| {"novel_id": "n0002fv", "chapter": 23, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002fv/23/", "title": "23話 控えめに言ってもクズ", "content": "グレイスは控えめに言ってもクズであり女好きである。\n一人の男が複数の女性を侍らせるのに問題がない世界では浮気という概念も少ない。\nけれどもグレイスの回りにいる女性達は本気で彼を愛している。\n\n──だというのに。\nグレイス本人は、たまには別の女を抱きたいなんて考えたりしている。\n勿論、彼自身も彼女達を本気で愛してはいるが『それはそれ、これはこれ』。\n\n気楽な後腐れない身体だけの関係も欲しいなーと、悪ぶれずに考えている。\n\n\n拠点の設営が落ち着くとグレイスは彼女達に適当な言い訳をして。\n──近場の町へと繰り出した。\n\n\n\n◇◇◇\nアルギスの街。\nグレイス達の拠点から2番目に近い、人の集まる場所。\n一番近いリーオス村では食材等を分けて貰ったり購入したりしているが、生活用品を揃えたりするにはアルギスにまで足を運ぶ。\n\nとはいえ今日の目的は買い出しではない。\n行き先は酒場『アルドランテ』。\n飲み食いも目的ではない。\n\nそこで働く可愛いウェイトレスさんのナンパが目的だ。\n\n\n「よっ、ミルディ」\n「えーっと……グレイスさん!今日は一人?」\n「そりゃあーな。可愛い女の子口説くのに連れがいたらダメだろ」\n「うっわサイテー。あんなに可愛いやら美人の女の人を侍らせているのに?」\n\n\n\nミルディ・ストランド。\n酒場アルドランテに働くウェイトレスの一人。\n赤いショートカットの髪と明るい活発な性格から女性というより少女の印象を受ける。\n実際、リリーナより年下らしく15~18歳くらいだろう。\n\nかなりの美少女で酒場の常連からも人気が高い。\nそして美少女が支給されたオフショルダーな制服で肩を。ミニスカートとハイソックスで足を魅せてくる。\n\nとにかく可愛い、と周囲に印象付けさせるのがミルディという女の子だった。\n\n\n\n「そんで?わざわざ一人で来たグレイスさんは誰がお目当て?まだ早い時間だから人少ないよー」\n「勿論ミルディだ。この後時間ない?」\n「えー?私なんかをご所望とかロリコンめー!」\n\n\n\n流石に酔っ払いの相手とかで馴れているのか軽くいなすミルディ。\n挙げ句、席に案内して注文は?とナンパを気にもしていない。\n全くの脈なしと言った雰囲気だが──。\n\nだからこそ、どうやって仲良くなろうと考えるのが楽しいグレイス。\n\n相手は娼婦とかではないので、無理に押しても意味がない。\n店長や他の客に泣きつかれて出禁になったり悪評が立つ方が困る。\n\nまずは『普通』に仲良くなるのが大切だ。\n\n\n\n「まーまー。軽くお茶してくれたり買い物してくれたりしてくれるだけでいいからさー」\n「えー?でもグレイスさんお金とかあまり無さそうじゃん。無理しない方が良いよー」\n「ところがどっこい。冒険者としての腕はそれなりに自信あってな。新天地でもそれなりに討伐クエストをこなしているから財布は豊かだ」\n\n\n\n冒険者は実力主義の世界だ。\n基本的に得たいの知れない流れ者がやるような職業。\n必要なのは地に根付く信頼ではなく、仕事一つ一つをこなせる信用。\n\n嘘か誠か。\nジョークとしてでも魔王と呼ばれ悪名高くなってきたグレイスでも仕事をこなしてくれるなら問題ない。\n人殺しや略奪。環境破壊等をしない限りは泳がせておこう。\nむしろ冷たくあしらい遠ざけるより、目に届く範囲で監視する。\n\nそれが冒険者に仕事を斡旋する側──ギルドの考えなため、今のところグレイス達は仕事やお金に困っていなかった。\n\n\n──グレイスは袖を捲り力こぶを作って自信げにミルディと話す。\n魔王の悪評とかで視線は痛いが、悪い事は何もしていないので堂々と、いつも通りにしようと考えていた。\n\n\n「わ……すご」\n「お?腕触ってみる?」\n「じゃ、じゃあちょっとだけ……」\n\n\n──人は、何に興味を持つのか分からないものだ。\nグレイスとしては何気ない行為だったかミルディという少女は興味をもってくれたようで「わー」と声を漏らしながらグレイスの腕をペタペタと触り始めた。\n\n冒険者という仕事柄、グレイスと同等かそれ以上に屈強な男というのは多くもないが珍しくもない。\nけれどミルディにとっては親しみやすくて屈強な人というのは珍しくて年相応に無邪気にグレイスの筋肉を触る。\n普段は酔っ払いの相手のためかしっかりとした印象だが、今だけはとても少女らしい。\n\n\n──まぁ、だからと言ってデートやら何やらに付き合うかは別だが。\n\n\n\n「──で、注文は?」\n「……とりあえず生で」\n\n\n全くの脈なしだった。\n──その時は。\n\n\n◇◇◇\n\nミルディ・ストランド。\n歳は16でごくごく平凡な少女だった。\n──訂正。ごくごく平凡な美少女だった。\n\nミルディは年相応に可愛い物が好きだ。\n自分自身が可愛くなれるよう努力もする。\nけれど世界や、街で一番の美少女だなんて自惚れまでは流石に持てない。\n\n\n冒険者のように危険な仕事をしようとは思わないし、土臭い農業もしようとは思わない。\n自分でもそれなりに可愛い方だとは思っているがそれを生かす──としても、そんな仕事は娼婦とかそういう仕事しかないだろうので生かそうとは思わない。\nそれに可愛かったり美しかったりしていられるのも期限があるだろうから。\n\nミルディの将来の目標は無難に飲食店の経営者だ。\n魔物蔓延るこの世界では街にいればよっぽど安全だし、歳をとってもある程度続けられる。\n\n\nそんな風に考えるミルディ・ストランドはちょっと他より可愛いくらいの、ごくごく平凡な美少女だった。\n\n\nそういった平凡、無難に身を置く彼女にしてみれば──。\n冒険者というのは生き方として一番縁遠い職業だろう。\n会うだけなら勝手に酒場に集まってくる。\n\nけども冒険者というのは──。\n平凡では、実力主義の職場では仕事をこなすのも厳しい職業。\n無難とは程遠い、いつ命を落としてもおかしくない危険な職業。\n\nはっきり言ってバカのする仕事だとミルディは思っていた。\n実際に稼いだお金をその日に使いきるような考えなしが多いし、幼年学校で一緒だった冒険者に憧れていた子達の中にも若くして命を落としている人だっている。\n\n──平凡。無難。\nそれとは程遠い、愚かな職業。それが冒険者。\n\n\n\nけれども。\nたまにいるのだ。\n非凡で猛々しい。\n──本当の冒険者が。\n\nまだ年若いミルディにとって始めて見る『冒険者』が奇しくもグレイス達だった。\n\n\nまず見た目が普通の冒険者と違った。オーラが違った。\nグレイス達が始めてアルドランテにやって来た時はメンバー勢揃いだった。\n\nグレイスは……まぁ、不細工ではないし普通にカッコいいくらいの容姿。\n他は美女ばっかり。良くも悪くも目立った。\n\n\nただ、容姿もそうだが普通の冒険者のような無骨さがなかった。\n生きているのが当たり前。\n危険も軽々と踏破してしまう力強さ。\n素人目でも感じてしまう威圧感のような物に物怖じしそうになった。\n\n実際に話してみれば気安い。\nグレイスに至っては軽すぎて宙に浮きそうなくらいの気安さだったが──。\n彼らには危険をものともしない非凡さと猛々しさを感じていていた。\n今でこそのんびりとしているようだが、きっと平穏とは程遠い波乱な人生が待っているのだろう。\n\n\nそんな柄にもない事を平凡で無難な少女は思ってしまった。\n\n\nけれどそんな思いを頭でしっかりと理解できていたワケではない。\nまだ人生の経験も浅い少女では頭ではなく本能で理解して。\n\n自然とグレイス達が気になる。\n気になった男から声をかけられる。\n\nミルディは自分の身が可愛い平凡で無難な少女だったが、グレイスに惹かれるのも時間の問題で。\nメスが強いオスに惹かれるように未熟な少女の思考を奪っていく。\n\n\n自分の在り方を自覚していないグレイスという魔王はナンパと称した気軽さで。\n人の心に軽々と入っていく。\n\n\nミルディだけではない。\n魔王と呼ばれながらも酷い扱いを受けないのは自覚のないグレイスの人柄の良さだった。\n\n自覚がないと言ってもその人柄の良さにかこつけて人を、女をたらしこんでいくのだからタチが悪い。\n控えめに言ってもクズであると称したくもなる男が、今の魔王グレイスだった。"} |
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