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{"novel_id": "n0005ha", "chapter": 9, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005ha/9/", "title": "遭遇戦", "content": " (ここは何処だ…?どこかの森の中か?木の種類が見たことがない、知らない場所だ)\n\n この呪いの仮面を付けられてから、ずっと俺はグリンダによって戦争に駆り出されていた。\n 自分の意思で動かせないのに、しっかりと体の感覚が残っているせいで剣を振る鈍い感触を感じてしまう。\n そしてグリンダによって攻撃的な魔法を脳内にたくさん詰め込まれた。\n\n\n この仮面は奴隷の首輪と同じだった。主人の言うことに反発出来ないように体の自由奪う魔法がかかっている。\n だが戦いの時意外は意思は自由だった。俺は同じ軍の兵士や騎士からよく声をかけられ、戦いで挙げた功績から信頼もされていた。\n それがあまりにも辛かった、ずっと逃げ出したかった。\n\n そして現在、どういう事なのか俺は戦場でもない何処かで目を覚ました。\n 最後の記憶ではまた戦場で突撃させられていた事をおぼろ気に覚えているが、自我を失ったまま振味方を振り切るほど暴れたんだろうか。\n\n「これからどうすれば良いんだ…クソ、邪魔だなこの仮面、それに兜も」\n\n\n 現在地さえ分からないのに、金も何も持ってない。あるのは憎らしい仮面といつかは憧れていた戦争道具の剣と鎧だけ。\n 体もあちこちボロボロで、何も無い所に座り込んで途方に暮れた。\n その時後ろから人の気配を感じた。\n\n◇◆◇◆\n\n 杖に光を灯して進んでいくと、森の入り口付近の所で薙ぎ倒された大木があった。熊でもこんな大木を引き裂くのは無理だろうとベラトールは気を引き締めた。\n\n「何だこれは人じゃなくて魔物でも入ってきたのか」\n\n ベルトールはここに来て本当に身の危険を感じて寒気がした。\n やはり一度戻ろうかという考えも浮かんでくる。\n\n「…っ!あいつは…?」\n\n\n 森の中を歩いていると暗がりの中で大きな岩に背を預けている者がいた。格好は少し大柄な人間ぐらいであろうか、兜をつけて仮面をしているので顔が分からなく、傷だらけの甲冑をつけていた。\n\n\n「……………」\n\n\n 闇の中で不気味に青く輝く兜から、静かな呼吸音が聞こえてくる。\n\n(人間か?人種判断までは付かないが生きているようだ。話かけるべきだろうか)\n\n ベルトールはあの大木を引き裂いたのが目の前の人物だったら、という事を考えて放って帰るべきだと思っていた。\n しかし、よく見ると鎧や兜の隙間からケガをしている体が見え、苦しそうに思えてかつての自分のようで放っておけなかった。\n\n\n「おいっ!そこのお前、大丈夫か?言葉は通じるか?」\n\n\n ベルトールは木陰から身の出して、東国の共用語で話しかけた。\n 青騎士はピクッと反応するとゆっくりとこちらを向いた。\n\n「に……………逃げ、ろ」\n\n「何っ!?聞こえん!声が出せないなら待ってろっ!近くまで行く!」\n\n\n ベルトールが騎士の掠れた声を聞き取るために近寄ろうとすると、その男は獣のようなうなり声を響かせバネのように飛び起きた。\n\n\n「な、何だおいっ!?」\n\n そしてとてつもない速度で突っ込んで来る。さっきまでのヨレヨレとした動きは演技だったのか、剣を肩で担ぐように振りかぶってベルトールに向かって突進する。\n\n\n「くそッヤバい!」\n\n ベルトールは慌てて杖から魔法を飛ばす、花火の魔法だ。音と光と衝撃を同時に飛ばして相手の感覚を狂わせる。かつてどんな人種と相対しても良いように開発した自慢の一発だが、残念ながら実際の戦場では目立つだけで役に立たなかった。\n\n(だがこの距離なら少しは怯むはず…!)\n\n「……!」\n\n\n 攻撃されたと思ったのか騎士は跳ね退いた。重力はどうなっているんだというあべこべな動きで花火をかわされる。\n\n\n「やるしかないか…」\n\n まともに突進を食らったら死んでしまうので、ベルトールは風の魔法で刃を作り、騎士が近寄ってこないように牽制する。\n\n\n「……ガぁぁ!!」\n\n「何っ!?」\n\n\n だが騎士は普通に剣山の中を突っ切ってきた。何か鎧に魔法的な効果があるのかまるで効いてない。ベルトールは出鱈目に光を放ったり水の鏡を作りまくって撹乱した。\n\n\n「まずい、反魔法の鎧か?魔法が効かないとなると私には何も手立てが無い…」\n\n\n 水鏡や光の玉に手当たり次第に突っ込んで行く騎士から逃げ回りながら、ベルトールは懐のミスリル剣に手を伸ばす。\n ミスリル、金剛石をも貫く最高級の合金でこの剣はエルフの村でも最高の剣だった。\n\n(だが非力な俺があいつと切り結べる分けないし、何とか動きを止めないといけない。幸いミスリルはどんな硬度も関係無い、鉄鉱石でも水や粘土でも切り裂ける)\n\n\n「火は森の中だから使えんし、反応してる水鏡を並べまくって風圧の檻に閉じ込めるか…?」\n\n ベルトールが木に登って作戦を練っていると見つかった。騎士は突進した勢いで反対側の大木に突っ込むと、そのまま反転して同じ速度で飛んでくる。\n\n\n「ヤバいッ!」\n\n ベルトールが木から飛び降りると、騎士の突進が直撃した幹が木端微塵になった。背筋に冷たいものを感じながら辺り一体に魔法を拡散させる。\n\n\n「「「こっちだ!」」」\n\n「……?」\n\n\n 四方八方から風の魔法で声を響かせ、水鏡を展開する。姿に加えて声も複数聞こえた事で一瞬騎士が周りを見渡した。\n\n\n「喰らえ!」\n\n ベルトールはその声を乗せた風を奴に一斉にぶつけ、上から竜巻を落とした。地面ごと凹むような、相手の体重の何百倍もの圧力がかかっているだろう竜巻の中で騎士は膝をついて動きを止めた。\n\n 当然ベルトールも近寄れないので魔法で土塊の手を呼び出す。ミスリルの剣を土塊の手で握り、思い切り投擲させた。\n 射ち出されたミスリル剣が風を切り裂きながら騎士の頭部に一直線で飛ぶ。\n\n\n「……ガッ…ァ…」\n\n「むっ…」\n\n\n 仮面の上から額の辺りを狙ったが、仮面に付いていた宝石の装飾を何とミスリルが貫けなかった。\n しかしその宝石は魔法石のような何か加護があったのか、ヒビが入った瞬間騎士がガックリと頭を垂れた。\n ベルトール動かない事を確認してから魔法を解く、森の中は戦いでめちゃくちゃになり、木々が何本も倒れてしまっていた。\n\n「はぁ…はぁ、何とかなったが、どうリナリアに言ったものか…いやそれよりもこの男はいったい…?」\n\n\n 倒れた騎士が動かないのを確認すると、ベルトールは背を向けてミスリル剣を拾いに行く。\n\n(流石に刃こぼれ等はしてないな、ならあの仮面は何で出来ているんだ?)\n\n ミスリル剣を眺めながらベルトールが仮面の騎士の死体を調べようかと振り返ろうとした時、腹部に鈍い痛みが走った。\n\n「な…?あ…」\n\n 遅れて焼けるような熱さがじんわりと広がる。ベルトールがゆっくりと痛む箇所を見ると自分の腹から剣が生えていた。\n\n「な、に……」\n\n どしゃりとベルトールの体が崩れ落ちる、背後ににいたのはさっき倒した騎士だった。\n ヒビの入った仮面だけが暗闇の中で浮かび上がっている。\n\n「ぐう…ゲフッ、がはっ!」\n\n ベルトールは己の油断を猛省した、だがもう遅かった。腹からだらだらと血が流れ出て底冷えするように体温が減って行く。\n\n(し、しまった…、確認を…先に…)\n\n ベルトールは目の前の脅威が倒れた安心感から、気が抜けてしまった。\n 昔なら死体の確認を先にしていたと言う言い訳のような考えが今さら過る。\n\n\n「ぐああッ!!」\n\n「……!?」\n\n ベルトールは最後の力を振り絞って騎士な顔面を殴り付けた。頭部の仮面に命中してベルトールの拳が砕ける。\n しかし騎士の仮面はヒビが入っていたからか割れて足元に落ちた。\n\n (だがもうこれまでだ、この傷では死は免れない。リナリアの回復魔法でも間に合わない)\n\n ベルトールは朦朧としたまま地面に倒れる。仮面の騎士も数歩後退りして膝を地面についた。\n\n(結局この森が墓場だったのか、人生の最後に良い夢が見れた気がする、な…)\n\n「お父さん…?」\n\n「ア、アリシア!?」\n\n ベルトールは虫のような息をしながら最後に相手の顔でも拝んで死のうと、前を見るために顔を持ち上げる。\n すると正面の騎士の背後、茂みからアリシアが飛び出してきた。\n\n「何故だ、何でこんな所にいるんだ。リナリアは何をしてるんだ?」\n\n「お父さんがおうち出てくの見てて…お母さんがずっと心配そうで…」\n\n「お、お母さんは…?」\n\n「あたしが寝たと思っておうちにいるの、あたしはお母さんに安心してほしくてお父さんを呼びに来たの…」\n\n アリシアがベルトールに駆け寄っても、仮面の騎士は動かなかった。\n 石像のように膝をついて固まっている。\n\n (もうそんな事が出来る年になったのか、何て良い子なんだ。母親のために父親を探しに行くなんて俺はしたことがない)\n\n\n「える…ふ?」\n\n\n だが今の状況はベルトールが娘の成長に喜んでいられるほど平和では無かった。掠れた騎士の呟きが聞こえて来て、アリシアを認識した事がベルトールに伝わる。\n ベルトールは恐怖で涙が溢れてきた。血を流しすぎて体が寒く上手く回らない呂律で助けを乞う。\n\n\n「たの、頼む、見逃してくれ…娘なんだ、やめてくれぇ…」\n\n ベルトールの懇願が聞こえたのか、騎士はふらっとその場から立ち上がり、一歩、また一歩と重い歩みで去っていく。\n やがて足音も聞こえなくなり、気配が煙のように消えた。\n\n(退いた…のか?良かった、アリシアは助かった)\n\n「お、お父さん…お父さん」\n\n アリシアは泣きそうな顔をしてベルトールを助けようとしていたが、何も出来なかった。\n\n「あり、アリシア、よく聞きなさい。お母さんの所へ帰るんだ。お父さんも帰るから、だからアリシアもおうちに帰りなさい」\n\n ありしたは恐怖を感じているのか、それとも頭がいっぱいで感情の整理が出来ないのか兎に角一生懸命頷いて森の中に走っていった。\n\n (これでもう大丈夫だ、神樹の加護の中なら安心出来る。そして私は最後の手段だな…ここへ来て精霊を研究し、そして叶わなかったが研究を続けた魂の操作を文献を元に再現させる事に成功した、名付けて霊化の術だ)\n\n\n 死に瀕する事で、ベルトールは自分の魂をやっと知覚する事が出来た。\n そして体を棄て、自分の魂を精霊に転換する。かつて北国で天才と呼ばれたベルトール一世一代の大魔法だ。\n\n「うっ……!?」\n\n するとベルトールが魔法を行使しようとした時、周囲の木々が輝き出し。\n 小さな光が集まり、見たこともない大きさの精霊が現れた。その大精霊の光がベルトールを包み込む。\n\n「これ…は…森が、いや、神樹か…?」\n\n ベルトールはその大精霊の中に、神樹の意思のようなものを感じて死に際だと言うのに穏やかな気持ちになれた。\n\n「はは…認めて貰えたみたいだな、そうかありがとう」\n\n そうしてベルトールの魂は、魔法で転換されてその大精霊と一つになっていった。\n\n\n\n 翌朝リナリアとアリシアがベルトールを発見した所へ戻ってきた。\n 既にベルトールの息は無く、リナリアは今度こそ死別の悲哀に直面した。幼い娘のアリシアはかつての母親のように親の死が理解出来ず、泣き続ける母の背中をさすり続けていた。"}

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