| {"novel_id": "n0003ge", "chapter": 1, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0003ge/", "title": "百合えっち、からあげのお弁当的な", "content": "「お弁当でさ。メインのお惣菜の下に、よくパスタを敷いてるじゃん。あれ、なんでだと思う?」\n\n「ん〜……?」\n\n くちびるが離れたときに、そんなことを聞いた。\n 我ながら突拍子無い質問だけれど、ハシは私の身体ごしに宙をみつめて、首をかしげてみせた。律儀に考えているみたい。\n 肩に乗った茶色の髪が、もわっと撓んでいる。\n くちの中にちょっとだけ残ったハシの味は柑橘系。\n こいつ、ここで飴なんか舐めてたのか。\n なんか嫌みのひとつでも言ってやろうかと思ったけど、そんな資格はもう私に無いから、黙ってあいつの言葉を待ってた。\n\n「んーっと……カレーうどんみたいなものかなぁ」\n\n ハシは頭を傾けたまま、ころころと笑った。\n\n「え、どういうこと」\n「美味しいものと美味しいものの組み合わせは幸せでしょう? だから、入れてあるんじゃないかなぁ。お弁当食べたひとに、喜んでもらうために」\n「なに。ハシ、あれ好きなの?」\n「うん。なんか好きなんだよね〜。お弁当なら、あったら嬉しいなぁ」\n「あー……そう」\n\n 思った以上に墓穴は深くて、上手く返事ができなかった。\n 私がハシって呼んでる、こいつ——橋本穂波と多少なりとも接点をもって思い知ったのは、人懐こさと、内側に入り込むことの巧さ。\n 流石はクラスの人気者、とか言うべきだろうか。\n ちょっとだけ、むかつく。\n\n「にしちゃん。正解はなんですか?」ハシが楽しそうに突っついてきた。「お顔が赤くなってきたねぇ」\n\n「うるさ……」\n\n 寄ってきたほっぺを、指でそっと押し返す。いっこうに離れようとしないから、押しつけられた胸とか、身体の熱がちょっと暑苦しい。\n 半ばヤケになって、私は言った。\n\n「わかんない」\n「にしちゃんも分からないの?」\n「そ。わかんないの……意味わかんないのに、なんかあるんだよね。けど、どうせ嵩まし、引き立て役かなんか。ぱっとしない、ぱさぱさしたやつのくせに、空気読まずに、お弁当の箱に居座ってる邪魔者。うざいやつ」\n「…………」\n\n 気がつけばハシはぽかんとしていて、私は恥ずかしくなってしまった。\n\n「私は、そういうパスタなんだってさ」\n「……誰がそう言ったの?」\n「さあね。同じお弁当箱の……ブロッコリーとプチトマトとかじゃない。私が、ハシとここにいるのが気にくわないんでしょ」\n\n ハシから、人なつこい笑みがすうっと消えた。あいつらの名前は出さなかったけど、なんとなく察しがついたらしく……怒ってるんだか悲しんでるんだかわからない顔をしてる。クラスでは見れない表情だなぁと思うと、ちょっと面白かった。\n\n「にしちゃん、ごめんね」\n\n そんなことを言うくせに、ハシは私の手首を掴む。少しだけ抵抗をしてみたけれど、普段のほんわかしたイメージに反してというか、意外と力が強い。\n 今からぶんなぐります、みたいな顔のまま、私にキスをしてきた。\n\n「ハシが謝らないでよ。アンタもあのパスタ嫌いと思ったから、聞いたのにさ」\n\n ぐだぐだの空気の中、私は言葉に迷って……結局苦笑いした。\n\n「……ハシのこと、嫌いになり損ねたじゃん」\n\n ハシの脚が、私の股にぐっと割って入る。\n 大きな書架に身体を押しつけられて、いっそう暑苦しい。\n にしちゃん、と声が聞こえる。\n\n 放課後の図書館。\n 一番奥の、書架の陰。\n 言葉もなく、私からもハシの背中を抱き締めてやった。\n\n\n◆\n\n\n 橋本穂波は学年の人気者だ。\n ……っていうか、もし学祭でミスコンなんてやろうものなら、九割九部ハシにスポットライトが当たって、学園の人気者へと躍り出るだろう。\n 好みはあるだろうけど、ハシがかわいいのは確かだと、私だって思う。\n 頭髪の染色を禁止しているうちの学園で、数少ない地毛の茶髪をサラサラと靡かせて歩く様は軽やかで、視線の先には時計を持ったうさぎでもいるのかな、なんて想像をしてしまう。\n 明るくて、人なつこい。スタイルもいい……というか、深くは言わないけど、いろいろと男受けしそうな感じの体型。\n 黙っていればわりと大人っぽいのに、笑えばそこが日溜まりになるんだからふざけた話だ。\n\n ……もちろん、あいつにはあいつの苦労があるんだろうけど。\n そういうタイプって、とくに話したことでもなければ、なんとなく嫌いになってしまうものだ。\n 二年生になって、同じクラスになり……教室の中心でころころと笑うハシを見たとき、ため息をついてしまった。\n\n あのころの私と言えば、一年生の終わりに告白してきた男子を袖にしていて……面倒なことに、そいつは自分の恋模様を友達連中にぺらぺら話して回っていたみたいで、仲介役を頼まれたらしい女友達からのわざとらしいアプローチをあしらうのに苦労した。\n もともと友達は少ないし、要領だってよくない。そのときも、 もう少し上手いやりかたがあったんだろうなと今は思うんだけど……騒ぎが収まって、新学期が始まったころには、私は周りからなんとなく嫌われていた。\n そんな有様だから、私はハシとできるだけ関わらずに過ごそうと思っていた。誰に嫌われようが知ったことかと思いつつも、早くも人気になってるハシに騒動を知られて、新しいクラスでも浮くような事態は流石に面倒だから。\n\n ……それは、最初のホームルームで、ハシが私とおなじ図書委員に立候補してきたことであっけなく現実のものになった。\n 私の顔は、たぶん硬直していた。そして確実に、ハシの取り巻き——去年もクラスが一緒だったやつらも含む——連中の顔はひきつっていた。\n 委員の定員は二名。私が辞退するか、連中の誰かが立候補して抽選にでも持ちこめばまだマシだったのだろうけど、固まった空気の中で軽やかに動くことができたのではただ一人で——\n\n「にしかわさん、よろしくね」\n\n ハシがふわふわと笑っていた。\n\n\n 私が図書委員を選んだのは、単に去年もやっていた——図書館での業務さえしっかりやれば、あとは好きに本を読めるというのがいい——からで、他に意図はない。クラスで悪目立ちしたあげく校内で数少ない憩いの場を壊される最悪の未来を予測したのだけれど、意外にも図書館での平穏は保たれた。\n ハシは作業をさぼることもなかったし、友達を連れ込んで騒ぐようなこともなかった。きっと、あいつらから言いたい放題吹き込まれているだろうに、人なつこい笑みは私にも平等に向けられた。\n ……まあ結局、ハシと一緒の委員会になるという絶好の機会を図らずも奪ってしまった私は、無関心を貫くごく数名を除いたクラスメイトの女子からハシの不在時にはハッキリと敵意を示されたから、複雑な感情は消えないのだけど。\n ハシとは、なんとなく友達になってしまった。\n\n …………。\n\n ……あれ、おかしいな。おかしいよね。\n 今のは、ハシとぼんやりした友人になった経緯に過ぎないのに。\n 何で私は、あいつとキスしてんだろ。\n\n◆\n\n「ん、ふぅ……ちゅる、んむっ、はぁっ……」\n\n ハシと私は、何度も何度もくちびるを合わせる。ずうっとくっついたままでいたかと思えば、節操なく頭の向きを変えて、くっついて離れてを繰り返したりもした。\n ハシのくちびるは薄目だけど、弾力があってよく弾む。ふにゅっ、ちゅむっ、テンポよく押しつけ合うのは、ちょっと真剣味に欠けるけど楽しい。\n\n「ん、ふふっ……にしちゃん」\n「んっ……」\n\n だけど、ほんとうは食べ物で遊ぶなんてよくないことだ。すぐに傷んでしまうから。\n 不意につっつかれて口元を緩めれば、んっ、と鼻にかかった声を漏らし、ハシの舌が伸びてくる。見た目のかわいらしさとは裏腹に、たっぷりと唾液をまとったそれは強かで、自分よりも大きな相手にも臆さず立ち向かってくる。\n 今日はしっかりしたのが好みらしい。\n 私が受け入れたが最後、ハシは遠慮なく舌をふれ合わせてきた。\n\n「はむ、ん、ふむっ……んちゅぅ……ちゅる、れぅっ……はっぷ……ん、んんっ……」\n\n 唇を食んで、体温を感じて、舌でくちのなかを確かめていく。\n 対等に応えているようで、私はただ無造作にれろれろと舌を遊ばせるのが精一杯で……おぼろげながら、ハシの舌には意志のようなものを感じてしまう。\n\n なんか、やらしいなぁ。\n でもそれはハシがなのか、そういうキスを拒まない私がなのか、もうよく分からない。\n\n「ちゅぅ、ぱっ……ちゅるるっ、れろ、んむっ、っは、は、はしっ……」\n\n お腹の底が、とても熱い。\n ああ、ほんと。おかしい。こんなんじゃなかったのに。\n 私は別に同性をそういう目で見たことなかったし、今だって多分ちがう。\n ハシとこうなった理由とか切っ掛けは私の中にない。委員会の活動を通して少しだけ心を開いた相手に、いきなり攻め込まれたようなものだ。\n だから、最初——ハシが頬にキスをして来たときは、羞恥と混乱で思いっきり突き飛ばしてしまった。\n 一週間くらい、まともに口をきかなかったと思う。訂正する。私が無視をしていた。\n ハシが怒って、クラスの連中と一緒に私を攻撃してくるかも、なんて薄暗い予想と覚悟をせざるを得なかったっけ。\n でも、ハシは毎回サボらずに委員の仕事を続け、私に挨拶をして、それでいて周りに変なことを漏らしたりもしなかった。\n 結局、私は私で、あいつ以外に話すひとがろくにいないとか、ハシの友人連中への反抗心だとか……諸々のくだらない理由と時間の経過を以て、嫌悪感を風化させてしまった。\n なぁなぁの復縁を経て、今は委員会の仕事が全て片づいたのちの十数分でこんなことをするようになっていた。\n\n「ん、ふふっ……にしちゃんっ……」\n「…………」\n\n こうして見ると、完全に押し切られてるどころか、ずるずると悪い方向に落ちている最中だなぁ。\n へんなの。\n ハシが私をからかって弱みを握るつもりでもなければ、そっちってことになるか。だとしたらこいつ、女子と遊ぶのが好きで節操なく手を出してるとんでもないやつか——\n\n あるいは、単に、私のことが——\n\n「っ…………んん、ん」\n\n 馬鹿げた考えは、いつもここで止める。\n 真意なんか聞けるはずもなく、自分の気持ちを整理することも億劫で、私は自分の中でそんなに嫌じゃなくなったこの一時に、逃げるように没頭する。\n\n「あっ……ふふっ……♪」\n\n 少し油断していた。私のあごを伝った唾液を、ハシに指で拭われた。\n 行儀の悪い子供を見守るみたいに、目を細めて笑うから、居たたまれなくなる。\n\n(…………)\n\n(……仕返しをしたら、どんな反応するかな)\n\n 少しだけ勇気を出して、ハシと私の身体の隙間に、楔を——ピンと伸ばした右手を差し込む。あいつのわき腹を撫でたそれは、私の躊躇いを大いに反映させながらも、柔らかな身体のシルエットをなぞり、ハシのおおらかな胸の膨らみへと這い上がっていった。\n\n ハシが、意外そうに私を見る。私から触ったことのない場所だから無理もない。だから私は、これは事故や偶然でないのだと教えるように——\n\n そっと、膨らみに沿うように指を曲げ、ほんのすこし沈ませるだけの力を込めてみた。\n\n ふにゅ——\n\n「……ふ、あっ……」\n\n ハシが声を漏らした。綿をちぎったような、小さな音。もっと聞いてみたくなって、つい前のめりになってしまう。\n\n「んっ……にしちゃんからって、初めてかも」\n「別にいいじゃん。ハシは、私の胸触ったこと、あるし……いや、えっと。いい、よね」\n「ふふ……ん、ああ、ふぅ……」\n\n 身じろぎはしてたけど、拒絶はしない。\n 制服の袖を掴まれたけど、突き飛ばしもされない。\n 私たちの息が、少しずつ荒くなる。\n これまでは殆どされるがままだったから、変な気分になってくる。\n いや、実際に変なことしてるんだけど。\n やっばいなぁ。仕返しって大義名分、早くもどうでもよくなってきた。\n\n「……ハシ。もーちょっと、させて……」\n\n ブレザーに手を潜り込ませて、さっきよりも一枚近いところ……ブラウス越しに両手で触る。上着の熱が籠もってたのか、ほかほかしてた。\n 様子をうかがいながら、ふにゅ、ふにゅっと押し込むように胸を触り続けた。そんなに強い力じゃない。なんか良さそうな下着つけてるイメージがあって、変に力込めて歪ませたら悪いなって思ったのと……単純に、真正面から触るの、すごく緊張してたから。\n そんな力で……それに衣服越しでも、胸の大きさと感触はなんとなく分かって、私はハシの視線も気にならなくなるほど、夢中になっていた。\n\n「……うわ……ハシ、すご……これ、おっきぃ……」\n\n あっ、と思ったのは口に出してしまったあと。\n 恨むべきはスキだらけの私なんだろうけど——それにしても、ハシは楽しそうだなぁ。\n\n「にしちゃん。お気に召したかな。私のおっぱい」\n「……なんか、その言い方……ヘンタイっぽい。ハシ、恥ずかしくないの?」\n「ふふ、とーっても恥ずかしいよ。だからにしちゃんの秘密にしてね」\n「……あの、さぁ……」\n\n よくそんなこと、とか言い掛けたけど、触っている私にそんなこと言う資格はなかった。結局言葉は詰まって、どきどきしてとても苦しい。ああ、もう。「私も……」ってつぶやくのが精一杯で、私はハシの手をとって自分の胸にあてがった。\n\n「……! うんっ」\n\n 少しは驚いていたけれど、ハシはすぐに——服の上から触るので精一杯だった私とは対照的に——ブラウスをはだけさせてくる。\n あいつの細い指が、下着に収まった胸のふくらみに、ぷにゅ、と着地した。\n 身体が火照っているせいか、刺激はあるけれど、ぞわっとはしない。\n\n「にしちゃん、かわいい」\n「嘘でしょ。今日、そんな……大したの、着けてないもん……」\n「うーんと、そういうことじゃなくてね」\n「っ……言わなくて、いいから……」\n「……ふふ。にしちゃん。じゃあちゅーしよっか」\n「んっ…………」\n\n 今度は、ゆっくりめの優しいキス。\n くちびるをはむはむと甘えさせながら、相手の舌の動きに合わせるような、ねっとりしたやつ。\n 静かだけど、とってもきもちいい。これは、同性であること以前に、私たちのような小娘がやっちゃいけないやつな気もした。\n\n「んちゅ、ぅっ……んふっ……」\n「っ……」\n\n ハシはとうとう、私のブラまでズラしてしまった。直に見られるのは流石に初めてだ。\n やばい、はずかしい。そんな感情は溢れているのに、そこに危機感や嫌悪の色は混じっていない。\n ハシの指先が、ちょんと先っぽをつついた。\n\n「ちょっ……ん、ハシ、そこ……」\n「ふふっ……にしちゃん、ぴんってしてるね」\n\n 他人に触られているっていうのが、いつもより敏感にさせているんだろうか。ハシの指摘どおり、乳首はちょっと張っていて、揉まれているときに手のひらで擦れたり、指で突かれるだけで、そこからぴりぴりと刺激が広がってくる。\n ハシのことだから、面白がって強めに弄ってくるんじゃないかって予想は外れた。\n あったかくて優しい指とくちびるが、私の中でもつれたものを解いていくのがわかる。\n\n「ねえ、ハシ、さっ……」\n\n 私が続きを言う前に、ハシは軽く頷いて自分のブラウスもはだけさせた。\n ぷちん、ボタンがひとつ外れていく度に——\n ふるん、さっきまで私がおそるおそる触れていた胸が晒されていく。\n イメージどおりに上品なブラだったけれど、どきどきが強いのはやっぱりそのサイズのせいかな。偽りのない深い谷間が、ほんとにハシは同い年かっていう、ベクトルの違う疑問を生み出しそうになる。\n\n「わたしのも、直にどうぞ。にしちゃん……んっ」\n\n 勇気を出して、ハシのにもう一度触れる。\n 仕返しとかじゃないけど、あいつと同じようにブラをずらす。\n ふるん。\n 葉っぱから大粒の滴がこぼれたようなそれは、私の手じゃ受け止めきれなかった。手のひらから溢れて、心をふるわせる。\n だめ。だめだめだめ、どうしよう。\n 同じ性別のくせに、この——人肌に温められた幸せの扱いがまるでわからない。\n\n「ふあっ……ニシちゃんの手、あったかい……どきどきしちゃうね。大丈夫、おんなじようにしてくれたら、きっと気持ちいいから。お願いしてもいいかな……」\n「うん……わかった、けど……」\n\n 女同士で気持ちいいとか……なんて軽口は、頭にすら浮かばなかった。\n えっと、同じようにって言ってたっけ。\n\n たしか、こう。\n 相手を見つめながら、握りこむようにゆっくり指を曲げて——\n\n もにゅっ——\n\n「んんっ……あ、んっ……」\n\n それで、こう。\n やさしめに、先っぽに指を添えて、名前を呼ぶみたいに、指の腹でさすって——\n\n こしゅっ——\n\n「んんぁ、ああっ……にしちゃっ……」\n\n 上擦った声をあげて、ハシが身体を寄せてきた。どうしていいか、ちょっと悩んで……お互いの方に頭を預けるように、くっついた。\n\n「っ…………緊張する、これ」\n「はあ……はぁっ……」\n「……なんか言ってよ。下手とか、ダメとか」\n「んーん……とってもどきどきした。嘘じゃないよ? ……ね、それじゃ……にしちゃん。いっしょにおっぱい触りっこしようよ」\n「ああ、もう……」\n\n 恥ずかしいといえば、めちゃくちゃ恥ずかしい。胸の内の高鳴りも、いい加減うっとうしく感じてしまう。\n だけど、肌を重ねたこいつと見つめ合うことに苦手意識はなくなっていたし、キスも求められてたら応えて……スカートをくしゃくしゃにしながら、脚を擦りあわせて、この時間に耽っている。\n もっと知りたい、もっとしてみたい、そう思う自分は確かにいた。\n\n「にしちゃん。んっ……つぎ、こんな感じはどーかなっ……あんっ……ちくび、きゅっとしてから、やさしく、こーして……」\n「あっ、んっ、これっ……え、こう、でいいの……? うあ、これ……やばい、と思うんだけ、どぉっ……」\n「ああっ、ふあっ……そう、そうっ……おっぱい、気持いいですっ……にしちゃんも、大丈夫だからっ……あったかいのも、きもちいのも、一緒に……っ」\n「うう、ああっ……ハシ、これ、だめだってぇ……」\n「ふふっ……♪」\n\n 一人でするときに胸を軽く弄ることはあるけど、今はそれと比べものにならないくらいの刺激がある。びっくりするくらい、身体が反応している自覚がある。\n 雰囲気とハシに、全力で乗せられてる。\n お腹の底に熱が溜まって、脚が震え始める。\n\n「にしちゃん、かわいい。……んっ……やらしくて、かわいい」\n\n 震える私を壁に押しつけて、キスと触りっこを無理矢理維持しようとするハシはひどいやつだ。\n ……ひどいやつだけど、私のことをよく分かっている。\n やだ、もっと、やめないで、たすけてよ。蕩けた頭に浮かんでくる言葉は、そんなんばっかりだったから。\n\n「あむっ……ね、にしちゃん。聞かせて」\n\n ハシが髪をかき分けて、私の耳を甘噛みしてきた。絶対に無視をするなよってことかな。甘ったるい声を、至近距離でそそぎ込んでくる。\n\n「んん、んぅ……なに……? あっ、待って。とりあえず、もうちょっと、優しく……」\n「ふふ。それはいや。にしちゃんも、わたしに強くしていいから……ね、教えてほしいことがあるの。パスタのお話のこと」\n「……へっ……? いま、それ……聞くの?」\n「うん。とっても大事なことだから……にしちゃんがパスタなんでしょう? 同じお弁当箱の、わたしは何かなって、気になったの」\n「っ……さあ……たぶん、からあげとかじゃないっ……メインの、おかずでしょっ……」\n「……ふうん、そっかぁ……ふふ、わかりました」\n\n 不意にハシが手を止めて、私の腕からも抜け出した。くしゃくしゃになっていたスカートを直して、ちょっと後ずさって私を見つめてくる。胸を隠さないのはちょっとシュールだけれど、それは私も同じか。\n 胸の先っぽに、ぴりぴりと余韻が残ってる。せつない、と思ってしまった。\n\n「これは、食べ物の話なんだけどね——」\n\n ハシはまっすぐに私を見て尋ねた。\n\n「にしちゃんは、からあげって好きですか?」\n\n さっきまでの刺激のせいで、まだ息苦しい。はっきり言ってやるには、大きく深呼吸をする必要があった。\n すう、はあ。\n 堪らない感情を爆発させるように、私は応えた。\n\n「……からあげなんて、大好きに決まってるじゃん」\n\n 手を広げたハシに、私は思いっきり抱きついてやった。\n\n「にしちゃん……もうちょっとだけ、秘密のことしよう」\n\n\n◆\n\n「にしちゃん、力ぬいて? 気楽で、いいから……落ち着いたら、脚ちょっとひらいてほしいな」\n「気楽、とか……できる、わけないんだけどっ……うあ、はぁぅっ……」\n\n だだをこねてしまう私に、ハシは乳首をきゅっと抓って返事とした。畳みかけるように、さっきよりも下品でいやらしいキスをして、同級生との行為に対するなけなしの抵抗感をぐちゃぐちゃにされる。\n\n「ぷはっ、ん、なぁっ……! うあ、わかった、からぁっ……」\n\n 全然分かっていないんだけど——\n 夕方の見回りをしている守衛さんはもうやり過ごしたし、逃げ出す気力も残っていない。私はこのドキドキに、仕切り直すことさえできずに飲み込まれるほかない。\n ハシに促されて椅子に深く腰掛けていた私は、震える脚をわずかに開いて、スカートの中を見せた。\n\n「はぁ、はっ……絶対、ばかに、しないでよっ……」\n「にしちゃん。とっても綺麗……パンツ、湿ってるね」\n「っ…………!」\n\n やっぱりハシはひどいやつだ。\n\n「……いじわる。ばかにしないでって、言ったじゃん」\n「ばかにしてないよ。にしちゃんとこうなれて、うれしいもの。それに、お揃いのひとをばかにするのって、変じゃないかなぁ」\n「……あ、そ」\n\n 深くは聞かないでおいた。\n 震える声しか吐き出せないくちびるは手の甲で隠して、そっぽを向く。とてもじゃないけど、自分のスカートの中をまじまじと見つめるクラスメイトの表情なんて気にしていられないから。\n 一度ハシから目線を外せば、薄暗い図書室……いつもの日常の景色が、とんでもないことをしているんだなぁって実感を私に与える。\n 元通りにはなれないって予感も一緒に。\n\n(……どうなるんだろ。まだちょっと、こわいなぁ)\n\n 躊躇おうにも、それは遅い。\n 内ももをぺたぺたと触っていたハシの指は、パンツ越しに私のあそこを指で押した。\n あいつの言ったとおり、これまでの興奮の結果を滲ませたそれは、身体にぴっちりと張り付いていて、ほんの少しの接触に大きく反応してしまった。\n\n「んぅっ……んんん〜っ……!!!」\n「わ……すごい、にしちゃん……ぷちゅっていったよ……」\n「うっさい……すごくないっ……誰かに触られるの、初めてだからっ……すごく、ない、からっ……」\n「ううん。おまんこ、すごく濡れてる。いやらしくて、かわいい。嬉しいな」\n「もぅ、やだ……ハシ、いじわる言わないでよ……恥ずかしいんだってば……」\n「ふふ。ごめんね。じゃあ、最初はゆっくりしていくけど……パンツは、いいの?」\n\n ハシはしゃべっている間も、パンツにできた染みの周りをなぞってきた。\n 私は無言で頷いた。\n あいつの問いは、ただの確認だ。いつもひとりでするとき、ナカに指をいれるのは怖いからと、パンツの上から擦るだけの私が、そうするように頼んだのだ。\n「こっちを向いて」こしゅ、と布越しにハシの指が滑り始める。「わたしを見て。とろとろのお顔を見せてほしいの」\n\n しゅっ、こしゅっ、ぢゅっ、ぢゅくっ——\n\n 火花みたいに、気持ちいいが弾ける。頭の中にハシが焼き付いていく。\n ああ、始まっちゃった。\n キスの時点で不純ではあったんだけれど、これはもうエッチってことになるのかな。じゃあ、ハシが初めての相手になっちゃうんだ。\n ……びっくりだな。\n\n「あんっ……はぁ、はしぃっ……こわいっ……あたま、ふわふわして……変なんだけどっ……」\n「だいじょうぶだよ。にしちゃんが自分でしてるときと、同じように触ってるだけ。こわくないよ。ね、にしちゃん……気持ちよかったら、言葉にするのって、できるかな……?」\n「んんぅ、んっ……んーっ……」\n「……えいっ」\n\n ぐにゅぐにゅと押し込むようにこすっていたハシの指が、不意にクリを弾いた。\n\n「ひぅっ……?! あっ、うぁ、はしっ……!」\n「ごめんね。でも、せっかくエッチしてるのに、にしちゃんの気持ちを知れないのは寂しくて。後悔してないかな、ちゃんと気持ちいいかなって」\n「きもちい、きもちいいからぁっ……! はし、私、きもちいいので、いっぱいだからっ……!!!」\n「……ふふ。やったぁ」\n\n ハシが身体を寄せる。乳首がふれ合って、そのまま胸を押しつけあって。私は震える手で、あいつの肩にすがりついた。\n 休むことなくあそこを弄る指は、だんだんと速く、甘く、強くエスカレートして、最初は上からマッサージするようだったのに、今は布ごと指を沈めかねない勢いで擦ったり、クリを捕まえて弄んだりしてくる。\n\n「はぁっ……にしちゃん、にし、ちゃんっ……」\n\n ハシはハシでヒートアップしてるのかな。\n ここからじゃ見えないけど、どうも片方の手は自分のをいじってるみたい。\n にしちゃん、にしちゃんって、何回も震える声でささやいてきた。\n\n「はあ、はあっ……す、ごいっ……ねえ、にしちゃん。あなたのこんな顔……ほかのだれにも見せれない、えっちなお顔っ……ごめんね、ごめん。わたし——」\n\n 鼻の頭を擦り付けて、甘えてくる。\n 視界いっぱいに広がったあいつの顔も、赤く染まっていて、とても誰かに見せれるものではなさそうだった。\n なによりも、涙を流すのはよくない。\n\n「……わたし、すごく臆病で、寂しがりなの。傷つくのは嫌。そばに誰かがいないのは、いや。でも、わたしには……こういう秘密があって。誰か一人となかよくしたら、きっと迷惑をかけて、嫌われてしまうと思ったから……表面だけでも、みんなから好いてもらえるようになろうと思ったの。性格はいいとは言えないよね。にしちゃんは嫌いでしょ? 八方美人さんは」\n「……ん、まあね。最初、ハシのこと苦手だった」\n\n どう言おうか迷ったけれど、結局正直になった。\n ハシはクス、と苦々しく笑った。\n\n「……にしちゃんの噂はすぐに聞いたよ。ふふ、そのお話は気にしてなかったんだけど……にしちゃんのことは気になったな。自分と真逆だもん。わたしのこと苦手そうなの、お話する前から薄々わかってて……怖かったけれど……あなたに嫌われたままなのは、いやだなって思ったんだ」\n\n いつのまにかハシの手は止まっていた。\n\n「……自分勝手だよね。ごめんね。みんなには、噂話は気にしないよって言ったけれど、それだけじゃだめで……あなたに迷惑をかけてた。誰か一人と仲良くしたらだめってわかってたくせに、あなたに近づいて……二人きりのときは……勝手に内面を共有して、べたべたと依存してるの……ごめん」\n「…………」\n\n エッチの最中にするのが適切な話なのかは考えないでおく。\n 途中で止められたせいで切ないのは……もう少し我慢しよう。\n それよりも、今はこの困ったからあげちゃんの涙をどうにかしなきゃいけないな。\n 快感の波が一旦途切れたからか、柄にもなくそんなことを考えた。そういうことを考えるくらい、私は私で深いところに嵌まっているんだろうなぁ。\n\n 「ハシ——」\n\n 私から、もう一度抱き締めてみる。\n\n「……早く続きを言いなよ。ふふ、あはは。なんて顔してんの。エッチ中に自爆して、クールダウンしちゃいましたなんて、引いちゃうよ? ほら、なんでもいいからさ」\n「あう……にしちゃんが好きなのは、ほんとうです……」\n「ん……じゃあ、いいよ。それでいいから。さっきまで私をいじめてたやつが、泣かないの」\n「……ありがとう」\n「べつに。あんたのベタベタを受けとめきれるの、私だけだから……だからさ……」\n\n ハシから身体を離して、パンツをズラす。どうしようもないほどにこいつに蕩けさせられたあそこを、空気と視線に晒す。\n 切なくて堪らない。ここまできたら中途半端は許せない。だから——\n\n「……ハシ。ひとりじめ、してもいいよ」\n\n なかなか調子に乗った台詞だったけど、笑ってくれたからもうそれでいいかな。\n ハシは暑くて煩わしい、と言わんばかりに、はだけたり捲り上げたりして残っていた上半身の衣服を脱ぎさった。長い髪を後ろに流す。薄暗い部屋の光をかき集めて束ねたように、ハシの身体は白く浮かんで、私の目を惹いた。大きく膨らんだ胸の先っぽ——私より何もかも大きなそれは、ぷっくりと膨らんでて。\n 何も隠さすに、少ない言葉で言うならば——\n とても、愛おしかった。\n\n「……ちょくせつ、してもいいの?」\n「ハシなら、いいよ。あげる。悪いけど、お互いにする余裕はなさそうだから——」\n「うん、わかりました」\n\n ハシは膝立ちになって、私の身体——胸の上に、ぽふっと頭を預けてきた。片方の手でイスをしっかりと握り、もう片方であそこに触れる。サリュ、と湿った茂みを滑って、入り口を擦る。さっきより優しいのに、パンツ一枚で変わるものだなぁと思った。直接触られる方が、刺激が強い。それとも、単純に快感が蓄積してとっても敏感になっているだけかな。わからないけど——\n\n「ん、んぅっ……ん、んく……あ、れっ……」\n\n もしかして、これはまずいのかもしれない。\n たとえるなら、私の下半身が水を入れたバルーンになって、それを啄まれてるみたいな感覚。\n もどかしいというか、むずむずする。\n\n「ね、ねえハシ。やっぱり、もうちょっとだけまっ——」\n\n つぷっ、ぬるぅっ——\n\n 「ってくれない」を言い切らせてもらえずに、最後の頼りない一線は越えられた。\n\n(っ……はぁっ……!!!)\n\n いくら相手がハシで、指が綺麗で爪も短くたって、この瞬間の感触は私を容易に総毛立たせた。指は一本? 二本? わからないけどもの凄い存在感だ。\n かつてない興奮と初めての戸惑いがそうさせるのか、私のナカは侵入者の動向をこと細かに捉えて身体中に警報を響かせる。まあ、役に立たない司令部はすでに懐柔されているから、もうダメなんだけど。\n\n「ご、ごめん……わたしも夢中で。にしちゃん、入っちゃったよ……だいじょうぶかな?」\n「どう……見える?」\n「ううんと、ね……いっぱいいっぱいだから、まだ動かないで……かなぁ」\n「ん、だいせーかい……ちょっと、慣れさせて……っ」\n「うん。にしちゃん、無理そうだったら——」\n「それはいい。慣れたら、大丈夫だから。多分ね。……キスしたら、和らぐかな?」\n「やってみようよ。イスじゃなくて、私の方に体重かけれる?」\n「んっ……うんっ……んむっ……ちゅぅっ……れるっ……」\n\n 気を紛らわすって言い方は良くないか。\n だけど、ハシの唇に甘えているうちに、ぞわっとする異物感や漠然と抱えたままでいた不安なんかはぼやけていった。\n 今日だけで同じ相手と散々キスをしているのに、そのたびに印象が変わっている気がするなぁ。\n ややあって、少しずつ動かして欲しいと頼んだ。\n\n「ぷはっ……キスもきもちいね。それじゃ、にしちゃん」\n「ふっ、ふぅぅ、はあっ……あっく……」\n\n あそこに差し込まれた人差し指が、ゆっくり出たり入ったりしていく。何度か胸にキスもされた。\n さっきよりはずっとマシで、今は快感がやや勝っている。\n きもちい、ぽつりと落とした言葉が、ハシは嬉しかったみたい。\n\n「よかった。ナカにいれるの初めてって言ってたから、どきどきしちゃった」\n「んっ……ふうっ……ハシは、慣れてるんじゃない、のっ?」\n「ひとのは全然違うよぉ。わたしは、だって……人に言えなかった分、ひとりでたくさんしてたってだけ……あは、恥ずかしいな」\n「…………」\n\n ふうん。……じゃあ、ハシも誰かとのエッチは初めてってことかな。\n\n「私、もっ……こんど、ハシにしてみたいなっ……」\n「もちろん、いいよ。じゃあ今日は、いっぱい幸せになってもらわなきゃ。わたし、上手にできるかなっ……♪」\n\n ぬりゅっ、ちゅくっ——\n\n「〜〜〜〜っ」\n\n 私の感覚が正しければ、ハシは指を一本追加して、それを軽くナカで曲げてきたのだと思う。\n 新しい刺激が、甘い空気を散らしてしまう。\n 抉るというにはやさしいけれど、撫でるというにはしたたかで……なんだろう、柔らかいアイスクリームの私が、ディッシャーに掬い取られるような……いや意味分かんないな。\n とにかく、まったく機能していない頭だけれど、ハシとのエッチはここからが本番なんだろうなっていうのはわかった。相性ってものかな。なんとなくだけど、私は上から弄るよりは、ナカのほうが好きな気がする。\n あとで、オナニーのしかた……教えてもらおっかな。\n\n ぢゅ、くりゅっ——\n\n「っ……んっぎ……これっ、はあ、ゆび、やばい、ねっ……」\n「ふふ……大丈夫だよ。えっとね、ゆっくり……おまんこのなか、こすっていくから……特に気持ちいいところがあったら、教えてくれる? そしたら——」\n\n すこしだけ口ごもって、ハシは続けた。\n\n「そしたらわたし……いっぱい、にしちゃんを、めちゃくちゃにしちゃうから」\n\n あいつ、大まじめな顔してた。\n わざわざそんなこと言わないでよ、身構えちゃうから……なんて台詞、口からは出てこなかった。\n 身体の震えは、寒気でも恐怖でもない。私は期待してしまっている。\n 私が「お願い」と零したのを拾い上げ、ハシが動き始める。ぴったりとくっついた二本指が、まんこの中をかき回そうとする。\n 最初……指一本だけ差し込まれたときは、ヌルヌルと動くのを体内で感じるばかりだったけれど——\n\n クチュ、クチュッ——\n\n 今は粘ついた水音が、耳まで届く。\n それを聞いてさらにドキドキして、どんどんエスカレートして……最後は弾けてしまうんだろうな。\n\n「にしちゃんっ……おまんこ、とっても温かい……とろとろで、エッチだね……わたしも、興奮しちゃう……はぁっ……」\n「っ、それっ……ハシがかき回すのが、原因でしょっ……あっ……!」\n「んふふ、誉めてくれてありがとう。とってもすてきよ」\n「そんなんっ。ちがっ……はぁうっ……あああ、あっく……」\n\n 身じろぎしたり、悶えたり、目をつぶって浸ったり。合間合間にあいつの顔を見ると、大抵目があった。\n ハシは多分、私の様子をすごく気にかけてくれていて、丁寧にエッチしてくれている。丁寧にめちゃくちゃにするってなんとも変な話。でも、私自身がそれを期待してしまっている。\n\n ああ、きもち、いい。\n まいったな。\n これ、すき。とっても好き。\n ハシとのエッチは、すき。\n で、私は——\n ハシのことが大好き。\n\n なんか、恥ずかしくなってきたな。エッチの話じゃなくて、これまでのこと。子供みたいなことばかりしてた。\n いや、ハシはハシでめちゃくちゃなやつだとは思うけれど——\n 私は私で、つまらない女だったな。\n 押し切られて、根負けして、絆されて、この関係が生まれた。それは、嘘。きっと違う。\n 私だって、ハシに救われてきたじゃんか。\n\n「……ね、ハシ。私——」\n\n 間がいいのだか悪いのだか、不意に言葉を途切れさせるほどに強い快感の波が押し寄せた。\n\n「っう、ああっ……?!」\n「にしちゃん……」\n\n ハシが手を止めて、心配してくれる。\n ダメ、だ。自分から言わなきゃ。\n 懸命に声を絞り出した。\n\n「はひ……は。ハシ……いまの、もーいっかいして……? 多分だけど、いちばんよかったから……」\n「うんっ……こう、かな?」\n「っ……えと、もうちょっとだけ浅いとこっ……あっ、あっ、そっ、きもち、ああっ……!」\n\n ハシに触れていた手に力を込めてしまう。\n\n「……ハシ。お願い。いっぱいして。ハシがいいの。ハシにしてほしい……」\n「にしちゃん……ふふ、大好きよ」\n\n 私だってと言いたかったけれど、それは口に出せなかった。\n あいつの指が出たり入ったりしながら、たった今教えたばかりの弱いところを抉ろうとしてくる。\n 怖くなるくらいきもちよくて、何度も名前を呼ぶ。それが聞こえているのかは知らないけど、ハシも同じように私の名前を口にしていた。\n 嵐の夜、ふたり寄り添うみたいに。\n\n「っ……はしぃっ、もう、あうっ……だめっ、いっちゃう、いっちゃうからっ……! はしじゃなきゃやだからっ……! おねがいっ、すきっ、ハシがいいっ!! だいすき、だから……!!!」\n「うんっ……いって、にしちゃん。……めちゃくちゃに、なっちゃえっ……わたしで、いっぱいになっちゃえっ……いって……!!」\n「うあ、あっ、だめ、っ……ああ、ああぁあっ……!!!」\n\n ハシと身体を押しつけあって、目をつむったまま絶頂を迎えた。身体をがくがくと震わせながら、恥も外聞もなく声を上げてしまったみたい。初めてのえっちは、それほどに強烈だった。\n\n 感情の暴風が、何もかも吹き飛ばしてしまった。\n あったかい、ハシだけをそばに残して。\n 私がハシとよぶその子は、橋本穂波という。\n クラスをひとつのお弁当箱にたとえたら、メインのからあげみたいな女の子。\n じつは、私の大好きなひとだ。\n\n◆\n\n「大丈夫……そう。よし、行くよハシ」\n\n 流石にこの時間ともなればどの部活も活動を終えていて、校門も閉まっていた。ただ、端っこの古い弓道場の脇にある出入り口は、ポールに鎖をつないだだけで、そこからなら簡単に抜け出せることをよく知ってる。\n 唯一明かりのついた職員室を通り過ぎても気は抜かずに——\n 部室棟で誰かがダベっていないかとか、うっかり忘れ物した誰かがいないかとか、時間も場所もお構いなく夢中になっていた同類はいないか、なんて。\n ひとつひとつの可能性にドキドキしながら、ジャージ姿の私たちは、薄闇のなかを忙しなく泳いでいった。\n\n「はあ、はあっ……どきどき、したねっ……」\n「お疲れさま。ふう……ちょっと休んで、あとは歩こ」\n\n 学校から抜け出して、今は静かな住宅地。\n アパートメントの軒先で、ハシは笑った。\n 足を止めると、汗が吹き出る。流石に私も疲れた。脱出時の緊張とか、エッチの疲労と、身体のいろんな所に残ったじんわりした痛みに熱と……あとから思い出したときの居たたまれなさと。\n 特に、最後……私たちがわざわざジャージに着替えた原因。あれは本当に良くなかった。\n\n「あー……ほんと。ハシ、お願いだから、最後の忘れて」\n「そんなに気にしないでだいじょうぶだよ。夢中だったし……最後にああなっちゃうの、おかしくないよ。けど……」\n\n 一拍おいて、ハシは続けた。\n\n「……今日が金曜日でよかったよね」\n「ほんとごめん……」\n「ふふ、いーえ」\n\n どちらともなく手を取って、指を絡めていく。感触を、形を、確かめて噛みしめるみたいに何度もやわやわと握り直す。\n 歩幅を合わせてゆったりしたペースで、光の点と点をつなぐように帰り道を辿る。体は重たいけれど、胸の内に溜まっていたものは少しだけ軽くなって、なんとなく気分がいい。どこまでも調子がいいな、私は。\n\n「……」\n\n この変化は成長と呼べるものではないんだろうけど。\n 時間が経ったとき、後悔も、軽んじることや逆恨みも、私が選ぶことがなければいいなと胸の内で考えた。\n\n「ハシさぁ。これ……昔も言ったけど、クラスではいつもどおりでね。関係がばれるのがいやなんじゃないよ。でもさ、あいつらはハシを慕ってて……私のことが嫌い。で、私もあいつらは嫌い。仲裁してくれても、いいことないと思うからさ」\n「……にしちゃんが、嘘じゃなく平気って、言ってる内は……ぜんぜんわかんないけど、わかった」\n「はは。ハシって、けっこー頑固」\n「にしちゃんに言われたくない」\n\n わかりやすいふくれっ面で話を聞いてたハシは、手を解いたかと思えば今度は腕に抱きついてきた。歩きづらさもさることながら、思いっきり胸が当たってちょっとドキッとした。ハシ、ノーブラなの? とは言えなかった。\n\n「っ……ハシ、あつくるしい。歩きづらい」\n「にしちゃんがいやならやめるね。ふりほどいても、いいよ」\n「……あ、そう」\n\n 少しだけ言葉に迷った。じゃれつくみたいに、私の頭をそっとハシに預けてみる。\n\n「ねえ、ハシ。最初の話、覚えてる? ほら、おかずの下に敷いてるパスタの理由」\n「うん、もちろん」\n「あれってさ……まあ、食べる側の印象はいろいろあると思うんだけど、お弁当屋の思惑がちゃんとあるんだよね。……その、お総菜の……余分な油を吸い取ってあげるんだって。それで……」\n「うん……うん」\n「だからその、ね。……ハシがべたべたしてきたら、私も影響受けるというか……」\n\n 話しながら居たたまれない気持ちになって、最後には俯いてしまった。\n こういうとき、ハシは容赦がない。\n 沈黙にくすくすと笑い声を溶かしたかと思えば、ほっぺにキスをしてきた。\n\n「にしちゃん……好きよ。大好き。ねえ、明日は遊びに行こうよ。楽しいデートがしたいんだけど、どうかな」\n「……そーゆーの、やめよ。ほんと。今、そういうのかわせないから」\n「本気で言ってるもの。にしちゃん、お返事を聞かせて?」\n「すっごい、嬉しい。絶対行く」\n「ふふ。じゃあ、寝る前に電話しちゃおっと」\n「うん……待ってる」\n\n 結局、帰り道が分かれる最後の最後まで、ハシは私から離れないでいた。\n そしてそれは、私が離さなかったとも言える。", "preface": "● 橋本穂波\n茶色のロングヘア。\n表情豊かで、人当たりもいい。クラスの人気者な女の子。\n出るところがしっかり出た、抜群のスタイル。\nお弁当でいうと、メインのからあげ。\n\n●西川\n黒のショートカット。\nクール…というか、人付き合いが苦手。色々あって、クラスでは浮き気味な女の子。\nスレンダーで、胸は平均的。\nお弁当でいうと、付け合わせのパスタ。", "single_page": true} |
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