Krixter/Repo / n0005cn /178.json
Krixter's picture
download
raw
18.1 kB
{"novel_id": "n0005cn", "chapter": 178, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005cn/178/", "title": "178 大きな木陰", "content": "「おねえちゃん、おねえちゃん、早く起きるの」\n\n 朝というには少し遅い時間、エジアに起こされてしまいます。\n お腹がすいたのでしょうか。\n\n「おねえちゃん、外を見るの」\n\n エジアは窓の外を覗いています。\n アマエとルダも一緒になって外を見ているようでした。\n 一体何があるのでしょう。\n この部屋の窓は北に向いていて、そこからは崖と遠くの海だけが見えるはずなのですけれど。なにか変なものでもあったのでしょうか。\n ……例えば、海賊船とか。\n\n 不安になってついつい急いで窓の外を見ます。\n そこには、まったく予想外の光景があったのでした。\n\n どこまでも広がっていた景色のはずだった窓の向こうは、一面が緑色一色と言っていい状態でした。\n 一面が緑色の、大きな木が生えていたのでした。\n\n「おねえちゃん、すぐに外に行くの」\n\n「早く行くわよ!」\n\n「……おねえさんも」\n\n 3人に手を引っ張られ、私は外に向かうのでした。\n\n\n------\n\n\n「ユウカさん……その、おはようございます」\n\n「ニィルさん、おはようございます。身体の方は大丈夫でしょうか?」\n\n「はい、今日はもうなんとも……それで昨日のことなんですけれど」\n\n さあ、この瞬間がやってきてしまいました。\n 昨日お薬でトリップしていたニィルさんを抱いたあと、結局彼女は寝たきりでした。\n 目覚めたらもしかしたら怒られるのではと思っていた私は内心ビクビクです。\n\n「ユウカさん……ユウカお姉様! たまにでいいので、また抱いてくださいっ!」\n\n それだけ私に述べるとニィルさんはきびすを返して離れて行きました。\n ……なんとなかっていたみたいです。\n\n\n「さあ、それじゃあ槍を構えて! まずは突く動作からだよ!」\n\n 夕凪さんの指示で、思い思いに槍を振り出し始めます。\n その光景を、私たちは木陰の中で見守ります。\n\n 私たちの中で【槍】スキルを覚えていたのは夕凪さんただ一人でした。\n リコ、ヨミさん、アマエ、ルダにニィルとニィルグさんは【槍】スキルを覚えていないので、夕凪さんの指示のもとにそれぞれ練習をしています。\n\n\n 家の裏庭に、それはもう大きな木がいきなり生えていました。\n 原因にはすぐに思い至ります。\n つい最近植えた『樹魂』が芽吹いたことは間違いありませんでした。\n\n けれど、とてつもなく大きな木です。\n 2階建ての家よりも大きな木がそれこそ数日のうちに生えるだなんて。\n 幹の太さだけで私の何人分なのでしょう。\n\n でもいいことでも有りました。\n なにせ憩いの場というのがこのホームには少なかったのです。\n 広場はあっても出店なんかはもちろんありませんから、なんだかんだで家にいることのほうが多かったですからね。\n 木が一本あるだけでこうも雰囲気が変わるのならば歓迎することなのでしょう。\n\n「こういうのもいいもんだね」\n\n「そうですねえ。ティカとユリも楽しんでいるようですし」\n\n 私とティカとユリは夕凪さんたちの訓練と一緒に、ティカとユリの様子も眺めています。\n 2人はいきなり生えた大樹が気になるようで、木を支えに立ち上がりながら触れています。\n ここまで大きな木だとしめ縄でもするとさらに絵になるような気もします。\n ……いえ、やめておきましょう。\n これは霊樹ではないのですからね。\n\n「リンはこの木に登れたりはするのでしょうか?」\n\n「いやあどうだろうねえ。どうして気になるんだい?」\n\n「ええとですね……実は、ティカとユリのためにブランコを作ろうと考えているのです」\n\n 木が生えるのではと思ってから考えていたことです。\n 今のこのホームには子どもたちの遊び場が全くと言っていいほどありません。\n それに、自然の中のブランコってなんだか憧れるではありませんか。\n だからブランコがいいなって考えていたんですけれど、さすがにこの大きさの木では……。\n\n「あたしもちょっと自信がないね。あとで挑むだけはしてみてもいいけどね」\n\n そう言うということは、多分リンには難しいのでしょう。\n ええと……つまりは木登りにはスキルが必要ということなのかもしれません。\n ……私がやるしかなさそうです。\n\n 私の言葉を聞いて早速動き出す人がいました。\n ヨウはどこからか糸の素材を取り出して、その場で紡ぎだしたのです。\n\n「……ヨウ? 何をしているの?」\n\n「ブランコを作るにはロープが必要だと思います」\n\n まあ、なんと気の利く子なのでしょう。\n ヨウはあらかじめブランコに何が必要なのか、その準備をしようというのです。\n 普段は私のそばで佇むだけの彼女ですが、こういう気の利くところは素晴らしいですね。\n\n「おねえちゃん、私も何かしたいの」\n\n ヨウと同じく槍を持たないエジアは私たちと一緒に様子を見ているだけでした。\n 手持ち無沙汰の私に抱えられていたエジアも何かを手伝いたい様子です。\n\n「そうですね……ブランコは手伝えませんから、何か他の遊具があればいいのですけれど……エジアは何がいいと思いますか?」\n\n「……難しいの」\n\n 2人で頭を悩ませる事になりました。\n ティカとユリのために、ブランコ以外には何を作ればいいでしょうか。\n とりあえずは動くものがいいですね。\n エジアの出来ることといえば鍛冶なので、金属でできたものとなります。\n 馬の置物なんて考えたりもしたのですけれど、ただの置物になってはすぐに飽きてしまうのではと思います。\n ブランコみたいに単純でも動くものって、少なくとも乗っている間は意外と夢中になれますからね。\n\n 単純だけど動くもの、一人でも遊べるもの、そして危険の少ないもの……。\n なかなか思いつきません。\n 私があってよかったと思うのは鉄棒ぐらいでしょうか。\n けれど授業なんてありませんし、出来る必要もありません。\n 馬も、今思えばペットがいるのだしわざわざ遊具で作る必要もないでしょう。\n\n それに大樹のこの風景。\n やっぱり木でできたものがいいのではと思うのです。\n\n「そうね……エジアには、ティカとユリが大きくなった時に武器を作ってもらえたら、それで十分ですよ」\n\n「でも、私もおねえちゃんになるから何かしてあげたいの」\n\n こうして大人になりつつあるエジアはなんて可愛らしいのでしょうね。\n 思わずギュッと抱き締めてしまいます。\n\n「エジアはいまでも立派なおねえちゃんですよ。それでもどうしてもと言うなら、あなたもあの子達の教育をしてあげてくださいね」\n\n「それだけでいいの?」\n\n「ええ。それだけでいいんですよ」\n\n 言い聞かせるように、よしよしと頭をなでます。\n\n「わかったの。おねえちゃんがそう言うなら頑張るの」\n\n そこまで頑張らなくてもいいのですけれどね。\n けれど無粋なことは言いません。\n エジアならば悪いことにはならないでしょうからね。\n\n\n「ユウカさん、おはよう……」\n\n「アイリー、おはようございます。しっかりと休めましたか?」\n\n「うん、おかげさまで……。ユウカさんも一緒だったのに元気よね」\n\n お昼も過ぎたあたりに一人眠っていたアイリーはやっと起きてきました。\n 昨夜、お礼も兼ねてアイリー達鍛冶をしてくれた4人と一緒に眠りました。\n その時、特に眠そうにしていたエジア、アマエ、ルダの3人を先に相手したのです。\n 3人は一度するだけですぐに眠りについてしまいました。\n そのあとはアイリーと2人でイチャイチャし続けたのですが、どうやら頑張りすぎたようでそのアイリーは泥のように眠り続けました。\n\n「可愛い女の子と一緒だと、私は元気になるんですよ」\n\n「そう……さすがユウカさんよね」\n\n それでは今日の本題です。\n というか、昨日後回しにしたことですね。\n\n「ユウカさんのためにも武器を作ったの」\n\n ……あら?\n てっきりアイリーの職業が進化するという話だったと思ったのですが、その前に武器の話でした。\n アイリーが自分に任せてと言っていた分ですね。\n\n「作ったのは2つよ。まずはこれ、『鉄甲・黒蜂』、それと『飛苦無・黒討』ね」\n\n それぞれを手にとって眺めてみます。\n 鉄甲はその名の通り手にはめる武器でしょう。\n エジアの武器と同様に殴るものですが、私は短刀を持っているので防具としての役割のほうが大きいかもしれません。\n 苦無にはお尻から細めの鎖が伸びています。\n 投げっぱなしの苦無ではなく、投げた後に鎖で回収するか、または鎖を振り回して使う武器のようでした。\n\n「こっちの鉄甲には『導きの石』を使ってあるわ。普通に武器に使うよりも、腕と一体化する鉄甲のほうが使いやすいと思ったの」\n\n「……ということは、無事に職業が進化したのですね。おめでとうございます」\n\n「ありがとう。だいぶ遅れたけれど、これでやっとユウカさんに追いついたわ」\n\n「そうですね。でもね、私の『盗賊』は上がりやすくてアイリーの『錬金術士』は上がりにくかったのだから、そこまで気にする必要はなかったんですよ?」\n\n「分かってるけど、やっぱり嫌じゃない……」\n\n 出会った当初はアイリーのほうがレベルは高かったですからね。\n その気持ちも十分に分かるものでした。\n\n「ところで、アイリーの新たな職業はなんというのでしょうか?」\n\n「六大術士よ。面倒だからプラーナーでいいわね」\n\n「ああ……そこで術士と入ってくるのですね」\n\n「錬金術士でも入ってるけどね。進化先は他にも四大術士に五大術士って似たようなのがあったわ。出来ることを考えたら六大術士しか選べなかったけれどね」\n\n 錬金術士の分岐先ですが、大きな違いはありません。\n ただ、数字が増えることに扱える素材が増えるのだとか。\n その分扱えるランクが落ちるので、特化か汎用かといった形でしょうか。\n 私たちのクランで唯一の錬金術士であったアイリーは、どうやら汎用性を選んだようでした。\n\n「さあユウカさん、さっそく身につけてみて」\n\n そうですね、せっかく作ってくれたのですから身につけてみましょう。\n\n 鉄甲は今身に着けているアームカバーの上から装着します。\n アームカバーが緩衝材になるのでちょうどいい感じです。\n\n 飛苦無は……右の袖の中へと隠します。\n 実は前々からこの袖の中にはなにか武器を隠そうと思っていたのです。\n もしかしたらアイリーも気付いていたのかもしれませんね。\n\n 気付けば目の前のアイリーも同様の鉄甲を身に着けています。\n なぜだか近くにいたエジアも自らの鉄甲を装備します。\n さらに、裁縫をしていたヨウも私のと同じような鉄甲を身に着けているではありませんか。\n ……あなた、いつの間にアイリーに頼んでいたのですか。\n\n「それじゃあ私たちも特訓よ」\n\n「私が殴り方を教えてあげるの」\n\n「……ご一緒します」\n\n 今日は一日ゆっくりと、夕凪さんたちの訓練を眺めていようと思っていたのですけれど。\n\n「ユウカ、頑張ってきなよ」\n\n「頑張ってきてくださいね」\n\n リンとティエルにも笑顔で見送られると、もう逃げることはできませんでした。\n\n\n 練習は実践でというのがエジアの考えのようでした。\n\n 勢い良く迫り来るエジアの拳に、私は手の甲で応えます。\n まっすぐ向かってくる拳に対して横から、伸びてくる手の内側から外に押しやるように鉄甲を当てていきます。\n トンと軽く当てるだけで、私の顔に向かっていた拳は横に逸れてくれました。\n\n「さすがおねえちゃんなの」\n\n「エジア……もう少し手加減してくれませんか」\n\n「それは難しい相談なの」\n\n エジアは手加減なしに私に殴りかかってきます。\n この拳を逸らす動きだってやっと成功したばかりだというのにエジアには遠慮がありません。\n\n 必死になってエジアの拳を避けていきます。\n 拳は使わずに、体全体を動かしてエジアの拳を避けるのです。\n そうして目を慣らして慣らして慣らし続け、やっと成功したというのに。\n\n「それじゃダメなの。おねえちゃんには私よりも上手になってもらいたいの。逃げちゃダメなの、私の拳を全部鉄甲で受け止めるの」\n\n エジアのスパルタはまだまだ続きそうでした。\n\n\n------\n\n\n なんとかスキルを無事に覚えた後は畑の様子を見に行きます。\n なにせ数日で大樹が生えたぐらいですから、畑に植えた『蔓塊』と『木塊』もなんらかの成長を見せていると思うのが普通でしょう。\n\n「昨日までは何も変わってなかったんですけどねぇ……」\n\n もちろん畑に関わっているリコも一緒です。\n リコは昨日もしっかりと畑のお世話をしていたので、言っていることに間違いはないのでしょう。\n そうなると、今日一日で成長したことになるのですけれど……。\n\n 畑には謎の植物がびっしりと生えていました。\n ……いえ、カブを植えたところにはきちんとカブができています。\n ああ、そういえばカブはちょうどいい大きさまで育っているみたいですね。\n 一日で目が出たことといい、収穫までも数日で十分なようでした。\n\n ではなく、問題は謎の植物の方です。\n 謎の植物は『蔓塊』を植えた所全てから生えてきていました。\n それも、それぞれ形が微妙に違っていたりするのです。\n\n 元が『蔓塊』というだけあって、見た目は確かに蔓なのです。\n でも蔓単体で自立していますし、各々が自由にからみ合ったり、別々の実をつけていたり。\n 色も気色悪いほどにカラフルだったりしているのです。\n\n「……どうしましょうかね」\n\n「どうしましょうって、どうするんですかぁ……」\n\n 奇妙な植物を前に尻込みしていますが、このままでは畑が使えなくなってしまいそうです。\n はあ……。\n ため息一つ、そのあとに息を吸い込んで、奇妙な植物がはびこる畑へと足を踏み入れました。", "afterword": "名前:ユウカ\n種族:人間Lv100\n職業:隠密Lv51, 復讐者Lv67\nクラン:Crystal Vespa\n-\nHP:5100/5100\nMP:5100/5100\n-\nSTR:450\nVIT:320\nAGI:1570\nDEX:910\nINT:350\nポイント:120\n-\n【パッシブスキル】\n短剣術Lv58, 投擲術Lv12, 拳Lv1 (New)\n跳躍Lv2\n看知の瞳Lv33, 工人の瞳Lv15\n夜目Lv42, 超聴覚Lv86, 気配察知Lv89\n農業Lv18, 水泳Lv11, 潜水Lv11, 調教Lv1\n【アクティブスキル】\n火魔法Lv7, 水魔法Lv4, 影魔法Lv100\n隠密Lv47, 解錠Lv20\n料理Lv38, 裁縫Lv85, 釣りLv8, 製糸Lv31\nポイント:148\n【レジストスキル】\n幻惑耐性\n-\n【実績】\n復讐達成+12, 性豪+14, 信頼+7, 呪文個性+8\n-\n【資産】\n1,610,150e\n-\n【装備】\n武器:短刀・黒光、短刀・白光\n   鉄甲・黒蜂 (New)、飛苦無・黒討 (New)\n防具:速度低下耐性の和服、隠密補正の帯\n   鰐皮の篭手、鰐皮の脛当て\n   隠密補正のマフラー\n   認識阻害のアームカバー、認識阻害のタイツ\n   速度低下耐性のサラシ、黒い下着\n装飾:婚約の腕輪+7\n   転移のイヤリング"}

Xet Storage Details

Size:
18.1 kB
·
Xet hash:
dbc71fd672810a4931821eb4e34e5b3df05bc60ab76542560ca16e64974469af

Xet efficiently stores files, intelligently splitting them into unique chunks and accelerating uploads and downloads. More info.