| {"novel_id": "n0002hp", "chapter": 5, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002hp/5/", "title": "第5話 天然物", "content": " これはまずい。実にまずいことになった。\n\n アウラはアルドリッヒが好みそうな生娘を探して街中を歩いてみた。しかし、アルカディア特有の外套のせいで、行きかう人はみな頭からフードを被っており、一見して生娘かどうか判断できない。\n\n しかも、昔アウラが訪れた時よりも明らかに人の数が少なくなっていた。\n\n 都市などいくらでもあるというのに、行きやすいというただそれだけの理由でアルカディアを選択した自らを悔いた。\n\n アルドリッヒに何と言い訳しよう。アウラが頭を捻りながら歩いていると、いつの間にか風俗街に戻ってきてしまった。そして次の瞬間、後方から尻を鷲掴みにされ、アウラは飛び上がった。\n\n「ひゃああああ、アルドリッヒ様、申し訳ございませんでした! 謝りますからここでお仕置きは勘弁してくださいー! アルカディアの街でお日様の下を歩けないのは後生ですうううう!」\n\n そう言って体を強張らせるアウラだった。しかし、少女の方はというとまったく気にしていない様子だった。\n\n「ああ、金犬の尻を揉んでると生き返りますわあ。流石、わたくしが選んだ犬ねえ」\n\n まるで風呂にでも浸かっているかのような声色で言った。若干、エロい。\n\n「いかがなさいました? お疲れの様子ですね?」\n「察しがいいわね。風俗店を内覧してきたのよ」\n「え!? この時間に風俗店に入れてもらえたのですか!?」\n「もちろんじゃない? 歓迎してくれたわよ?」\n\n 夜しか開いてないのにそんなことあるわけない、と出かかった言葉をアウラは飲み込んだ。\n\n「……それで、収穫はございましたか?」\n\n アウラがそう尋ねると少女はため息をついた。\n\n「ないわ。ここには”養殖された不自然な屑尻穴”やら”スパイスを利かせないと臭くてたまらない尻穴”やら”見るに堪えない人口尻穴”ばかりだったわ。金犬のような”天然物”の尻穴を見つけるのは意外と難しいのね」\n「お察しします……」\n「そういえばあなた、今まで探しにいっていたのよね? 何か見つけたの?」\n\n アウラはぎくりとする。\n\n「それが――」\n\n 苦しい言い訳をしようとしたところで、遠くから聞こえてきた歓声がアウラの言葉を遮った。そして、『パレードが始まったみたいだぞ!』という、人々の声が耳に飛び込んできた。\n\n「――あちらの方ででパレードをやっているそうでして、そこにたくさん女性たちが集まっているかと」\n「あらそう? それなら行ってみましょう」\n\n アウラは冷や汗を拭いながら人々の流れに乗って歩いていくと、街の中央通りまできた。その通りを囲むようにしてたくさんの人だかりが出来ている。辺りではにぎやかな音楽が鳴り、白い花びらが舞い散っていた。\n\n『王女様ー! ご結婚おめでとうございますー!』\n『侯爵様もおめでとうー!』\n\n 民衆は皆、お祝いムードだ。通りの中心では、豪華な馬車に乗った男女のカップルが、民衆に手を振っている。このふたりが、王女と侯爵なのだろう。\n\n「どうやら、アルカディアの王女様と侯爵殿が結婚するようですね」\n\n アウラはそう呟いた。\n\n 侯爵はピカピカの鎧を身に着けた男前で、民衆からも人気があるようだ。馬車の上から軽い口調で民衆たちに話しかけている。\n\n 王女は微笑を浮かべながら小さく手を振り続けている。所作のひとつひとつに気品が感じられ、高貴さが際立っていた。流れるようなコバルトブルーの髪にティアラをのせ、その姿はまるで天使のようだと思った。\n\n その時、隣でその光景を眺めていた少女がこう呟いた。\n\n「なんだ、いるじゃないの。天然物が」\n\n\n※\n\n\n スカーレット大量殺戮事件\n\n 都市”アルカディア”の風俗店”スカーレット・ムーン”で発生した、長いアルカディアの歴史上でも類を見ない未解決事件である。\n\n 聖暦△△年××月〇〇日、この店に当時所属していた風俗嬢36名。店主1名。計37名が惨殺された。殺害された被害者の多さもさることながら、際立つのはその狂気的な殺害方法であった。\n\n あるものは馬車にひかれたかのように潰され、あるものは粉砕機にかけられたかのようにバラバラにされ、またあるものは串焼きのように尻から口へ杭を貫通された状態で発見された。殺人現場の凄惨な状況は、まるで怪物が暴れまわった後のようだったという(遺体があまりにもめちゃくちゃだったため身元の確認はとれなかった)\n\n この事件は、セガールというこの風俗店のスカウトが唯一の目撃者であり、生存者でもあった。この男は事件発生時に屋内にいたとされ、事件の一部始終を目撃している可能性が高い。しかし、この男は発見時、既に精神が破綻しており、「少女の形をした化け物がやった」などという妄言を語り、有力な証言は取れなかったという。\n\n そして、何より奇妙なことに、現場では被害者をバラバラにしたとされる凶器の一切が発見されなかった。目撃者であるセガールは「少女が素手でやった」と供述しているが、その信憑性はあまりにも薄い。\n\n 当時、市警団が捜査に乗り出してから1か月が経っても、犯人の手がかりはひとつとして見つからなかった。次第にこの事件の詳報は市民の耳にも入り、事件を一向に解決できない市警団への不信感が募ったという。\n\n 事件の対処に苦慮した市警団は事件の幕引きを早々に図るため、セガールを犯人と断定して処刑を強行した。こうして唯一の目撃者が消え、この事件の真実は迷宮入りすることとなったのだった。\n\n――アルカディア史記第13巻より抜粋", "afterword": "アウラがお仕置きを免れたのでハッピーエンドっ!"} |
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