変わりにと言っていいのかグレイスの評判は日に日に悪名として広がり、一つの場所に留まるのが困難な日々が続く。\n──そう。本人達に自覚はないが、彼らの人目憚らないインモラルな行動等により魔王だと余計に訝しまれるようになってしまったのだ。\n\n\n今のところ人々に石を投げられたりこそはされていないが他人の視線が居心地悪い。\n一緒に行動を共にするサティアラの勇者クリスや女王カティナまでもが魔王の手に墜ちたなんて言われる始末だから庇護してくれる存在もなくなってしまっている状況である。\n\n\nそうなると適度な自給自足な生活の方が心落ち着く事が多くなってきたグレイス一行。\nサティアラ国の外れにある使われていないオンボロな家を勝手に拝借し、たまに近くの村や街へと足を運び食料など必要な物を揃える。\n家はオンボロではあるが、石造りのしっかりとした大きな家で掃除したり修繕したりするだけで難なく人が住める場所になった。\n\n\n──ようやっと、地に足をつけた生活のできる拠点を確保したといった所だ。\n今まではふらふらと宛てもなく移動ばかりしていたが、拠点ができたおかげで今後の事もゆっくり考えられる。\n致し方なく放置してしまった件──魔性を操る勇者アルスや突如王女が離れる事になってしまったエルドゥーラ国に関する事に着手できるはずだ。\n\n\n\n「……で、今後はどうするの魔王様?」\n「魔王様は止めろよな……。普段スケベな事しか考えてない頭で、これでも今後どうするか悩んでるところですよ賢者様」\n「う……賢者なんて柄じゃないし器でもないんだから止めてよグレイス」\n「オレも魔王なんて柄じゃないし器でもねーよイーリス」\n\n\n新たな拠点で薄着でダラダラしている男女が二人。\n町で購入したばかりの大きなソファーでズボンと肌着だの格好なグレイスはイーリスの膝枕を堪能しながら横になっている。\n\nイーリスもショートパンツとシャツだけのラフな格好。\n特別男を誘う格好という訳でもないのだが家の中での楽さを求めた結果、白く細い肩や足が惜しみ無く晒されておりグレイスも内心では欲情しないよう必死に理性を保たせていた。\nとはいえ頭に伝わる柔らかな彼女の太股の感覚を味わっているだけで少しずつムラムラしてくるのだが。\n\n\n──けれど、できるだけ彼女の邪魔をしたくない。\nダラダラと。けれども平和に流れる気安い雰囲気を台無しにしたいくないのもあるし……。\n何より、グレイス達に足りない物を補おうとして勉強に励んでくれているイーリスの邪魔をしたくなかった。\n\nイーリスはソファーのひじ掛けを支えにしながら分厚い本を読んでいる。\n勉強嫌いなグレイスには細かい内容までは分からないが、錬金術の本だ。\n近くの机には魔導書なんかも積まれており、イーリスはそれらの内容を必死に頭に叩き込んでいる最中である。\n\n軽い近視らしく、本を読む際にだけつけている黒縁のメガネが更に彼女を美人に引き立てる──等と考えて、グレイスは再び欲情に駆られそうになる感情を振り払った。\n\n\nグレイス一行はほとんどが戦闘慣れした面々だ。\n勇者パーティとして戦闘の経験を積んだ戦士グレイスと勇者クリスは勿論、王女の護衛も兼ねる侍女ネイナもかなりの実力者。\n王女リリーナも護身術をしっかり身につけ、騎士団長やネイナから実戦でも通用するように叩き込まれているので我流で戦うチンピラみたいな冒険者達よりも一段階上の実力があるだろう。\n\nしかしイーリスは一般人。\n娼婦という事もあり魅せる体を意識して運動こそしていたが戦闘に関する訓練は一切していない。\nこの拠点に行き着くまでも町や村の移動の最中に何度が魔物との戦闘があったが、イーリスは何の役にも立たなかった。\n\n誰もそれを責める事などしなかったが、今後どうなるか分からない状態で頼りっぱなしになる事を彼女自身が許せなかった。\nそこで少しでも戦闘の役に立てればと考えた結果が──魔法と錬金術。\n\n\nグレイス一行はほぼ全員が前衛に出て戦うタイプだった。\nリリーナとクリスは魔法が使えない事もないが補助程度の簡単な物しか使用できないし、可能ならば武器を手に前に出たい。\nグレイスとネイナに至っては魔法の才能がなかったり柄じゃないと修練に励まなかったため、前衛しかできないタイプ。\n\n\nそんなパーティを見ていれば自然とイーリスは後衛に回るスタイルを取ろうと考えに至った。\nそもそもスレンダー気味な彼女は肉付きが悪いので前衛は向いていないと思ったようだが。\n\n──ちなみにスレンダーと言っても貧相だとか痩せぎすという訳ではない。\nリリーナのように豊満というワケではないが女性らしい胸元の膨らみはしっかりあるし、グレイスを膝枕している足はとても柔らかい。\n\nしかして他の女性陣から見ても「足長くてほっそ!」「めっちゃくびれある!」と羨むような良すぎるスタイルのせいでスレンダーと称するだけだである。\n\n\n──またしても話が逸れたが、グレイス一行に足りない後衛のポジションをしっかりと果たそうとした結果イーリスは……。\n今はようやっと初級魔法が使えるようになったばかりだが攻撃、回復、補助の魔法の習得。\nついでに、といった感じだが簡単な魔法具の作成にも手をつけ初め冒険者としての役職『賢者』として歩み始めたような状態だった。\n\n初級と言えど魔法のサポートを受けられるありがたみをグレイス一行は早くも実感し、早速敬われているというワケだ。\n\n\n実際に賢者と称するにはある意味で勇者より険しい道のりかもしれない。\n勇者は聖傷の有無などで明確に呼ばれたりするが、賢者は魔法や魔導具などの扱いに長けた実力者と周囲に認められてようやっと名乗れるモノ。\nただ適当に魔物を倒すだけでなく、なんでもこなせられる秀でた才を持つ者だけが賢者として認められるのだから。\n\n正直イーリスは自分にそんな才能はないと思っている。\nただの娼婦だった自分では魔法を使うための魔力も全然無いし、今は覚える事も多くて色々と精一杯。\n賢者だと持て囃されているのは仲間内で勝手に言われているだけにすぎない。\nその点では勝手に周囲に魔王と呼ばれているグレイスと何ら変わりはなかった。\n\n\n「ふぅ……」\n「あんま無理すんなよ?イーリスのおかげで助かってるし、戦えない事を気に病むなとは言わないけど焦る必要もねぇ」\n「まぁ……うん」\n\n\n\n本のキリの良いところまで読んだら自然と息を漏らしてしまうイーリス。\nそれを見たグレイスはできる限り優しい言葉をかけようとしていたが……。\n\n\n──色々と。\n賢者見習いのような事をするようになった理由を上げてきたが一番の理由をこの男は分かっているのだろうかと少しだけ問いただしたくなった。\n単純な事だ。明解な事だ。とてもシンプルな事だ。\n\n\n──グレイスの役に立ちたいから。\nグレイスと一緒にいたいから、守られるだけの足手まといになりたくないからイーリスは頑張っているのだ。\n好きな男のために努力する。ただそれだけ。\n\n\nとはいえ少し疲れが溜まってきたのも事実だった。\nグレイスの言うとおり焦っても仕方がないし、無理に頭に叩き込んでもしっかりと身につかなければ意味がないだろう。\n\nこういう時は、息抜きも大事だ。\n\n\n\n「ねぇグレイス。エッチしない?」\n「ぶっ!?」\n\n\n\n膝枕されている状態で言うのも何だが、頑張っているイーリスの邪魔はしまいと必死に理性を保っていたグレイスには想像だにしていなかった提案のようで吹いてしまう。\n\nけれどグレイスとイーリスは肉体関係から始まったようなモノだし、イーリスとしては自然な流れだと思っていた。"}

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