Krixter/Repo / n0005cn /119.json
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{"novel_id": "n0005cn", "chapter": 119, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005cn/119/", "title": "119 狩人の技術", "content": " これほど身体が思う通りに動くのは初めてのことでした。\n いえ、思う以上にです。\n 目に映らないところのモンスター達の動きまでもがわかるようで、後ろからの攻撃にもかすらせることすらさせません。\n\n 洞窟の奥へと進んだ今、相手にしているのは大きな身体のモンスター。\n トロールというそうで、大きいだけあって力強さを感じます。\n それでも、私達にとってはいないも同然でした。\n\n「ガァァァッ!」\n\n 複数のトロールが手に持った大きな槌を振り回し、振り下ろしてきます。\n\n 彼らは力があります。\n 一発当たるだけでひとたまりもないでしょう。\n\n でも、彼らは身体が大きく、武器も大きいのです。\n 攻撃範囲が広いぶん、そこには確かに死角もあるのです。\n 目の前から振ってくる槌に対し、一歩斜め前へ踏み出しました。\n\n 私のすぐ後ろでズシンと音が響きます。\n 足元から土埃が舞ってきます。\n 確認なんてしている暇はありません。\n いくら鈍重なトロールでも、そこまでの余裕はありません。\n\n 目の前のトロールとは別のトロールが、私に向かって槌を振り下ろします。\n 私の身体はまだ前方のトロールを向いていて、さっきと同じように槌の内側へ避けることはできません。\n 身体を止めること無く、さらに一歩を踏み出しました。\n\n 後ろのほうで二度目の衝撃。\n けれどやっぱり私にダメージはありません。\n 目の前のトロールの脚をくぐって背後へまわります。\n 身体を戻すと背を向けた無防備なトロールがいるのですが、ここで攻撃するわけにはいきません。\n だって私の役目はあくまでモンスターを引きつけることですから。\n\n 振り返ったところでトロールの顔に複数の矢が刺さります。\n 1本、2本、3本とテンポよく。\n 右目に刺さって、左目に刺さって、最後は眉間を打ち抜きました。\n 体力のありそうな見た目ですが、急所に当たると大きなダメージを受けてしまうのでしょう。\n 矢の3本だけでトロールはその身体を消していきました。\n\n 残りのトロールは……5匹です。\n まったく当たる気がしませんでした。\n\n\n「ふう……ヨウは大丈夫ですか?」\n\n 無言で頷いてくれます。\n 相変わらず喋らない子です。\n\n そんなヨウの様子ですが、私と同じようにかすり傷すら負っていません。\n 不思議です。\n 私もそうなのですが、なんだか非常に身体がよく動くのです。\n 集中しているからなのでしょうか。\n それはもちろんですが、他にも理由がある気がするのです。\n\n「ユウカちゃん、さすがだね」\n\n「いえ、夕凪さんとニィルさんのお陰ですよ。私達は攻撃していないんですから」\n\n 近寄ってきた夕凪さんとニィルさんに応えます。\n 夕凪さんは笑顔なんですが、ニィルさんはなんだかムスッとしています。\n とどめを刺した数が負けているのかもしれませんね。\n\n「そろそろ終点だろうから気をつけてね」\n\n「そうなんですか?」\n\n「多分だけどね。最初は3人並んだら限界だったのに、今じゃこんなに広いスペースになってるじゃない? 天井も考えると、これ以上広いと地上まで突き抜けちゃう気がするんだよね」\n\n そういえば、私達は穴から落ちて洞窟に入りました。\n その穴は大体3階ぐらいの高さで、それは洞窟の奥に進んだ今の高さに近い気がします。\n なるほど、そう言われると最奥部が近づいてきている気がします。\n\n「モンスターもどんどん大きくなってきているからね。……まぁ、ユウカちゃんたちにとっては大きいほうが楽なのかもしれないけどね」\n\n うふふ、それは確かにそうでした。\n そもそも人型というだけで、コウモリや虫なんかと違って動き方に予想がつくのです。\n それがどんどん大きくなって動きもどんどん鈍くなって。\n 私とヨウにとっては奥に進むほど簡単になっているのです。\n\n「それでは奥に進みますね」\n\n ヨウと一緒にさらに奥へと進んいきます。\n それにしても、ここは本当に迷宮なのでしょうか。\n 穴に落ちて洞窟を進んで、その洞窟はずーっと一直線でした。\n 罠もなく、盗賊の存在意義が問われます。\n はたして【解錠】スキルが役立つ日はくるのでしょうか。\n\n そうして進んでいって。\n ついに行き止まりとなりました。\n 半分に切った円錐状に広がっていった洞窟ですが、ついに奥に壁が見えたのでした。\n\n「何も……ありませんね?」\n\n モンスターを探すのですが見当たりません。\n ヨウも頷くので、同じく見つけられていないのでしょう。\n\n 何もないのでしょうか?\n そんなことはないでしょう。\n まだクエストは続いています。\n\n ゆっくりと奥へ進んでいきます。\n 行き止まりだとわかる、程度の距離から行き止まりだと断言できる距離まで。\n 一歩ずつなにもないことを確かめながら。\n\n どこかからピシリと音がしました。\n 目の前が少しぼやけます。\n 霧? いえ、洞窟で霧はないでしょう。\n となると砂埃。\n 足音も立てないぐらいに静かに進んでいるのに、少しずつ砂が舞い始めます。\n\n 砂に混じって小さな石が降ってきます。\n そう、降ってきたのです。\n 上を見上げると、洞窟天井に大きなヒビが走っていました。\n そのヒビは見上げている瞬間にも大きくなって、そして一度に砕け散ります。\n\n 破片は私達のすぐ前に落ちてきます。\n 破片と一緒に、巨大なものも落ちてきました。\n 着地する衝撃に洞窟全体が揺れた気がします。\n\n「グフゥゥゥゥ……」\n\n 息が私の顔まで降ってきます。\n それは先程まで戦っていたトロールと同じ顔でした。\n でも違うところもあります。\n さっきまでのトロールは、出ているお腹を隠しもしない、腰巻きだけのセクハラトロールです。\n 目の前に降ってきたトロールは違います。\n 立派な鎧を身にまとっていました。\n それに武器も、槌から大きな剣へと変わっています。\n\n 槌と剣だったら、多分剣のほうが振りやすいですよね。\n 空気抵抗が小さそうですし。\n つまり振りが早くなるということで、今まで以上に気を使う必要がありました。\n\n それでも恐れてはいけません。\n 私達が向かわなければ、トロールは夕凪さんたちへと向かいます。\n 引きつけるのが役目です。\n さあ、今までと同じように懐まで飛び込みましょう。\n\n\n------\n\n\n「トロールナイト、ね……」\n\n 洞窟の終点で現れたのはトロールナイトと言うみたい。\n 今までのトロールとは違い、身体のほとんどが鎧で覆われている。\n 地肌が露出しているのは顔、あとは膝と肘だけみたいだね。\n まあ、目に当てるからいいんだけどね。\n\n 私とニィル、殆ど同時に矢を射った。\n 私の矢はトロールの左目、ニィルの矢はトロールの右目へと吸い込まれるように飛んで行く、はずだった。\n 今までは間違いなく目に刺さったはずなのに、そのトロールは造作も無いとばかりに頭を振って私とニィルの射った矢を避けたのだった。\n\n「思ったより面倒だね」\n\n 面倒というか、当たりそうにないね。\n 何度か顔めがけて射ったのに、全部の矢を避けられちゃった。\n とはいっても、顔以外はダメージが通りそうにないんだよね。\n\n「顔は無理だっ。なんとか動きを止めないと……」\n\n ニィルは顔に当てることを諦めて鎧めがけて矢を射っている。\n それらは躱す必要がないのか、トロールには当たっているのだが鎧に弾かれている。\n 残念ながら、ダメージにはなっていなかった。\n\n「残念ながらこの距離じゃあたりそうにないね。もっと前に出なきゃ」\n\n「っふざけるな! あたしたちは狩人だ! 獲物から離れてとどめを刺さなきゃ狩人の意味がないだろう!」\n\n「でもこの距離じゃ私達の矢はずっと当たらないよ?」\n\n\n この洞窟に入ってから私の弓の調子がいい理由。\n そしてユウカちゃんとヨウの動きがいい理由。\n 私にはちゃんと検討がついている。\n\n ユウカちゃんは知らないだろうね。\n 知ってるのはアイリーとマトヴィぐらいかな。\n いや、検証系の掲示板を見てるのは私だけかもしれないね。\n\n スキルの成長。\n 私達が最初に覚える武器スキルは、レベルが上がっても何の意味もない。\n ただそれだけ使ったことがあるという証になるだけだ。\n レベル1でもレベル100でも、ステータスにはなんの補正も入らない。\n\n だったらレベルを上げる必要はあるのかってことだけど、もちろんある。\n 私の【弓】レベルが100になって、やっとスタート地点に立ったのだ。\n これだけ使って、基本的な扱いを実践で覚えて。\n それでやっとスタートラインなのだ。\n\n 成長させる方法はふたつ。\n まずは道場を開いているNPCに弟子入りすること。\n それで私だったら【弓】スキルを【弓術】スキルに成長させることができる。\n でも残念ながら私はその手段を選べない。\n だって一ヶ月もの間、ずーっと道場通いをしなければならないのだ。\n 朝から晩まで道場に通う必要はないけれど、毎日何時間かは通わなければならないという話だ。\n そんな時間は私達は取れない。\n\n だから、もうひとつの方法だ。\n つい最近、やっとほぼ断言できるようになった成長のさせかた。\n まずは自分の成長させたいスキルがカンストしていること。\n そして、同じスタイルのNPCとペアで動くこと。\n そうすると、場合によっては成長するという話だった。\n\n 例えばユウカちゃん。\n 今はヨウちゃんと一緒に動いてて、その動きは昨日までとはまったく違っているものだ。\n もしかしたらなんらかのスキルが成長してるんじゃないかなって思う。\n\n そして私も。\n 普段よりも命中率が高い気がする。\n でもそれはおまけで、目当てはもちろんスキルの成長。\n ユウカちゃんもそうだけど、私の【弓】スキルもいいかげん成長してほしいところだった。\n\n\n「……このままじゃ埒が明かないね。ねえ、ニィルのお父さんたちだったらどうにかできるのかな?」\n\n「できる……けど、あたしには無理だ」\n\n「そうなの? それじゃあ、私に教えてくれないかな」\n\n そう伝えるとニィルが睨んでくる。\n そもそもそんな必要もないのにね。\n\n「ニィルはさ、狩人の強さを教えたいんだよね。だったらさ、私も弓を使ってるんだし、そこまで敵視しなくてもいいんじゃないのかな。このメンツだとむしろ私とニィルは唯一の仲間だよ。これ以上なにもしないのなら、後ろで見てるだけの皆も参戦しちゃうよ。それでなくても、ユウカちゃんとヨウちゃんがアイツを倒しちゃうよ」\n\n モンスターの倒した数を競ってたけど、だからといって出てくるモンスター全部を私達で倒す必要はまったくない。\n それどころかもう結果は出てて、トロール1匹を倒したところでもう逆転は無理だった。\n だからだろうか、ニィルはすぐに折れてくれた。\n\n「……分かった。あたしも他の奴らに倒されるぐらいなら、まだ夕凪に倒してもらったほうが気分が楽だ」\n\n ……ああ、よかった。\n 実は結構不安だったんだよね。\n この子をおだてたら技を教えてくれるのか、それともあおったほうがよかったのか。\n 結果的にニィルは技を教えてくれるみたいだけど、教えてくれなかったらどうしようってところだったよ。\n この結果はちゃんと皆に伝えないとね。\n 多分ユウカちゃんがすぐにでも【剣術】を覚えるだろうね。\n 二刀流だからまた別のスキルかもしれないけど。\n\n 他は……武器が被ってないんだよねえ。\n アイリーは魔法だったらもしかしたらティエルと成長できるのかな。\n でも火と水だから無理かもね。\n\n まあ、そこは後で考えよう。\n\n ニィルの指示に従って弓を構える。\n ちょっとした身体の向きとか以外は普段通り。\n こんなのでちゃんと技がでるのか、不安になっちゃうね。\n その不安なまま、私はトロールに向かって矢を放つ。\n\n\n------\n\n\n すごく暇な時間でした。\n トロールの攻撃は剣になってもやはり鈍重で、私もヨウもとても余裕がありました。\n 余裕がありすぎて、遊び心しか生まれてきません。\n\n 私とヨウは遊んでいました。\n 今はヨウが私を捕まえようとしています。\n 私達はとっくに武器をしまって、トロールから離れないようにそこらじゅうを駆けていました。\n ヨウが伸ばす手を避けるように、そしてトロールの振る剣も避けて動きます。\n ひたすらトロールの周りをぐるぐる駆けて、時には股をくぐって、たまにトロールの背も登って。\n\n あら、ヨウの手が私のおっぱいに触れました。\n これで今度は私が鬼ですね。\n\n 今回の戦闘はすごく長引きそうでした。\n 私達はいつもの様に引きつけたのですが、トロールはその状態でも矢を避けていたのです。\n なんどか後ろから飛んでくる矢を見ましたが、トロールはいずれも避けていたのです。\n 身体に飛んできた矢は無視してて、残念ながらトロールは今でも元気一杯です。\n\n そもそも矢じゃ倒せないモンスターなのかもしれませんが、ちらりと振り返るとなにやら夕凪さんとニィルさんが話し合っていした。\n ふたりで相談しているのでしょう。\n 弓が無理だと分かったら皆さんで攻撃するはずです。\n それが始まらないということは、まだ夕凪さんもニィルもふたりでなんとかしようとしているはずです。\n 私達は変化があるまでひたすらトロールを引きつけましょう。\n\n また後ろから矢が飛んできます。\n 高さは……どうやら胴体狙い。\n 残念ながら鎧に弾かれてしまいそうでした。\n\n「ゴアアアッ!」\n\n その矢はなぜか鎧を貫き、トロールにダメージを与えました。\n トロールの動きが止まります。\n その身体に2本、3本と鎧を貫いて矢が刺さっていきました。\n\n 思わず、一瞬だけ振り返ります。\n 射手は夕凪さんで、ニィルさんはもう弓を構えていません。\n ということは、鎧を貫いた攻撃は全て夕凪さんだったのでしょう。\n こんな攻撃もできたんですね。\n\n ……いえ、初めて見る光景です。\n 飛んでくる矢の一本一本は薄っすらと光っているのです。\n 今までの射つだけだった矢から、何かが確実に変わっていました。\n\n 矢が刺さるたびにトロールは悲鳴を上げ、その動きを止めています。\n 身体を止めているうちにまた新しい矢が刺さり、また吠えて身体を止めて。\n もう刺さるところがないというぐらいに、トロールは身体中から矢を生やしていました。\n\n「なんだか不気味ですね」\n\n「いい気味です」\n\n 私達は引きつける必要もなくなって、邪魔にならないように見ているだけです。\n そして最後の矢は、見事にトロールの眉間を貫き、その身体を散らせていったのでした。", "afterword": "名前:ユウカ\n種族:人間Lv71 (↑5)\n職業:隠密Lv3 (↑2), 復讐者Lv39 (↑4)\nクラン:Crystal Vespa\n-\nHP:3650/3650 (↑250)\nMP:3650/3650 (↑250)\n-\nSTR:310 (↑20)\nVIT:120\nAGI:870 (↑30)\nDEX:670 (↑10)\nINT:350\nポイント:430 (↑50)\n-\n【パッシブスキル】\n短剣Lv100, 投擲Lv28\n看知の瞳Lv32, 工人の瞳Lv11\n夜目Lv38 (↑2), 超聴覚Lv67 (↑12), 気配察知Lv75 (↑14)\n農業Lv18\n【アクティブスキル】\n影魔法Lv100\n隠密Lv47, 解錠Lv20\n料理Lv32, 裁縫Lv81, 釣りLv8, 製糸Lv26\nポイント:189 (↑8)\n【レジストスキル】\n幻惑耐性\n-\n【実績】\n復讐達成+5, 性豪+8, 信頼+5 (↑1), 呪文個性+8\n-\n【資産】\n1,700,750e\n-\n【装備】\n武器:短刀・黒光、短刀・白光\n防具:速度低下耐性の和服、隠密補正の帯\n   雨蜥蜴のアーミーベスト\n   鰐皮の篭手、鰐皮の脛当て\n   隠密補正のマフラー\n   認識阻害のアームカバー、認識阻害のタイツ\n   速度低下耐性のサラシ、黒い下着\n装飾:婚約の腕輪+6\n   転移のイヤリング"}

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