| {"novel_id": "n0002ly", "chapter": 33, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0002ly/33/", "title": "阿久津牙編⑥『拒絶の雷、蜜の補給路』", "content": " 地上200メートル。\n 天を衝くようにそびえ立つ【プロメテウス・アド】の本社ビル。\n 心音は、安物のスーツの皺を整え、静かな足取りで大理石のロビーを歩いていた。\n 背中では、さとりちゃんが獲物を前にした獣のように、その虹色の瞳を鋭く光らせている。\n\n(さて……いよいよ情報の王との対面ですか)\n\n 受付を通り、最上階直通の高速エレベーターに乗り込む。\n 密閉された箱が上昇を開始すると、鼓膜を圧迫する重力とともに、心音の思考は冷徹に研ぎ澄まされていった。\n\n(僕を招いた理由……真っ黒な腹の内を探らせてもらいましょう)\n\n 阿久津と対峙した瞬間、取るべき行動は、すでにさとりちゃんと打ち合わせしてある。\n 成田レオや九条数世を葬り去った必勝の戦術――さとりちゃんの分身による強制憑依だ。\n 心音が言葉で時間を稼ぎ、その隙にさとりちゃんが分身を放つ。\n 憑依した分身はリアルタイムで阿久津の全情報をジャックし、隠蔽された弱点を白日の下に晒すだろう。\n\n(松前氏から託された音声データの出番は、その後ですね)\n\n あの音声データは切り札。\n 阿久津の息の根を止める、最後の一撃まで温存するべきだ。\n\n「しおんちゃん、準備おーけーだよ。腹黒オヤジを私たちでおいしく料理しちゃおーね♡」\n「ええ、頼りにしていますよ」\n\n 耳元でささやく少女の声に頷きつつ、心音は胸ポケットに差したペンの位置を確認した。\n やがて、重厚な電子音とともにエレベーターの扉が開く。\n 静寂に包まれた廊下を歩き、社長室の分厚い扉の前に立つと、躊躇なくノックして呼びかけた。\n\n「失礼いたします。【実話深層】編集部の神無月です」\n『どうぞ』\n\n 扉を開けると、広大で豪奢な社長室が姿を現した。\n 全面ガラス張りの向こうには、箱庭のような都市の街並みが広がっている。\n その中央、王座を思わせる革張りの椅子に、黒い眼帯をした巨漢が座していた。\n\n「神無月記者、よく来てくれた。待っていたよ」\n\n 阿久津牙は、残された左目で心音を射抜くように見つめ、不敵な笑みを浮かべた。\n 心音は一歩も引かず、懃懃に頭を下げる。\n\n「お招きいただき光栄です、阿久津社長。あなたほどの大物が、三流記者の僕に、どのようなご用件でしょうか?」\n「まずは、これを見てほしいのだがね」\n\n 阿久津は鼻を鳴らし、デスクの上に数枚の写真を放り出した。\n\n「これは……」\n\n 写真を見て、心音は絶句した。\n いったい、阿久津はいつ、このような写真を入手したのか?\n 映っていたのは、あの松前康平。\n ラブホテルらしき建物に若い女性と入っていく場面が、しっかりと写真に記録されている。\n その女性が何者なのかは不明だが、もし、彼がマネージャーの立場を利用してアイドルと男女の仲になっていたとしたら、かなり問題のある証拠物件となるだろう。\n 無論、この写真が捏造の可能性はあるが、こういった分かりやすい証拠が世に広まってしまったら、誤解だったとしても炎上を鎮めるのは難しい。\n さらに、白鳥メルの「パパ活疑惑」や「学生時代の万引き疑惑」の写真。\n 加えて、メル以外の『ルミナス・ティア』のメンバーたちの、目を覆いたくなるようなスキャンダルの数々。\n 未成年飲酒、喫煙、怪しい薬物に手を出している証拠、裏アカウントで熱心なファンを「キモイ」、「勝手に集まってくるATM」などと罵っている画像、出所不明の男との密会……極めつけは、松前マネージャーも含め、反社会的勢力との繋がりを示唆するような地方営業の風景。\n 松前と『ルミナス・ティア』に引導を渡す、えげつないスキャンダルの数々を映した写真や画像が、手品のように阿久津の手から放たれていく。\n\n(さすがは情報の王……事実だろうが捏造だろうが、こんなものが世に出回ったら、松前氏やアイドルの皆さんは、終わりですね)\n\n デスクの上の写真を、顔色一つ変えずに冷静に観察する心音に向かって、阿久津が口を開いた。\n\n「思うに、キミはいわゆる社会の『掃除屋』だな。あの悪徳霊媒師の九条数世を終わらせた記事もそうだが、これまでのキミの仕事を洗わせてもらった。大変、素晴らしい。ぜひ、我が陣営に必要な人材だ」\n「と、仰いますと?」\n「この写真を使って、記事を書くんだ、神無月記者。もし、その記事が私の納得するレベルのものならば、今後もキミにおいしいネタを用意してやろう。どうだ、悪い話ではなかろう?」\n「なるほど……確かに、悪い話ではありませんね」\n「キミならそう言うと思ったよ。ふふふ……」\n\n 阿久津の傲慢な勧誘。\n 将来的に自分の脅威になりかねない、神無月心音という厄介な記者を、今のうちに取り込んでしまおうという算段か。\n だが、阿久津が会話に集中している隙に、心音は自分の頭をかくフリをして、背中で待機していた怪異の少女の後頭部を、ツンツンとつついた。\n\n「了解、しおんちゃん」\n\n 阿久津にさとりちゃんの分身を憑依させるための、合図。\n 即座に少女は己の分身を生み出し、影のように阿久津の背後へと送り込んだ。\n その分身が繊細な指を伸ばし、阿久津の肩に触れようとした瞬間――。\n\n ――バチリッ!!\n\n 社長室の静寂を、激しい放電のような音が切り裂いた。\n\n「きゃんっ!? な、なにこれー!?」\n\n 背中から、さとりちゃん本体の悲鳴が上がる。\n さとりちゃんの分身は、まるで高電圧のフェンスに触れたかのように弾き飛ばされ、空中で火花を散らして霧散した。\n\n(……結界ですか!?)\n\n この予想外の展開には、さすがに心音も驚愕を隠せなかった。\n 本物の霊能力を持っていた、あの九条数世とイベント会場のテントで接触したときのことを思い出す。\n あのとき、さとりちゃんは九条の強力な結界によってテント内に閉じ込められ、危うく彼女に捕獲されそうになってしまった。\n 今、阿久津を覆っているらしき強固な結界は、それに近い性質を持っているように思えた。\n\n ――ガッ!!\n\n 分身が消えるのと同時に、心音の耳に、心臓に悪い大きな磁気音が響く。\n さとりちゃんのテレホンカード型の髪飾りに、新たな穴が穿たれた音だ。\n 彼女の魔力残量を示す度数が50減るごとに、それを知らせるようにカードに大きな穴が空いてしまう。\n 生み出した分身を消し飛ばされたことで、大量の魔力を消費してしまったらしい。\n\n「失敗した! しおんちゃん、あいつ、何か持ってるよ! 分身を憑依させるのは無理だ!」\n\n 背中から、さとりちゃんが激しく動揺した声を上げる。\n しかし、それを敵に悟られることのないよう、心音は表情一つ変えずに会話を続けた。\n\n「承知いたしました、阿久津社長。この案件、僕が預からせていただきます」\n「そうか、期待しているよ。キミが駄目なら、この件は【週刊真実バースト】に持っていこうかと思っていたところだ」\n「それには及びません。僕が責任を持って、最速で記事にまとめさせていただきます」\n「よかろう」\n\n 阿久津は眼帯の下で、満足げに口角を上げた。\n 心音は写真を手に取ると、深々と頭を下げ、「それでは失礼いたします」と感情を読み取らせない平坦な声で告げると、阿久津に背を向けた。\n 今は、退くしかない。\n 作戦が失敗した以上、一刻も早く、この危険な空間を脱出するのだ。\n\n「ふぇー……しおんちゃん、マジでごめーん」\n\n 背中から、さとりちゃんが申し訳なさそうな声で謝罪する。\n 作戦を、根本から立て直す必要がある。\n\n ◇◇◇◇◇\n\n(迂闊でした。まさか、阿久津のような男が非科学的な対策を講じていたとは)\n\n 地下駐車場を滑り出た社用車は、追っ手を撒くように都市部の複雑な迷路へと紛れ込んでいった。\n バックミラーに映る【プロメテウス・アド】の巨塔が遠ざかる。\n\n「あーあ、失敗しちゃったね。私の分身、あんなにボコボコに弾かれるなんて思わなかったしぃ……」\n\n 助手席で、さとりちゃんが力なく肩を落としている。\n 彼女の金髪ツーサイドアップを留めるテレホンカードの髪飾りには、痛々しいほどに深い新たな穴が穿たれていた。\n\n「さとりちゃん、あれは結界ですか?」\n「うん、間違いないね。あの奈落おばさんが張ってた結界に、かなり似てる。でも、あのオッサンに霊能力があるとは思えないから、多分、何かのアイテムを持ってたんだ」\n「お守りのような?」\n「そんな感じかなー? あー、マジしんどっ! 度数も130に減っちゃったよぅ」\n「困りましたね」\n\n 心音はハンドルを握る指先に力を込める。\n いつものように、さとりちゃんの分身さえ憑依させてしまえば、あとはどうにでもなるとタカをくくっていた。\n どうやら、阿久津牙という「巨悪」を、侮っていたようだ。\n 手元にあるのは、松前らの破滅を約束するスキャンダル写真の束。\n これらを迅速に心音が記事にしなかった場合、どちらにしろ、阿久津はこのネタを【週刊真実バースト】に流し、松前やメルたちの人生を終わらせにくるだろう。\n その前に、何らかの手段をもって、阿久津のこれ以上の凶行を止めなければならない。\n\n「ふっふっふ……でもね、しおんちゃん?」\n「はい?」\n「転んでもただじゃ起きないのが、このさとりちゃんなのだー!」\n\n 落ち込んでいたように見えたさとりちゃんが、唐突に虹色の瞳をいたずらっぽく輝かせた。\n\n「オッサンに憑依するのは失敗したけどさ……代わりにぃ、帰るときにすれ違った社員っぽい奴に、こっそり私の分身をなすりつけておいたんだよねー♡」\n「えっ!? さとりちゃん、天才ですか?」\n「もちろん天才だよー♡ もっと褒めてー♡」\n「素晴らしいです。天才だし可愛いし賢いし、世界一愛してます」\n「くぁーっ♡」\n\n 心音は、さとりちゃんの機転を心から賞賛した。\n 阿久津に作戦を破られ、どうするべきか心音が迷っている間に、さとりちゃんは情報の王の本拠地に爆弾を残してきたというわけだ。\n その分身がどこまで役に立つかは未知数だが、鉄壁の要塞に穿った唯一の風穴であることに変わりはない。\n\n「さとりちゃんが愛しすぎて、魔力を補充させてあげたくなりました」\n「なに言ってんのー♡ エッチしたいだけでしょー♡」\n「ええ。本音と建前が、まったく同じです」\n「しおんちゃん、ワイルドー♡」\n\n 心音は車を目立たない高架下の空き地へと滑り込ませた。\n さとりちゃんの頭を優しく撫でてあげてから、持参したメロンソーダの缶を手渡す。\n 彼女の魔力を回復させる手段は、対象の絶望を心ごと喰らう【絶望喰い】と、食欲、性欲、睡眠欲の三大欲求を満たすこと。\n 好物のメロンソーダ、甘いケーキ、焼肉(特にタン塩)などを摂取させるだけでも、多少は魔力が補充されるのだった。\n\n「わーい♡ メロンソーダだー♡」\n\n 緑色の液体をおいしそうにグビグビと飲み始める少女を眺めながら、心音はゆっくりと運転席のシートを倒した。\n\n「さとりちゃん、来てください」\n「……うんっ♡」\n\n メロンソーダを飲み干したさとりちゃんが、無邪気な笑顔で心音の胸元に飛び込んでくる。\n お互いに手早く衣服を脱ぎ捨て、狭い車内で肌を密着させた。\n 少女の小柄な体格に見合わない豊満な乳房が、心音の厚い胸板で「むにゅっ♡」と潰れる。\n\n「さとりちゃん、好きです」\n「えへへー♡ 私もだいしゅきー♡」\n「ああ、可愛い……」\n\n 抱きしめると、少女の小さな身体が腕の中にすっぽりと収まってしまう。\n さとりちゃんと愛し合っているときだけが、唯一、鮮烈な「生」を感じられる。\n 貪るように唇を重ね、熱烈なキスで舌を絡めた。\n\n「さとりちゃんの口、甘い味がします」\n「きゃははっ♡ そりゃ、メロンソーダの味だよー♡」\n「ふふ……さとりちゃん、腕を上げましょうか」\n「あん……♡」\n\n 少女の細い腕を優しく、だが逃がさないようにしっかりとつかみ、持ち上げた。\n そして、指先をさとりちゃんの最大の弱点――白く、瑞々しい腋の下へと伸ばす。\n\n「ひゃんっ♡ い、いきなり腋こちょするの、らめぇっ♡」\n\n さとりちゃんは可愛らしい悲鳴を上げ、身をよじらせる。\n だが、心音は容赦なく、執拗なまでに柔らかい腋を愛撫した。\n\n「やーんっ♡ しつこいよぅー♡」\n「ほら、キスも続けてください」\n「んぅーっ♡ んっ、んちゅっ♡ はぷぅ……♡」\n\n 唾液をたっぷりと交換し、少女の口内を隅から隅まで丁寧に舐め回す。\n もちろん、腋の下をぐりぐりと抉るようにマッサージする手は、一切休めない。\n 次第に興奮してきたさとりちゃんが「あ゛っ♡」と喘ぎ、身体を小刻みに震わせながら脱力したので、その耳元に口を寄せ、優しくささやいた。\n\n「本番、しちゃいましょう」\n「うん♡ 騎乗位でしちゃう?」\n「いいですね。乗ってきてください」\n「えへへ……ちょっと待ってね♡」\n\n 幼い顔を上気させ、心音の下半身でガチガチに硬くなっている男根の上に、少女はゆっくりと腰を下ろす。\n\n「お゛っ♡ お゛ーっ♡ し、しおんちゃんの、やっぱふっとぉ……♡」\n「頑張って動いてくださいね」\n「が、がんばるぅー……んはぁっ♡ あ゛っ♡ や゛っ♡ ふぁっ♡」\n\n 激しい上下運動を繰り返す少女の豊乳をローアングルで眺めながら、ゆっくりと腕を伸ばす。\n\n「あ゛ん゛っ♡」\n\n 格闘技で鍛えられた大きな手で、幸せな感触を伝えてくる乳房を揉みほぐす。\n さらに、自らも腰を動かし、下から少女の子宮を力強く突き上げた。\n\n「あ゛ーっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お、おくぅ、ふかいーっ♡ しきゅーにゴリゴリあたってりゅうー♡ しおんちゃんのデカ亀頭、だいしゅきーっ♡ ドロッドロのドスケベせーえき、中にいっぱいちょーだーいっ♡」\n\n 少女は可憐な顔を卑猥に歪め、長い金髪を振り乱しながら、甘い嬌声を上げる。\n すでに見慣れた光景ではあるが、永久に繰り返しても飽きることなどない。\n このまま生涯に渡って、この愛しい怪異の少女と繋がっていたい。\n\n(そのためにも……まずは、あの阿久津という男を攻略せねばなりませんね)\n\n 心音は夢中になって腰と手を動かしながらも、思考の半分では、情報の王の鉄壁の牙城をどう崩すか、冷徹なプランを練り直していた。", "afterword": "ここまでお読みいただき、ありがとうございます。\nよろしければ☆☆☆☆☆ 評価・ブックマーク・リアクション等で応援していただけると幸いです!"} |
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