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{"novel_id": "n0006kr", "chapter": 1, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0006kr/1/", "title": "001", "content": "大学に入学してすぐに、南川雫の争奪戦が始まった。\nあらゆるサークルが雫に殺到して、勧誘をしまくる。\n僕たちが卒業した恵万高校出身の先輩も多く、雫は大学に入学したときにはすでに有名人であった。\n\n「めっちゃかわいいね! 俺らとテニスしない?」\n「いやいや、南川さんはイベントサークルがいいでしょ!」\n「フットサルは? イケメン揃ってるよ!」\n\nと、いった感じで毎日のように雫にむらがる野郎たち。\nサークルの勧誘だけでなく、あらゆる人たちが雫にちかづこうと話しかけてくる。\n\n「なんか、高校のときの比じゃないね……」\n\nすこし疲れた顔で雫が、隣にいる、僕、石野清明の腕に手を絡めた。\n\n「たしかに、みんな積極的だな……」\n\nこうして大学の構内を手を繋いで歩くのも慣れてきた。\n僕と雫は大学に入学すると同時に付き合ったことにしていた。\nただ、大学生で恋人がいるのは当たり前で、隣に僕という人間がいようがサークルへの勧誘や、連絡先をきこうとする人たちはあとを絶たない。\n\n「あまり、僕だと防波堤にはならないみたいだな」\n「そんなこともないよ! 告白はいまのところされてないから」\n\n告白はされていなくても、下心ありまくりで誘いをかけている男は多いだろう。\n僕という彼氏がいることがわかっている手前、あからさまに仕掛けてこないだけだ。\n\nそろそろ五月も終わろうといったころ。\n新緑の気持ちの良い季節は一瞬で、すでに夏の気配がちかい。\n\n「清明、このあとは?」\n「教習所からのバイトだな」\n\n人の少ない場所を見つけて、僕と雫は腰を落ち着けた。\n木々が生い茂る大学のメイン通りから外れた場所。\n余った土地に迷った末、木を植えて、申し訳程度にベンチを置いた感じの場所だ。\n\n「免許、もうすぐだよね?」\n「あとちょっとだな……来週には」\n「そんなにすぐ!? うわぁ……清明が運転する車に乗るの楽しみ」\n\nそんなことを言って、雫がスマホを操作する。\n雫は、このあとも講義に出るらしく、合間の時間を僕と過ごしていた。\n学科が違うため、こうして時間を作らないと大学で一緒にいるのも難しい。\n\n「じゃ、今日の帰りは遅い?」\n\nスマホをしまうと、小首を傾げて質問する南川。\n\n「ちょっと遅くなるな」\n「バイトなら仕方ないけど、最近、接触が足りないぞ」\n\nそんなことを言って、南川が肩をよせる。\n午後になり、風がすこし出てきて汗を飛ばしてくれる。\n芝生の上で昼寝をしている学生もいるが、その気持ちはよくわかる。\n\n今日の雫は、黒いパンツに、白い長袖のシャツ。\nデニムのゆったりしたジャケットを着て、全体的にラフな感じだった。\n髪を伸ばしているということで、もうすこしで肩まで届く。\n\nピアスと小粒なネックレスという最低限のアクセサリー。\nカバンは布製の雑誌のおまけについてきたという簡単なやつだけだった。\n\n「お、やっほー」\n\n知り合いが通りかかったのか、手をふる雫。\n\n「友達、多いな……」\n\nここに来るまでも、何人もの人に手をふっていたことを思い出す。\n\n「ん? そりゃ、ね。もう大学生になって二ヵ月近くたつから……清明は友達でけた?」\n「一人だけ」\n「え? マジ?」\n\n本当に驚いたのか、雫が大きな声を出して僕を見た。\nその行動が失礼だったと気付いたのか、すぐに首をふった。\n\n「いや、ごめん……できても変ではないよね……え? 誰? うち、知ってるかな」\n「知らないと思う。バイト先の人だから」\n「ええ!? それすごいじゃん!」\n\nすごいことだと思う。\n僕自身、こうして雫がいないところで交友関係をひろげられるようになった自分に驚いている。\n\n「どんな人? 年上? 年下?」\n「えっと……」\n\nすこし照れながらも僕は答える。\n\n「2つ年上の人で、いろいろ教えてもらってて……僕としては、先輩後輩のつもりだったんだけど、昨日、『友達になってくれないか』って言われて」\n「なにそれ……え? 女?」\n\n急に雫が僕から離れ、声のトーンを落とす。\nおもちゃに飛びかかる前の猫のように体を丸めた。\n\n「……女、だけど」\n「がおっ」\n\n言いながら、雫がベンチの上で僕に飛びかかる。\n\n「それは、もう、清明のこと好きじゃん! 友達とか言って、好きなやつじゃん!」\n「ないない! 彼女がいるって言ってるし」\n「そんなの関係あるか!」\n\n言いながら、僕の首をしめようとする雫。\n\n「イチャイチャも通り越すと、暴力的になるんだねぇ」\n\nそんな呑気なことを言いながら、観音寺雛姫がちかづいてくる。\n雛姫と雫はこのあとの講義を一緒に受けるために待ち合わせをしていたようだ。\n二人は学科が一緒なので同じ講義を受けることも多い。\n\n「きいてよ、雛ちゃん! 清明、浮気したんだよ!」\n「うわぁ……」\n\nと、雛姫が僕をじっと睨む。\n大学生になっても変わらず妖精のような雰囲気のある雛姫。\nふわふわした私服もよく似合っている。\n\n雛姫は雫とは反対に、大学入学を機に髪の毛をばっさり切っていた。\nウェーブのかかったショートヘアで多少は大人っぽい。\n雫の親友という位置づけで、僕と一緒にいることも少なくない。\n\n「石野くん、浮気はダメだよ、浮気は……」\n「違う違う!」\n\n僕は雫にした説明を雛姫にもした。\n\n「それは、相手の人、石野くんを好きだね」\n「だよね! 雛ちゃんもそう思うよね!」\n\nなんだか女子二人が盛りあがってしまっている。\n溜息を吐くと、僕はベンチから立ちあがった。\n\n「じゃ、そろそろ行くから」\n「はーい! 無事故で頑張ってきてね!」\n\n浮気だ浮気だ、と騒いでいた雫だが、真面目な顔で応援してくる。\n手をふる雛姫が笑う。\n\n「バイトも頑張ってね! 今日、わたしもお家、行くから」\n「わかった」\n\n僕と雫はいま風香さんの家に住んでいる。\n同じ大学に通う雛姫は、その家によく泊まりにきていた。\n\n「風香さんも、今日は帰ってくるって言ってたし、久しぶりにみんな揃うね」\n\nと、雫が言った。\n僕は手をふって二人から離れていった。\nみんな、と雫は言ったが、それは僕、風香さん、雫、観音寺のことだ。\n\n高校生のとき、みんなと言えば、二見小夜や結城千絵、仲野羽衣奈も含まれた。\nしかし小夜は現在海外で絶賛モデル活動中で、千絵と羽衣奈は東京で一人暮らしをしている。\n三人とはメッセージのやり取りや電話をすることはあっても、直接は会えていない。\n\n「そんなとこで寝てると風邪ひくぞ、符鈴」\n\n大学から出る途中、芝生に寝ている女子学生に僕は声をかけた。\n薄目をあけた猿渡符鈴が僕を睨むように見る。\n\n「放っておけ。あと、下の名前で呼ぶな」\n\n起きているなら体温が下がることもないだろう。\n僕は肩をすくめると、符鈴から離れる。\n符鈴は大学に入学してから孤高を極めると思ったが、そんなこともなかった。\n\n学科が違うため、そこまで接点はないが、雫や雛姫と一緒にいることも多い。\n高校生のときのようなトゲトゲしさは減り、それなりに友達もいるようだ。\n一部の男子から人気があるという話もきく。\n\n『ちゃんと部長が符鈴先輩を守ってくださいね!』\n\n未だに僕のことを部長と呼ぶ園芸部の後輩である藤野成男に最近電話で言われた。\n\n「そんなことする必要ないだろ、符鈴は誰かに守られるようなやつじゃない」\n『そうですけど、守ってください!』\n\nいちおう約束はしたが、僕はとくに符鈴を守るようなことはしてない。\n先ほどのように声をかけても素っ気なく返事をされるのがおちだ。\n\nちなみに藤野が部長を務める園芸部はかなり活動の幅を広げているようだった。\n学校行事だけでなく、ガーデニングのコンテストなどにも参加しているらしい。\n\nなにはともあれ、藤野と符鈴は仲良くやっているようだ。\n高校三年生の藤野も来年にはこの大学に入学する予定だった。\nそうなれば、僕の大学ライフはさらに賑やかになるだろう。\n\n教習所で教習を終えると、僕はバイト先にむかった。\n個人指導を売りにしている学習塾のバイトだ。\nまだ始めたばかりで担当する生徒はいないが、補助として働いている。\n\n「おはよう! 石野先生!」\n\nもう夕方という時間なのに、朝イチのようなテンションで話しかけてくる人がいた。\nそれが僕に仕事を教えてくれている先輩であり、友達にならないかと言ってきた小田部夏生さんだ。\n\n「お、おはようございます」\n\n荷物を置きながら僕が会釈すると、滑るように近づいてくる夏生さん。\n手にはタブレットがあり、そこには生徒の学習進捗状況がズラりと並んでいた。\n\n「幸田さんは、いつも通りな感じ。竹井さんは小テストが返ってきてるはずだから、その確認から……遠藤さんは部活が大変みたい、その辺を考慮してって感じ」\n\nさくさく説明する夏生さんに僕は短い相づちで答える。\n個人情報もあるのでメモはせず、すべて頭で記憶していった。\n夏生さんは仕事ができる。\n\nいわゆる難関大学と言われる私立大学に通っている三年生。\n将来は弁護士になるつもりだという。\n司法試験の勉強は大変らしいが、家がそこまで裕福ではないのでバイトはやめられないとのことだ。\n\nすらりとした体躯で、いつも黒いパンツと白いワイシャツ姿だった。\n仕事をするときの風香さんにどことなく似ているが、以前、「服を選ぶのが面倒だからこれで統一しているだけ」と言っていた。\nオシャレとは対極にいるようだ。\n\n薄く茶色に染めたセミロングのストレートヘアをポニーテールにしている。\nやや切れ長の目で、どことなく猛禽類を彷彿させた。\nはきはきとしゃべり、いつもテンションが高い。\n\n「では、今日もサポートよろしくね!」\n\n僕のバイトは、夏生さんの背中を追いかけること。\n指導する夏生さんについていき、資料やコピーが必要ならすぐにとってくる。\nまた、質問がある生徒に対しての解答も夏生さんができないときには僕がする。\n\n「石野先生、ここ、わからないです」\n「どこですか?」\n\n先生と呼ばれるのに最初は抵抗があったが、いまはもう慣れてしまった。\n勉強は好きだし、教えるのも嫌いじゃないことは二見の面倒を見ていてわかっていた。\n夏生さんも人がいいしストレスなく働けている。\n\n終業時間になり、僕が帰る支度をしていると、夏生さんが駆け寄ってきた。\n塾の中を走る人がいないので、夏生さんの挙動は目立つ。\n肩が触れるぎりぎりまでちかづいてくると、小さな声で言った。\n\n「石野先生、一緒に帰ろうか」\n「あ、はい……」\n\n一緒に帰ることは多いのに、こう小さな声で言われるとドキリとしてしまう。\n僕の反応ににやりと笑い、夏生さんが言った。\n\n「そのまま、飲みに行くかい?」\n「僕まだ未成年です」\n「大学生になったらお酒が許される国のはずだけど?」\n「それ、少なくとも日本ではないですね」\n\nそうして僕と夏生さんは塾をあとにする。\n夏生さんは自転車で、僕は電車のため、駅まで一緒に歩くだけだ。\n自転車を押す夏生さんが口を開く。\n\n「昨日のことだけどさ……ほら、友達ってやつ……」\n「あ、はい」\n\n昨日、今日のように夏生さんと帰っているときに突然言われたのだ。\n\n「友達になってくれないか」\n\n僕はほとんど反射的に、いいですよ、と答えていた。\nだから、ある意味で、僕と夏生さんは今現在、友達同士ということだ。\n\n「……友達、なんだよね、わたしと、石野くんって」\n「ぼ、僕はそのつもりですけど」\n\n雫や雛姫から浮気だとからかわれたが、浮ついた気持ちは一切ない。\n僕としては大学生になってからできた友達ということでうれしい気持ちがあった。\nそれを浮ついていると言うのであれば、浮ついているかもしれない。\n\n「ならさ、ちょいと、相談に乗ってほしいかもしんない……」\n「相談、ですか……」\n\n塾から駅まではすぐだ。\n駅前で、僕と夏生さんは足を止めた。\n\n「次の金曜日にさ、どう? お酒は飲まなくていいから、ちょっと仕事のあとに……一杯……」\n\n金曜日は僕も夏生さんもシフトが入っていた。\n終わりは今日と同じくらいで、それ以降となるとかなり時間も遅くなる。\n\n「うちでもいいよ……そのまま泊まっていってもいいし」\n「あ……」\n「まあ、彼女いるし、難しいのもわかるよ……できたらでいいんだけど、考えておいて」\n\n早口で言うと、赤い自転車に乗り、夏生さんは颯爽といなくなった。\n僕はその場に立ちすくみ、結局、乗るつもりだった電車を一本逃してしまった。\n風香さんの家につくと、全員が起きて、僕の帰りを待っていた。\n\n風香さんは仕事から帰ってきたばかりなのかシャワーを浴びていた。\n雫はリビングにある巨大なテレビでゲームをしていて、その隣で雛姫が勉強をしている。\n顔をあげた雛姫が、リビングに入ってきた僕に笑った。\n\n「お疲れ様」\n「ただいま……」\n\nゲームをしている雫が画面から目を離さずに声をあげる。\n\n「おかえり! お疲れ様! ご飯は冷蔵庫!」\n「あ、ありがとう……」\n\nお礼を言って、手を洗うと、僕は冷蔵庫からお皿に乗ったハンバーグを出した。\n電子レンジで温めていると、隣に雛姫がやってくる。\n\n「すわってて……わたし、やるから」\n「悪いな……」\n\n言葉に甘えて、僕はテーブルについた。\nサラダや飲み物を雛姫が素早く用意してくれる。\n温めたハンバーグも持ってきてくれて、いたれりつくせりだ。\n\nそんな贅沢な時間、僕の頭の中をぐるぐるしていたのは夏生さんの声だった。\nちょいと、相談に乗ってほしい。\nそのまま泊まっていってもいいし。\n\n大学に入って初めての友達。\n末永く平穏に関係を保っていきたかった。\nしかし、ここにきてまさかのことになってしまった。\n\n雫に相談すべきかどうかもわからない。\nこういうとき小夜がいてくれれば話しやすのだが。\n電話をしてもいいが、むこうはいま朝で、忙しいかもしれない。\n\n「ふーん」\n\n結局、夕食後に雫に話してしまった。\nすると、目をかなり細くて、睨まれてしまう。\nそれでもびっくりするくらい可愛いから、どうしたらいいだろうか。\n\n「新たなる青春の始まりって感じだね」\n\n雫の隣で話をきいていた風香さんがくすくす笑う。\nシャワーを浴び、化粧も落としたのに風香さんはキラキラしていた。\n化粧がないからこその自然美が眩しい。\n\nシルクの白いパジャマを着こなし、長い髪を頭のてっぺんでお団子にしている。\n白い首筋が色っぽく、仕事終わりでリラックスしているのか言葉がゆっくりだ。\n\n「大学生かぁ……いいなぁ……」\n\nそんな風香さんとは対照的に、雫が角張った声をあげた。\n\n「風香さん! これは大事件ですよ! ダメダメダメ! 絶対にダーメ! お泊りはダメ!」\n「わ、わかってる……」\n\nもちろん僕も泊まるつもりはない。\nだが、夏生さんが困っているなら相談には乗りたい。\n\n「清明の気持ちもわかるよ! だけど、その相談って……怪しいなぁ……」\n\nと、腕を組み雫が言う。\n\n「二人きりでないとしゃべれない内容ってなにさ? 宅飲みである必要はある? そもそも、電話とかメッセージじゃダメなわけ? 怪しい……」\n「まあ、僕もそれは思ったけど」\n「やっぱり好きだから、二人きりになる口実な気がしてならないけど、どう思う、雛ちゃん」\n\n雫が僕の隣にすわっていた雛姫にきく。\n\n「その可能性が高いね」\n「やっぱりそうだよね! じゃ、ダメじゃん!」\n「でも、本当に相談があって、ってこともあり得るよね……」\n\n人がいい雫は、雛姫にそう言われてしまうとなにも言えないらしい。\n雛姫がさらに言う。\n\n「あっちの家はダメだけど、こっちの家ならいいんじゃない?」\n「あ、それがいいかもね!」\n\nと、風香さんが手を叩く。\n意味を理解できていないらしく、雫が眉をよせて雛姫を見た。\n\n「なに、どういうこと?」\n「だから……相談する場所を、むこうの家じゃなくて、この家にしたら? もちろん雫ちゃんも一緒に」\n「え? うちも?」\n「どうしても夜遅いし、泊まりになっちゃうかもだから……」\n\nそうか、うちも一緒ならいいか、と雫が本気悩みはじめる。\n\n「風香さんは、いいですか?」\n\n雫がきくと、風香さんはにこにこ笑って指でOKをつくった。\nちなみに風香さんは、次の金曜日は仕事で家に帰ってこられないらしい。\n\n「よし! その……えっと、名前、きいてなかった、誰さんだっけ?」\n「夏生さん」\n「夏生さんに、この家で、彼女付きでよければ、相談に乗ると言ってみて!」\n「わ、わかった……」\n\nメッセージを送ると、夏生さんからすぐに返事があった。\n\n>楽しみ!\n\nこの返事で、雫と雛姫は夏生さんは本当に相談があるだけかもしれない、と思ったようだった。\nそうなると僕の友達と会えるということで雫は上機嫌になっていく。\n\n「わぁ! うちも楽しみ! うちも友達になれるかな!?」\n\nそんなことを言いながら、雫が服を脱いでいく。\n当然、こうしてみんなでいられる夜はセックスをすることになる。\nもう夜中と言っていい時間で、風香さんはこくりこくりと船を漕いでいた。\n\n「あ、僕、シャワー浴びてない……」\n\nソファにすわってお茶を飲んでいた僕は立ちあがろうとした。\n\n「いいよ。あとで浴びて……」\n\nそう言いながら、雫が僕の肩を押す。\nそして僕の上にまたがりながら、首元に顔を埋めてきた。\n\n「汗臭くないか?」\n「臭いほうがいいけど……臭くない」\n\n雫は上半身裸だった。\n雛姫が僕の隣にやってきて、耳たぶを甘噛みしながら言った。\n\n「石野くんの、オチンチンの臭いもかがせて……」\n「臭くてもいいか?」\n「臭いのがいいの」\n\n一気に風香さんの家のリビングが、性的な雰囲気に支配されていく。\n明日も朝から講義があるため、そこまで長時間のセックスはできない。\nだからさくっとインスタントにセックスをする。\n\nそれでも気持ちは濃密に交流する。\n恥ずかし気もなく甘言を吐き、淫語を叫ぶ。\n快楽に抗わす喘ぎ、体液をまき散らすのだ。\n\n「……清明……うちの体も隅から隅までぺろぺろして」\n「石野くんのオチンチン使って、お口オナニーさせてね」\n\nもうセックスなしで眠ることができない体になっている気がした。"}

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