Krixter/Repo / n0002la /29.json
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{"novel_id": "n0002la", "chapter": 29, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002la/29/", "title": "25.『夜叉熊祭り』", "content": " 終業式の翌日から始まった【奉納の儀】の稽古は、めちゃくちゃスパルタだった。\n\n「奥村くん、腰の振り方が甘いですよ。それではアイリスさんを孕ませられません」\n\n リスちゃんの上でへこへこ腰を振る俺に、ルーシー先生から激が飛ぶ。先生は俺の一挙手一投足に目を配り、粗相がないようにきつく注意をしてくるのだ。なんの罰ゲームだよ!\n あと、俺もリスちゃんも本番同様に服を着たままなのだが、普通にエロい気分になって非常に困る。\n\n「手拍子に合わせてリズミカルに腰を振ってください。ほら、パン!パン!パンパンパン!」\n「うう、もう腰がガクガクだぁ……!」\n\n お稽古を始めてから1時間。いろんな体位で腰を振り続けてるせいで、下半身に力が入らない。セックスよりもこっちのほうが断然疲れるんだが。\n\n「だいたい、なんで熊に人間の交尾を奉納するんだよ。意味わかんねーって」\n「奥村くん、なにか言いましたか?」\n「いいえ、なにも!」\n\n いつも優しい先生だけど、お稽古のときはすげえ厳しくて怖いんだよな。こんなバカみてえな神事のためになんでそんなガチになる必要があるんだよ。\n\n「次はアイリスさんが上になってください。……そうそう、上手ですよ。腰の動きが淫らでグッドです! 花マルあげちゃいます!」\n「えへへ~。もっと頑張っちゃうよ♪」\n\n そんなルーシー先生だけど、リスちゃんには激甘だ。まあ、リスちゃんは素直でカワイイし、寮生も含めてみんな甘々なんだけどな。\n かくして、夏休みに毎日のようにお稽古をした結果、俺の腰振りはめちゃくちゃ上達したのだった。\n\n ――そして、いよいよ夏祭り当日を迎えた!\n\n 甚兵衛に着替えて居間に行くと、那歩子と祐衣がソファでまったりしていた。ふたりは浴衣を着ている。那歩子が紺色の花火柄、祐衣が赤い金魚の模様だ。\n\n「すげえカワイイじゃん」\n\n 俺が素直に褒めると、祐衣が「あんまり見ないでよ」と頬を赤らめる。那歩子も心なしかテンションが高そうだ。\n\n「ていうか、着付けできるんだな。偉いじゃん」\n「うん。もう慣れたものだよ」\n\n 那歩子が得意げに胸をそらす。\n\n「ゆうべ、いっぱい脱がせたから」\n「そうか」\n\n …………。ん??\n\n「それってどういう――」\n「――さー、那歩子! 早く会場に行ってお祭りを堪能するわよ!」\n「あー」\n\n 祐衣は真っ赤な顔で那歩子を引きずって居間から出て行った。\n ……あいつら、またふたりだけで百合セックスしてたのか。しかも、浴衣で。\n\n「俺もまぜろよ」\n\n ガイア!!\n\n「カンちゃーん! どーん!」\n「うおっ」\n\n リスちゃんが居間に飛び込んできて、俺の腰にタックルをかます。俺はよろけながら彼女を抱きとめる。\n\n「こら。これから酷使するんだから腰にダメージ与えるなよ」\n「えへへ。ごめんなさい♪」\n\n リスちゃんはぺろっと舌を出しておどける。うう、カワイイ! 思わず抱きしめてしまう。\n\n「リスちゃんも浴衣なんだな。可愛いぞ」\n「ありがとー♡ 那歩子ちゃんに帯とかやってもらったのっ」\n\n ひまわり柄の明るい色合いの浴衣は、元気なリスちゃんにベストマッチだ。最高に似合ってるぜ。\n\n「ところで、かぐやは?」\n「婦人会?ってところでお祭りのお手伝いやってるよ」\n「そうなのか」\n\n お祭りの日だっていうのに仕事があるとか大変だな。あとで激励に行ってやるか。\n 俺とリスちゃんは寮を出て、祭り会場の神室神社へと向かう。道すがら、浴衣姿の御婦人と世間話がてら近況を話したりなどした。\n\n「神事、頑張ってね~」\n「手拍子で応援するわよ!」\n「あはは。どうも」\n「頑張っちゃうよ~♪」\n\n 村の人はリスちゃんを見るとみんな声をかけてくるな。俺もいちおうかもろしということで声をかけてくれるんだけど、リスちゃんみたいに親しげには接してくれない。小さい頃から村の一員として育ってきた年季が違うということだろう。\n\n「リスちゃんは、ほんとみんなに可愛がられてるよな」\n「カンちゃん、ヤキモチ焼いてるの?」\n「やきもち……っていうと、ちょっと違う感じがするけど」\n\n 自分の気持ちをうまく言語化できないもどかしさ。まあ、俺はまだまだ子供だってことなんだろうな。\n 石段を昇り、境内に入ると一気に景色が変わった。赤い提灯に照らされた境内には屋台が立ち並び、こんな小さな村のどこにいたんだってくらいたくさんの人で賑わっている。\n\n「やっぱり祭りって良いよな」\n「都会のお祭りもこんな感じなの?」\n「いやあ。さすがに規模が違うけど」\n\n でも、本質は同じかな。非日常感に浮かれる人々の熱気で、こっちまで自然と浮足立つ。祭りが好きなのは日本人の血って感じがする。\n\n「なにか食うか。腹減ってきたよ」\n「いいにおいだもんね。なに食べようか?」\n\n ソースの焦げる香ばしいかおりと砂糖菓子の甘いにおい。食欲をそそられるな。俺がリスちゃんと手を繋いで屋台を見て回っていると――\n\n「あ、閑馬くん。きたんだね」\n「かぐや」\n\n 寮長のかぐやがいた。屋台の中で火にかけた寸胴鍋をおたまでかき回している。\n\n「かぐやちゃん! やっほー」\n「うん、やっほー」\n\n かぐやはいつもどおりの涼しげな笑みを浮かべ、ひらひらと手を振る。けれど、額には汗をかいているな。鍋、熱いんだろうなぁ。せっかくだし、かぐやの作った屋台飯でも食わせてもらおうか。\n\n「なに作ってんだ?」\n「オスマンコトル王国に伝わる伝統料理『ナアル・クッファ』だよ」\n「俺にはカレーに見えるんだが」\n「作り方はカレーと同じだからね」\n\n かぐやは苦笑する。\n\n「村のお偉いさんのリクエストでね、外国のはいから?な料理が食べたいんだって。困っちゃうよね」\n「良い歳して都会のJKみたいな老人だな」\n\n 俺はスマホを取り出し、かぐや謹製のカレーと屋台の看板をいい感じのアングルで撮る。かぐやは不思議そうに首をかしげる。\n\n「それもインスタ?に上げるの?」\n「ああ。絶対ウケると思ってな」\n「ただのカレーだよ? インスタグラマーにはウケないでしょ」\n「インスタグラマーなんてな、クリーム挟んだだけのただのパンを『マリトッツォ』とか小癪な名前をつけただけで喜んで食う生き物だぞ。あいつら、飯じゃなくて情報を食ってんだよ」\n「閑馬くん、じつはインスタ嫌いじゃない?」\n\n かぐやは苦笑いする。\n\n「おいひい。おいひい」\n\n リスちゃんが笑顔でカレーを頬張っている。俺も一口食べたが、寮で出てくるいつものカレーだった。当然のように激ウマである。\n\n「あ。お代。いくらだ?」\n\n 俺が訊ねると、かぐやはふるふるとかぶりを振る。\n\n「かもろし様からお代は取れないよ。そういう決まりになってるから」\n「そっか。ラッキーだなと思っておくよ」\n\n 同じく、あらにえの代表となったリスちゃんも無料だったので、俺達は屋台をめぐり、たらふく飯を食ったのだった。\n 祭りも佳境に差し掛かり、もう少しで奉納の儀の時間だ。\n\n「そろそろ行かないとな」\n「そだね!」\n\n 俺とリスちゃんは社務所へ向かい、専用の衣装に着替える。着付けは巫女さんが手伝ってくれた。首元に毛皮のついたぼろぼろの着物。日本文化を勘違いした洋ゲーに出てきそうな衣装だ。\n 一方でリスちゃんはというと――\n\n「じゃーん! 似合う?」\n「おー」\n\n 俺は感嘆の声を上げる。リスちゃんが身を包んだのは、巫女服だった。髪はいつものサイドテールではなく、頭の後ろでくるくると結いている。\n\n「めっちゃ可愛いよ。リスちゃん宇宙一!」\n「あはは! カンちゃんもカッコいいよ! ワイルドだね♪」\n\n 小学生のセンスだと『カッコいい』になるんだな、この服。正直クソだせえと思ったが、リスちゃんが喜んでくれるならいっか。\n\n「次の太鼓の音とともに壇上に上がってください」\n\n 世話係の巫女さんに促され、俺とリスちゃんは並んで境内へ戻る。\n リスちゃんは俺の手をとり、にこっと笑った。\n\n「頑張ろうね、カンちゃん♪」"}

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