| {"novel_id": "n0002gf", "chapter": 1, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002gf/1/", "title": "一話 〜ある一般人の回想〜 (リョナエロあり) ☆挿絵あり", "content": " 視界に映るのは、炎よりもなお紅い赤色だった。私に覆いかぶさった叔父さんはザクロのように砕けた頭から止めどなく命を零している。\n\n パチパチと炎が爆ぜる音がする。熱くないーー心も頭も冷え切って今にも凍えてしまいそうだ、ただ血液だけが温度を伝えてくる。\n 足のすり傷から血液が流れる。痛くないーーそれ以上の傷がつかないように、叔父さんが守ってくれたから。なにもできない私を抱えて最期まで守り通してくれたから。\n\n 尊敬していた。叔父さんはすごいお医者さんで何人も人を救っていて、私も叔父さんみたいにお医者さんになりたくていっぱい勉強している。\n 大切にされていた。叔母さんは私が小さい頃には事故で亡くなっていて、子供のいない叔父さんは私を可愛がってくれて、お母さんが度々「兄さんは甘やかしすぎです」なんて怒るぐらいだった。\n\n 全部、すごく昔のことみたいだ。\n\n 視界にもう一つの赤が混じる。燃えるような長髪をした女の人、次に殺されるはずだった私を救いにきてくれた人。叔父さんが殺された後に来た人。\n 強い人だった、叔父さんが何をしたってあしらわれるだけだった黒ずくめの男達をあっという間に焼き払ってしまった。もっと大きな相手が出てきても一歩も引かず、拳を叩きつけて打ち倒した。\n 私はそれを見ていた。叔父さんに覆われたまま、私を守るために黒い男と戦うその女の人をただ見ているだけだった。\n\n「……手当をするわ、立って」\n 女の人が私に声をかける。事務的な内容と硬い声色。目の前で大切な人を亡くした少女にかけられる言葉としては、きっと適切な物だっただろう。でも私が求めたのはそれじゃなかった。\n\n「どうして……!」\n\n 言葉が漏れる、地面に零れた血を睨みつける。\n 女の人は黙っていた、ただ私の次の言葉を待って黙っている。だから私は叫んだんだ。\n\n「どうして! アタシには戦う力が無かったのよ!!」\n\n それが始まり。私の理由。\n\n ===========================\n\n 二ヶ月後、A市 国道6号線\n\n\n 夕暮れ時の終わり、この街外れの国道も例外なく夜の闇に沈んでいた。\n まばらな街灯と僅かながらのコンビニの光がアスファルトを照らしても、切れ目は深い暗闇に塗り潰されている。\n だから、その闇を切り裂いて走る赤と白の颶風は一際の異物だった。\n\n「マズいマズいマズいわ! クリスタルの結界に一般人が巻き込まれてる! ハリヤーが接触するのも時間の問題よ!」\n\n 赤い風が悲鳴のような声をあげる、幼さを強く感じさせる甲高い声は夜に響くだけかと思われたが、ややあって応える声があった。\n\n「落ち着けエミリア、まだハリヤーはクリスタルの位置を掴んでいないだろう。時間はあるはずだ」\n\n 白い風が嗜める。こちらも声はまだ幼いと言って差し支えないが、落ち着いた声色は赤い風--エミリアと呼ばれていた-ーとは対照的に、凛とした印象を与える。\n\n「こっちが到着するのもまだ時間がかかるじゃない! このスピードだとあと10分はかかる!!」\n「落ち着けと言ったろう。常に全力疾走はできない以上これが限界のスピードだ。無い物ねだりをしないでできることから考えてーー」\n「アタシはできるわ! 翼を使う!」\n「な、待て! アレは魔力の消費が激しいだろう。\n 今回は戦闘員だけとはいえ数が多い、お前でも単独では危険がーー」\n「普通の人は危険どころじゃないわ! 先行してるから、カナデは出来るだけ急いで合流して!」\n「あ、おい! エミリア!」\n\n 制止の声を振り切るように赤い風はグンと速度を上げ、次の瞬間空へ飛び上がる。暗い空を切り裂くように飛ぶ赤い風は、街外れのビルへと向かっていた。\n\n ===========================\n\n A市、台場臨海ビル\n\n「なんだよ、なんだよ、なんなんだよアイツら……!」\n\n 疑問を言葉にして恐怖と共に吐き出す。\n 心臓の音がうるさいのは階段を全速力で駆け上がっていることだけが理由でないと自分でもわかっていた。\n\n 俺の名は佐藤一郎、今年で28になるしがない警備員だ。\n 大して高くもない給料をちょっとはマシな額にするためにこのビルの夜番を引き受けていただけの一般人だ。\n\n 今日だっていつもと変わりはしない。\n モニタールームで監視カメラを見るともなしに見て、適当にスマホをいじってゲームをやったりやらなかったり。\n\n だから、裏口を含む出入り口を映しているカメラにそいつらが現れた時も『コスプレしたアホがイタズラでもしにきたかな?』なんて思っていたんだ。\n\n コスプレとは言ったが妙な格好だった。\n 全身を黒っぽいタイツのような服で覆い、顔には仮面を付けている。\n 仮面も真っ白な面に、目の位置に黒い線、口の位置に三日月のように曲がった赤い線が引かれているだけの簡素なもの。\n\n まるで特撮に出てくる戦闘員だ。\n いや、そういうコスプレなんだろう。\n\n しかし、何もこんなところでやることはないだろう……\n ため息をつきながら椅子から腰を上げる。\n 出て行って注意して、それでも居座るようなら……\n\n\n そう考えたところで、監視カメラ越しに奴らが鉄柵をひん曲げた。\n\n\n「…………は?」\n\n あり得ない。直径5センチはある鉄の棒だ。\n 多少錆びてようが人間に曲げられる物じゃない。\n\n どう見ても道具なんて使っていない、タイツと仮面だけの格好じゃ何かを隠し持ってるなんてあり得ない。\n\n どうして、どうやって、そんな意味のない疑問だけが頭を埋める。\n\n だから、奴らが鉄の扉を蹴り破ってビルに入ってくるのを見るまで気づかなかったんだ。\n 出入口が全部塞がれた状態で、俺は追い詰められているってことに。\n\n\n 気がついてからは早かった。\n 無線連絡をコールセンターに送ろうとして正体不明のエラーが出たことに毒付いて、ビル内の見取り図を引っ掴む。\n\n モニタールームを転がるように飛び出て走り出す、目指すは上だ。\n\n モニタールームはマズい、出入り口に近い上にすぐに行き止まりで隠れるところもない。\n とにかく上だ、屋上にまで行けば助けも呼べるかもしれないし、コンテナがいくつかあったはずだからそこに隠れることもできる。\n\n 戦おうなんて思わなかった。\n 俺だって警備員なんてやってるから多少は格闘技の心得だってある。\n\n でもそんなことは関係なかった。\n アイツらは違う、何故かはわからないが分かる、人間が戦える相手じゃない……!\n\n 屋上への扉を蹴破らんばかりの勢いで開く。\n\n まずは信号灯を付けて助けを呼んでそれからコンテナに隠れてーー\n\n いや、おかしい、明る過ぎる。\n 光など最低限しかない屋上のはずが、はっきりと全景が見えるほどに明るい。\n\n 何故か--? 考えるまでもない。\n 屋上の中央にラグビーボールほどの光る宝石、いや『クリスタル』が浮かんでいる。\n\n コレが何なのかはわからないがわかる、いや、わからされた。\n\n「アイツらはコレを狙ってきた」「奪われてはならない」「奪われれば何か恐ろしいことになる」と--\n 理由もわからない確信だけがクリスタルから伝わってくる。\n\n 咄嗟にクリスタルを抱え込む。\n 奪われるな、それは、それだけはマズい。\n\n できるだけ入り口から離れたところにあるコンテナに飛び込んで中からつっかえ棒をかけたが焦りは止まらない。\n\n アイツらはいずれここに来る。\n コンテナを調べられればあっという間だ、鉄柵を素手でひん曲げるやつにつっかえ棒なんて無意味だ。\n\n せめてもとコンテナの中に積んであった毛布の中に潜り込んで身を隠す。\n 幸いと言うべきかクリスタルの光はいつのまにか収まり、コンテナの中は暗闇に包まれている。\n\n 「落ち着け、上手くすれば、上手くすれば、やり過ごせる……」\n\n 呟きが僅かな安堵を生む。\n そうだ、きっと大丈夫。\n そうしたら、落ち着いたらまずはこの『クリスタル』がなんなのかを……\n\n\n ドカンと、屋上の扉が蹴り破られる音がした。\n\n コンテナの中にいてもハッキリとわかる破砕音。\n 思わず毛布を強く握る。\n\n コンテナの中にいても、微かなギィギィというアイツらの鳴き声が聞こえてくる。\n 意味などなさないはずのその声が恐ろしい。\n 心臓の音が煩い、震える歯が音を立てないように力一杯奥歯を噛みしめる。\n\n「どこだ」「どこにいる」「そこにいるのはわかっている」\n\n --こんなものただの思い込みだ、アイツらは俺の場所なんてわかっていない。\n\n ガァン、と何かを壊した音がする。\n 近い、ここの、俺のすぐ近くのコンテナだ。\n 血の気が引く、その音がわかる。\n\n 来る、間違いなく来る。\n 順番にコンテナを開けて近づいている。\n どうする、どうしようもない、息を潜めてうずくまるだけ。\n せめてここに隠れていることに気が付かれなければーー\n\n ガァン! と、轟音と共にこのコンテナの入り口が蹴り破られた。\n\n ギィギィという声がハッキリと聞こえる。\n アイツらがゾロゾロとコンテナに入っている気配がする。\n\n 息ができない、心臓が凍りそうだ。\n 大丈夫、大丈夫だ。毛布の中にいればバレない。\n\n きっと大丈夫だ。 アイツらもきっとすぐにコンテナから出るはず……\n\n\n そう思った瞬間、毛布が剥がされた。\n\n「ギイ、ギイィィイ……」\n\n 嗤った。間違いなく、悪意に満ちた笑顔で。\n\n 俺は、頭が真っ白になって呆けたようにその笑顔を見あげて、次の瞬間、宙を飛んだ。\n\n「あ、うわぁぁぁあーー!!?」\n\n コンテナから外にボールのように投げ飛ばされたのだと理解したのは、背中を屋上のコンクリートに叩きつけられてからだった。\n\n クリスタルはまだ抱えたままだ。\n まだ間に合う、ここから、逃げなければと全身が命令する。\n そうだ、まずは、立ち上がって--\n\n\n 立ち上がって、俺の周りを黒タイツが囲んでいるのを、俺は見た。\n\n\n「あ、ま……ごぶぇっ!!」\n\n 骨まで響く振動と内臓の痛みで腹を蹴り上げられたと理解する。\n\n びちゃびちゃと嘔吐して、うずくまる。\n もう動けない、動こうという意思からへし折られた。\n\n 俺は、嬲り殺されるんだなと理解した。\n 自分に向けられた粘ついた悪意、こいつら同士の「今から楽しい遊びをしよう」とでもいうような空気。\n\n 死にたくない、死にたくない、死にたくない\n 無理だ、殺される、逃げられない、どうしようもない\n\n 絶望に心が塗り潰されていく、死にたくないのに死んでしまう、嫌だ、助けてくれ。\n 神様仏様、いや、もうこの際悪魔だって構わない--\n\n\n「おじさん、そのまま伏せてなさい!」\n\n\n ーー轟音。\n 爆風と閃光は警告と同時だった。\n\n\n 全身に振動が響く、視界は閃光で覆われてなにも見えない、ただわかるのは自分の周りで次々と爆発が起きていることだけだ。\n\n 助かったのかそうでないのか--頭を抱えていた時間はほんの数秒だろうか、爆風が止んだのを感じて恐る恐る目を開けると--\n\n\n「うん、無事みたいね…… 安心しなさい、おじさん! アタシが来たわ!」\n\n\n 小生意気なドヤ顔を浮かべる美少女の顔が、こちらを覗き込んでいた。\n\n\n 目の覚めるような美少女だった。\n\n 歳は10代前半だろうか、勝気な光を宿した青い瞳も風にたなびく金色のツインテール、赤を基調として黒と金の差し色が入ったワンピースドレスは少し大人びたノースリーブデザインで、140センチ程度の可愛らしい少女を華やかに飾っている。\n\n 街で見かければロリコンでなくとも目を引かれるような美少女だが、俺の目を引いたのはそこではなかった。\n\n 彼女が構えているのは、その身の丈程の大鎌。死神が構えるような巨大で直角に近い刃が月光を反射して煌めいている。\n 加えて、その背には悪魔のような一対の翼。得意げに上がった口元からは白い牙が覗いている。\n\n 悪魔--いや、これは\n\n「吸、血鬼……?」\n\n その言葉に少女はニヤリと笑う。\n\n「50点ね、おじさん。アタシは確かに『吸血鬼』タイプに変身してるけど--」\n\n 言いながらくるりと俺に背を向け、いつの間にかジリジリとこちらへと距離を詰めていた黒タイツ共に向かって鎌を構える。\n\n「アタシは『魔法少女』よ! 強くて可愛くて無敵のね!!」\n\n 言葉と同時、弾けるように少女が駆けた。\n\n 一瞬で黒タイツ達に肉薄すると同時、大鎌が三日月を描く。\n 一拍置いて少女の前面に立っていた黒タイツ達の上半身がズルリと下半身から滑り落ちると、白い煙となって跡さえ残さず消え去った。\n\n「な、なんだよコレ……」\n\n 理解が追いつかない、異常な速さで移動して馬鹿デカイ鎌を振り回す吸血鬼美少女(本人曰く魔法少女)、鉄を素手でひん曲げる上に煙になって消える黒タイツ。\n まるでアニメか漫画だ、それこそーー\n\n「魔法、少女……?」\n\n 少女が床を蹴る度に地面が揺れる。\n\n 砲弾のような速度で赤い風が黒タイツに接近したと思えば、次の瞬間には煙へと変わる黒タイツだけが『接近して大鎌で黒タイツを両断した』ということを教えてくれる。\n\n もちろん、黒タイツだってカカシじゃない。\n 俺では視認するのがやっとの少女に反応して、低空のタックルを仕掛けて鎌を振るわれる前に引きずり倒そうと動きだす。\n\n しかし、はっきり分かるほどにスピードが違う。\n 横に躱し、上に飛び越して、はたまた急停止して鎌のカウンターが黒タイツを切り刻む。\n\n ならばと五体で十字型に隊列を組んだ黒タイツ達が突進する。\n 広がっている以上横には躱せず、飛び越しても後詰めに捕まる、止まれば先頭の一体を切っても左右から挟み撃ちだ。\n\n 犠牲を前提にした必殺、あわやと叫ぶ間もなく少女とぶつかるその瞬間、少女が飛んだ。\n\n 先頭の一体を足蹴に宙空へと跳ねた次の瞬間、背中の翼がうねり、大気を掴んでその跳躍を飛行へと変えたのだ。\n\n 翼を持たない者には届かぬ高さから、きっかり五度の斬撃が降り注ぎ、屋上にいた黒タイツはすべて煙と消えた。\n\n\n「はぁ……っ はあっ、はぁっ……」\n\n 少女は息こそ荒く疲労しているようだが傷一つない、見事なまでの完勝だ。\n 少女が大きく息をつくと大鎌と翼がフッと掻き消える。\n\n「ふうっ…… か、数ばっかりで、楽勝だったわね……!\n さて、と。おじさん、怪我はない?」\n\n 金色のツインテールを揺らしながら少女がこちらへ歩み寄る。\n\n こうして近くで見ると本当にすごい美少女だ。\n スラリと伸びた手足は細い中にも柔らかく肉がつき始めて女性としての成熟を感じさせている。\n だが140センチと少しの身長とあどけなさを残した顔付き、細く折れてしまいそうな腰付きは紛れもない少女の物だ。\n\n 青く輝く目も、自信に満ちた表情も、薄い胸板や育ち切っていない臀部さえも彼女の魅力をーーそれも、ある種倒錯的な性的魅力をーー強く引き立てている。\n\n「ねえ、ホントに大丈夫? 応急処置ぐらいならできるけど……?」\n\n 少女が訝しげにこちらを覗き込んでくる。いかんいかん、何を考えているんだ俺は。\n\n 軽く頭を振って気分を切り替える。\n\n「あ、ああ。腹を蹴られたけど、それだけだ。\n 手加減されたみたいで骨も折れてないよ」\n\n「そ、なら良かったわ。他人の回復は苦手だし……\n って、え!? お、おじさん、その抱えてるやつクリスタル!?\n 何よそのサイズ!? 手に乗らないじゃない!?」\n\n なにやら混乱しているようだが、事情を知っていそうな相手に混乱されては俺も困る。\n あとさっきからずっとおじさん呼びされているが、俺はまだ20代だ。\n\n「と、とりあえずそれはアタシが預かるから、おじさんは早く安全な場所に隠れて。\n こんなサイズとなると、さっきみたいな下級戦闘員だけの筈がないしーー」\n\n「そう、ワタクシのような怪人クラスが中級戦闘員を引き連れてやってくる。ということです」\n\n 少女の言葉が遮られたのと、俺たちの周囲が光の霧のような物に囲まれたのは同時だった。\n そしてその霧から黒い軍服の男が現れる。\n\n「っ……! ジェネラル……!!」\n\n「お久しぶりですね、ミス・エミリア。\n 先日は同僚のティガールもお世話になったようで。\n これで怪人撃退回数も10の大台、いやはや、目覚ましいご活躍ですな。\n かくいうワタクシも三回ほど貴女に真っ二つにされてしまいましたし、いやはやこれではこの世界の侵略が全く進まないというもーー」\n\n 空気が爆発し、魔法少女ーーエミリアと呼ばれていたーーが軍服男、ジェネラルへと躍りかかる。\n\n 次の瞬間、金属が悲鳴を上げるような耳障りな轟音と共に、ジェネラルが軍刀でエミリアの大鎌を食い止めていた。\n\n だが、エミリアが有利だ。\n ジェネラルの軍刀はギリギリと音を立てて大鎌に少しずつ押し込まれている、このままいけばーー\n\n そう思ったところで、光の霧から現れた新しい黒タイツがエミリアに襲いかかる。\n\n エミリアは即座に背後に跳んで攻撃を躱すが、その隙にジェネラルもまた距離を取る。\n 屋上に現れた黒タイツ達は数十人か、中級戦闘員と呼ばれていた通り、先ほどエミリアが切り裂いた黒タイツ達よりも一回り身体が大きくいかにも強そうだ。\n\n「やれやれ、やはり仮想体のワタクシでは貴女に勝てませんね。\n であれば、ここはジェネラルの名の通り部下を使わせてもらいましょう」\n\n ジェネラルが手をかざすと、戦闘員達の手に武器が現れる。\n 剣やハンマー、盾といったそれらの武器自体は簡素な物だが、素手とは訳が違う。\n エミリアも表情を強張らせて鎌を構え直す。\n\n「どうやらかなり消耗している様子……\n ワタクシと部下を相手にどこまで耐えられるか、見せていただきましょう」\n\n ジェネラルが号令をかけると、戦闘員達がエミリアに襲いかかる。\n\n エミリアも同時に突進を開始、先頭を走る戦闘員を盾ごと蹴り飛ばし、右から迫る剣を切り払った勢いそのままに反転して左から襲いかかるハンマーを腕ごと斬り飛ばす。\n\n そのまま前進を図るも右から再度突き出される剣と前方からの槍に圧されてバックステップ、今度は敵の左翼を食い破らんと鎌を振るうも、構えられた盾に受け止められて攻めきれない。\n\n エミリアは強い。\n\n 確かに中級戦闘員達は先ほどまでの下級戦闘員に比べて明らかに強力だし武器まで持っているが、エミリアとは比べ物にならない。\n\n 速さは言うに及ばず、打ち合えば戦闘員は吹き飛ぶし、背中の翼による急停止や急旋回、飛翔しての上空からの攻撃まで可能とするエミリアは戦闘員達とは比べものにならない程に強い。\n\n それでもエミリアが攻めあぐねているのは、ひとえに奴等の連携による物だった。\n\n エミリアが攻撃を仕掛ければ盾持ちを中心に受け止め、左右から挟撃しつつ後方に控えていた戦闘員が盾持ちを支え、時に入れ替わる。\n 攻撃も呼吸を合わせて同時に斬撃がきたかと思えば、躱した瞬間に合わせた波状攻撃、一人が囮となっての不意打ちなどと巧妙だ。\n\n 先程までの戦闘員達とはまるで比べ物にならないその連携は、間違いなく後方で指揮を取るジェネラルによる物だろう。\n\n しかし、飛行して戦闘員を無視して強引にジェネラルに近づいたところで、先程の様子からして一撃で倒すのは難しい。\n そのまま背後を戦闘員に囲まれてしまえばいかにエミリアでも危険だろう。\n つまりはどうにか戦闘員を倒すか一撃でジェネラルを撃破しなければならないのだ。\n\n「如何しましたか、ミス・エミリア?\n 先程ワタクシに斬りかかった時よりも幾分か動きが落ちてきていますよ?\n 現場に駆けつける為の長時間飛行と魔力光弾まで使用した戦闘によって余程お疲れですかな?\n いやはや、強力なれど魔力消費が激しく長期戦には向かぬのが吸血鬼タイプの魔法少女とは聞いておりましたが、全く難儀な物ですな」\n\n ジェネラルは楽しそうに、愉しそうに言葉を紡ぐ。\n\n そして、間断なく突進を繰り返して戦闘員達と切り結んでいたエミリアが遂に突進を止めて距離を取る。\n その肩は大きく上下し、傍目から見ても消耗しているのがわかるほどだ。\n\n 嘘だろ。そんな言葉がまず浮かんだ。\n\n マズいとかヤバいとかじゃなくて、この少女が負けてしまうかもしれないという事実が受け入れ難かった。\n 後姿さえも美しいこの少女が地に伏せる姿を見たくなかった。\n\n でも、彼女はゆっくりと構えていた鎌を下ろしていく。\n\n「アンタ、アタシが下級戦闘員を倒してる間も隠れて見てたってわけ……? わざわざ先回りして……?」\n\n「いえいえ、残念ながら私がこちらに向かったのはクリスタルのサイズが確認できた後ですよ。\n たまたますぐに出れる状態だったのでおっとり刀で駆けつけたまで。\n 無論、下級戦闘員からの通信で貴女がいらっしゃるということは把握しておりましたがね」\n\n「そ、なら…… 安心したわ。\n そちらの探知技術が進歩したわけじゃないのね」\n\n「ええ、ええ、残念ながらそちらと同じ、二世代は前の代物しか持ち込めておりませんとも。\n いやはやいつでも下っ端はツラい物です。\n しかしミス・エミリア。最後に聞きたいことはそれでよろしいのですか?\n もう戦いのことなど気にしなくても良いのですよ。\n 貴女はこれから敗北し、腕を折られ腹を蹴られ頭を踏みにじられ処女を破られ泣き喚きながら許しを乞い魔物を産みながら死を願うだけです。\n 仮に助けが来てもこの屋上では奇襲など不可能。少なくとも貴女が助かることは--」\n\n\n 唐突にジェネラルが右に傾いた。\n\n 違う--ジェネラルの右足が、斬り落とされた。\n\n\n「な、これはまさか……!」\n\n ジェネラルの驚愕を待たずに、エミリアは飛んでいた。\n\n 戦闘員の頭上を越え、ジェネラルの上を一瞬で奪う。\n 戦闘員達もすかさず盾を構えてジェネラル達の周囲を固めるが、上空のエミリアは高度を維持したままにーー光の弾を降らせた。\n\n「ご、ガァッ!?」\n\n 360度を包む爆発の前では盾などは一撃で吹き飛び、ジェネラルがボールのように地を転がる。\n\n 同時、先ほどまでジェネラルがいた場所の床が崩れ、下から白い少女が飛び上がってきた。\n\n まず目に飛び込んできたのは、白く柔らかな毛の生えた大きなキツネの耳だった。\n そこから繋がって背中の中程まで伸びる白いポニーテールは月明かりを反射して銀色に輝いている。\n\n 白を基調に黒を差し込んだ衣装は巫女服に近かったが、彼女の右手に握られた白い日本刀によってその印象は剣道着に近い。\n 170センチ近くあるだろう長身にスラリと長い手足、切れ長の目も美しい鼻梁も、細く薄い唇も、可愛らしさではなく美しさを、儚さではなく鋭さを強く印象付けるーーまるで日本刀のような少女だった。\n\n 屋上に着地すると同時に、狐少女は滑るように戦闘員達の懐に入り込む。\n エミリアの飛行に近い爆発的な速さではなく、足運びと体重移動による『速さ』だ。\n\n 戦闘員達が慌てて武器を振るおうとするが遅い、始めの一体は武器を振り上げた隙に喉首を切り裂かれ、続く二体目は横の大振りを潜り込まれて胴を真っ二つ、三体目の振り下ろした剣が腕ごと下から斬り飛ばされた辺りで俺には何をやっているのか分からなくなってきた。\n\n 狐少女は間違いなく剣術を修めているのだろう。\n つまりそれは対人戦のノウハウであり、特に武器を持った戦闘員への対処法だ。\n\n エミリア程のスピードは無くとも、戦闘員では彼女を倒すことはできないだろう。\n\n「ぐっ、魔法少女・カナデ……!\n 下から奇襲とはやってくれますね……!\n ですが、まずは……!」\n\n「そう! アタシが! 相手よ!!」\n\n 呻きながら起き上がるジェネラルに、エミリアが砲弾と化して斬りかかる。\n さっきまで息切れをしていたとは思えない動き…… いや、間違いなくさっきよりも速い、明らかに回復している。\n\n「おかしい……!\n 先程の魔力光弾! あなたの魔力量からして、長時間の飛行の後は光弾を二発もフルパワーで撃つことはできないはず……!\n だが、魔力を回復する暇なんて……!」\n\n エミリアの猛攻を軍刀で必死に受けながらジェネラルが問いただすが、エミリアは答えない。\n\n そして大鎌が軍刀を捕らえ、再び押し合いの態勢へ入る。\n 先程との違いはジェネラルを守らんとする戦闘員が狐耳の魔法少女・カナデに片っ端から斬り伏せられているということだ。\n\n「何故だ…… 飛行を行えば魔力をセーブするなどできはしない……\n いくら吸血鬼タイプが回復力に優れているからといって…… 吸、血鬼?」\n\n「あら、気づいたみたいね?\n そう、アタシの変身は吸血鬼。牙で噛んだりしなくっても……」\n\n 言葉と共に、大鎌が怪しく輝く。\n\n「そうか! その鎌で切り裂いた敵の、魔力、を……!!」\n\n「正解! じゃあ! いい加減終わりよ!!」\n\n\n 言葉と共に、振り抜かれる。\n\n 断罪の大鎌はジェネラルの軍刀ごとその胴体を真っ二つにして、ここに決着がついた。\n\n\n「ああ、今回は、こんな物ですか……\n できれば、仮想体でなく、実体で、お会いしたいものですね……」\n\n「お断りよ。とっとと自分の世界に帰りなさい」\n\n ジェネラルが黒い煙となって消えると同時、戦闘員達の動きが明らかに悪くなる。\n\n 後はもう掃討戦だ。\n あっさりと全ての戦闘員は倒され、屋上は元の静寂を取り戻した。\n\n ========================\n\n「はあ、制止を聞かずに飛び込んで、案の定ピンチになっているとは…… お前は長期戦向きではないんだから気を付けろと常々」「悪かったわよ…… でも一般人が危なかったし、戦闘員だけなら回復すればなんとか……」「その想定の甘さがだな……」\n\n「な、なあ、アンタらは一体…… 何なんだ?」\n\n 思わず口に出してしまった。\n 魔法少女だのクリスタルだの戦闘員だの、何がなんだかわからないのだ。\n\n 問われた二人は一瞬考えた後、こちらへ背を向けてヒソヒソと話しはじめた。\n\n「あー、どうしようかしら…… 話さない方がいいのかしら……」「いや、確か話しても私達がいなくなれば一般人は忘れるんじゃなかったか?」「なら話してあげても良いんじゃない?」「無駄になるなら説明も不要ではないか? 手間をとるだけだろう」「いや、でもなんか気の毒じゃない」\n\n ……うん、丸聞こえだ。\n\n しかしそうか、記憶が残らないのか……\n それはなんだか残念だな、と思っていると、エミリアの肩からリスのような小動物--\n 有り体に言って、いかにも『魔法少女のマスコットです』みたいな奴が現れた。\n\n「いや、彼はおそらく記憶が残るだろうね。\n あれだけの高出力のクリスタルをずっと触っていたんだしその程度の影響はあると見るべきだね。\n まあ、彼への説明はボクが行うよ。\n エミリアとカナデはクリスタルの解放をしてくれ」\n\n 当たり前のように喋り始めるマスコットにもう驚きもしなくなっているあたり、俺もだいぶこの状況に慣れてきたらしい。\n\n ========================\n\n 小動物が言うには、あの戦闘員達やジェネラルは『ハリヤー』と呼ばれる別世界からの侵略者の尖兵ということだった。\n (というかこのマスコットと同じ世界出身のテロリストみたいなものらしい)\n\n ハリヤーは様々な侵略兵器や強大な力をもつ怪人によってこの世界を侵略しようとしているが、この世界の自浄作用が別世界からの侵入を許さない結界のような力となっている。\n\n そこで結界の力の結晶であるクリスタルを狙って、結界を潜り抜けられる一部の工作員を送り込んでクリスタルを奪い取ろうとしているらしい。\n それを阻むべく魔法少女ーー小動物曰く『世界の防衛機構に適合した者』ーーが日夜戦っているということだ。\n\n 案の定通常兵器の類はほとんど効果がないどころか、各種通信機器へのジャミングや欺瞞まで完璧で警察や軍隊は無力。\n 政府にも話は通っており協力は得ているが、出来ることがないから実質傍観に近いようだ。\n\n「キミにこの話をしたのは、これらの事態に一般人が関わらないで欲しいからだ。\n 人質に取られる可能性もあるし、SNSとかで発信されてパニックを引き起こされても困るからね。\n 今日のことは胸に秘めておいて欲しい」\n\n それはこちらを慮っての言葉でもあり、脅迫でもあるのだろう。\n 政府に話が通っていると話したあたり、面倒を起こしたら…… という含みがあることぐらいはわかる。\n\n「わかったよ、命の恩人に迷惑をかけるつもりもない。\n なにより、あんなおっかない物に二度と関わりたくないしな」\n\n まあ、関わりたくないというのは心底本音の言葉だ。\n\n 正直、何も言われなくても同じ選択をしただろう。\n さっきまで記憶が残らないのは残念とか考えていたくせにどうかとは思うが、あんなおっかない怪人やらになんて関わりたくない。\n\n「そうか、キミがまともな人で良かったよ。\n と、どうやらクリスタルの解放準備ができたようだね」\n\n この口振りからして、やっぱりSNSとかに上げたがるやつはいるんだろうな……\n そんなことを考えていると、優しい光が俺の頬を照らした。\n\n\n その光景は美しかった。\n\n 宙に浮かぶクリスタルが淡く光り、光を受けた二人の少女が祈るように目を瞑りながら手をかざす。\n\n エミリアの金糸の髪はまるで太陽のように輝き、ツインテールが横顔をくすぐっている。\n カナデの白い衣装は銀に淡く光り、月の光の様に静寂に佇んでいた。\n\n 可憐だった。\n 俺は惚けた様に二人のその横顔を眺めていた。\n\n クリスタルがゆっくりと輪郭を失い、光が収まるその時までただ、その美しい少女を見つめていた。\n\n ========================\n\n「あれから三ヶ月か……」\n\n あの時と同じビルのモニタールームで、スマホをいじりながら俺はひとりごちていた。\n\n あんなことがあっても俺の日常は変わらない。\n 見るともなくモニターを眺めながらスマホを弄るだけの夜番をしてちょいとばかり給料に色をつける。\n\n あの小動物曰く一度クリスタルが現れた場所にはしばらくクリスタルが発生しないそうだから、もうここに黒タイツの戦闘員が現れることも、太陽の様に輝くツインテールと大鎌を持った可憐な魔法少女が現れることもないだろう。\n\n「結局、最後までおじさん呼びされたまんまだったな……」\n\n 下らない独り言を呟きながらスマホでネットサーフィンを続ける。\n\n あれから俺の生活で変わった数少ないことの一つ、ソシャゲが減った代わりにネットサーフィンをすることが増えた。\n 検索するのは魔法少女について。\n\n もちろん彼女達のことなんて出てくるはずはない。\n アニメやゲーム、それからアダルトなコンテンツが引っかかるだけだ。\n\n 思わず苦笑いが溢れてしまう、アイドルに憧れる中高生かさもなくば恋する青少年のようだ。\n\n\n そして、そのサイトを見つけたのは全くの偶然だった。\n\n「魔法少女凌辱投稿動画? 何の捻りもねえサイト名だな。\n うわっ、サムネイルさえロクにねえ。\n 素人の個人サイトにしてもレベル低いなオイ……\n 広告も無いのはいいけどよ……」\n\n あまりに稚拙な作りに、即座にブラウザバックしなかったのは偶々としか言いようがない。\n\n 投稿日が最新のーー白い何かがアップになり過ぎて何が映っているかさえよくわからないサムネイルをタップすると、白い何かが前後に揺れ始める。\n\n よく見れば白い何かは女性の尻のようだ。\n 瓦礫塗れの廃墟のような場所で、後ろからガンガン男が犯している…… らしい。\n\n 結合部をアップにしすぎていて構図がよくわからないのだ。\n アダルトサイトであるという認識がなければ、これが女性の尻だとはすぐには気づけなかったかもしれない。\n\n ついでに言えば音声も小さすぎて全く何も聞こえないし、手ブレもひどい……\n\n だが、こんなの無料のアダルトサイトでは珍しいことでもない。\n 特に凌辱物なんかだと、既存の和姦AVをわざと見づらいように編集して凌辱ハメ撮り動画と称することだってある。\n\n 要するにいつものハズレだろう。\n\n まあ、魔法少女物のAVなんざ大抵ハズレだ。\n 少女どころか熟女の領域に突っ込んだ女優のしなびた尻が出てくることだって珍しくない。\n\n そういう意味ではこの動画はマシだ、画面に映る尻はシミ一つなく、透き通るように白い。\n\n メイクだろうが、痛々しい痣や赤く腫れた部分までもが劣情をそそる。\n 男の腰や指からしてサイズはかなり小さく肉付きも薄いようだが『少女』をうたうのであればそれはプラスだろう。\n\n\n 白い尻が揺れるのと同じペースで画面が揺れる。\n\n\n カメラを持っているのは腰を振っている男なのだろう、酷い手ブレで安定しない画面に、一瞬、大鎌が映った。\n\n\n「……は?」\n\n 理解できない、そんなはずはない、見間違えだ。\n ーー見間違えるはずがないーー\n\n 震える手で音量を上げる。\n ギィギィという不愉快な笑い声が囃し立てるように響く、肉と肉を打ち付ける湿った音が鳴る。\n\n ーー違う、何かの間違えだ\n\n 画面の中で、横から伸びてきた手がカメラを受け取る。\n\n カメラが引いて全貌が浮かびだす。\n\n ーーやめろ、見たくない\n\n 全身黒タイツのーー戦闘員が少女の尻を抱え込んで腰を振っている。\n\n 地面には赤と黒のワンピースドレスの残骸が踏みにじられ、打ち捨てられている。\n\n 白く細い腕は折れそうな程に捻りあげられてビクともしない。\n 少女の顔は別の戦闘員に地面にこすりつけられ、汚されている。\n ただ金髪のツインテールが白濁に汚れながらも輝いていた。\n\n ーーカメラが寄る。地面にこすりつけられた頭へと。\n\n 頭を押さえつけていた戦闘員がカメラに気が付く。\n 地面に広がったツインテールに手を伸ばす、手綱の様に顔を引き上げるために。\n\n\n ーー今なら、今ここで動画を止めれば、確認しなければ、90%の疑念であってもその顔さえ見なければ、これは単なる偶然の一致で本物ではないだなんて欺瞞に浸っていられるのではなんてーー\n\n それでも、俺の指は動かなくて、少女の顔が、カメラに映されて。\n\n\n 魔法少女エミリアが、犯されていた。\n\n\n ========================\n\n「う、あ、ああっ、うあああっ!!」\n\n おなかが痛い、内臓がぐちゃぐちゃと音をたててこねくり回されている、股間が焼けるように痛む、身体から流れているのは血液か白濁かもうわからない。\n\n 嫌だ、汚い、なんでこんな、あの時ああすれば、よくもこんな、殺してやる、誰か助けて、もうやめて、違う許さない\n 頭の中までぐちゃぐちゃで、まるで考えがまとまらない。\n\n「あ、うあ、あが、があっ」\n\n 膣を抉る肉棒が何度も何度も身体の奥までたたきつけられる。\n 腰を押さえられてお腹の内側からズタズタにされているようだ。\n 未成熟な身体にねじ込まれている肉棒は大きすぎて、一突きごとに肉をえぐり取られているとしか思えない。\n\n 頭の上で耳障りな笑い声がする。\n\n 敗北した魔法少女を嘲り、凌辱し、貶める喜びに満ちた声。\n 歯を食いしばりゲス達をにらみつければ、次の瞬間には頭を地面に叩きつけられ足で踏みにじられる。\n\n その無様さに興奮したのか、アタシを犯す戦闘員は更に激しく腰を振り出した。\n 骨がギシギシと軋みをあげて全身が悲鳴をあげ、なおそれに勝る陵辱の不快感が頭を占める。\n\n「やめ、な、さい、よぉ……」\n\n 意識して言ったわけじゃない、だって喜ばせるだけだとわかっているから。\n\n それでも口から言葉は零れ落ち、もう枯れたと思っていた涙が頬を濡らす。\n 当然こいつらがやめるはずもなく、狂ったように強く膣を抉られ、何度も何度も奥まで殴り付けられる。\n\n 唐突に抽送が止まり、グイと腰が密着する。\n 既に幾度となく受けた汚辱、慣れるはずもない絶望を予感した次の瞬間、精液が胎の中にぶち撒けられる。\n\n「うっ…… ぐっ…… ひっく……」\n\n にらみつけながらも涙が堪えられない。\n 何度も、何度も犯されて中に出されて汚されている。\n\n 殺されるかもしれないという恐怖など既にこの汚辱に薄れている。\n 妊娠の恐怖さえ今は考える余裕がない。\n\n(はやく、助けにきてよ、カナデ…… ミオ…… )\n\n それでも、仲間が救出してくれる可能性を考えれば希望はある。\n 耐え難い凌辱であっても耐えられる。\n\n 心を強く持て、屈辱を受け入れるな、つらくとも誇り高くあれと自分に言い聞かせる。\n 心が折れたら終わりだ。\n\n ーー魔法少女の変身は心が折れていなければ魔力が尽きてなお解除されることはないーー変身が維持できてさえいれば多少なりとも身体強化や生命維持、回復の恩恵を受けることができる。\n\n 反撃を期すならば決して変身だけは維持し続けなければならない。\n\n なにより、今ここで変身を解くということはこれ以上なくアタシが『負けた』ことになるから、それだけは守り抜かなければいけないのだ。\n\n だから、髪を引かれて引き上げられた顔に、さっきまでアタシの中を抉り続けていた汚い肉棒が押し付けられたならばこちらのすることなんて決まっている。\n\n 全力の殺意を込めて目の前の肉棒に文字通り牙を向ける。\n 吸血鬼タイプのアタシの牙は薄く鋭く、ほとんど魔力が尽きた状態であろうとも戦闘員の肉体程度は容易く食いちぎることができるはずだ。\n\n(ふざけんな! こいつら、せめて、一人ぐらい……!)\n\n「ぎ、いたああああ!!!!」\n\n 怒りを込めて噛みつこうとしたその瞬間、頭部に引きちぎられたような痛みが走り、頭が強制的に後ろに引かれる。\n 一瞬遅れて、ツインテールを後ろから引っ張られて噛みつきを阻止されたのだと理解する。\n\n「う、ぐううう…… は、離しなさいよ……」\n\n 四つん這いのまま、ツインテールを後ろに引かれて顔だけが上を向いている。\n 視界に映るのは戦闘員のニヤニヤとした笑いだけ。\n\n アタシの後ろに陣取ったそいつは、大きすぎる肉棒を私のズタズタにされた膣へとねじ込み始める。\n\n「ぐ、あああ…… やめ、ろぉ……」\n\n 身体が中から押し上げられる不快感に支配されていく。\n 痛い、気持ち悪い、苦しい、汚い、悲しい、辛い。暗い感情だけがふつふつとあふれ続ける。\n\n 反撃のチャンスを逃した直後にそのまま犯された事実は、無力感となって胸を抉る。\n\n「ち、くしょう…… ちく、しょう……」\n\n せめて、せめて悔しいという気持ちで無力感を塗りつぶそうとあえて汚い言葉を使う。\n そして顔をあげて前を向き、コイツらをにらみつけてやろうとした時--\n\n\n 顔面で、痛みが爆発した。\n\n\n「がうっ!!!?? ご、あ……?」\n\n 顔が熱い、鼻がしびれて感覚がぼやけている、上唇が何かで濡れている。\n 視界に映るのは振り切られた戦闘員の足先。\n\n ああ、顔面を蹴りつけられたんだと理解した次の瞬間、痛覚が追いついた。\n\n「ひ、ギァ!? い、ううう、うううううッ!!」\n\n 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。\n\n 顔の皮膚いっぱいに針が刺さっているみたいだ、鼻がずっと熱くてじんじんと顔の奥まで熱が伝わって涙が止まらない。\n\n 魔法少女として戦う中で殴られたことは何度もある。\n でも、顔面を思いっきり蹴りつけられたことも、魔力による感覚制御もなしに殴られたこともはじめてで--\n つまりアタシは、本当に殴られたことなんて、今までなかったんだ。\n\n アタシの顔面を蹴りつけた戦闘員ーーあと少しで汚い物を噛み切ってやれた奴だーーがギィギィと何か騒いでいる。\n 周りを囲んでいる戦闘員と何か言い争っているのだろうか。\n\n だが、それを理解する暇はない。\n 『こっちを忘れるな』と言わんばかりに後ろから肉棒で膣を抉られ、髪を手綱の様に引かれる。\n\n「ひ、ぎいう……」\n\n アタシの痛みなんて配慮されるはずもない、むしろより激しく腰を叩きつけられ、首が痛いぐらいに髪を引かれる。\n 苦しみに声が漏れたとき、目の前の戦闘員がまた足を振り上げたのが見えた。\n\n「い、ぎいいいいいいいいーーーー!!!!!」\n\n また、顔面を蹴りつけられた。\n\n 咄嗟に食いしばった歯の上から口元に爪先が叩きつけられる。\n 痛みが顎まで突き抜けて骨が痺れる。\n 唇が切れた熱さにも似た痛みが口元を覆い尽くす。\n\n「ご、ぶぶぅっ、う、あ……」\n\n 口の中は既に傷だらけで、鉄臭さが舌を刺す。\n たまらず吐き出した血が地面を濡らし、周囲の戦闘員は更に盛り上がっていく。\n\n 横から次々と手が伸びてきてアタシの身体を押さえつけていく。\n 必死の抵抗は身をよじるだけで終わった。\n\n 四つん這いで手足を踏みつけられて地面に縫い止められた上、顔をガッチリと押さえられて前を向かされる。\n\n 背中も腹も押さえられ、身体をよじることも許されない。\n 手慰みとばかりに胸を弄くり回されて乳首を捻り上げられる。\n\n 挿入していた戦闘員はフリーになった手で腰をガッチリと抱え込み、更に激しくアタシを犯し続ける。\n\n\n そして目の前に立つ戦闘員が、三本の指を立てて見せる。\n アタシにも、その意図はわかった。\n\n\n --1本目の指が折れる、残り2本\n\n 腕に満身の力を込める。\n ビクともしないのはわかっていたはずなのに、逃げられないことを思い知らされて胸に暗い絶望が広がる。\n\n 周囲の戦闘員がカウントダウンのように声を上げる。\n\n\n --2本目の指が畳まれた。残り1本。\n\n 顔を振ることも許されない、視線さえ逸らすことができない。\n ゆっくりと戦闘員が足を振り上げる様をじっくりと見せつけられる。\n\n 周囲の戦闘員は更にボルテージを上げていく。\n 全員がアタシの顔面がサッカーボールのように蹴り飛ばされて痛みに泣き叫び、苦しみ悶えて砕け散るのを心待ちにしている。\n\n 目を瞑って歯を食いしばったのは理性的な防御姿勢でも何でもない、単にアタシが予告された苦しみを突きつけられる恐怖に耐えられなかっただけ。\n\n\n ーー最後の指が折られたのは、右眼が爆発するような衝撃で知らされた。\n\n\n「いぎいいいィィィ!!!?」\n\n 視界の半分が赤く染まる、脳が痺れてぼやけている。\n 耳に突き刺さる自分の悲鳴がどこか遠い。\n 目から流れ出す熱い雫が涙なのか血液なのか判断が付かない。\n\n ゲラゲラと戦闘員が笑う、もっと苦しめ、もっと泣き叫べ、俺たちをもっと愉しませろーー\n\n「あ、ああ、あああーー」\n\n 痛い、苦しい、ツラいーー悔しい、堪えることができない、口が勝手に苦痛を垂れ流す。\n\n こいつらを喜ばせるだけだとわかっているのに我慢することもできない、アタシはこいつらを喜ばせたくなんてないのに、アタシの身体も、苦痛も悲しみも全部好き勝手に使われて、アタシの意思も尊厳も全部踏みにじられている。\n\n アタシを犯す肉棒の速度が上がる、腰を掴む指が乱暴に肌を抉る。\n 性急に何度も奥を小突かれる動き、射精がもうすぐだという動き。\n アタシを汚す為にアタシを使われる時の、覚えたくもなかった感覚。\n\n「う、ぐあ、ひゃめ……」\n\n 拒否を訴えるだけでも切れた口が痛む、右目は痛みさえ麻痺して頭の半分が麻痺したみたいだ。\n\n 何度も犯されて、顔をボコボコにされて、それでも慣れるはずなんてなくて汚されたくなくて、アタシの体には大きすぎる肉棒を奥に押し付けられて思いっきり精液を流し込まれたら、情けなく声をあげてしまう。\n\n\n 目の前で足が振り上げられたことにも気づかずに。\n\n マヌケにも声を出してしまったのだ。\n\n\n「あ、ああ、だす、なぁ…… ご!!? ぱ、ああ!? ああぁぁぁぁ!! 」\n\n 口元でバキッと嫌な音がした。\n 舌に血と土の味、顎に激痛、遅れて前歯が根こそぎ痛みに置き換わる。\n\n「ああ、う、ふあああ、あーーーー ああああーー」\n\n 口を開けた瞬間に、口の中に蹴りを叩き込まれたのだと、どこか冷静な自分が分析していた。\n\n 呼吸が痛みになって、へし折れた歯を血と一緒に情けない鳴き声と共に口から垂れ流す自分はまるで自分じゃないみたいだ。\n\n ずるりと、膣から肉棒が抜けてアタシを犯していた戦闘員が身体から離れる。\n そしてそいつはアタシの目の前に立つと、肉棒を口に押し付けてきた。\n\n 蹴られる前と同じ構図。\n でもあの時と違って、アタシにはもう噛みつく牙が無くて、傷口を擦りあげながら汚らしい肉塊が私の口内へとねじ込まれていく。\n\n(ああ、アタシの歯を折ったのって、『穴』を、増やすためなんだ……\n なによそれ、アタシ、もう……)\n\n 膣内がギチギチと軋みを上げながら新しい肉棒を受け入れる。\n 口内は傷口を抉られ、股間では膣肉を引きちぎりながら子宮を小突かれる。\n\n 右目はぼんやりと膨れる熱さしか伝えてこない、蹴り飛ばされた鼻は戦闘員に乱暴に腰をたたきつけられて鈍い痛みと鉄の匂いを感じる器官となっている。\n\n「お、ああ、あ、あああーーー ああーーー」\n\n バカみたいだ、自分で自分を笑ってしまう。\n\n でもしょうがないじゃない、もうアタシは単なる肉で、穴で、痛みだけが身体を満たしていて意味のある言葉なんてつむげない。\n\n 文字通りへし折れた牙の傷跡を肉棒で抉られ、流れる血液を潤滑油代わりにめちゃくちゃに口を使われる。\n 膣を抉られながら尻を平手で酷く叩かれ、骨まで響く痛みが頭に突き抜ける。\n\n 乳首がちぎれそうなほどに捻りあげられているのも、右目から流れる血が止まらないのも、鼻がへし折れてるのももう全部どうでもいい。\n\n(死んだら、変身、解けちゃうのかなーー)\n\n ぼんやりと浮かんだ思考は、上下から注ぎ込まれた濁流に押し流された。\n 胎の中に注ぎ込まれた不快な熱さと、舌に感じる生臭さだけがはっきりしていて、私の意識が薄れていく。\n\n(もう、アタシーー 死ーー)\n\n ようやく、アタシは意識を失った。\n\n\n ========================\n\n 俺は、エミリアが蹂躙される動画を呆けたように見ていた。\n\n 動画は一週間前に投稿されていて、なにもかも「終わった」ことだと俺の頭でも理解できる。\n\n どうしようもない、俺には関係しようがない。\n 後ろのテレビで大規模な爆発があったという緊急ニュースが流れていても、数日後にこのサイトに大量の動画が投稿されても、やがて大量の死者を伴う事件や暴動が勃発しても。\n\n 俺には、どうしようもないということだけがはっきりとわかっていた。", "afterword": "二話は6日に投稿予定です。三話以降は書きあがり次第投稿いたします。\n\nskebにて@kitouakali さんにエミリアちゃんのイラストをいただきました!"} |
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