| {"novel_id": "n0002jy", "chapter": 51, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002jy/51/", "title": "山田家で過ごした1日ってな。", "content": "飯を食い終わって、食器を食洗機に入れたら\n暇になった。\n\nどうすっかな。\n\n暇な時は、いつもなら勉強か筋トレしてるんだが\nさすがに他人の家で筋トレはないわな。\n\nこう考えると、俺は趣味らしい趣味がねぇな。\n\n漫画や小説を読んだり、テレビや動画を観たりもするが\nハマるほどではないから\n基本的には勉強と筋トレをしてるとこが多い。\n\nキョウコがいる時も基本は一緒だ。\n一緒に勉強したり、筋トレしたりジョギングしたり\nセックスしたり。\n\nいつも同じようなルーティンを繰り返していても\n一切飽きない。\nキョウコといる、それだけで俺は満たされる。\nもちろん、キョウコを退屈させないように\n色々考えてはいるけどな。\n\n…本格的にやることなくなったな。\n…勉強するかぁ。\n\n\n「なにしてんだよ」\n\n1時間くらい勉強をしていると\nいつの間にか、部屋から出ていた\n山田に声をかけられた。\n\n「なにって、見ての通り勉強だが?」\n\n「不良が勉強してるんじゃねぇよ…」\n\n不良が勉強して何が悪い。\nしねぇよりマシだろうが。\n\n押し問答をしてもしょうがねぇから\n手をヒラヒラ振ってあしらいつつ\n勉強に戻る。\n\n「けっ!いい子ちゃんアピールかよ!\nそうやって女の好感度稼いでんのか!」\n\n……いや、絡んでくるのかよ。\n構われたがりか?\nコミュニケーションに飢えてんのか?\n\n「まぁお前にどう思われようが構わんが、勉強しておいて損はねぇぞ?」\n\n仕方ねぇから相手してやる。\n\n「はっ!勉強もスポーツも出来て\n女にも困ってねぇってか!\nいいねぇ、恵まれてるヤツはよ!」\n\n恵まれてる、ねぇ?\n\n行きずりの女との間に産まれた息子には\n興味を示さねぇ父親と\n幼いころから、暴力を振るってきて\n俺がやり返すようになった途端に\n蒸発した母親。\n家庭環境は結構ひでぇと自負してるんだがな。\n\nまぁ、俺の存在がバレた時の保身の為に\n生きてくのに困らねぇ金は貰ってるから\n恵まれてる方なのかねぇ?\n\n進路も勝手に決められたが、そのおかげで\nキョウコ達と出会えたと思えば\n悪くねぇ人生ではあるな。\n\nただ、いい家族に囲まれて\n最高の幼馴染がいた山田の方が\nよっぽど恵まれてたよなぁ…?\n\n不幸自慢をしたいわけじゃねぇから\n言わねぇけどよ。\n\n「おい、無視すんなよ!」\n\n「お、わりぃわりぃ。\n確かに恵まれてるな。\n感謝して生きていかねぇとな」\n\n「………バカにしやがって!」\n\n「バカにしてるつもりはねぇが\n俺と話しててイライラするんなら\n会話しないほうがよくねぇか?」\n\n「………クソッ!」\n\nバタン!\n山田がまた部屋に戻った。\nイライラするなら、話しかけなきゃいいのにな。\n\n\nひとしきり勉強も終えて\nいい時間になってきたので晩飯を作り始める。\n\nさっきの山田との会話で\nおや?と思ったことがあるので\n少し変わったモンを作ることにする。\n\nとはいえ、キョウコのレシピだから\nうめぇ事に変わらないがな。\n\nそうやって作ったのが\n鶏肉とタケノコの入った天津飯と\n人参とモヤシのナムル\nごま油とラー油を入れたピリ辛スープ。\n\n昼と同じように山田の部屋の前に置いて\n俺は俺で食べ始める。\n\nそして、昼と同じくまた俺が\n半分くらい食べ終わった時に\nカラのお盆が部屋から出てくる。\nやはり山田からは一言もない。\n\nこれで確信した。\nあいつ、キョウコの料理の味を覚えてねぇ。\n昼は一般的な料理だったから\n気付きにくかったのかと思った。\nだからこそ、晩飯は一工夫あるやつにした。\nもちろん、世の中には同じレシピはあるだろうが\n鶏とタケノコの入った天津飯は\n一般的ではないはず。\nなのに、それを俺が作ってることに対する\n疑問も文句もない。\n\nこのレシピが、キョウコのレシピだということにすら\n気づいてねぇってことだ。\n\n「マジかよ…」\n\nあいつが覚えてねぇなら\n俺が記憶を上書きしてやろうとした\n嫌がらせは徒労に終わっている。\n単に、あいつに美味い飯を食わせただけだ。\n\n「これなら、出前取ればよかったぜ……」\n\n世の中、やはり悪いことは出来ないように\nなってんだなぁ………\n\n意気消沈しながら、飯を食い終わり\nキッチンを綺麗にしていると\nルイから連絡が来た。\n\n向こうも無事家族の団らんが終わったそうだ。\n\n程なくして、山田の両親も帰ってきた。\nルイは相変わらず俺の家に帰っている。\nキョウコも一緒にいるはずだ。\n\n両親の帰宅に気付いた山田が……\n俺以外全員山田だからややこしいな…\n\n両親の帰宅に気付いたコウタが\n部屋から出てきた。\n\n「父さん!母さん!\nなんでこんなヤツ家に入れたんだよ!」\n\n「私たちの不在の間に実の妹を\n襲おうとした息子の監視のためだが?」\n\n親父さんがコウタを睨めつける。\nその視線に、コウタはたじろいだ。\n\n「それに、今日の食事を作ったのは\n彼なのだろう?\nお礼は言ったのか?」\n\n「そ、それはコイツが勝手に作っただけで!」\n\n「……………もういい。\n感謝の言葉を述べることすらせず\nあげくの果てに『こんなヤツ』呼ばわりとは…。\n部屋に戻ってなさい」\n\n「け、けどよ!」\n「戻ってなさいと言っている!!」\n\n「ひっ!わ、わかったよ……………」\n親父さんが語気を強めると\nコウタは、すごすごと部屋に戻っていった。\n\nそれを見届けた親父さんが、こちらへと\n視線を向けた。\n\n「お見苦しい姿をお見せしました」\n\n「いえ…」\n実際コウタの様子が見苦しいと\n感じてしまったから、言葉に詰まる。\nそんなことないとは言えねぇからなぁ。\n\n\n「柊さん、少しお話しませんか?」\n\n親父さんから声をかけられ\n俺と親父さんは玄関から外に出た。\n\n「まずは、本日は愚息の相手をしてもらって\nありがとうございます」\n\n「いえ…飯作ってただけですし…」\n\nしかも、嫌がらせすら出来てねぇしな…\n\n「重ねて、ルイの事もありがとうございます。\n…まさか、兄が妹を襲うことになるとは…。\n改めて、愚息の育て方を間違えた。\n悔やんでも悔やみきれません…」\n\n親父さんがキツく拳を握りしめている。\n\n「俺がこれを聞くのはお門違いと思うんスけど\nよかったんですか?\n俺みたいな奴に、娘さんを抱かせちまって」\n\n「もちろん、父親として思うところはありますよ」\n\n親父さんは、俺に背を向け\n手すりに身体を預けながら話し続ける。\n\n「ただね、今日ルイと一緒にいる間\nあの子はずっと貴方の話をしてたんですよ。\n『シュウ兄と』『シュウ兄が』。\nそれはもう、楽しそうな表情で。\n兄に襲われたショックなんて微塵も感じなかった。\nキョウコちゃんも、一緒になって貴方の話題で\n盛り上がっていた」\n\n振り返ってこちらを向いた親父さんは\n優しそうな笑顔だった。\n\n「娘のように思っていた子と、実の娘が\nあれだけ幸せそうにしていたんだ。\n貴方には感謝しかありませんよ。\n柊さん、ありがとう」\n\n親父さんが、丁寧に頭を下げてくれた。\n…安堵と、嬉しさが広がってくる。\n\n「俺、キョウコもルイも大切にします。\n世間からは不義理に見えるかもしれませんが\n本気です」\n\n「………娘たちを、宜しくお願いします」\n\nその後、俺の荷物を持ってきてくれた\nミヨさんとも少し話してから\n帰路についた。\n\nそして\n「おかえり!シュウ兄!今日はありがと!」\n「おかえり、シューヤ。ご飯…はもう食べてるから\nお風呂にする?それとも…\nわ・た・し・た・ち♡?」\n\n俺は、この幸せを絶対手放さないと\n改めて誓った。", "preface": "51話目ですー!", "afterword": "よくよく考えると、シュウヤくんが\nキョウコちゃんと一緒にいないのって\n珍しい状況なんですよね。"} |
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