| {"novel_id": "n0006mm", "chapter": 22, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0006mm/22/", "title": "第四話(4)", "content": "姉妹の絆、というか春香ちゃんが鋭いのか…\n\n「あの子、普段からああだけど、今日は特に機嫌がいいのよね…」\n\n結局はごまかせていなかったらしい。\n\n「スーパーの買い出しを手伝ってもらった後に、ちょっと景色のいい丘でドライブしてきただけだよ」\n\nキスしたこと以外は本当なので、堂々と報告する。\n\n「ふぅん……」\n\n春香ちゃんは納得していないようで、じっと僕の顔を見る。\n\n「でも、夏帆となら良いと思う。姉目線でも素直で良い子だわ」\n\n意外なことを春香ちゃんが言ってくる。\n\n「あの子もきっとお兄ちゃんのことが好きだから……公平にね?」\n「怒らないの?」\n「うーん、ヤキモチがないかって言ったらあるけど…私はお兄ちゃんも好きだし、夏帆も秋花も好き」\n\nだから……と続けた春香ちゃんの表情は聖母のようでもあり乙女のようでもある。\n\n「お兄ちゃんは私たち全員と幸せになってね?」\n\nそう言い残して春香ちゃんは家の中にもどっていく。\n\n\n残された僕はしばらく固まったまま動けなかった。\n\n「僕……どうすればいいんだ?」\n\n妹たち全員と幸せになるにはどうすればいいんだろうか。\n\n『弁護士になれますように。お兄ちゃんのお嫁さんにも』\n\nそう書かれた短冊がチラリと見えた。\n\n\n春香ちゃんは僕を明らかに男として見ている一方で姉妹に対する愛情もあって複雑そうだ。\n夏帆ちゃんは僕への好意と好奇心がいろいろ混ざっている気がする。\nそして、秋花ちゃんは純粋に僕に懐いてくれている。\n三人のそれぞれ違う好意をちゃんと受け止めないといけない。\n\n僕の贅沢な悩みは尽きることが無い気がした。\n\n\n「さ、今日のオムライスは特別上手くできたよ!自信作!」\n\nテーブルの上には具沢山のサラダと湯気が立ち上るオムライスが並べられていた。\n\n「じゃあ、みんなでいただきます」\n『いただきまーす!』\n\nそれぞれがオムライスを一口食べる。\n\n「美味しい!」\n「おいしいね!」\n「でしょでしょ?火加減とタイミングがポイントなんだよ〜」\n\n夏帆ちゃんが自慢げに胸を張る。\n\n「卵がフワッとしているのに崩れない……すごいなぁ」\n\n春香ちゃんも感嘆している。\n\n「あきもなっちゃんのオムライス大好き!」\n「やっぱり褒めてもらうとうれしいなぁ…みんなもっと褒めていいんだよ?」\n\n夏帆ちゃんの作ったオムライスは見た目も完璧で味も美味しかった。\n\n「ゆー兄、どうだった?」\n「うん。最高だよ。お店で食べるよりおいしいかもしれない」\n「よかった!」\n\n夏帆ちゃんの笑顔が眩しい。\n\n「そういえば、夏休みの話したけど、みんなはいつからなの?」\n「そうね、私は来週から期末テストだから…」\n「え!?」\n\n思わず声が出てしまう。\n\n「僕、春香ちゃんのテスト直前に引っ越して来ちゃったの?」\n\nテスト期間といえば、中高生にとって受験に準ずる修羅場だ。\nそんな最中に引っ越しとは無神経にも程があった。\n\n「大丈夫だよ、お兄ちゃん。定期試験なんて試験範囲きまってるんだから、普段勉強してれば楽勝でしょ」\n\n学生時代の自分に聞かせたら耳が痛くて千切れそうなことを涼しい顔で言う。\n\n「はる姉、勉強めっちゃできるなら心配しなくていいと思うよ…」\n\n夏帆ちゃんが遠い目をしている。\n\n「でも、試験の時期に引っ越しってのはやはり申し訳なくなるよ」\n「気にしないで。お兄ちゃんには一日でも早く来てもらいたかったから」\n\n春香ちゃんは微笑んで言う。\n\n「いや、うちの妹は出来が良いようでなによりだよ…」\n「お兄ちゃんは苦手だったの?」\n「成績は悪いほうじゃなかったとは思うけど、それなりに必死にやった結果かなぁ」\n「ふーん、じゃあ今度からはる姉だけじゃなくてゆー兄にも勉強教えてもらおっと」\n「あきも、おべんきょうする!」\n「そうだね、夏休みはちゃんと勉強もしようね」\n\nこうして、夏休みにやりたいことがどんどん増えていく。\nいや、僕はとっとと社会人の夏休みを終わらせないといけないのだけれど。\n\n食事が終わって、春香ちゃんと秋花ちゃんは一緒にお風呂へ。\n夏帆ちゃんは台所で洗い物をしていたけど、今夏帆ちゃんと2人きりになるのはすこし気が引けて部屋に戻る。\n\n「夏帆ちゃんもお風呂から出たら教えてね」\n「ほーい…一緒に入らないの?」\n「入らないってば…」\n\nいや、素直な欲望に従うのならとても入りたい。だからこそ、入るわけにはいかない。\n夏帆ちゃんの純粋さにつけこむようなことをするわけにはいかない。\n\n『公平にね?』春香ちゃんの言葉が蘇る。\n\n「やっぱりゆー兄は照れ屋だなぁ」\n\n夏帆ちゃんの楽しげな声が返ってきた。"} |
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