| {"novel_id": "n0005lj", "chapter": 7, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0005lj/7/", "title": "三回の裏 風習", "content": "「私は先代の旦那様……つまり、静香さんのお爺様が、妾に産ませた子供です」\n\n「残念ながら、あなたがどんなに否定しようとも事実です。あなたのお父様とは異母兄妹にあたりますから、戸籍上はともかく、血の繋がりで言えば、私は静香さんの『叔母』ということになりますね」\n\n\n\n\n「静香さんのお爺様である博文様は、私が幼い頃より頻繁に家を訪れ、私ともよく遊んでくださいました。私にとっては、優しくて羽振りの良い、親切なおじ様でした。いつも上品なオーデコロンの香りがして、私に優しく微笑みかけてくれました」\n\n「私の母は若くして重い病気を患い、入退院を繰り返す日々が続いておりました。母が家にいない時は、高木さんと名乗る年配の女性が住み込みで私のお世話をしてくれました。そのお陰で、私は何一つ不自由のない生活を送れていました」\n\n「母の入院中にも、博文様はよく足繁くお見舞いに来ていらっしゃいました。それでも当時の私は、博文様が自分の父親だとは考えたこともありませんでした。本当の父親は私が生まれる前に死別したと、母からそう聞かされておりましたので」\n\n「けれども、大人になって事実を知ってから振り返ってみれば、不自然なことばかりでした。母と住んでいた家には父親の仏壇などなく、一度も墓参りをした記憶すらありません」\n\n「それに、母が入院する病室はいつも、高額な特別個室でした。私を育ててくれた高木さんという女性も、博文様が愛人の子供を管理するために手配した、ただの監視役のお手伝いさんだったのだと思います」\n\n\n\n\n「私が十四歳の頃、母が亡くなりました。博文様が手配された立派な葬儀を終え、たった一人の肉親を失い悲しみに暮れていた私は、迎えにきた見知らぬ葵家の人間に荷物のように連れられ、この葵本家に『使用人』として移り住むことになりました」\n\n「本当は、博文様は東京にある葵家の別邸に私を連れて行きたかったのでしょう。ですが、正妻である貴女の祖母、菫様に猛反対されたのでしょうね。当時はまだ、博文様が当主の座を退いて隠居する前でしたから、世間体や外聞も悪かったのでしょう」\n\n「……私の父である博文様は、私の母を含め、妾が四人いらっしゃいました。……驚くのはこれからですよ、静香さん」\n\n「今、博文様の隠居先で一緒に住み込みで働いている、あのお手伝いさんの二人は、博文様の妾たちです。博文様は七十を超えてもなおお盛んで、毎夜、毎夜、交互に彼女たちをベッドに呼び寄せては抱いているのだと聞いております」\n\n「七十を超えた男と、五十を超えた女たちが、同じ屋根の下で獣のように交わる様を……彼らと同じ家に住んでいる菫様は、一体どんな思いで、どんな顔をして生活しているのでしょうか」\n\n「静香さん。あなたに、想像できますか?」\n\n\n\n\n「私が本家に移った当時、この家には静香さんの父親である清隆様がまだ、お住まいになられておりました。あなたが二歳くらいの頃だと記憶しています」\n\n「私が本家に来た日の夜。十四歳だった私は、異母兄である清隆様の手で、無理やり純潔を散らされました」\n\n「痛みも、悔しさも、悲しみも……およそ人間が抱き得るあらゆる絶望を、その夜、私はこの身一つで味わいました」\n\n「一晩中、清隆様に抱かれ姿を消した後……奥様である華子様が、シーツを握りしめて泣き崩れる私の部屋に現れ、淡々とお話をしてくださいました」\n\n「私はその時初めて、自分の父が博文様であるという真実を知ったのです。そして、華子様は私を見下ろしてこう命じました。『清隆様から、男という生き物を隅々まで学びなさい』と。『それを将来、息子の重信さんと敬さんに教え込むことが、この家でのあなたの役目です』と」\n\n「葵家には、そのような狂った風習が昔からあるのだと聞かされました。正妻になれなかった妾の産んだ娘は、葵家のために飼い殺しの女中となり、次世代の男たちに『女』を教え込むための役割を与えられるのです」\n\n「後で知りましたが、私のような博文様の妾の子は、他にも数人おりました。もちろん女性もいらっしゃったのですが、この悍ましいお役目に選ばれたのは私一人だけでした。……年齢的な都合が、一番良かったのでしょうね」\n\n「翌日から、私は新しい学校に通い、下校後は使用人として家事を手伝い、夜になれば清隆様に夜伽として抱かれ、閨房の全てを教わり、男を喜ばせるための様々な手管を這いつくばって覚えさせられました」\n\n「私には風習のとおり『性奴隷』の地位だけが与えられ、普通の女としての喜びも、ささやかな幸せも一切与えられず、ただひたすらに……葵家の男たちの欲望を処理するためだけに抱かれ続けたのです」\n\n\n\n\n「一年ほど清隆様に抱かれた私は、ご長男の重信さんのお相手することが決められました。重信さんが小学校を卒業したお祝いでした」\n\n「性行為での失敗は、男性にとって大きなトラウマになり得るそうです。ですから、私に失敗は絶対に許されません。極度の緊張状態にある重信さんを落ち着かせるため、私はまず丁寧に口で慰め、一度果てていただくことにしました」\n\n「清隆様に隅々まで教え込まれておりましたからね。初めてで、小学生の重信さんなど、あっけなく果ててしまわれましたよ。……本当に、可愛いものでしたよ。ペニスも、表情も」\n\n「そして、重信さんのペニスが回復するまで私は、彼の耳を舐め、乳首を弄り、ペニスと睾丸を舌で愛撫しました」\n\n「いよいよ本番です。猛ったペニスを優しく内へと誘導すると、無事に受け入れることができました。めでたく女の味を覚えられた重信さんは、二度目も瞬く間に私の中で果ててしまわれました」\n\n「それからの日々は、月の障りの間は口元で、それが明ければ身体を重ねて、ひたむきに奉仕を続けました」\n\n「他にも重要なことが沢山あります。避妊具の付け方に始まり、キスのやり方から、おっぱいや膣の触り方まで。あらゆる方法で、女に快楽を与える技術を教えました」\n\n「やがて重信さんは、より背徳的な戯れを好まれるようになりました。私に薬を用いて排尿、排便する様を眺めたり、肛門を弄んでは楽しまれたのです。ほどなくして、お尻をご自身で貫かれた際、あの方は大層お喜びになられておりました」\n\n「当然のことながら、そのような日々を送るうちに私は身籠りました。避妊薬など与えられるはずもありません。重信さんに確かな子種があるか、見極める必要があったからです」\n\n「葵家の御曹司に子種がなければ、将来、娘を嫁がせる側の家も困るでしょう?ですから、私のこの身体を『試し』の道具として使ったのです」\n\n「私は華子様に『病院で調べればよいのではないか?』とお伝えしたことがあります。そしたら、あなたの母は私に何と言ったと思いますか?」\n\n「『お前は私の息子に、医者の前で卑しい真似をさせよと言うのか!』と怒鳴りつけられたのです。そのようなことが他家に知れ渡れば、葵家の恥だとも言われました。ここに都合のいい『胎』があるというのに、それを使って何が悪いのかと、逆に冷たく問い詰められましたよ」\n\n「重信さんの子を堕胎処置した後になって、ようやく避妊薬を与えられました。奴隷の私から、重信さんに避妊具をと懇願できるはずもありませんから。そうして、三年ほど重信さんとの地獄のような関係は続いたのです」\n\n\n\n\n「高校を卒業した私は、葵家の正式な『お手伝い』として、昼は家事や華子様のお手伝いをこなし、夜になれば重信さんに抱かれました。その頃には、清隆様は当主の座を退いた博文様に代わり、東京へと居を移しておられました」\n\n「清隆様は今でも東京に二人、そしてこの地元に一人、妾を抱えていらっしゃいます。お正月やお盆以外の用事でこちらへ帰ってこられた時、清隆様が日帰りでそそくさと東京へ戻っているわけではございませんよ。……こちらの愛人の家に泊まり、体を重ねているのです」\n\n「そして………いつ頃からだったでしょうか。次男の敬さんが、私のことをじっと見つめてくることが増えておりました。敬さんも六年生になり、そろそろ異性を意識し始める多感なお年頃なのだろうと……初めはそう思っていたのです」\n\n「あれは、重信さんが部活のゴルフ旅行で家を空けられた夜のことでした。私の寝室に忍び込んできた敬さんは、理性を失ったかのように私を押し倒そうとしたです。ですが、彼が小学校を卒業するまでは、最後の一線を越えるわけにはいきません。私は荒ぶる彼を必死に宥めすかし……その夜は口元で奉仕し、なんとか敬さんの熱を鎮めてもらいました」\n\n「敬さんは、私と兄の重信さんとの忌まわしい関係を、とうに知っていたのです。時折、重信さんの部屋の扉を細く開け、息を潜めて覗き見ていたのだと……彼は悪びれる様子もなく、私に囁きました。敬さんはまだ、精通したばかりの十一歳。ですが、友人から性の知識を教わり、私たちの痴態を見て自慰行為を既に実践しておりました」\n\n「この先の身の振り方をいかようにすべきか、私は華子様にお伺いを立てました。すると華子様は、『重信さんにはもう相応しい相手ができたのだから、次は敬さんの伽を務めなさい。お前以外の使用人に手を出されて、家の風紀が乱れても困るからね』と、まるで古びた道具の使い道を割り振るかのように、平然と言い放ったのです」\n\n「その日を境に私は薬を絶ち、すぐさま敬さんにこの身を委ねました。………しかし、兄である重信さんがそれを黙って見過ごすはずがありません。ご自身には他に想いを寄せる方がいながらも、己の所有物と見なしていた女が弟の腕に抱かれることなど、到底我慢ならなかったのです」\n\n「とはいえ、私にお二人の相手を務めることなどできはしません。私が敬さんの子を確かに身籠るその日まで、決して他の方と肌を合わせるわけにはいかないのですから………」\n\n「結局、私が無事に敬さんの子を宿すまでの数ヵ月間、不満を募らせる重信さんの欲を処理するためだけに、どこからか若い身代わりの娘があてがわれることになりました」\n\n「……ええ、静香様もよくご存じでしょう。二年ほどこのお屋敷で働いていた、あの妙子さんです。彼女はただ、重信さんの夜の慰み者として、金で買われてきただけの生贄だったのです」\n\n\n\n\n「最初はあれほど反発し合っていたお二人ですが、互いの欲の捌け口となる女を与えられてからは、気味が悪いほどあっさりと和解を果たしておられました」\n\n「二度目の身籠りを経た後………私と妙子さんは客間に敷かれた広大な褥で、四人入り乱れての狂宴を強いられるようになりました。代わるがわるご兄弟の相手をさせられ……妙子さんが月の障りで伏せっている夜などは、お二人の情欲と執着が、逃げ場のない私ただ一人へと一斉に振り下ろされ、前と後ろを同時に貫かれました。息を継ぐ暇すら与えられずに蹂躙され尽くすのです」\n\n「お恥ずかしい話ですが、私の身体は、普通の方とは少しばかり造りが違うようで、乳輪やクリトリスが他の人よりも大きいのです。かつて旦那様である清隆様にお仕えした折に初めて指摘されたのですが……後に妙子さんの正常な身体を目にして、ようやく己のいびつさを理解いたしました」\n\n「ほんの少し昂ぶっただけで、ショーツ越しにもはっきりとわかるほど、固く、大きくなってしまいまして。その異様な変化も、隠しきれない淫らな様も、『生まれついての淫婦だ』と、敬さんたちから幾度も嘲笑われましたよ」\n\n「精液や小水を飲まされ、胸でペニスを挟み、ついには、おもちゃを入れたまま一日生活することもさせられました。時折、不意に激しい振動が走りまして、ついあられもない声が漏れてしまった時などは……視線を感じて振り返ると、敬さんがリモコンを片手に愉しげに笑っておられました」\n\n「その上、敬さんは私をあえて人目に晒すという、倒錯した悦びを好まれました。庭師がすぐそばで枝を剪定している前で辱めを受け、敬さんの登下校の車中においてすら慰み物にされる始末。終いには、ご友人の目の前でさえ……。それほどまでに私を玩具のように扱いながらも、敬さんの独占欲は異常なほど深く、兄である重信さん以外の男には、決して私に指一本触れさせようとはなさいませんでした」\n\n「葵家の使用人であれば、私の辱めを受ける姿を見ていない者の方が少ないでしょう。何年にもわたって慰み者を強いられ、その浅ましい印を深く刻み込まれたこの身、黒くくすんだ乳首も、膣も大勢の好奇の目に晒されながら……私は幾度も敬さんに蹂躙され続けたのです」\n\n「もし、私の言葉が嘘だとお思いなら……今度の夏休み、帰省された敬様をよく観察してみてください。夜、お兄様のお部屋の前に立ってみてください。きっと、暗闇の中から私の啼き声が聞こえてきますよ」\n\n「この間も、蜂屋さんにあなたの近況をお伺いした際、ニヤニヤと笑いながら言われたのです。『敬様がご不在で寂しいでしょう? 私がお相手をしてさしあげましょうか』と。……もちろん、お断りいたしましたけれど」\n\n「私は葵家において、そういう存在なのです。誰からも蔑まれ、隙あらば誰とでも身体を重ねる……どうしようもない淫婦だと思われているのですよ」\n\n\n\n\n「重信さんに嫁がれた皐月さんだって、私とあの方の忌まわしい過去など、とうにご存知のはずですよ。ですから彼女もさぞかし、夜の閨では気苦労が絶えないことでしょうね。あの方はあまりに無垢で潔癖すぎますから、重信さんのあの獣のような貪欲さを、到底受け入れられないのでしょう」\n\n「いっそ私に泣きついてくだされば、あの男を大人しくさせる『弱点』など、いくらでも手ほどきして差し上げますのに……。誇り高い正妻である彼女が、葵家の慰み者にすぎないこの私に頭を下げることなど、天地がひっくり返ってもあり得ないことでしょうしね」\n\n「本当は、あなたが皐月さんのようにならぬよう、私が閨の作法を導いて差し上げたかった。……けれど、私には、普通の女性にどう手ほどきすればよいのか、分からなかったのです」\n\n「静香様が、清和奏介と結ばれていらしたなら、私が口を挟むようなことなど何もなかったはずです。けれど、彼は『葵』というその家名を聞いた途端、関わり合いになることを恐れて逃げ腰になった。そして……あなたは彼を引き留めようとはなさらなかった」\n\n「……いえ」\n\n「あなたは、自分からは何一つ『動こうとしなかった』のですよ」\n\n「本気なら、彼を高校の前で待ち伏せすればいいだけの話です。……あなたにも覚悟がなかった。ただ、それだけのことでしょう?」\n\n「清和奏介があなたと接点を持った時から、彼のことは一通り調査いたしました。生い立ちから現在に至るまで、その全てを。表向きの顔はもうご存じでしょうからあえてお話ししませんが、彼には別の裏の顔がありました」\n\n「一度、清和奏介はあなたに機会を与えたはずです。榊原巴を使って、あなたの意思を試したでしょう? ご自身で愛の告白すらできない……彼はそれほどまでに臆病で、情けない男なのだと思っておりました」\n\n「そのため、彼に静香さんのことをきっぱりと諦めてもらうべく、私はある提案をいたしました。いっそ彼ら三人で肌を重ねる情事の様を映像に収め、売っていただけないかと」\n\n「すると、彼はこう仰いました『俺たちの願いを叶えてくれるなら、どんな条件でも飲む』と」\n\n「私、その自信ありげな態度がどうにも気に入らなかったのですよ。私の目から見れば、彼は『葵』の名を恐れて逃げ出した、ただの臆病な腰抜けにすぎませんから。ですから、ひどく底意地の悪いことを彼に尋ねてみました」\n\n「『見ず知らずの他人の前で、記録のカメラを向けられながら獣のように交わることができますか?』って」\n\n「いくら普段から、母親や恋人と狂った関係を結んでいるとはいえ、私は彼がまた怯えて尻込みするだろうと高を括っておりました。だって、わずか十五歳の少年が、そんな異常な条件を呑めるなどと誰が思うでしょう?」\n\n「………ところが、彼は躊躇うことなく横にいた母親の衣を剥ぎ、すぐさま獣のように交わり始めたのです。私の目の前で、一切の羞恥もなく、乾いたままの母親の膣を容赦なく蹂躙しました。避妊具をつけることすらなく。それも一度ではありません。三度も、狂ったように奥底へと欲望を叩き込んだのです」\n\n「失礼ながら、私は旦那様とご兄弟の三人しか男を知りませんでした。客観的に情事を目にしたのも、妙子さんとご兄弟たちの時だけです。……実は私、徹底的にあなたのお兄様たちを『甘やかして』育てたのですよ」\n\n「本来、女の作法を手ほどきする役割であれば、男としてして良いことと、決してしてはならないことを教えねばなりません。けれど私は、自分がこれ以上惨めな思いをしないために、彼らの独りよがりな振る舞いをすべて受け入れ、大袈裟に感じてみせて、肯定いたしました」\n\n「この意味がお分かりになりますか? 彼らは己の身勝手な交わりだけで、女は十分に快楽を得ているのだと誤解したまま、よそで新しい女を抱く……女を喜ばせることなど到底できない、哀れで滑稽な男に仕上がったのです。それが、私なりの葵家へのささやかな復讐でした」\n\n「私の知るお三方の男としての器は、いずれも十分程度であっけなく果てる熱、そして三十分は息を吹き返さない程度の情欲。それが私の知る世界の全てでした。………ですが、彼は違った」\n\n「清和登子という母親は、一体我が子をどう育て上げたのか……。私が葵の男たちを『女を満足させられないポンコツ』に仕立て上げたのとは対極に、彼女は実の息子を『女を極限の悦びで狂わせる、底知れぬ獣』へと育て上げていたのです」\n\n「彼は、女が喜ぶためならば何でもするでしょう。彼に付き従う彼女たちも同様です。では、私も重信さんたちを厳しく育てていれば、あのような『化け物』を生み出せたのか」\n\n「………答えは否でしょうね。重信さんたちから見れば、私は所詮、慰み者の奴隷に過ぎないのですから。彼もまた女を奴隷のように扱いますが、決して蔑にはしない。女の隅々まで快楽で満たそうとする執念が全く違うのです。……決定的な違いは、そんなところでしょうか」\n\n「お三方とは比較にならないほどの圧倒的な威容、絶頂へ至るまでの間合い、尽きることのない猛々しさ。そして何より、自らが育て上げた雄の力に貪られ、狂ったようにあえぐ登子の嬌声と、全身で示す絶頂の証。すぐ傍で見つめる私などまるで存在しないかのように、母親自身がただひたすらに恍惚へと染まりきっていた……その異常な情景は、今もひどく鮮烈に、私の目に焼き付いて離れないのです」\n\n「私はその日、時を忘れて彼らの獣のような交わりを眺めておりました。私がこれまでに経験したどの夜よりも、彼らの姿を見ている方が、よほど下腹部の疼きを止められなかったのです。三度目の熱を放ち終えた後、彼が『審査の結果はどうだ?』と尋ねてきましたので、私は合格だと伝え、撮影の日程を組みました」\n\n\n\n\n「出来上がった映像は、あなたのお母様である華子様もご覧になりましてね。大層お気に召し、『あの男は使える』と直々のお墨付きまで与えられたのですよ」\n\n「時折、いらっしゃるのです。身の程を弁えず、葵の系列に連なる男たちへ近づいてくる卑しい女が。地位と財力に目が眩んだ、浅ましい女たちがね。彼は、そうした毒虫を排除するための手駒として、実に打って付けの存在だったのです」\n\n「これまでは手切れ金を渡して遠ざけることが常でしたが、契約の手続きや多額の費用が嵩むうえ、中には到底納得しない強欲な女もおります」\n\n「ですが……彼に命じて女たちを篭絡させ、そのあられもない姿を映像に収めて脅しをかければ、皆一様に、逃げ出していくでしょう。葵の名に傷をつけることもなく、実に効率的にね」\n\n「近々、彼とは正式にその任を負う契約が交わされることでしょう」\n\n「『静香さんが結婚しても皐月さんのように幸せになれないというのなら、今のうちに好きな男に抱かれ、閨の作法を学んでおいた方がいい』……華子様は、そのように仰っておられました。もちろん、私も全く同じ考えでございます」\n\n「どこぞの名家へ嫁ぐまでの、ほんのわずかな猶予。どうせ籠の鳥になるのであれば、今のうちに好いた男に抱かれる方が幸せだとは思いませんか?『花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき』とも言います。……静香さんに残された自由な時間は、もう今しか残されていないのですから」\n\n「お心が落ち着かれましたら、あの映像を最後までご覧になることをお勧めいたします。実は途中から、私もその狂宴に加わっておりますので……とても見応えのある記録になっているはずですよ。まだ殿方を知らない静香さんでも、彼がどれほど恐ろしい魅力を持った男か、よくお分かりいただけるでしょう。……さて、長話が過ぎましたね。今日はこのくらいにしておきましょう」\n\n\n\n\n「静香さん、最後に一つだけお聞きします。……これまでの私の話を聞いて、清和奏介の真実と、葵一族の血の業……あなたはどちらを、より『不快』だと感じられましたか?」\n\n 問いかけを落とした政子の顔には、正気を失った者だけが作れる、底知れず甘く、おぞましい笑みが張り付いていた。"} |
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