| {"novel_id": "n0002fv", "chapter": 3, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002fv/3/", "title": "3話 勇者一行とパーティー", "content": "冒険の休息日はイーリスを満喫したグレイス。\nアフターもOKしてくれたので娼館を出た後も一緒に食事したり、風呂に入ったり、またエッチしたり。\nまるで恋人気分だ…と夢心地だったがあくまでそれはサービス。\n現実は非情だ。勇者という存在が身近にいる以上、オレに魅力なんてものはない。\n本気の付き合いにはならないだろうと、割りきるしかなかった。\n\n\n色々と思う事はあるが、決して勇者アルスの事が嫌いではないとフォローしておこう。\n冒険の最中は背中を預けられる最高の相棒でもあるのだから。\n\n\n「チェインバインド!」\n「エアスラスト!」\n「ブーストラッシュ!」\n「「アサルトドライブ!!!」」\n\n\nアルスが鎖を生成する魔法『チェインバインド』でスケルトンナイトと呼ばれる魔物を拘束する。\nスケルトンナイトは生きた屍、アンデットと呼ばれる種類の魔物なのだがスケルトンナイトは生前騎士や戦士だった人の死体が元になっているためか練度の高い剣術等を使用してきて手強い。\n\nしかしそんな相手も拘束して動けなくしてしまえば問題ない。\n問題があるとすればチェインバインドの効力は短い事や、無理に維持しようとすると魔力消費のコストが高い事か。\n万能とも思える魔法という存在でも、何もない所から現実に干渉し続けるのは大変…らしい。\nグレイスは魔法を使えないのでその辺の苦労はよく分かっていない。\n\n\nだがその代わり剣術の腕だけならそこいらの相手には負けない。\nアルスの魔法に合わせて手早く動けなくなった魔物に追撃する。\n今のグレイスの武器はバスタードソード。\n武器に拘りない彼だが、汎用性を求める時は片手剣としても両手剣としても使えるのでこの剣をよく使用している。\n\n『エアスラスト』というのは剣技の名前だ。\n自分の身体に蓄積された気の循環を活性化させ、一時的に身体能力を飛躍させる。\nとはいえ本当に一時的なので技のコンビネーションに組み込んで使うのが剣技の基本だ。\n\nエアスラストは素早く3連斬りを行い、最後に敵を打ち上げるコンビネーション。\nそして打ち上げた敵をアルスが剣技『ブーストラッシュ』で更に追い討ち。\n足の力を活性化させ跳躍し、素早く敵を切り刻んで最後に凪ぎ払う。\n跳躍は勿論、地上でも素早く間合いを詰めるのに有効なアルスの得意技。\n\n最後は合体技『アサルトドライブ』。\nこれはもう説明する事もほとんどない。\n二人で剣技を発動し、タイミング合わせて滅多斬りするだけだから。\n\n\n簡単に説明したがこの連続攻撃は息を合わせるのがとても重要。\n魔法の効力が有効中のタイミングでの追撃や、連続して剣技を使用できるとはいえ一つ一つの技に持続力はないため手早い連携の必要性もある。\n\nとはいえ、息を合わせるのが重要と言ったが難しい事ではない。\n攻撃もそうだが、魔物を倒した際に拳を合わせて称賛しあうタイミング。\nそれすらも完璧に合わせている二人には難しい事ではないのだ。\n\n\n「流石アルスね。手早い対応だったわ!」\n「はい!見事な連続攻撃です!」\n「ぐっ…」\n\n\nしかし絶賛されるのはアルスだけ。\n魔法使いのリタも、僧侶のアイシャもアルスにベタ溺れでグレイスの戦果は目に入らない。\nまぁ、仕方ないと思わないでもい。\n二人はアルスの恋人なのだから惚れた男の事しか目に入らないのだろう。\n\n昔はなー、もうちょっと違ったんだよ。\n3人が恋人関係になる前までは今のような連携の後は「二人ともお疲れ様」と声かけてくれていたのに。\n妬ましい…とまではいかないが流石にちょっと寂しい。\n\n\n「流石グレイス。相変わらずタイミングがバッチリだったね。僕も動きやすかった」\n「…おぅ」\n\n\n変わらないのはアルスだけだ。\nこういった声かけも欠かさないので、色々と思う所はあるがコイツの期待には答えたい。\n色々と思う所はあるが、アルスは非の打ち所がない良い男なのだ。\n\n身長は180cmほど。\n筋肉は無駄なくスマートについており、速さと力強さを兼ね備えた完璧な肉付き。\n剣技は勿論、魔法の才能も国一番と言っても過言ではない。\nそれでいて性格は穏やかかつ、戦闘や交渉は大胆で万人を魅了する。\n性格の悪い連中が卑屈になって悪い所を指摘しようにも、完璧な存在すぎて言葉にならない程だ。\n\n\n「そうだグレイス。今度の休息日は王城のパーティーに誘われているのだけれど一緒に行かないかい?」\n「えぇー…そんな面倒なのに参加するくらいならオレは女の子と…」\n「たまには君とお酒を飲み交わしたいんだ。ダメかな?」\n「ぐっ…」\n\n\nこの人たらしが…!と思わなくもないがここまで言われては断れなかった。\n男に誘われても嬉しくなんてないがアルスは別だ。ズルい男だ。\n\nどうせそのパーティーもアルスの回りには人が集まってオレは手持ち無沙汰になるんだろう。\n基本暇で一人飯食ったり酒を飲んだりする事になる。\nけれどもアルスとの乾杯は…正直魅力的だ。\n相棒とジョッキを重ね合わせてから飲む酒は格別なんだろうよ。\n\nホント、人たらしの相手は面倒だ。\n\n\n\n◇◇◇\n\nそんな、アルスの誘いもあり休息日は王城に招かれてのパーティーに参加した。\nアルスもグレイスもリタもアイシャも。\n平民ではあるが結構な頻度で王城にお呼ばれされている。\n\n魔王討伐に一番近い男、勇者アルスとその一行。\nだから王や貴族にも丁重に扱われているというのもあるが、幼少の頃から才覚を見いだされた子供達は王城に招かれては英才教育を受ける。\n\n血の重要性だとか貴族のプライドだとか。\nそういうのは何処の国も煩いだろうが、この王都エルドゥーラはある程度実力主義がまかり通る。\nオレ達4人はそうやって昔から王都に招かれては一緒に教育やら訓練を受けてきた幼馴染み。\nこういった王城でのパーティーにも馴れたものだった。\n\n\nただ、グレイスにとってはあまり面白いモノではない。\n最初こそ約束通りアルスと乾杯したが、直ぐ様アルスの回りには老若男女問わずにパーティーの参加者が群がってくるのだ。\n予想はしていたが面白くないよな、やっぱり。\nできればその辺の酒場か何処がで追い付いて飲み明かしたいもんだよ。\n\nけれど手持ち無沙汰で暇してるってだけでオレは諦めがついている。\nオレよりも辛い思いしているのが…リタとアイシャだろう。\nせっかくパーティーに向けておめかししてるっていうのにあまり構ってもらえないんだからな。\n\n\n──魔法使い『リタ』。\n赤い髪のボブカットで活発な性格。\n子供の頃からずっと一緒だし、活発な性格のせいで昔の印象が抜けにくいが今は身体のラインがハッキリするドレスを着ているせいか女を感じざるをえない。\n\n髪の色が明るい赤色なのに対し、ドレスは赤と黒が混じったようなシックな配色だ。\n身長は女性として平均的。だけれど豊満な胸元がドレスの細い紐だけで支えられており目が奪われる。\n普段は正に魔法使いといった感じで露出の少ない黒のローブを着ているが、それでも巨乳が隠しきれていない。\nだというのに胸元を露出させたドレスなんて着られたら目が奪われて仕方ないじゃないか。\n\nとはいえそんな女性の魅了に満ちたリタだがナンパしようとする度胸のある男達はいない。\n皆、勇者の恋人だと知っているからな。\n\n\nそして──僧侶『アイシャ』。\nこちらもリタに負けず劣らずの美人だ。\n髪は金髪のショート。\n胸元はリタどころか一般的な女性と比べても寂しいが美人というカテゴリーではリタにも負けていない。\n日頃から敬語を崩さず慈愛に満ちた性格で、仲間としてはお人好しがすぎる所が心配。\nまぁ勇者とかいうお人好し度では負けていない厄介な男がいるんですけどね。\n\nアイツは強いからどうでも良い。\nアイシャは華奢な女性だから心配になる。\n\n服装は白のシルクでできたドレス。\nあまり露出していないように見せかけて背中が大きく開いたドレスを着ているもんだから女性らしい清らかな肌を大胆にも見せつけている。\n多分、アルスを喜ばせるために必死に選んだんだろうな。\n\nそんな美人二人だけでなく冒険で行く先々の村や街で魅力的な女性達の心を掴んでは虜にしているのだから、勇者アルスはただの軟派者のオレよりもたちが悪い。\n\n\n──さて、オレの寂しさも限界が来たのでナンパでもしますかね。\nリタやアイシャほどの美人はそうそういないし、アルスの側に人が集まるので声をかける相手もほとんどいないが。\nとはいえ全員が全員群がっているワケじゃないから一人佇んでいる女性を探して…。\n\n\n「ちょっとそこの筋肉ゴリラ。グラスが空になってしまったわ。ワインを注ぎなさい」\n「げ…!」\n\n\nいました。\nリタとアイシャに負けず劣らずの美人さんがお一人で。\n\n──流れるようにサラサラとした綺麗な金髪。\nリタのような巨乳ではないが程よい大きなな乳房。\n更には宝石のように綺麗な水色の瞳。\n紛れもない美女。美女ではあるんだが…。\n\n\n「何よその態度は!早くワインを注ぎなさい!」\n「オレはウェイターでも何でもないんだが…」\n\n\n性格が活発を通り越してお転婆、我が儘の域。\n文句言っても人の話しなんて聞いてくれないのでテーブルに備え付けられた赤ワインを注いでやる。\n\n彼女の名前は──リリアンヌ・ドゥルーシカ・エルドゥーラ。\nこの国の王女様である。\nこの王女様、他の人には人当たり良いくせにオレにだけ使用人以上に厳しく当たる。\nむしろミスした使用人にも優しい言葉をかけた所を見た事あるし、オレの扱いは使用人以下だろう。\n\n勇者一行と同じく幼馴染みではあるが、どうしてこうなった。\n彼女の歳はオレよりも一つ下の19歳という事もあり、幼少の頃から歳が近いからと仲良くさせられていたため無礼講な仲ではあるけれど──。\n\n\n「リリーナ、どうしたんだその格好。まるで執政中の制服みたいだけど」\n「そりゃそうよ制服だもん。私は今仕事終わって来たばかりだから」\n「さいですか。ご苦労様です王女様」\n\n\n『リリーナ』というのがオレが彼女の名前を呼ぶ時の愛称。\n本来ならリリアとかリリィって呼ばれるんだろうけども、言葉足らずな時にリリアンヌと呼ぼうとして上手く言えなかった時の名残からかリリーナと呼んでいる。\n本当に幼い頃からの呼び名なので正確な理由は忘れたけども、多分そう。\n\nリリーナの服装は白のブラウスに緑色のカーディガンと地味な配色の組み合わせ。\n下もベージュのズボンとパーティーに参加する王女様とは思えぬ格好だ。\n動きやすいだろうし、仕事着としては問題ないのだろうけれど──。\n\n\n「ほら、オレなんかに構ってないで許嫁の所に行ってこいよ。皆事情知ってるだろうから王女様のくせに無作法だーとか言わないだろ」\n「なんでわざわざ。私はアルスの事別に好きでもなんでもない事知ってるでしょ?」\n「………」\n\n\n勇者アルスと王女リリーナは許嫁の間柄だ。\nアルスの父親である王国騎士団長と、リリーナの父親である王様が結んだ婚約関係。\nけれど世界で一番魅力的な男と言っても過言ではないアルスと婚約関係にあるというのに何故かリリーナは乗り気じゃない。\n\n苦労せずとも結ばれた約束だからだろうか。\n他の女性達はどんな努力をしてでも勇者の目に止まろう必死だが、王女にとっては当たり前の価値のようなものは有り難みもないのかもしれない。\n\n\n「勇者って完璧すぎて人間味ないから怖いのよ。好きとか嫌い以前にね」\n「…ま、まぁ分からんでもないが」\n\n\nアルスの事は相棒として頼りにしているが、それ以上にリリーナの言い分も分からなくはない。\nむしろ近いからこそ、平凡な人間である自分と勇者という存在の違いを実感せずにいられないというか。\n\nオレはアルスが怒った所を見た事がない。泣いた所も落ち込んだところも。\n才能や戦闘の面でもアイツが挫折さた所を見た事がない。剣だろうと魔法だろうと何だってこなしてしまう。\n\nそう考えると──確かにアルスの『完璧』という存在が怖くなってくるのも分かる。\nけれどアルスが良いヤツだという事には変わりはない。\n\n\n「──ん?じゃあなんでそんな格好のままパーティーに来たんだ?」\n「顔くらいは見ておきたいって思ったからよ」\n「じゃぁそれこそアルスに挨拶してこいよ」\n「………」\n\n\n何故か。\n今度はリリーナが黙りこくる。\nアレか。悪口っぽい事を言いはしたが、本当は気恥ずかしくて動けないだけなのか。\nこういうのをツンデレって言うんだっけかと彼女の顔を覗いてみると──。\n\n何故か。\n人を殺せそうなくらいキツい眼差しでオレを睨んでるじゃないか。\nオレ、なにかやっちゃいましたか?\n\n\n「──ところでグレイス。袖にワインが染みてるわよ」\n「え?マジで?」\n「みっともないから脱ぎなさい。ドレスコードに煩いワケではなさそうだしシャツでも問題ないでしょ」\n「そ、そうか?なら脱ぐけど…」\n「どのみちグレイスにタキシードは似合わないわね。筋肉がみっちみちでダサい。どうせならシャツをはだけて筋肉を見せつける方が──」\n\n\n突然饒舌になるリリーナ。\nよくわからないが、お前みたいな筋肉ゴリラはタキシードなんかより裸で野性的に過ごしてた方がお似合いだとか言いたいのだろうか。\n\n無礼講な関係とはいえ流石に口が悪すぎたと思ったのかリリーナは顔を赤らめながらコホンと可愛らしく咳き込むふりをする。\n\nとりあえず、リリーナの助言通りタキシードを脱いでシャツ姿になるが──。\n\n\n「戻るついでに片付けてあげるわ。クリーニングしたら実家に送っておけばいいわよね」\n「あ、あぁ。けど──」\n「じゃあね」\n\n\nリリーナはそそくさとオレのタキシードを奪い取りパーティー会場を後にした。\nそこまで気づかわなくていいとか、結局何しに来たんだとか色々と聞きたかったが手早く撤収されてできなかった──。", 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