| {"novel_id": "n0002gf", "chapter": 2, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002gf/2/", "title": "二話 〜魔法少女エミリアの日常〜 (エロ有り)", "content": " はっ、はっ、と規則正しい呼吸が朝の空気を揺らす。天気は快晴、気温も高い絶好のランニング日和だ。学校までの道をトレーニングとして走って行く学生は決して珍しいものではなかったが、二人並んで走る彼女達は少し事情が違った。\n\n まず美しかった。一人は日本人離れした白い肌と、まるで人形の様な愛らしい顔立ちをしている少女。人によっては怒っている様な印象を与えるであろうツリ目も、その美貌と栗色のツインテールが飾れば意志の強さを感じさせた上で愛らしさを引き立てる美点へと変わる。\n 隣で走る少女もまた異なる美しさを持っていた。先の少女が年齢不相応に背が低いのとは対照的に、彼女は14歳の少女としては非常に高い170センチ近い長身である。それも手足はやや筋肉質ながらもスラリと長く、地を蹴る動きの一つ一つから運動能力の高さと均整の取れた肉体美を感じさせる。短目のポニーテールを揺らす顔に目をやればキリと通った鼻筋に鋭い輪郭、凛々しさを感じさせる中性的な美貌は男女を問わず目を奪われるだろう。\n\n タイプの異なる美少女が一つ息を吐く度に、ツインテールの先が踊り、リズム良く足が地面を叩く。キュッと締まったヒップの筋肉が躍動すると共にポニーテールが首元で跳ね、僅かに汗ばんだ頬が朝日を弾く。\n 人によっては見られるだけでも「ありがたい」と言うような光景かもしれないそれは、ここ数ヶ月毎日のようにこの通りで見られる彼女達の登校風景であり、そして彼女達以外は誰も知らないがこれは紛れもなく「魔法少女のトレーニング」だった。\n\n「ほら、エミリア、ペースが落ちてるぞ。授業の前にシャワーを浴びる時間が無くなってもいいのか?」\n 長身の少女が揶揄う様に声をかける。実際は口程余裕があるわけではないが、こうするのが一番『効く』ということを彼女は良く知っていた。\n「はっ、はっ…… 冗談じゃ、無いわよ……! 汗だくで授業も、この程度で、へばるのも、あり得ないわ、よ!!」\n 言葉と同時にグイッと脚に力が篭る。レディとして汗臭い身体で教室に行くなんてあり得ないという美意識、どんな物でもやるからにはちゃんとやるという生来の生真面目さ、それに負けん気を乗せて体力を絞り出す。\n\n「カナデこそ、キツいんじゃ、ないの? アンタ、手足の重り、変えた、でしょ」\n「目敏いな、流石に。だが、鷹森道場の剣士はヤワじゃないんでな」\n 言葉と同時に少しペースが上がる。数ヶ月前から鍛え始めたばかりの上、身長の低いツインテールの少女ーーエミリアと、幼い頃から剣士に憧れて祖父の家でもある道場で鍛えていた長身の少女ーーカナデでは当然ながら走るペースは違う。とはいえカナデは手足に重りを付けている上にエミリアよりも長い距離を走ってからここにいる。つまりそれはエミリアが生来の負けん気を発揮するには十分すぎるということである。\n\n「あ、エミリアさん、鷹森さんおはよう」「今日も二人とも頑張ってるねー」\n 段々と道に同じ学園の生徒達が増え、すれ違いざまに挨拶を交わす。呼吸の間におはようとだけ返しながら二人は目で会話する。\n\n ーーそろそろ裏門、スタートはいつもの角を曲がってからだ\n ーーOK、今日こそ吠え面かかしてあげるわ\n 角を曲がって学校の正門へ向かう道を外れる。この先の裏門からも校舎へは入れるが、遠回りになるため使う生徒は少なく、つまり、思いっきり走れるぐらいには道が空いている。\n\n まず飛び出したのはエミリアだった。身長こそ低いものの、小学生の頃はテニススクールに通っていたこともあって運動神経は飛びぬけている。軽い体を飛ばす様に、裏門に向かって全力疾走を開始する。\n その後を追うカナデは急な加速はしない。ただ一歩一歩が前へ前へと進む大きなストロークへと変わって行く。長い手足を大きく振りながら、上半身はブレないように重心を低く保ったままぐんぐんと距離を詰めて行く。\n 裏門までの距離が縮まっていく。カナデがエミリアに並び、エミリアが必死で追いつかれまいと脚に力を込める。カナデが強く地面を蹴り付けて体を運ぶ、長い脚と鍛えられた筋肉がその機能を十全に発揮する。\n\n 結局、今日も裏門というゴールテープを切ったのはカナデの方だった。\n\n「ぜー、はぁー…… ああ、もう、また、負けたぁ!! あーー!!」\n 息も絶え絶えになりながらもエミリアは全身で悔しさを叫ぶ。\n「いや、今日は、危なかった、ぞ。ふう…… 早く、なったなエミリア。はじめとは、比べ物にならない……」\n「はぁー…… なによ、余裕ぶっちゃって。明日こそ吠え面かかしてあげるんだから……」\n 実際のところ、二人の身体能力には大きな差がある。圧倒的な身長差、トレーニングの期間、はっきり言ってエミリアがカナデに競走で勝てる要素はほとんど無いし、それはエミリアだって正しく理解している。\n\n(その上で本気で悔しがれるのも、腐らず毎日トレーニングをできるのも、本当に、エミリアはすごいと思うよ)\n 口に出せばきっと顔を真っ赤にして否定にかかるだろうが、この何事にも全力でひたむきな友人は本気で尊敬に値する。まあ、照れ臭すぎて言うつもりはないが。\n\n「さて、シャワーを浴びに行くか。まだ時間に余裕はあるけど、かなり汗をかいてしまったしな」\n「そうね、もうベタベタ。汗を流して着替えないと授業なんて受けてられないわ…… というか、ジャージで授業受けるなんて嫌だし」\n「別にジャージは良くないか? 動きやすいじゃないか」\n「あんた…… 一回しっかりと話す必要があるわね本当に……」\n\n ====================\n\n 私立陵北学園は端的に言って裕福な学校だ。通っている学生達も裕福な家がほとんどで、高い学費の代わりに充実した教育体制と、整った設備の恩恵を受けられる。この女子更衣室とシャワー室もその一つで、冬でも困らない冷暖房完備の建物を使用者が少ない朝であっても使うことができる。ランニングの後はここで汗を流すのが二人の日課だ。そして、その場に二人以外がいないとなれば自然と話は二人だけの秘密に収束する。\n\n ーー二人だけの秘密、それはこの二人が『魔法少女』であり、異世界からの侵略者と日夜戦っているという事実だ。\n\n「昨晩の怪人、初めて見るやつだったわね。オークみたいなやつ」\n「ああ、しかもここ一週間ばかり、しつこいくらいに何度も出ていたジェネラルやティガールがきていない。二か月前のビルの時から、やけにクリスタルのサイズも大きくなっているし…… 何か大きな動きがあるかもしれない」\n カナデが魔法少女になってからすでに5ヶ月、エミリアは4ヶ月の時が経っている。だが、ここ2ヶ月とそれ以前では明らかにクリスタルのサイズが大きくなってきている上に、昨日などは喋らない怪人のような妙な敵まで出てきた。\n\n「二か月前のビル…… ああ、あのおじさんが巻き込まれちゃったやつね。確かにアレから怪人の出現頻度も上がってるみたいだし、ミックも調べてみるとか言ってたわね……」\n「ミック……? ああ、マスコットのリス型39号のことか……\n まあ、異世界のことはアイツに聞くのが一番か、あとで聞いてみよう。隣のクラスでも魔法少女とマスコットのテレパシーを使えば三人で会話はできるだろう」\n「そうしましょうか。授業中におしゃべりなんてあんまり良くないんだけど……」\n\n 会話しながらもシャワーで念入りに汗を流していく。エミリアの白く透き通るような肌が水滴を弾き輝く。\n まだ幼さを強く感じる顔立ちとは裏腹に手足は長く伸び、異国の血を感じさせる美しいプロポーションを形作っている。全体としての肉付きは薄いが、薄らと筋肉が乗っておりしなやかで整ったラインは、伸びやかな少女の美しさの中に女性らしい柔らかさを確かに感じさせる。\n 本人は胸や尻の肉が薄いことを気にしているが、同じ女性であるカナデとしてはエミリアの乳房は小さくも確かな膨らみとツンと張った綺麗なピンク色の乳首が可愛らしさと女性らしさを充分に感じさせるし、臀部もスポーツをしていた者特有の薄らと筋肉が乗った美しいラインを描いている。\n\n「……? なによカナデ、アタシに何かついてる?」\n「ああいや、すまん。いやなに、エミリアは美人だなと思ってな」\n エミリアは一瞬惚けてから、赤い顔や青い顔をしだす。この友人の百面相はいつものことだしとりあえずはと思い、先程の感想を細かく口に出すと顔色の変わる速度が更に上がった後、心底から呆れた顔で落ち着いて深々とため息をつかれた。\n\n「あのね、カナデ…… アンタ片っ端からそういうこと言ってるでしょ」\n「? いや、本当に美人だと思った相手にしかこんなこと言わないぞ? エミリアが美人だからだな……」\n「うん、アタシはもう一年以上の付き合いだからホントに感想言ってるだけってわかるけど、それ他の女の子にやるのやめなさい、口説いてるとしか思えないから。そんなだから女子にガチ告白されるのよアンタ……」\n「む…… そういうものか。注意しよう」\n\n どうだかと言いながら唇を尖らせるエミリアはどうにもまだ言い足りないようだが、流石にそろそろ時間がないことはわかっている。\n「じゃ、後でな。放課後はいつも通りウチの道場でトレーニングだな?」\n「それから宿題と予習復習ね。アンタもちゃんとやりなさいよ? テストそろそろなんだから。一夜漬けするよりも毎日ちょっとづつやる方が……」\n ……さっさと身体を拭いた方が良さそうだ。平均点ギリギリを浮き沈みしているカナデは、尊敬すべき学年主席の真面目さから逃げるようにバスタオルを手に取った。\n\n ====================\n\n「おはよー」「おはようエミリア」「今朝もランニング? 精が出るねー」「カナデさんとラブラブだねー」\n「ん、おはよう。継続しないと意味ないしね。あとアホなこと言ったやつ出てきなさい」\n エミリアのクラス、2-C組は今朝も騒がしい。小等部から繰り上がった生徒が多いクラスのため、全員が長い付き合いで気心がしれている。それはつまり遠慮がないということだ。\n\n クラスの端で本を読んでいるような大人しい生徒でさえ、クラスメートが来ればおはようとぐらい言うし時には冗談も飛ばす。そんな気兼ねないクラスがエミリアは大好きだ。ただーー\n\n「そうだよねえ、カナデさんとラブラブなんて言われたら困るよねぇ」\n「……ヒトミ、なによそのニヤニヤ笑いは」\n「んー、別にー? あたしは友達の行先を応援するよってだけでー」\n「そのニヤケ面で言う言葉じゃーー」\n「みんな、おはよーう!!」\n\n 教室に快活な声が響き渡る。ドアを開いたのは朝からジャージ姿で小脇にバスケットボールを抱えた少年だ。長身と小麦色の肌、筋肉質な体はともすれば威圧感を与えそうなものだが、短髪の下の人懐っこく無邪気な笑顔はそんな印象をまるで与えない。クラスメートが口々に挨拶を返していく中、エミリアは無言で頭をフル回転させていた\n\n(おはようーーいや、ダメよもっと何か気の利いた。今日もかっこいいわねーー言えるか!! 朝練お疲れ様ーーこれだけじゃ弱いわ、もうちょっと。スポーツドリンクいるーーダメよ! アタシの水筒だと間接キスになっちゃうじゃない!そういうのはもっと段階を踏んでからーー)\n\n「お、エミリアおはよう!」\n「お、おはようケンジ。何よ、今日も朝からバスケ?」\n(あああああ!! 違うでしょそうじゃないでしょアタシ!!)\n\n 背後から感じるヒトミの呆れるような視線が痛い。そう、エミリアはこの少年ーーケンジに惚れている。だが、どうにも本人を前にすると素直に言葉が出せないでこんな感じになってしまう、しかしーー\n\n「そうそう、エミリアの言う『継続は力なり』ってやつだな! 今度の試合も近いし!」\n「ふ、ふーん。まあ、良い心がけよね、努力してるっていうのは、うん、か、かっこいーー悪くないことよね、うん」\n「おう、ありがとな! あ、そういえばエミリアも今朝ランニングしてたろ? 毎朝お疲れ様!」\n「!? み、見てたの!? 何処で!?」\n「裏門の辺り、バスケットコートから見えるんだよ。最初より早くなったよな!」\n「ちょ、あ、あの全力で走ってる、とこーー」\n\n つまりは歯を食いしばり、なりふり構わず走っているところだ。変な顔を見られたのではーーそう思い絶句するエミリアにかけられた言葉は\n\n「エミリア、すごいかっこよかったぜ! マジに走っててさ! もうちょっとでカナデさんにも勝てそうだよな!」\n「え、あ、な、なによ! 褒めてもなにも出ないわよ! アタシが綺麗なんてそんなこといきなり!」\n\n かっこよかった、見た目がよかった、綺麗だったーー色ボケした脳みそが叩き出す三段活用を理解できたのは、当人以外では呆れ顔のヒトミだけだろう。だが、ケンジは細かいことを気にしない男で、そして不用意な男だった。\n「うん? エミリアはいつも綺麗だけど?」\n「!!!? あ、えと、あ……… そ、そうよね! そうよね!! あ、えと、あの、ケンジも、悪くないと、思うわわゆ!?」\n\n ありがとうと無邪気に笑顔を返すケンジと爆発寸前まで顔を赤くしたエミリア、そして心底呆れた顔のヒトミを始めとするクラスメート達…… 2-C組のいつもの朝だった。\n\n ====================\n\n『昨日のあのオークは、怪人じゃないんだよ』\n 頭に直接響くのはミック--魔法少女のマスコット的存在、魔法少女機構適合者総合補助端末リス型39号の声だ。彼等の機能の一つ、魔法少女とのテレパシー通信機能でエミリアとカナデは授業を受けながら朝に浮かんだ疑問を聞き出していた。\n\n『怪人じゃない? だがアイツは戦闘員とは違う容姿だし、力も中級戦闘員よりも強かったぞ。まだ遭遇していないが、上級戦闘員も見た目は同じなんだろう?』\n カナデの問いにエミリアも同意する、基本的に敵は怪人と戦闘員、それは魔法少女の共通認識だ。\n\n『いや、アレは分類としては中級戦闘員だね。かなり特殊だがカスタム体--情報の総容量はそのままに、割り振りと形質を変化させているんだ。以前にもスピードがないけどパワーがある戦闘員とか、体が細いけど腕が4本ある戦闘員はいただろう?』\n 確かにそういうものはいた、しかしそれらに比べてもかなり手ごわかったような気がする。\n 戦闘員ならろくに動きもできないエミリアの突進に対して、受け止めるような動きをしてきたオークまでいたのだ。無論真っ二つに切り裂いてやったが、明らかに戦闘員よりも強く感じる。\n\n『分析は途中だけど、恐らくは他の怪人をモデルにして作っているんだろう。中級戦闘員と比較して、スピードを犠牲に打撃耐性が底上げされているようだけど。スペック以上に脅威なのは多少なりとも戦闘スキルを身に着けていることだね、たぶん元になった怪人の物を劣化コピーしているんだろう。\n ただ、製造コストは通常より高いはずだから現状では大量投入は難しいだろうし、怪人のように仮想体じゃなくて実体だから倒せばその個体はそこまでだ』\n\n『ふーん、それは嬉しいわね。ジェネラルなんかもういい加減顔を見飽きてきたわ。いっそ仮想体なんかじゃなくて実体で来てくればさっぱり倒せるのに……』\n『油断はよくないぞエミリア。ミックに聞いたろう、アイツら怪人は異世界からの侵食率が低い間は本来の情報量では結界を抜けられないからあの仮想体を使っているのであって、本体はもっと強いのだと。それに、怪人が実体で来れるということは--』\n『侵食率が70%を超えているってこと、でしょ? わかってるわよ、せっかく20%まで減ったんだもの。このままさっさと0%にしたいのにそんなところまで押し上げられたらたまったもんじゃないわ』\n クリスタルーーこの世界を守る力がハリヤーの存在によって、結晶となって引きずり出されてしまった物。\n ハリヤーにこれを奪われれば浸食率が上がり、逆にこちらで確保して解放すれば浸食率は下がる。もっとも、ハリヤーがクリスタルを転送するのも、こちらが解放を行うのも20分程度かかるため、事実上相手を倒してからということになるのだが。\n\n『やる気が豊富なのはボクとしてもありがたいね。この世界に来ているハリヤーは装備こそ古いけれどもかなりの規模だし、僕ら世界間調停機構としても対処優先度は上から数えた方が早いくらいなんだ』\n『最優先ではない、と言われてる気がするがな。まあいいさ、ハリヤーを追い出したらボーナスも貰えるという話だしな。任期終了までなんて言わずにきっちり片付けてやるとも』\n『それ、あと二、三ヶ月しかないけどね…… ああでも再契約は可能なんだっけ。普通の契約時よりも叶えられる奇跡の規模は下がるって言ってたけど』\n『そうだね、再契約というか契約の延長は可能だけど、魔法少女機構の都合上、こちらが提示できる報酬はどうしてもね。それに侵食率が0%になってハリヤーを追い出せた時のボーナスは、引退後の魔法少女にも多少は提供をーーと、すまない、救援信号だ。君たちが一番近い、行ってもらえるかい?」\n\n『無論だ。エミリアはどうする?』\n『はあ、もうちょっとで昼休みってのはタイミングが良いのか悪いのか…… 行くわよ。ミック、学校に認識阻害と変換お願いね』\n『了解、もうその場で変身しても問題ないように認識マスキングをかけたよ。このままナビゲーションを行う、二人とも、頼むよ』\n\n おもむろに席を立つーー普通なら教師が注意するだろうが、もうここは『普通』ではない。\n スッと両腕を水平に開く、制服が光となってほつれ、身体を覆う。光の粒子がそのままドレスのようなワンピースへと形を整え、黒を基調に赤の入ったゴシック調のコスチュームを形成する。\n\n 栗色のツインテールは弾けるように揺れ、一瞬で輝く金色へと変わる。\n 口元には一対の牙が生え、白く美しくもどこか妖しい美しさを表す。\n 背中には大きな悪魔のような翼が煙のように現れ、大きく一つ羽搏く。\n 最後に手元に現れるのは身の丈ほどの大鎌、日の光を反射して輝く三日月のような刃をくるりと回して優雅に担ぐ。\n\n 魔法少女・エミリアが飛び立つ。\n 目指すは南、助けを求める少女の元へと。\n\n ====================\n\n しくじった--\n 自らを囲む大量の戦闘員を見ながら、わたし--魔法少女エリコは、状況のマズさを再確認する。\n 囲んでいる敵の数が多い、下級戦闘員だけならまだしも中級戦闘員も混ざっている。そしてなにより、二足歩行の豚のような怪人のような--有り体にいって、オークがいる。アイツがマズい。\n\n 青いショートカットから汗が滴り落ちる。通気性と運動性の高いノースリーブのタクティカルベスト状のコスチュームさえ、Fカップのバストにべたべたと張り付いて不快感を覚える。動きやすくスリットの入った黒のショートパンツにはイヤらしい視線が向けられている。\n そのムチムチと肉のついた太腿も、ベストを押し上げるバカでかい乳もしゃぶり尽くしてやる、ショートパンツの下の尻を鷲掴みにして、胎の中に精液をぶちまけてやる--そんな欲望に満ちた視線が向けられているのを、魔法少女として鋭敏化した感覚がまざまざと感じ取る。\n\n「サイッアク……! どいつもこいつも……!」\n 不本意ながら、自分の大きな乳房が日頃から男性にそういう目で見られることが多いのは自覚している。でも今のは普段のとは違う、実際にやってやるという明確な意思、貶めてやるという悪意、そして--このままではそれが実現してしまう。\n\n「ギギィ!!」\n 背後に回っていた戦闘員が包囲網から飛び出してエリコに飛び掛かる。だが遅い、振り向きもしないで右の裏拳を振るえば戦闘員は紙のように宙を舞い、霧へと帰る。\n これが魔法少女エリコの能力、背後さえ把握する鋭敏な獣の感覚、そして敵を吹き飛ばす剛力。タイプ・猪の特徴だ。\n だが、全てを吹き飛ばせるかといえばそうではない。現にーー正面から突喊してきたオークにカウンター気味に拳を叩き込んだというのに、後退りながらも踏みとどまられてしまう。\n\n(くそっ! なんなのよアイツ……! 私の拳をもらえば中級戦闘員だって一発なのに……! タフさからして怪人……? 力はそう強くないけれども……)\n 幸いなことにパワーはそう強くない、しかし、多勢に無勢でタンク役が敵にいる、となると……\n\n(このままだと囲みを狭められて押し潰される……! いくら雑魚でもあの数に掴まれたら振り解けない……\n そして殴っても吹き飛ばせない敵がいる以上、普通に突撃しても包囲網の突破は不可能……!)\n\n であれば、普通ではない方法で突破するしかない。\n\n 腰を落として右肩を突き出すように半身になる。下がった左足で軽く地面を蹴って足元を確かめる。\n 明らかな突撃体勢に嘲るような笑いが上がる。当然だ、狙いがわかれば対処ができる。\n 真正面にオークを中心に人垣が寄り集まり、突撃を受け止めるべく包囲の厚みを増す。こんな体勢では真正面にしか進むことは不可能、そして多少勢いの乗った突撃であろうとも、厚みを増した人垣であればオークを中心に受け止めることも、無防備な横腹をつくことも可能…… そんなところだろう。\n\n 全くもって正しい、戦闘とは択の読み合いだ。相手の選択に対応できる選択をぶつける、相手が対処できない選択をたたきつける、相手の裏をかいて一方的にこちらの選択をぶつける……\n だから、対処可能な選択を見え見えにするだなんて単なる愚か者、嘲られるのも仕方ない。ただーー\n\n(アンタらが性欲しか頭にないバカで助かったわーー 真正面に突っ込むと疑いもしないんだから!)\n 魔力を開放する、爆発的な加速で人垣に突っ込む、だがオークたちは既に腰を落として受け止める体勢になっていて、衝突する直前、オークの口元がニヤリと歪むのが見えたときーーオークを置き去りに、包囲の真横に突っ込んだ。\n\n --猪の突進は脅威だ。神話においては多くの英雄達の死因ともされ、人々を恐れさせた脅威は何よりその速度と重さーーではない。\n トップスピードを保ったまま直角に近いほど鋭く曲がるその柔軟さこそが人間にとってーー選択の裏をかかれてしまう者にとって最大の脅威なのだ。\n 正面にオークを寄せた以上、横にいるのは戦闘員ばかり。ただでさえ片腕で吹き飛ばされる弱卒だ、来ると分かっていれば横から攻めるなりの対処もできたろうが、これはもはや不意打ちに近い。\n\n ぶちかましを正面から食らった戦闘員は大型車に跳ね飛ばされたようにまとめて吹き飛んでいく、少しズレた位置にいてもかするだけで冗談のように吹き飛んで行く。\n エリコはただ高速で突撃しているわけではない、一歩を踏み出す毎に断続的に魔力を放出、スピードの上乗せと同時に自身の前面と左右に薄い魔力障壁を展開してぶつかる相手を全て弾き飛ばす。大量の魔力を消費するとっておきの必殺技で、戦闘員はもちろん怪人だって吹き飛ばせる。\n\n だから、それは本当に、嘘のような偶然だった。\n\n 吹き飛ばされた戦闘員がドミノ倒しのように倒れたのは必然だった。受け止めるつもりで構えていた正面のオークが慌ててエリコに向かおうとするのも、倒れた戦闘員に足を取られるのも必然。\n ただーー躓いたオークの巨体に乗り上げたオークが、後続の勢いで転びながらも投げ出されたことも、投げ出されたオークの頭がスライディングの様にエリコの足元に滑り込んだことも、それが魔力を再放出する寸前の一番スピードと障壁が手薄なタイミングだったことも、すべて偶然だった。\n\n ただ、そうなってしまえば足元に滑り込んだオークの頭がエリコに踏み砕かれたことと、突然滑り込んだ異物にエリコが体勢を崩して転倒したことは必然で、そうなった魔法少女が戦闘員に押さえ付けられてなぶられるのも必然だった。\n\n ====================\n\n「クッソ! 離せ! この、汚らしい!!」\n 転倒したところにとびかかってきた戦闘員達が私の手足にしがみつき、地面に押さえつけようとしてくる。膝を曲げたいわゆる女の子座りのまま、右に半ば倒れた上半身を完全に地面に引きずり倒そうと両腕に戦闘員が二人づつ、そして後頭部をぐいぐいと下に向かって押し込むオークが一体。伸びた左足には縋りつくように三体もの戦闘員たちがしがみついている。\n\n フリーの右足は自分の体の下に折りたたまれていて、伸ばしたところでこいつらを蹴り飛ばすことはできそうにない。\n ならばと腕に力を込める。二人がかりで押さえられているが、魔力さえ込めれば私の力はそれ以上だ。残りの魔力を左腕に込めて、戦闘員達を持ち上げて吹き飛ばそうとしたその時、視界を黒い物が覆った。\n\n「な、なん、これーーくさ、き、貴様ぁ!!」\n 一瞬の混乱、続いての生暖かさと臭気で理解した。オークが私の後頭部を跨いで太ももで挟み、尻で地面に押し付けてきたのだ。\n 殺す、殺してやる。屈辱に対する激情をそのまま、新たな魔力を身体に通して背筋で跳ね飛ばそうとして、背中を衝撃が貫いた。\n\n「ごはあぁっ!!? あーーか……」\n 背中を蹴り飛ばされたーーのだと思う。突き抜けた衝撃は鮮烈だった。背骨も肋骨も肺も切りつけられたように痛い。当然だ、身体を押さえつけられてどこにも衝撃を逃がせない状態でバイタルエリアに全力の一撃を食らったのだ、ダメージが薄いはずがない。ほんの一瞬全身の力が抜けてしまえば、引き倒されるのはあっという間だった。\n\n 手足を引っ張るように掴まれ、地面にうつぶせで大の字に拘束される。腕を振るおうとすればその瞬間に背中を踏みぬかれる、背を庇おうとすれば後頭部を容赦なく蹴りつけられ、何もしなくても手足を痛めつけられる。\n 肉が傷む、つぶれた血管がぐちぐちと音を立てて皮膚の下でうずくまる。\n 骨が響く、骨の奥にある神経が殴りつけられた衝撃で震えながら痛みを反芻する。\n\n「や、やめ、あ、あっ…… つ……」\n 魔力などとうに尽きた。もはや戦闘員一人はねとばすこともできない。全身が痛みを伴った熱で炙られているようだ、呼吸一つさえ肺が悲鳴を上げ、手足はピクリとも動かないのに絶え間なく痛みだけを主張してくる。\n\n(でも、まだ……! ほかの魔法少女が救援に来てくれているはず……! それまで耐えれば……!)\n 魔法少女がピンチになれば近くの魔法少女にすぐに救援信号が送られる手はずになっている。クリスタルは奪われたが、それをハリヤー達が本拠に転送するには数十分かかる以上、まだ逆転は可能だ。\n だがーー\n\n(クソ! この下衆が……!!)\n エリコが抵抗する力もなくなったと確認した戦闘員がニヤニヤと笑いながらうつぶせの背中に馬乗りになり、無遠慮に胸に手を伸ばす。身じろぎさえできずに、コスチューム越しに手が這い回る、横からぎゅうぎゅうと遠慮なく揉みしだきながら地面と胸の間に指が蠢き、痛いぐらいに力を込めて汚らしい欲望を伝えてくる。\n 無遠慮に胸を弄ぶ戦闘員は、背中の上でゲタゲタと笑い声をあげる。こいつの胸を征服してやったぞとでも言うように、ずっとイヤらしく振り回していた乳肉を今思うままにしているのだと快哉を叫ぶ。\n\n(こんな、汚らしいやつに……! 人を、女性を何だと思って……!)\n 汚辱に歯噛みしたところで何も状況は変わらない。力づくで振り払うことはできず、助けは待つしかない。そしてその助けが来ない以上、自分の身体が性玩具として好き放題に弄ばれるのを俯いて耐えるしかない。\n 胸を取られたなら次はこちらだーーそういわんばかりに、エリコのショートパンツに包まれた尻に手が伸びる。たっぷりと肉の詰まった尻をぎゅうぎゅうに押し込んだショートパンツは戦闘員たちの下卑た欲望を掻き立てるには十分すぎた。我先にと何本もの腕が伸び、めちゃくちゃに肉をこねくり回す。\n\n「やめ、痛っ、やめろぉ!!」\n 叫んだところで意味はない、そんなことはわかっている。だが怒りを燃やすことで、少しでもこの不快感から目をそらせるならばと声を上げる。\n 元よりエリコは男性に対して若干の嫌悪感を持っている。自身の肉体がいつだって無遠慮な視線を向けられ、性的な欲望をたたきつけられて人格を否定されているような、そんな感覚を持っていた。だから、正にそのままに、好き勝手に肉体を弄ばれる不快感は人一倍で、既に耐え難かったのだ。これから真に凌辱されるというのに。\n\n 最初の一瞬は、ショートパンツの裾に冷たい空気が入り込んだと感じただけだった。次の瞬間にぶちぶちと音を立てながらショートパンツが引きちぎられる。\n「いやあああああああ!!! いや! いやああ!」\n 半狂乱で泣き叫ぶ。目尻に浮かぶ涙は、繊維が食い込む痛みではない、これから犯されるのだと本当に理解してしまった恐怖からだ。\n ショートパンツも、その下の可愛らしいピンクの下着も破り捨てられ、戦闘員たちの前にエリコの誰にも見せたことのない女性器が晒される。ぴったりと閉じたそこは陰毛に覆われて、羞恥と恐怖に小さく震えている。\n\n「やだ、見るな、みるなあ…… いや……」\n 涙がボロボロと溢れてくる。怖い、怖い、怖い。男に犯されるのが怖い、男性とそういった関係になったことなんてない、触られるのだって嫌なのに自分の身体を貫かれて蹂躙されるだなんて考えたかもない。歯がガチガチと鳴るのを止めることもできない。\n 怖くて後ろに視線を向けることもできず、でも前を向くこともできなくて、俯いて地面だけを見る。せめて全て何もわからないうちに終わって欲しい…… そう思った瞬間、不意打ちの様に髪を掴んで顔を引き上げられた。\n\n「いたっ!? な、なに、を……」\n 肉棒が、顔の前に突きつけられていた。それは恐ろしく大きく、捻れて醜く、女性の身体を抉り壊す形をしていた。\n\n 豚のペニスはドリルの様になっている、中学生の頃、同じクラスにいた頭の悪い男子が騒いでいたことを思い出す。\n でもこんなのはおかしい、こんなものを入れられたら死んでしまう。だって大き過ぎる、太さはペットボトルぐらい、長さはその倍くらいある、こんなものを入れられたらお腹が破けてしまう。なのにそれは捻くれていて、明らかに『抉り』『削る』ための形をしているんだ。\n 凶器を見せつけたオークがわらう。ああ、これは死刑宣告なんだ、今からコレがお前を殺すぞ、と。わざわざそのために私の顔を引き上げたんだ、そう理解して--死刑は執行された。\n\n「あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"!!!」\n お腹が破れた、そうとしか思えなかった。内側からお腹が引きちぎられて、魚の開きみたいにお腹の中身がこぼれ出しているに違いない。全部痛いんだ、これ以上ないぐらいに痛いのに、なのに今でもブチブチと音を立てて破れて無くなったはずのお腹が何度も何度もぐちゃぐちゃに削られて穴を開けられているのはなんでだろう。\n ボタボタと音を立てて股間から血が流れる、破瓜の血なんて物じゃなくて、単純に大き過ぎる異物をねじ込まれた膣が引きちぎれて出血している。\n\n「ひぎ、あ\"ぎゃ、あ\"、あ\"あ\"い\"あ\"!!? ああーー、あ\"あ\"あ\"あ\"あ\"!!!」\n 凄まじい衝撃と共に胎の一番奥が抉られる、股間の肉が削り潰される。耐えられない、こんなの死んでしまう。なのに誰も助けてはくれなくて、ゲラゲラと笑う声と共に乳房を捻りあげられる。\n\n ぐりぐりと身体の奥で凶器をかき回すように抉られ、泣きながら甲高い悲鳴を上げる。殴りつけるように肉塊を子宮に叩きつけられ、飛沫と共に濁った叫びを吐き出す。\n 完全に私は玩具だった。無様で滑稽で、淫猥な玩具。弄くり回して壊して、泣いたり叫んだりするのを楽しんで、突き上げて扱いてねじ込んで、肉欲を満たして愉しむための玩具。\n 女性器を破壊しながら、肉棒が、長過ぎる肉棒がピストンを始める。ロクに濡れていない膣肉を力づくでこじ開け、引き抜き、またねじ込んで、何度も何度も身体の奥を殴りつけている。\n\n「が、あ\"べ、あ”ーー やめ、ぎぎゃっ!!」\n 『やめろ』と言おうとしたのか『やめて』と言おうとしたのかはわからなかった。血液と、防衛反応が分泌した愛液で勢いをました肉杭が身体を打ち抜き、言葉を発する権利さえ奪われたからだ。\n\n「ひーーひ、あ、やめ、うご、か、あ”あ\"あ\"!!」\n 一度引き抜かれるたびに、ドリルのようなペニスが肉を掻き毟りズタズタに引き裂いていく、一度つきこまれるたびに、長すぎる肉杭が子宮口を通り越して内臓まで痛みで貫く。涙と悲鳴がぼろぼろとこぼれて心が削れていく。\n ビリビリという音と共に上半身のコスチュームが引きちぎられていき、大きな乳房が零れ落ちる。お預けを食らっていた戦闘員たちが容赦なく乳房にむしゃぶりつき、噛みつき、捻りあげている。\n Fカップの巨大な乳肉は日ごろから向けられていた獣欲を全てぶつけられ、オスの興奮を更に煽るかのように形を歪めている。\n\n 心が完全に折れると、変身解除の意思がなくとも変身は解けてしまうーーマスコットが説明していたことを思い出す。なら、頑丈なはずのコスチュームが破られたのはその前触れなのだろうか。無理もないなと頭の冷静な部分が他人事のように考えている。\n 私を犯しているオークは尻を抱え込んでバチンバチンと音が鳴るほどに強く腰を叩きつけている、戦闘員たちは乳房を無遠慮にこねくり回し、乳首の周りに噛みついて歯型をつけてげらげら笑っている。\n 痛い、苦しい、みじめだ、悲しい、もうーー死にたい。\n\n 決壊はすぐだった。オークがひときわ強く腰を抱え込んで、私の奥に捻くれた肉塊を深く深く突き刺してーー射精した。\n「あ”ーー こ、はーー あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」\n 初めに感じたのは熱さ、次にお腹をみちみちと膨らませるような圧迫感で、最後に全部決壊した。\n 股間からぶりぶりと汚い音を立てて入りきらなかった白濁を吐き出している、中に残った精液がずるずると身体の奥まで汚しつくしている。身体の隅々まで全て欲望で埋め尽くされるような不快感と圧迫感はこれまでの苦痛の全てに匹敵して、もう自分の耐えられる閾値を超えていた。\n\n(あーー変身、解けるーー)\n コスチュームの残骸が光の粒子へと変わり始める。変身が解ければ生命維持機能も保つことはできず、比喩でもなんでもなく犯し殺されるだろう。それはわかっている、でももう抵抗もできないし、耐えるなんて無理なんだ。ああ、でもーー\n「誰か、助けてーー」\n 呟きに応えるように、大鎌の刃が閃いた。\n\n ====================\n\n 魔法少女・エリコを犯していたオークや戦闘員を倒すには、さして時間はかからなかった。打撃耐性などエミリアの大鎌とカナデの刀には何の意味もない。下級戦闘員ではエミリアのスピードには反応さえできず、パワーなど比べ物にならない。カナデにとびかかろうとすれば動き出す前に切り裂かれ、手足を振るえば空を切り、気づいた時には首が落ちている。\n 二つの刃は正しく死をまき散らす暴風で、怪人はおろか中級戦闘員すらロクにいない集団がすべて黒い霧となるには10分とかからなかった。\n\n「ミック、その子は……」\n「命に別状はないよ。今は昏倒しているけど大きな欠損もないし、僕が処置を行えば大抵の外傷は時間経過で修復できる。内臓に多少のダメージがある様子だからしばらく安静にして治療する必要はあるけど、肉体面はさほどかからずに治療できるさ。ただ、精神的な部分はわからない」\n 無残な状態だった。変身は解けかかり、ほとんど全裸に近い。ぐったりと仰向けに倒れた身体でも一際目立つ大きな乳房は痛々しい歯型がいくつも残り、数か所は血さえ滲んでいる。そして股間はいまだに白濁と、ズタズタにされた血か肉が混ざったピンク色の汚濁を吐き出している。\n それは獣に食らいつくされた残骸のようなーーそんな、ありさまだった。\n\n「エミリア、間に合わなかったなんて思うなよ。私達は最善を尽くした。限界の力を振り絞らなかった事を最善を尽くさなかったとは言わない、わかるだろう」\n「うん、わかってる。でも…… アタシは」\n\n 思い出す、あの日の無力感を。ただ守られるだけで、ただ奪われるだけの恐怖と悲しみを。あの人のように立ち向かうことのできなかった自分を。\n もちろん、自分とこの魔法少女は違う。彼女は戦うことができたし、そもそも契約する前に危険性を教えられた上でーー多かれ少なかれ覚悟をした上でーー戦っているのだ。自分が憐れむような真似をするべきではない。\n でも、それでも、この暴虐と悪意に怒りが湧く。一人の人間をこんな風に踏みにじる存在を私は許せない。\n この人にもきっと家族がいるのだろう。両親が、兄弟が、叔父さんがーー私と同じように、かけがえのない大事なものが。\n 私は戦おう、大事なものを踏みにじる者、私の小さな世界に破壊と悲しみをもたらす者と。\n\n ミックのかけた浄化と緊急処置の魔法が効果を発揮したのを確認して、撤収の準備をする。衣服の修復や彼女の送還はミックが細かくやってくれる。\n\n「ねえカナデ、もどったら、トレーニングお願いね」\n「はあ…… 根を詰めすぎるのもよくないんだが…… いいさ、付き合おう。そのかわりまた宿題を手伝ってくれよ?」\n 狐の耳を揺らしていたずらっぽく笑う。全く、素直に『学生だってことを忘れるほどに思いつめるな』っていえば良いのに。私もだけど、カナデは本当に素直じゃない。\n\n「あったりまえでしょ。アタシがみてあげないとカナデは本当に勉強ダメなんだから。学生の本分は学業なんだからちゃんとやらないとダメよ」\n「いやホラ、私は卒業後は道場を継ぐから勉強は最低限でだな」\n「そういっていつもサボるからテスト前に悲鳴を上げるんじゃない。いーい、何事も継続した努力がねーー」\n いつものようなやり取りをする、いつものように訓練も、勉強もする。今度こそ大事な物を奪われたくないから、私は戦う。\n\n ====================\n\n ーーそう、本当に、思っていた。\n\n\n\n ・・・・魔法少女エミリア敗北まで、あと一か月・・・・"} |
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