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{"novel_id": "n0002la", "chapter": 9, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002la/9/", "title": "幕間①『種付け新聞』", "content": " 村に留学してきて2度目の週末。俺は自分の部屋でだらだらとスマホを眺めていた。田舎での生活にもすっかり慣れ、もはや寮が自分の家のような感覚だな。ベッドに寝そべって適当にようつべで新着の動画を漁り、サブスクでアニメを見て、ディックドッピュを流し見する。絵に描いたようなダメ高校生の休日だ。\n\n「いや、せっかく留学してきてんのにもったいなさすぎだろ!」\n\n 俺は自分に突っ込みを入れ、勢いよくベッドから跳ね起きる。これじゃ都会にいた頃と何も変わらないじゃないか。もっとこう、田舎らしいアクティビティを楽しんだり、地元民と交流したり。そういうことがしたい!\n\n「とりあえず、誰か寮の中にいないかな」\n\n 俺は自室を出て階下へ降りる。居間に入ると、かぐやがテーブルでなにかを読みふけっていた。回り込んで手元を覗くと、細かい活字が怒涛の如く目に飛び込んできて、思わずのけぞる。\n\n「閑馬くん?」\n\n かぐやが振り返る。俺はめまいを覚えながら、改めてかぐやの手元を見た。\n\n「新聞読んでんの? 偉っ」\n\n 都会の学生は新聞どころかネットニュースすらろくに見ないからな。情報源はもっぱらSNSだ。したがって、得る情報は自然と偏ってしまう。オールドメディアと揶揄される昨今だが、やはり新聞のようなまんべんなく情報を得られる媒体って重要だよなって賢しらに思う俺なのだった。\n\n かぐやは上品に髪をかきあげてくすりと笑う。\n\n「一般的な新聞じゃないけどね。村の役場が出してるローカル紙だよ」\n「なんて新聞なんだ?」\n「【種付け新聞】」\n「は?」\n\n 俺は思わずかぐやを二度見した。\n\n「子育ての楽しさとか夫婦円満の秘訣とか。あとは耳寄りなえっちのテクニックとか。子作りを推進するプロパガンダ記事がメインだね」\n「なんか『職場の教養』みたいな……」\n「なにそれ?」\n「ブラック企業に高確率で置いてあるという特級呪物だ」\n\n 深い意味はないが、どっちも読むと洗脳されそうだなと思った。\n ともあれ、この村の過疎化はいよいよ深刻なんだなぁ……。\n\n「ほら、閑馬くんのことも載ってるよ」\n「マジで? どれどれ」\n\n ――『今回の【かもろし】は巨根で絶倫!? 行為に及んだNさん曰く「腰が抜けるかと思いました。変な声がいっぱい出ちゃってすごく恥ずかしかった……。でも幸せなのでOKです」\n すでに3人の【あらにえ】を手籠めにしており、その夜の営みに村内から熱視線が注がれている』\n\n「ゴシップ誌じゃねーか」\n\n 内容がくだらなすぎる。あと、Nさんって那歩子だろ絶対!\n\n「ためになる情報も載ってるんだよ。今号は、男の子に悦んでもらえるフェラチオテク大特集!だって」\n「ティーン誌かな?」\n\n 真顔で読む新聞ではないのは確かだ。でも暇つぶしにはもってこいかもしれない。\n\n「あとで読ませてくれ」\n「うん。いいよ」\n\n そのとき、居間の扉が開いてひとりの女の子が顔をのぞかせた。\n\n「あ。閑馬」\n「祐衣か」\n「ちょうどよかった。いま時間ある?」\n「なんだ?」\n「相談したいことがあって」\n\n ――かつては冷戦状態で、顔を合わせると露骨に無視してきた祐衣だったが、今では普通に会話する仲だ。セックスを経て心の距離が縮まった結果だな。くだんの男嫌いはすっかり解消されたらしい。こいつにとっては忘れたい黒歴史で、からかうとガチで怒る。\n\n「で、相談ってなに?」\n「うん。名前を決めたいなって」\n「……なんの名前?」\n「赤ちゃん」\n\n 俺は思わず祐衣を二度見した。\n\n「うええッ!? デキたのか!?」\n「デキてないけど」\n\n 俺は思わずずっこけた。\n\n「まぎらわしいな! ていうか、気が早すぎだろ!」\n「でも、いつかはデキるんだし……決めておきたいよ」\n\n 祐衣は真っ赤な顔でもじもじと指先を擦り合わせる。\n\n「閑馬との大切な赤ちゃんだから」\n「――――」\n\n いや、なんというか。距離縮まりすぎじゃね? 祐衣さんってばデレデレじゃねーか。もっとツン・パートがなきゃツンデレスキーは満足してくれませんよ??\n\n「【種付け新聞】にちょうどいい記事が載ってるよ」\n\n かぐやが話に割って入る。\n\n「『村のお年寄り3人に聞く、子供につけた名前の由来』だって」\n「3人って。データが少なすぎるだろ」\n\n でもちょっと気になるな。子供の名前ってどうやって決めたらいいんだ? 画数とか大事なんだよな?\n 俺が前のめりになっていると、かぐやは記事を読み上げる。\n\n「Aさん曰く、川で青姦してたらデキた子供だから『桃太郎』って名付けたって」\n「虐待じゃね?」\n\n シワシワネームだけどキラキラネームより可哀想な例ってあるんだ……。\n 祐衣があごに手をあてて考え込む。\n\n「お金持ちになってほしいから『金太郎』っていうのはあり?」\n「この話、広げる価値ないだろ」\n\n 俺達が雑談していると、再び居間の扉が開いて、パジャマ姿の那歩子が眠そうに目を擦りながら入ってきた。\n\n「……おはよう」\n「もう昼過ぎだぞ」\n「かんまくんが起こしに来てくれないから」\n「いつから俺はおまえのママになったんだ」\n「……ママー」\n\n 那歩子が戯れに抱きついてくる。他愛もないじゃれつきなのだが、彼女に抱きしめられるとその見事なたわわがぼよんぼよんと胸にあたって別の所がおっきしそうになる。ていうかこいつ、ノーブラじゃねーか!\n 祐衣がむうと唇を尖らせる。\n\n「那歩子、私ともぎゅー!」\n「うん。ぎゅー」\n\n 那歩子と祐衣がぎゅっと抱き合う。あまりに尊い光景に、俺は「てえてえ」と涙を流しながら拝んだ。\n\n ――このように、那歩子とも良好な関係を築けている。相変わらず表情は薄いのだが、那歩子はスキンシップが多いから、よりダイレクトに好意が伝わってきて嬉しくなる。\n ちなみに、ふたりはあれ以来も普通に百合セックスをしているようだが、俺は許容している。男は寛容さが肝要だ。なんちって。\n\n「ていうか、それにしても寝過ぎじゃないか?」\n「昨夜は遅くまで致してたから」\n「……オナニー?」\n「うん」\n\n 不感症を克服した那歩子はオナニーにハマったらしい。覚えたての中坊ばりにマンズリしているそうだ。\n 那歩子は、こてんと小首をかしげて俺の顔を覗き込む。\n\n「今度、かんまくんのオナニー見せて」\n「えっ」\n「わたしも見せるから」\n「相互オナニーって……コト!?」\n\n エロすぎて鼻血が出そうだ。那歩子さん、性に貪欲すぎます! 青少年が精通しちゃうぞ!\n\n「【種付け新聞】にオナニーのアンケートが載ってるよ」\n「なんでも載ってるじゃん。その新聞」\n「オナホはキツ系派? それともゆる系派? 調べてみました! よくわかりませんでした! いかがでしたか? ――だって」\n「キュレーションサイトかよ」\n\n 記事を書いてるやつ、飽きてきてないか?\n\n「かんまくんはどっち派?」\n「圧倒的にゆる系だな」\n\n 俺は形而上のメガネをクイクイする。\n\n「オナホはキツいほうが良いっていうのは素人の意見だ。より本物の膣に近いゆるふわ系のほうがよりじっくりとオナニーを楽しめてグッド。キツ系も試したことはあるけど痛いだけだったし、俺はおすすめしないな。ギミックに特化してるやつも多いが、たいてい数回使っただけで中が削れて真っ平らになるから買う価値なし。\n ……テンガ? ありゃオナホじゃない。インテリアだよ」\n\n「かぐやちゃん。なにか食べるものない?」\n「おにぎりラップしておいたよ」\n「私も食べる」\n\n 熱弁する俺をよそに、3人は別のことを話している。もっと興味持って!\n\n「カンちゃーん! あそぼー!」\n\n 今度はリスちゃんが入ってきた。この子との関係は……今更語ることもないだろう?\n\n「なにして遊ぶ?」\n「性戯王カード!」\n「それ好きだなー」\n\n 九州の雌犬鳴村発祥で、今や全国で大ブームを巻き起こしているトレーディングカードゲーム【性戯王】。もちろんこの村でも老若男女問わず大人気で、道を歩いていたら決闘を申し込まれるのが日常だ。\n 俺達はデッキをシャッフルし、テーブルを挟んで向かい合う。\n\n「「デュエロ!」」\n\n「俺のターン! 【スペルマ・ジシャン】を召喚し、デッキから【精子】を特殊召喚! 2体でオーバーレイプネットワークを構築し、【勃起王ソープ】をセクシーズ召喚! ターンエンドだ!」\n「あたしのターン! 【ぱんちゅっちゅソウル・全裸】を召喚! 手札の【ファットデブ】と【ジョロロン】を見せて【勃起王ソープ】を破壊するよ!」\n「ぐああああ!?」\n\n ――ちなみに、リスちゃんは最新カードを揃えているガチ勢で、俺は一度も勝てていないのだった。\n\n リスちゃんと遊んでいるうちに日が暮れて、休日は終わった。\n まあ、こんな日常も悪くない……かな?"}

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