Krixter/Repo / n0005cn /181.json
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{"novel_id": "n0005cn", "chapter": 181, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005cn/181/", "title": "181 Real Part10", "content": " 昨日と同じように、夕陽さんの車に乗って私たちは移動しています。\n 目的地はまだ聞いていません。\n でもみなさんは既にご存知のようでした。\n\n「うう~……身体が痛いですぅ」\n\n 昨日のテニスの影響でしょうか、凛心はすこしばかり筋肉痛のようでした。\n 凛心は一番運動不足のようでしたからね。\n 夕陽さんと亜衣里はまったく平気なご様子です。\n\n「燈香さんは? 筋肉痛は大丈夫なの?」\n\n「私もちょっとだけ脚が痛いですね。でも凛心ほどではありませんよ」\n\n 今朝起きたときにちょっと動きにくかっただけでしょうか。\n それも少し歩くだけで違和感は消えましたし、私の身体も意外に健康的だったみたいです。\n\n「そう……それはなによりね……」\n\n 後ろの座席で凛心を膝に乗せている亜衣里は心なし残念そうな様子です。\n 亜衣里の膝枕は魅力的なのですけれどね。\n\n「それで今日はどこに向かうのでしょうか?」\n\n「ん? それはね……」\n\n「燈香さん、ここよ!」\n\n 夕陽さんが言う前に、後ろから亜衣里が一枚のチラシを渡してきます。\n さっそく手にとって眺めてみると……。\n\n「住宅展示会……ですか?」\n\n「そうよ! 昨日の夜にポストに入ってたのよ!」\n\n「そうそう。どうやらこの近所にばらまかれてたらしくてね。どうせだから見に行こうって話になったんだよ」\n\n「燈香さんのお気に入りを探すんですよう」\n\n そういえば、そんなチラシも入っていたような気も……。\n いえ、何も見ずにその場のゴミ箱に捨ててしまったので私は見ていませんでしたね。\n\n しかし、そうですか。\n 住宅展示会ですか……。\n\n「あの……」\n\n「別に重く考える必要はないよ。ただもしも一緒に暮らすことになったらどんなところがいいかなって探してみるだけだからね」\n\n「そうですよう。そんなに急ぐことじゃないですう」\n\n「そうよ。私は絶対に燈香さんと暮らしたいけど、夕陽も凛心もどうでもいいみたいだし、私と燈香さんだけが住む場所を探せばいいの」\n\n ……。\n 皆さん、何も言わない私のことを色々と考えてくれているみたいです。\n そうですよね。\n ずっとこのままの関係でいることはやっぱり難しいし間違っているのでしょう。\n\n まだ知り合ってほんの数日しか経っていませんが、それでもお互いのことはよく知り合ったといえるでしょう。\n そろそろ私も彼女たちに想いを告げなければいけません。\n 騒がしくなった後部座席も、あまり気に留めることはできませんでした。\n\n\n 住宅展示会はとなり町で行っていました。\n この辺りは新規の開発地となっているようで、新築の家がずらりと並んでいます。\n 今らしくそれなりに個性的な家が並んでいますね。\n それに、どうやら三社が合同で行っているようで、それぞれの個性も若干ですが目立ちます。\n\n 耐震性を売りにしている家、機能性の充実した家、通気性の良い家……。\n\n「とりあえずは私たちで住む前提で見ていくから、小さな家は除外していいわよね」\n\n「大人五人で住む家だからね。それなりに大きくなきゃね」\n\n「四人じゃあないんですかぁ?」\n\n「今は四人だけど、多分五人になるんじゃないかな」\n\n「……ふんっ」\n\n 3人を先頭に、新築の家が立ち並ぶ道を歩いていきます。\n 土地が安いからなのか、それとも最近はそういうものなのか、全ての家にそれなりの庭があるようでした。\n 塀が無いために外からは丸見えですが、小さな家庭菜園ぐらいはできそうです。\n\n\n「見学をご希望ですか?」\n\n まずは一社目の受付へとやってきます。\n 購入前提という話を夕陽さんがすると、女性の方が案内をしてくれることになりました。\n ……。\n まあ、社会人が3人ですし、買おうと思えば買えるのでしょうけれど……。\n\n 見学にあたっては、まずはどのような家を見たいか話を聞かれます。\n 私の意見はなによりも便利なキッチンでしょう。\n きっと私が料理を担当することになりますし、毎度4人分の料理をするならば大きなキッチンであることが望ましいです。\n あとは4人で暮らすのでそれなりの広さであること、夕陽さんはできたら車は二台置けたほうがいいかもと、亜衣里もできたらバイクも乗ってみたいからとりあえず考えてと、凛心は庭いじりもしたいからできれば塀はあったほうがいい、というところでしょうか。\n 最後に亜衣里が部屋は数よりも広さを重視と言ったところで、女性の担当の方は一瞬だけ怪訝な表情を浮かべました。\n ……さて、何を思ったのでしょうかね。\n\n「家の大きさは殆どの家が当てはまりますが、庭の大きさも考えると該当するのはこの3つでしょうか」\n\n お姉さんは私たちの意見を上手にまとめ、該当する家の断面図を見せてくれました。\n 覗いてみたところどれもそれなりによさそうです。\n\n「どれもよさそうだから、あとは実物を見て考えましょう」\n\n そうですね、亜衣里の言う通りでしょう。\n さっそく皆さんと該当の家へと向かいました。\n\n この展示場の中では奥の方になるのでしょうか、その辺になると塀のある家ばかりになってきます。\n それにどの家も大きく、入り口よりもお金持ち向けの家という雰囲気です。\n\n「あら、この家も良さそうじゃないの」\n\n 亜衣里はある一軒を気に入ったみたい。\n 屋根の平な家で、もしかしたら屋上に登れるかもしれないデザインですね。\n\n「申し訳ございません、そちらは他社のでして……」\n\n あら、残念。\n まあ時間はあるので、あとで見学したらいいでしょう。\n\n\n------\n\n\n「ご購入の際にはぜひご連絡ください」\n\n 最後に女性の名刺を戴いてお暇しました。\n\n 3社ともに案内を担当されたのは女性でした。\n それは私たちが女性ばかりだったからというよりも、男性の担当者が近付こうとすると亜衣里が露骨に睨みつけていたからでしょう。\n もちろん咎めたりなんてことはいたしません。\n\n「……思ったよりも難しいもんだねぇ」\n\n「……そうですね」\n\n 今日一日を使って家をいくつも見学して分かったこと。\n それは、私たちの希望が思ったよりも特殊なものだったということでした。\n\n「考えてみたら当然よね。私たちそれぞれの個室の他に、大きなベッドの置ける寝室、それにジェルベッド4台を並べられる寝室が必要だもの。4人暮らし程度の家じゃ小さくて当たり前なのよね」\n\n そうなのです。\n ジェルベッド自体がシングルベッドよりも大きいものなので、それを4台並べるとなるとなかなかに広さが必要だということが分かりました。\n それぞれの個室に設置してもいいのですけれど、どうせなら一緒の部屋がいいですからね。\n それに寝室も。\n ゲームの時と同じように、みんな一緒に一つのベッドでということになったのですけれど、つまりは広い寝室が必要ということでもあります。\n もちろんそれぞれの個室にもダブルサイズのベッドを置く予定です。\n まあ、とりあえず大きな窓が必須だと分かっただけでも良かったのでしょう。\n ゲームだとその場で組み立てたり取り出したりとできますが、現実ではドアから入らない大きなベッドですからね。\n\n「この後はどうするの?」\n\n「皆さんがよろしければ私の家まで来ませんか? 皆さんを労うためにもご飯をご馳走させてほしいです」\n\n「嬉しいけど、いいのかな?」\n\n「ええ。それに、もう少し皆さんと一緒にいたいですから」\n\n「私もですぅ。どうせなら泊まっていきたいぐらいですぅ」\n\n 残念ながら明日は会社がありますので、泊めることはできませんけれどね。\n\n\n 車を駐車場に停め、マンションの中のエレベーターに乗ろうとした時です。\n 私たち以外にも買い物袋を持った住人が乗り込んできました。\n\n「燈香さん、こんばんは。それにそちらの方々は……」\n\n「こんばんは、海陽さん。ご承知のとおりに夕凪さん、アイリー、リコですよ。今日は皆さんで遊んでいたんです」\n\n なんと偶然海陽さんとも一緒になりました。\n せっかくですので海陽さんも夕飯に誘います。\n 人数は多いほうが楽しいですからね。\n\n\n「皆さん、元からお知り合いだったのですか?」\n\n「まっさかぁ。近くには住んでるけど、知り合ったのはゲームが初めてだよ」\n\n「私は燈香さんとは同僚ですぅ!」\n\n「私は……燈香さんとは駅ですれ違ったことがあるわ!」\n\n 私と海陽さんで作ったご飯を皆さんで食べます。\n 少々はしたないですが、たまにはこうして喋りながらの食事もいいでしょう。\n\n「海陽さんは顔は向こうとおんなじだね。髪型とはか全然違ってるみたいだけど」\n\n「ええ……でも、みなさんも面影はありますよね」\n\n そういう海陽さんの視線は亜衣里に向かっています。\n 亜衣里も顔立ちはアイリーとそっくりです。\n ただ、身長が全く違うので驚いているのでしょう。\n\n「なによ」\n\n「いえ、ごめんなさい……」\n\n 高い身長はカッコいいと思うのですが、亜衣里はやっぱりコンプレックスが拭えないみたいです。\n 海陽さんをひと睨みしたあとで、私の隣へと移動してきます。\n\n「亜衣里、そんなに怒ってはダメですよ。それに、亜衣里の高い身長は亜衣里のカッコよさを際立てているので私は好きですからね」\n\n「……うん、分かってるわ」\n\n もう少し。\n もう少し経ったら、きっと亜衣里も自分のことが好きになると思います。\n ……いえ、今でも嫌いではないのでしょうけれど。\n\n「……そういえば海陽さんは転勤でこっちにきたばっかりなんだっけ? どう、もう生活は落ち着いたのかな?」\n\n「……あ、私のことは海陽と呼んでください。そうですね、荷物もあらかた解けましたし、やっと落ち着いてきたところでしょうか」\n\n 腕に抱きついてきた亜衣里をよしよしと撫でていると、出だしだけがちょっと不自然な夕陽さんと海陽さんの会話。\n なにかあったのでしょうか?\n\n「そう? それじゃあ海陽ちゃんで。何か困ったことがあったらいつでも私のことも頼ってくれていいよ。なんでも出来るわけじゃないけど、車ぐらいは出せるからね」\n\n「ああ、それは助かります。でも本当に甘えていいのでしょうか?」\n\n「いいのいいの。昨日だって今日だって運転してるしね」\n\n「そうですよう。私たち昨日はみんなでテニスしてたんですよう」\n\n 凛心も会話に混ざってさらに賑やかになっていきます。\n どうやらなにかがあったのではというのは私の勘違いみたいです。\n\n「テニスですか……そういえば、私も最近は全く運動をしていません」\n\n「それは……まあ、言われなくても分かるかな……」\n\n「そうですよう。海陽さん、痩せすぎですよう」\n\n 私たちの中で一番痩せているのではと思えます。\n 少なくとも見えている腕は誰よりも細いです。\n それでいて胸はそこまで小さくないのはいいですね。\n\n テーブルを挟んだ向かい側で、夕陽さん、凛心、海陽さんの会話は盛り上がります。\n\n(……)\n\n(亜衣里?)\n\n でも、亜衣里は全く会話に参加しません。\n 今日は調子が悪い……ということもないでしょうに。\n\n(私、あんまり海陽のこと好きじゃないわ)\n\n(あら、どうして?)\n\n(だって、絶対におかしいもの)\n\n 亜衣里は普段はこんなことを言うような娘じゃありません。\n だから理由を聞こうとしたのですけれど。\n\n(……)\n\n それ以上、亜衣里は喋るつもりもないみたいです。\n 目する亜衣里に対して、私はテーブルの下で亜衣里の身体にちょっかいを出すのが精一杯でした。\n\n\n しばらくすると皆さんお帰りになっていきます。\n 隣の部屋の海陽さんが、次に歩いて帰れる位置にある亜衣里が、隣駅に住んでいる凛心は夕陽さんが送ってくれることになりました。\n\n「……ねえ、燈香ちゃん」\n\n「はい、夕陽さん」\n\n 帰り間際。\n 凛心が先に外に出たことで一瞬だけ私と夕陽さんだけになった玄関、夕陽さんが話しかけてきます。\n\n「海陽ちゃんにさ、燈香ちゃんの身体のことはまだ伝えてないんだよね?」\n\n「ええ。さすがにすぐには伝えられないことですし……それに、受け入れられるとも限りませんし……」\n\n すごく悩んでいることでもあります。\n こうして仲良くなっていくと、きっと私は秘密のままではいられないでしょう。\n でも先に現実で知り合ってしまって、そのあとゲームを一緒に初めて。\n 私は自分のことを伝えられる機会をすっかり失ってしまっています。\n\n「そのことだけどさ、よければ私に任せてくれないかな?」\n\n「夕陽さんにですか?」\n\n「そう……正確には、夕凪とアイリーにね」\n\n ということは、向こうで伝えるということでしょうか。\n それにアイリーも一緒ということは、先ほどの亜衣里の言い分も関係してのことなのでしょうか。\n\n「あの……海陽さんになにかあるのですか?」\n\n「大丈夫。燈香ちゃんはなにも気にしなくて大丈夫だよ」\n\n でも夕陽さんは何も教えてくれません。\n 亜衣里のときと同じように、私に話すつもりはないみたいです。\n\n「それじゃまたあとで……おやすみ、燈香ちゃん」\n\n 何かを伝えたいけど何を喋ったらいいのか分からない。\n そんな私の唇を軽く塞いでから去っていく夕陽さん。\n 私は何も語るなということでしょうか。\n\n 私には何も分かりません。"}

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