Krixter/Repo / n0005cn /172.json
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{"novel_id": "n0005cn", "chapter": 172, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005cn/172/", "title": "172 子育ての方針", "content": "「アイリー、行きますよ!」\n\n「はいっ!」\n\n 太刀を両手に持ったアイリー目掛けて突っ込みます。\n 真正面から、私は短刀をそれぞれの手に構えながら。\n 目指すはアイリーの間合いギリギリの位置まで。\n そこまでは真っ直ぐに突っ走りました。\n\n「そこっ!」\n\n ギリギリのタイミングで身体の動きを止めます。\n 振り下ろされたアイリーの太刀は私のすぐ目の前を通過していきます。\n 風が私の身体を斬り裂くみたい。\n ゾクリと感じながらも、私は身体の動きを止めません。\n\n 太刀の動きを見送るような隙は見せず、すかさずアイリーの右手へと回り込みます。\n 同時に左手の短刀をアイリーの顔めがけて突き立てます。\n 私の動きが分かっていたのでしょうか、アイリーは難なく私の短刀を弾きました。\n ついさっき太刀を振り下ろしたばかりなのに、もうアイリーは太刀を構えているのです。\n\n「……スピードは私が有利かと思ったのですけれどね」\n\n「私のほうが運動が得意なんだし、そう簡単にはやられないわ」\n\n むう、それでは負けたほうが運動神経が悪いということになってしまうではありませんか。\n ……事実ですけれど。\n でもね、ステータスでは私のほうがスピードはあるはずなのです。\n もっと速く、もっと速く。\n アイリーの目にも止まらないぐらいに速く。\n そう意識して再びアイリーに短刀を向けました。\n\n\n------\n\n\n『我が祈りはいつもあなたと共に\n 彼の傷を癒やしたまえ\n ──ヒーリング』\n\n 模擬戦を終えた私とアイリーに対して、ヨミさんは覚えたての聖魔法を使って回復してくれました。\n\n「これが魔法……これを私が……」\n\n 初めての魔法に感動……いえ、動揺でしょうか。\n 目の前の相手が光りに包まれるのはなんとも不思議ですよね。\n\n「どうやら無事に使えるようになったみたいですね」\n\n「はい、おかげさまで。これでもう心配はありませんか?」\n\n「心配は心配なのですけれど……だからといって、私が付いて行くわけにもいきませんからね」\n\n 【聖魔法】を覚えたてのヨミさん、それにアマエとルダの3人はこれからアーバウンドに向かいレベルを上げてくる予定でした。\n\n『あの……レベルも上げたほうが、今度スキルを覚えやすくなるんですよね?』\n\n 昨日戻ってきた後でヨミさんが私に伝えた言葉です。\n 一緒に戻ってきたリコと何かを話したのでしょうか。\n ヨミさんはなんだかやる気が溢れていました。\n 昨日のうちにヨミさんのローブは完成しています。\n それに武器も、いつの間にかアマエが作ってくれていました。\n 足首までの真っ白なローブに、木と石で作った立派な杖。\n どこからどう見てもヨミさんは立派な聖職者に見えました。\n\n「危なくなったらすぐに逃げてきてくださいね?」\n\n「はい、それでは行ってきますね」\n\n「……行ってくるわ」\n\n「あの、行ってきます……」\n\n ああ、やっぱり不安です。\n でも私も一緒だとレベル差がありすぎるのです。\n 同行するとロクに経験値が入らなくなってしまうのです。\n 不安ですが、ここは彼女たちを信じて待つしかありませんでした。\n\n\n「ユウカさん、これを植えましょう!」\n\n 彼女たちを見送った後も水晶の前に立っていた私にリコが話しかけてきます。\n 手に持っているのは昨日話していた『蔓塊』と『木魂』です。\n\n「そうですね。さっそく植えてみましょうね」\n\n もう行ってしまったヨミさんを気にしてもしょうがありません。\n 気を取り直して、私も今日の作業に取り掛かりましょう。\n\n 畑はほぼ完成したと言えるでしょう。\n 土は綺麗に耕され、あとは柵で囲うだけ。\n 一部ではもう芽も出ていますから……?\n\n「……随分と成長は早いみたいですね」\n\n「カブですし、そういうものなんじゃないですかあ?」\n\n いえいえ、いくらなんでも一日で芽が出るのは早すぎだと思いますよ。\n でも、ゲームですからね。\n そういうものだと思うしか無いのでしょうね。\n\n「それでユウカさん、これはどこに植えますか?」\n\n「そうですねえ……蔓ということですし、生えてくるのは豆なのでしょうか? そうなると添え木もあったほうがいいんでしたっけ? う~ん、どうしましょうか……」\n\n いざ植えるときになると色々悩んでしまうのはなんなのでしょう。\n 結局は自信がないということなのだとは思います。\n だって、ただなんとなく土に埋めてみようと思っただけなのですからね。\n\n「ユウカさん! 失敗してもいいじゃないですか! どうせまたダンジョンに行けばたくさん手に入るんですから、たくさん失敗しましょうよ!」\n\n「……そうですね、そのとおりですね」\n\n 結果、あまり悩まずに植えることになりました。\n 今の手持ちの蔓塊6つのうち、3つは何もせずに植えて、もう3つには添え木を一緒に立てて植えました。\n 実は、じっくり見ると『蔓塊』の中に種らしきものが見えたのです。\n もしかしたら蔓に包まれているだけで、中の種は無関係なのではと一瞬思えました。\n とりあえず何かしら生えてくれるといいんですけれどね。\n\n「これはどうしますかあ?」\n\n 残ったのは『木魂』です。\n 今までの結果で、魂は塊よりも性能がいいということが分かっています。\n この蔓や木の場合、それはつまり大きさを意味するのではないかと思いました。\n 大きな木……そのまま畑に植えるには問題があるでしょう。\n\n もしも大きな大きな木が生えてくるのなら……。\n\n「畑よりも、植えたいところがあります」\n\n 憧れる光景というのは、誰にでもあると思います。\n 都心のど真ん中の高層ビルの最上階とか、逆に山頂の一軒家とか。\n 方向性は違えどどちらも憧れですね。\n 私はどちらかと言うと人目を避けられるに越したことはないというタイプですので、自然の中でこんなところに住みたい、なんて思ったこともありました。\n 大きな大きな木と、その木陰に佇む家。\n 日差しを適度に遮ってくれる大きな木……。\n\n「家の裏ですか?」\n\n「ええ。ほら、赤ちゃんもすぐに大きくなるでしょう? 大きな木があると遊ぶのにも困らないと思うの」\n\n 木にブランコを下げたりとかね。\n 既に完成している家を隠すぐらいの大きな木にはさすがに成長しないと思いますが、それでも近くに一本ぐらいはあったほうがいいでしょう。\n\n 『木魂』はその名の通り材質は木です。\n 樹皮が全体を覆っているので、なんだかへんてこにも見えます。\n\n 家の裏、海側に大きな穴を掘って『木魂』を埋めました。\n リコが【土魔法】を覚えてくれたのが役に立ちましたね。\n\n カブと同じように明日には芽が出るのか、それとも時間がかかるのか。\n 楽しみにしながら、家の裏から離れていきました。\n\n\n------\n\n\n「違います。包丁の持ち方はこう、押さえ方はこうですよ」\n\n ヨウの隣で同じように魚を切っています。\n\n お昼の支度は私の仕事。\n そしてヨウに料理を教える時間でもありました。\n\n パンにあう魚料理はなんでしょうと言われてもなかなか思いつきません。\n でも、ご飯がなくても問題ない魚料理というといくつか思いつきます。\n\n「まずはお腹に刃を入れて、内蔵を次に尾びれから刃を入れます」\n\n コロちゃんが捕ってくれたサバみたいな魚を捌いていきます。\n 捌く時、どこまで簡素化されているのかが結構不安でした。\n 血は流れないことになっていますが、その分内臓がはっきり見えたらそれはそれでイヤですからね。\n でも魚のお腹に刃を通すと、それだけでお腹は開かれて中は空っぽになっていました。\n ……まあ、それがラクでいいんですけれどね。\n\n 魚の構造も簡素に、なんと中骨以外の骨がありません。\n 腹骨も小骨もないので、お刺身も簡単に作れちゃいます。\n\n「そう、皮を剥いだ後は細く切っていきます。そうですね、薄すぎると調整が難しいかもしれませんね」\n\n 卸した魚を一口サイズに切っていきます。\n マリネとして酢に付ける予定なので、お刺身よりも若干肉厚に切ります。\n\n「……難しいです」\n\n ヨウは短剣の扱いは上手なのに、包丁の扱いは苦手な様子。\n 引きながら切るのが難しいのでしょうか。\n\n「あら、それじゃあ一緒にやりましょうね」\n\n 自らの包丁はその場において、私はヨウの背後へと回ります。\n ヨウの後ろから手を回し、ヨウに手を重ねて包丁を持ちました。\n 私の胸をヨウの背中に押し付けてしまうのはしょうがありません。\n\n「さあ、もう一度初めから一緒にやってみましょう」\n\n ちょっとだけいびつに切れた魚はそのままに、新たな魚を用意します。\n ヨウと一緒に魚のお腹に傷を入れて、そのまま3枚に卸します。\n ここまではヨウも上手です。\n\n 問題は魚を切り分ける時。\n まずはヨウと手を重ねるだけ、彼女の指の動きに注意を向けます。\n 重なるヨウの左手は切り身を押さえ、右手は一口サイズに切り分けようと包丁が動きます。\n\n ああ、なんとなく分かりました。\n 短剣と短刀の違いとでもいうのでしょうかね。\n\n「ヨウ、そこはね……」\n\n 原因が別ればもう簡単。\n ヨウに優しく教えてあげます。\n 手を重ねて、優しく優しく、何度でもゆっくりと。\n ヨウの耳元で囁くように伝えました。\n\n\n「これヨウが作ったんだって? なかなか美味しいじゃない」\n\n「……ありがとうございます」\n\n サバのような魚を切ったあとは、玉ねぎと一緒に酢につけました。\n 残念ながらつける時間は一瞬で終わって完成しまったのですけれど、それでもちょうどいい具合になったのではないかと思います。\n 酸味も強すぎず、魚も真っ白になってはいないのでもしかしたら一番理想的な酢漬けになったのかもしれませんね。\n\n「ご飯の不要な魚料理もなかなか難しいですね」\n\n「あ、そっかぁ。あとはスープとかになるもんねえ。お米ってどこかになるのかな」\n\n「私は聞いたことないわね。パエリアとかそっちに合うお米ならあるらしいけど」\n\n「ああ、それは私も食べたことがあるよ。でもそっか、白米向けのは無かったね」\n\n やっぱりお米はないみたい。\n でもそうですか、長粒種はあるみたいですね。\n それだけでも料理のバリエーションは増えるのであると助かるのですけれど。\n\n「これだとお酒がほしくなるねぇ」\n\n「もう、リンはダメですからね。産後だからっていうのもナシですよ。なにせ赤ちゃんのお世話をしているのですから、酔って目を離した隙に、なんてことがあってからでは遅いのですからね」\n\n「わかった、わかったってば。まったくもう、母親になってからのユウカは心配し過ぎだよ」\n\n リンもしっかりと母親をやっていますが、だからといって従来の性格が綺麗さっぱり変わってしまうわけではありません。\n きちんとユリの面倒は見てくれていますけれどね。\n というか、私の方こそ変わらなければなりません。\n なにせ子育ての殆どをリンとティエルに丸投げしている状態なのですから……。\n\n「……ごめんなさい。さすがに言い過ぎました」\n\n そうです。\n どうして私は赤ちゃんの世話をしていないのでしょう。\n ヨミさんのことだって他の人に任せたらいいことだし、畑の仕事なんてそれこそ後回しでいいではありませんか。\n しかも生まれたての、取り返しの付かない時間を……。\n\n「ユ、ユウカ? 言い過ぎたのはあたしだよ?」\n\n 焦るリンの声を聞き流して顔を伏せます。\n この私の態度すら嫌いになります。\n 後悔しているアピールをするぐらいなら、今スグにでも赤ちゃんのお世話をするべきなのに……。\n\n そんな沈んだ私を持ち上げてくれたのは、ある小さな声でした。\n\n「……ママ」\n\n その声に顔を上げると、目の前には小さなお顔。\n ティエルに抱えられたティカが、私を見ていたのでした。\n ご飯時にはリンもティエルもそれぞれの赤ちゃんを連れて来ています。\n もちろん食事はまだとれませんけれど。\n\n「……ママ」\n\n 再び呼ばれます。\n 喋っているところを初めてみました。\n もしかしたら初めて喋っているのかも。\n ティエルは何も言わずにティカを私に向けて差し出してきます。\n\n 私も何も言わずにティカを受け取りました。\n\n「はい。私がママですよ」\n\n\n------\n\n\n あの後、いくつか決まったことがあります。\n もちろん私について。\n 少なくとも赤ちゃんが大きくなるまでは、子供部屋で一緒に寝るように。\n そして私が外に出るときは、出来る限り赤ちゃんも一緒に連れていくこと。\n 私が何をしているのかを見せてあげることが満場一致で決まりました。\n\n「はいはい、おっぱいですよ」\n\n 今日すべきことをすべて投げ出して、私はティカとユリをこの腕に抱いています。\n 残念ながら私の胸から母乳はでませんが、それでも吸い付こうとするティカとユリに根負けしました。\n\n「どうだい。やっぱり子育てといったらこれだろう」\n\n「うふふ。いつかユウカさまのおっぱいを飲んでみたいですね」\n\n 私の左右にもたれかかるようにしているリンとティエルは好き勝手に言っています。\n ……私のおっぱい、ほんとに出てないですよね?\n\n「「……けぷっ」」\n\n 目の前から可愛いげっぷの音が聞こえます。\n どうやらお腹いっぱいになったみたい。\n もうおっぱいが出ているのかどうかは気にしません。\n\n お腹がいっぱいになったら眠る時間です。\n もちろん私も、リンもティエルも一緒に眠ります。\n 私の左右に赤ちゃん、その両奥には愛すべき女性。\n えっちなことができないのは残念ですが、それでも幸せでした。", "afterword": "名前:ユウカ\n種族:人間Lv100\n職業:隠密Lv51, 復讐者Lv67\nクラン:Crystal Vespa\n-\nHP:5100/5100\nMP:5100/5100\n-\nSTR:450\nVIT:320\nAGI:1570\nDEX:910\nINT:350\nポイント:120\n-\n【パッシブスキル】\n短剣術Lv58, 投擲術Lv12\n跳躍Lv2\n看知の瞳Lv33, 工人の瞳Lv15\n夜目Lv42, 超聴覚Lv86, 気配察知Lv89\n農業Lv18, 水泳Lv11, 潜水Lv11, 調教Lv1\n【アクティブスキル】\n火魔法Lv7, 水魔法Lv4, 影魔法Lv100\n隠密Lv47, 解錠Lv20\n料理Lv38, 裁縫Lv85, 釣りLv8, 製糸Lv31\nポイント:148\n【レジストスキル】\n幻惑耐性\n-\n【実績】\n復讐達成+12, 性豪+13, 信頼+6, 呪文個性+8\n-\n【資産】\n1,610,150e\n-\n【装備】\n武器:短刀・黒光、短刀・白光\n防具:速度低下耐性の和服、隠密補正の帯\n   鰐皮の篭手、鰐皮の脛当て\n   隠密補正のマフラー\n   認識阻害のアームカバー、認識阻害のタイツ\n   速度低下耐性のサラシ、黒い下着\n装飾:婚約の腕輪+7\n   転移のイヤリング"}

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