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{"novel_id": "n0005ha", "chapter": 7, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005ha/7/", "title": "曇天から暗雲へ", "content": "「はあいアゼル、あんた今日暇?」\n\n「暇じゃない、仕事がある」\n\n「そんな嘘ついてもダメよ~オフの日だって知ってんだから、たまには若い女とヤりたいでしょ?」\n\n「何がたまにだよ」\n\n ここに売られてから二年、俺は男娼として仕事と、仕事が無い日は他の奴隷や女娼婦のストレス発散道具として過ごしていた。\n\n「あんた今何歳になったの?」\n\n「今年でもうすぐ13だ」\n\n「もう大分がっしりしてきちゃったからねぇ~、あんた最近男の客減ってるでしょ」\n\n 俺はここ最近で急に背が伸びた。エルフの成長期でこれから大人になる、という頃だ。\n\n「は~あ、最初はあんなに可愛かったのに、最近はセックスしても泣かされるのはあたしらばっかりでつまんな~い」\n\n「そういうのはランドにすれば良いだろ、俺は疲れてるんだから相手しないからな」\n\n ランドも俺も、エルフだからかそれなりに金持ちのリピーターがついた。\n 生意気な俺と違って気が弱く、童顔で背も低いランドは人気が高く、豪華な部屋も与えられて毎日指名が入っていた。\n\n「ランドちゃんね~、もうただでさえギリギリなのに、あたしらが虐めたら壊れちゃいそうだもん。あの子も昔は可愛かったのにね~」\n「ね、あんたホールにも入んなよ。顔が良いから目立つよ~」\n\n「ダニエルの野郎がウザいから嫌だ」\n\n こうやってたまに暇があっても女娼婦に絡まれる。めんどくさいし全く気が休まらない。\n 適当に撒いてさっさと寝ようとしてると、下の階にある店の方から大きな物音がした。\n\n「なんだ、壺でも割ったのか?」\n\n「え~、今日確か侯爵様が来るって話なのにオババが怒るよ」\n\n 様子を見に下に降りる。この建物は一階が娼館ホール、二階と三階が接待用の仕事部屋、四階は上級娼婦の個室になっていた。俺みたいな奴隷は地下だ。\n\n 一階に降りると、一人の男娼が豪華な服を着ている太った男にすがり付いていた。\n 太った男の方は、いつかの時の富豪商人ですがり付いてるのはランドだった。\n\n「お願いです!ここから連れ出してください!約束したじゃないですかいつか買い取ってくださるって、もう嫌なんですよこんな所で毎日身売りするのは」\n\n ランドは半狂乱になっていた。ここに来たばかりの頃は調子に乗っていたが、仕事で金持ちや貴族の相手をするようになって、やっと現実が分かってからは精神が不安定だった。\n\n「ふぅむ本当にエルフが居るとはな、だがマッソーくん君への融資はこんなことでは…大体まだ子供じゃないか、それもひ弱そうだ」\n\n「そ、そんな!ウード領主様は亜人が好みだと聞いておりますよ、どうですかこのランドは人気の情夫でございます、きっとお気に召しますよ」\n\n「確かにエルフを探してはいるが…こんな身なりの汚い娼館にいるような者では、…おいグリンダ」\n\n あの商人、マッソーより更に豪華な服を着てる男には見覚えがある。この領地の領主、ウード侯爵だ。\n ウード侯爵が手招きすると、今まで何処に居たのか背の高いローブを着た男が現れた。\n\n「試してみろ、ダメならまぁ…要らんだろう」\n\n「ふむ、では…」\n\n 背の高いグリンダと呼ばれた鷲鼻の男は、ウード侯爵よりも大分年老いて見えた。そして得体の知れない雰囲気を纏っていて、ウード侯爵よりも恐ろしい気配がする。\n\n「ひっ、何を…ぐあっ!がっ、あああああああああああ」\n\n グリンダがランドに手をかざすと、ランドが苦しみ出した。口から泡を吹き、ジタバタとのたうち回る。\n\n「外れでございます」\n\n「やはりか、はぁ…もういいぞ」\n\n ウード侯爵とグリンダはがっかりしたような様子で、ランドから顔を背けた。ランドはまだ苦しんでいるようで、床に倒れ伏してもがいている。\n\n「エルランドの奴めの領地、あやつの領内にはあれほどエルフが居ると言うのに何故我が領内にはおらんのか、居てもこんな外ればかりだ」\n\n「ウード様の領内にも、二年前にエルフの村があったと報告がございました、もっとも村民は疎開でエルランド公の地へ逃れたとか」\n\n「どうしてあの時に私まで報告が上がってこなかったのか、何故お前も気が付かなかったのだ」\n\n「申し訳ありません」\n\n そう言ってグリンダが侯爵に頭を下げた後、ぐるっと首を回して俺を見た、気がする。\n 一瞬目があったと思ってひやりとしたが、勘違いだったのか?\n\n「マッソー君、残念だが諦めなさい。あと私は君のような趣味は持ち合わせていない。馬が合わなかったね」\n\n「そそ、そんなお待ちくださいまだ一人ここに…は、離せこいつ!」\n\n 領主たちが帰ろうとする中、ボロボロのランドがマッソー商人の足にすがり付いていた。\n マッソーは引き剥がそうとしているが、なかなかランドが動かない。\n\n「お、おいそこのお前何とかしろ!こいつをひっぺがせ!」\n\n「は!お任せください」\n\n いつまでもしつこいランドに横に控えていたドア番、ダニエルが剣を抜いた。\n\n「お、おいっ!」\n\n あいつらの、特にグリンダが怖くて隠れていたが、俺は慌てて階段の上から飛び降りる。しかし間に合わない。\n ダニエルが鋭く剣を振り下ろし、ランドの腕が飛んでいく。\n\n「きゃああああああああああッ!」\n\n 周りにいた女娼婦がそれを見て大声で叫んだ。ダニエルは痛みで絶叫するランドを見て笑っている。\n\n「ダニエル!」\n\n「何だよアゼル、ランドが悪いんだぜ。これは俺の仕事だ」\n\n「ふざけるなぁっ!」\n\n 怒りに身を任せ、ダニエルに向かって拳を突き出す。\n 体の中から激情と共に力が溢れてくるのを、心の何処かで冷静に把握していた。\n\n「お、もう一匹出てきたぞグリンダ、…グリンダ?」\n\n「ふふふ、クックック…」\n\n「相変わらず不気味な笑い方をする奴だ」\n\n 体内から感じられる力は魔力だった、俺はそれに火を付けるようなイメージで手から打ち出す。\n 炎が走ってダニエルの周りを囲むように輪になった。\n\n「な、何でお前魔法が!、おい、やめろ、やめ…!」\n\n きっとどさくさ紛れに俺を切り殺そうとしてたんだろう、真剣を持ってニヤニヤしていたダニエルの顔からさっと血の気が引く。\n 普段俺もランドも魔法が使えなくなるチョーカーを首に巻かれていた。だからただのガキだと思って甘く見ていたんだろう。\n\n ダニエルの足元から火柱が天井に向かって突き抜ける。体を炎の柱に焼かれながら、今度はダニエルの声が娼館に響き渡る。\n\n「…あ、ランドは…ランド!誰か医者を…ッ!?」\n\n 自分でも何で魔法が出たのか分からず、一瞬呆気に取られて黒焦げになったダニエルを見ていた。\n はっとしてランドの所に行こうとすると後ろから首を掴まれた。\n\n「どうだ!」\n\n「ふむ、恐らくですが…当たりでございます」\n\n「よぉし!その子供買ったぁ!!」\n\n 俺の首を掴んでいたのはグリンダだった。何処にそんな力があるのか、枯れ木のような片腕で俺の体を宙に浮かす。\n 俺の目を覗き込むグリンダの瞳は、金色の中に深い闇をがあり、その更に奥から得体の知れないものに頭のなかを覗き込まれているようで、先ほど熱くなった俺の心は恐怖で凍りついた。\n\n「おいマッソー君、爵位の話考えておいてやるからこれからも励みなさい」\n\n「え?、あ…、はい!ありがとう御座います!」\n\n「こ、これは何事がございましたので!?」\n\n 騒ぎを聞き付けたのか、大分遅れてドーラがヤってきた。何があったか分からないというか表情だったが、ウードの顔を見て平伏している。\n\n「ああ代表者かね、このダークエルフの子供を買い取って行くよ。値段は言い値で良い」\n\n「では先に屋敷に戻っております。護衛は置いていきますが、お早いお戻りを」\n\n その後、ドーラが何か言っているのが見えたが、周りの景色が歪んで声が聞こえなくなる。\n 首を絞められた酸欠からか、目眩がして意識が遠くなった。\n\n「ごほっ、げほっ…」\n\n 投げ飛ばされてグリンダの腕から解放される。周りは見たことの無い内装の屋敷で、娼館ではなかった。\n\n「ようこそ、アゼル君」\n\n しゃがれたグリンダの声がして、そちらの方を振り向くと顔に何かを被せられた。\n\n「うっ、な、何だこれ…仮面…?は、外れない!」\n\n 冷たい仮面から魔力が流れ込んできて、手足の感覚が薄れていく。\n 仮面から流れ込んでくる魔力が俺の全身に染み込んで来て、体を乗っ取られて…\n\n「怯える事は無いよアゼル君、少し長い夢を見るだけだ、兵器になって戦争の道具になる夢をね」\n「そして、その夢が覚めたらワシの道標になっておくれ」"}

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