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{"novel_id": "n0005ha", "chapter": 1, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005ha/1/", "title": "プロローグ", "content": " その男は太陽光も射しこまないほど暗い森の中で、大木の根に足を取られ転んでしまったまま動けなかった。\n\n「はあ、まいったな…」\n\n 男の名はベルトール、楠んだブロンドの髪に冴えない顔をした北方に出身の魔術師だった。\nもう1日以上このままだ。ただでさえ体はボロボロなのに飲み食いもしていない、このままではあと数時間もすれば意識を失いそのままこの大木の肥やしになってしまう。\n\n「ぐぅ、う、う…」\n\n ベルトールがうめき声をあげながら手元の鞄をひっくり返す、当然食料も水も無い気休めだ。これだけの動きでも体力が失われていくが、何か頭を使ってないと危険だ、呆けたまま意識を失ったらそれまでになってしまう。\n\n「あるのは金に身分証、紹介状、地図のような紙切れたち。今は何の役にも立たん」\n\n\n 何か噛めば唾液が出て、頭の体操にもなると思ったので、地図を千切ってもさもさと口で咀嚼する。\n 木の根や皮を噛み千切る力も残っていなかった。\n\n「もう戻れんかもしれないな。まぁいいが」\n\n 産まれは平民だったが、生まれつき魔法の素養があったので、地方領主の養子になり学業な励み研究者として生きてこれた。\n しょっちゅう領土戦争している西、南、東の国に比べて北国の地方は非常に穏やかだ。背後に海を構え、周りを深い山岳地帯に守られる広大な農地を持つ。\n しかし困った事に我が国の盾である山脈に竜が住み着いてしまったのだ。\n\n「竜、ドラゴン…ドラゴンかぁ」\n\n ベルトールは一度目にした事があるが、眠っているだけだった。\n しかし起きたらどうなるかわからないし、何よりあのままでは国交が開けない。\n 故国が戦争と無縁なのは外交力や商権の影響も強いのに、このままでは国力衰退の一途で有ることを危惧する。\n\n ドラゴンが現れた、と言うより発見されたのは二年前ほど、それからは封じる、倒す手段が無いかと国中の魔法使いが研究した。\n そして研究機関が目につけたのは古代の文献や遺跡だった。今から500年ほど前は、まだ人種間の差別や対立が大きく、それどころか国も違って毎日戦争だったらしい。\n当然ドラゴンについて記している物もあった、その血塗れ時代の遺物を探し回るフィールドワークであちこちの国や領地に行くのがベルトールの仕事だった。\n 元々それらに興味があったので、趣味も兼ねた素晴らしい仕事だと思っていた。\n\n「しかし、何も見つからん」\n\n 残念ながら、それらの成果はほとんど意味を成さなかった。\n 強力な魔法は失伝しているし、今では考えられないような強力な個人による討伐記録が大半だったからだ。\n おとぎ話に出てくるような神樹の存在や魔物に伝説の武具、どれも古代の記録と言うより、絵本を見せられているような物ばかりだった。\n\n そして今はそんな成果の得られないフィールドワークの帰りに戦火に巻き込まれ、落ち延びた森で身動き取れないほど衰弱している。\n 自分の能力には自信があったし、これまでは中々運の良い人生だったと思うが、天命尽きる時はあっさりだな、と笑う。\n\n「東国に入ったのが5ヶ月前、だから…その後レッド領で盗賊に襲われ、紛争地入りして…」\n\n 大体3ヶ月は国に連絡を行ってない、恐らくもう諦められているだろう。南国との戦争が激化してる今は危険だと周囲からは何度も止められたのに。\n\n「止めときゃ良かったぁぁぁ~……」\n\n ベルトールは自分の事を天才だと傲っていた。事実、平民でありながら彼は名門貴族をも凌ぐほど出世し、学院は首席で卒業した。\n 戦闘力にも自信があった、だが実際には魔法力だけでなく様々な能力が必要だった。\n そして学び舎でぬくぬく育った彼に過酷な戦場を切り抜けるような人生経験はなかったのだ。\n\n\n「あ、あの…」\n\n そんな風に意識を保つために走馬灯のような取り留めもない事を考えていると、誰かに話しかけられる。ざあっと風が駆け抜け、暗く静かだった森に光が差したような気さえした。\n\n「どなた、でしょうか…?」\n\n ボロ切れのようなベルトールに、森の奥から声をかけてきたのは、周りの木々より鮮やかな緑色の髪と、自分より少し尖った耳を持つ、光り輝くようなエルフの少女だった。"}

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