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{"novel_id": "n0005ha", "chapter": 2, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005ha/2/", "title": "神樹の森", "content": "「あの、どなた…でしょう?」\n\n そう言って少女はとてとて、と近寄って来た。\n 何かの花の香りだろうか、柔らかい香りが漂ってきてベルトールの意識がはっきりする。\n\n「あ! だ、大丈夫ですか!?」\n\n 少し警戒していたようだが、ベルトールがボロボロなのに気付き、少女は慌てて近寄って来た。\n 這いつくばってるベルトールを心配そうにのぞき込んでくる。\n\n「おっっ…」\n\n「お?」\n\n「お、お水をいただけませんか」\n\n「は、はい!」\n\n(あぶねえ、思わずおっぱいって言うところだった)\n\n 彼女が前かがみになってこちらを覗き込んだ時、凄い大きさの胸がぐっと腕に寄せられて主張してきた。\n 露出の多い服装ではないが、体のラインがわかるぴったりとした服を着ている。\n ワンピース、ではなく法衣だろうか、魔術的な意味の有りそうな装飾品を見ながらベルトールはそう思った。\n\n「どうぞゆっくり、急がずに飲んでくださいね。」\n\n「あ、ありがとう」\n\n 少女が膝枕をして、ベルトールの頭を膝の上に乗せ、手に平から魔法で生み出した水を喉に流し込むように飲ませた。\n\n(胸がでかすぎてこの角度だと顔が見えないな…)\n\n「ごく…ごく、ゲホッ」\n\n「あ!ごめんなさい!大丈夫ですか?」\n\n「あ、ああ…、少し引っかかっただけだよ、ありがとう…」\n\n 水を飲んだおかげで声が出やすくなってきたので、ベルトールは改めてお礼を言う。\n 勇んで戦場入りして無様に夜盗や落ち武者狩りに追っかけまわされた挙句森で転んで死ぬなんて間抜けがすぎる。\n 助かったと思うと、心が落ち着いてきて今の自分の情けなさにベルトールは悔しく思った。\n\n (しかし彼女は何者なんだろうか?体から魔力を放っている感じがするし、耳を見ればエルフなのは間違いがない。だが髪色や雰囲気が俺の知っている種族とは違う気がする)\n\n エルフは南と東の国のごく一部にしか住んでないので北国出身のベルトールは詳しくなかったが、それでも見た目の特徴ぐらいは分かる。\n\n「あの、えっと…」\n\n 凄く綺麗な顔立ちをしている少女は、何と会話を始めたらいいか分からず、あたふたとしていた。\n\n (少女と言っても俺に異種族であるエルフの年齢を読むのは難しいので実は年上かもしれないが)\n\n ドワーフや描人のように見た目も老けてくれれば良いのだが、エルフは不老なので難しい。\n だが性別すら分からない種族にくらべたらまだマシだとヒューマンのベルトールは思った、何より言語を使えるので意思の疎通が容易だ。\n\n「えっと何とお呼びしたらいいでしょう?お名前が…」\n\n「え? あ、そうだな、私はベルトールと言う、北国の者だ」\n\n「ありがとうございます。ベルトールさんはここで一体何を?」\n\n「それが…」\n\n 空腹と疲労で気持ちが悪かったが、ここでこの少女に見放されては本当に終わりだ、そんな思いでベルトールは何とかこれまでの経緯を話した。\n 生まれ、育ち、国、そしてどうしてこんな所で遭難しているのか。\n 少女は森から出たことがないらしく、ベルトールの面白味の無い人生譚も、ふんふんと目を輝かせて聞いてくれた。\n\n「そうですか、外の世界はそのようなことに」\n\n「失礼だが… 君はここで何を? ここは静謐の森、別名迷いの森だ。入ったら呪われ、出てこれなくなると伝わっている」\n\n 近隣住民だけでなく、特に何度も捜索隊を失った東国の者はめったに近寄らない森だった。\n しかし東西の国は仲が悪いので国境に横たわるように存在するこの森は、戦争の良い緩衝材にもなっていた。\n\n\n「そうなんですか?」\n\n 耳をピコピコ揺らして少女が可愛らしく首をかしげる。\n\n「私はリナリア。神樹の守り手のエルフ…最後の一人です」\n\n 神樹とはおとぎ話や伝承によく出てくる伝説上の存在だ。\n ベルトールは何を言っているのやらと肩を落とす、そんなものは存在しないと身を持って知っている。\n\n「不思議です、この森は結界に守られているので、人がここまで来ることはあり得ないのですが… でもベルトールさんをこのまま追い出すわけにも…」\n\n どうやらリナリアは本気で言っているらしいが、追い出されてはベルトールとしては非常に困る、まだ倒れそうなほど空腹なので餓死間違いなしだ。\n\n リナリアはいくらか迷っていた様子だったが、ここで見捨ててはベルトールが生き延びるのが難しい事は重く考えてくれたようで、助けを申し出てくれた。\n\n\n「ベルトールさん、私の家で介抱するのでついて来れますか? そんなに距離は無いので、私の家でなら食糧も薬もありますから」\n\n リナリアは家に招いてくれると言う、女性にあるじき不用心さにベルトールは呆れたが、そのおかげで命は助かりそうなので黙っていた。\n\n「ああ、肩を貸してくれないだろうか。足を怪我していてね、それに立ち上がる力がもう…」\n\n「はい、それは私が先ほど治しておきましたよ、それから先ほど精霊の水を飲んでいただいたので、少しは体力も戻っているはずです」\n\n「へ?、え…?」\n\n にこやかに微笑まれ確認すると、なんと普通にベルトールの足が動いた。\n 普通回復魔法といえば、専用の施設と、高度な術師がいて始めて成立する国家規模の魔法だ。\n\n(流石、神樹に使えるエルフなんて言うだけあるのか…? 大木に寄りかかれば何とか立ち上がれそうだな)\n\n ふらふらとベルトールが立ち上がると、リナリアが支えるように寄り添ってくれる。\n\n「肩をお貸ししますね、すぐそこですから頑張ってください」\n\n「すぐって…」\n\n ベルトールたちが今いる場所は薄暗い森だ、こんなところに住んでるのだろうか。\n しかしそんな考えは、ベルトールがリナリアに肩を貸すために密着したら吹っ飛んだ。\n\n(おおお、す、凄い…)\n\n 肩の下あたりに、密着したリナリアの胸が押し付けられ、暖かい体温が伝わってくる。\n\n そうしてリナリアの甘い匂いや感触に集中していると、いつの間にか大きなうろのある大木に辿り着いた。まだ3分も歩いてないはずだが。\n\n「こ、この中なのか? なるほど、確かに住めそうだ」\n\n 最初、ベルトールはリナリアが熊のように穴蔵に住んでいるのだと思った。\n だが、その木のうろに入ると突き抜けるような広い空間が広がっていた。\n\n そこは一層高い巨木に囲まれた広場で、この森には珍しいことに日が差し込んでいる。\n 麗らかな小川がながれ小さな湖まである。そして巨木には幹や根元からは家が生えている。\n\n「はい着きました!もう大丈夫ですよ」\n\n「ここは…?」\n\n「私の育ったエルフの村です、もう私以外に住んでる者はいませんけどね」\n\n そこはあの鬱屈した森の中とは思えない、貴族の別荘地みたいな場所だった。\n この小川や湖も明らかに人の手が入った場所に見え、しかも何か特別な力を感じる事が出来た\n\n「ここは神樹の在る場所です、本来私以外は入れないんですけど、ベルトールさんは特別ですよ、悪意を感じないので」\n\n「神樹、と言えば西国の伝承や北国の民話に出てくるあの?」\n\n「う~んどう伝わっているか存じ上げませんが、多分そうだと思います」\n\n なんともあっさり言われ、ベルトールは驚愕する。\n 生涯かけて探しても見つからない、そんな神話に出てくる、伝説の中にだけ存在する木だと思っていた。\n\n 呆然としていると、ベルトールはふと小さな若木が目に入った。\n 周囲の巨木に比べたら圧倒的に小さく、野山に生えてるような普通の大きさの木だが、魔力が震える程の存在感を放っている。\n\n「リナリアあれって… いや、あれがまさか…」\n\n「はい、あれが私たちエルフ族が仕え、神がこの世界を平穏に保つために造った神樹です」"}

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