| {"novel_id": "n0007ht", "chapter": 100, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/100/", "title": "腰飾りの意味", "content": " ティサも、ユニスも、多分受け止められなかったのだろう。ラリーヤに問わなければならないことは多々あるというのに、3人とも脳を失って、何も言えない。\n 洞窟を照らす3か所の火には、脳は確実にない。しかし、こちらはパチリ、パチリと小声の合議を進めている。その奥、入口の方から聞こえてくる滝の水が落ちる音も、3人に代わって静かになった場を取り持っている。\n\n ラリーヤの声は、優しい語り口調であったにも関わらず、自信がみなぎっていた。したがって、ラリーヤの述べた内容に誤りがある可能性は低い。その上で、アスリがぐるぐると重い頭を回す先、たどり着くところは生命の成り立ちであって、それはそのまま自身の生い立ちにもつながっていくこととなる。気分が悪くなりそうなほどに濃かった洞窟の中の空気が、もう一段濃くなってしまった中、アスリはやっとの思いで、新たに生まれた疑問の中心たる自己の起源について、ラリーヤに問うていった。\n\n「…あのさ、それって。みんなさ、私のパパとママに、会ってんじゃん。」\n「アスリ!!!」\n\n ティサがアスリを大きく呼んだ。そうである。ティサにしても、思い出深い母と父が、何を成したかまで、到達したに違いない。\n 鈍いユニスも、これは理解できたのだろう。相変わらずユニスは股間を押さえているが、目元にあった変態が、アスリの途中までの指摘以降、急激に減退していっているようである。\n\n アスリにとって、厳しい現実だ。たしかに、アスリはユニスの子が欲しい。だが、母にとってのユニスが父であったとして、アスリがユニスに興奮するように、母も父に興奮し、父がユニスのように変態であると考えるのは、あまりに苦しい。\n その上、父は母に対して、ユニスがかけたようなものを、かけているということになるのである。しかもそれをかける先は、墓地の近くのように手中でもなければ、今日のここでのように髪と顔面でもなく、母は直接体内で受け取ったということになる。\n\n アスリは思考の順序を取り違えたことに気づき、後悔した。まず一番最初に、ユニスを泉の中で受け止めることに目を向ければ良かったのだ。それを先に、性でなく自分の生来に目を向けてしまったのだから、行きつく先は父と母の過去の営みであって、結果として非常に優れない気分に至ることとなってしまっている。\n\n「サイアク…。」\n\n 一言だけつぶやいたアスリは、いかんとも言い難い吐き気をこらえながら、両手で鼻から口にかけてを覆うしかなかった。父と母が具体的にどうしたのか、一切想像したくないが、ラリーヤが言うそれだけは、確実に行われたはずである。\n\n「何言ってんの?アスリだって、ってかティサも、ユニスも、もうおっきくなったんだから、できるようになんないとなんだよ?」\n「そんなっ!ってか、ママがパパのおちんちん、よしよしするなんて…、そんなんやるわけないよ!」\n\n ティサが声を上げた。こちらは現実逃避をしたいのか、白目の範囲がいつもよりも大きく広がってしまっているように見える。\n\n「でも、ティサのママは、男の子のお乳、アレきたあとに女の子にかけたら、赤ちゃんできるって言ってたんでしょ?」\n「…そうだけど、でも、わざわざそんなとこにかけないでしょ!」\n「だって、赤ちゃん出てくるとこなんだから、そこに入れてかけなきゃ…?」\n「はっ!?赤ちゃん出てくるとこ!?」\n\n 今度はアスリが声をあげた。この瞬間、アスリは完全に全て、理解した。すなわち、牛のお産だ。生まれてしばらくもすると、他家に惜しみなく分け与えられ、普段はのんびり荷を運んでいることの多い牡牛たちに、なぜ時々アスリの家に残して飼う牝牛を引き合わせるのか。アスリがたまに目にする、牡牛が牝牛に何かを伸ばして重なる、あの光景は何だったのか。子牛が生まれてくる時、やっとの思いでどこから出てくるのか。過去、深く気にすることもなかった事実に基づいた素朴な疑問は、ラリーヤが因果を提示した今、終始が一貫した。\n\n「マジか…。牛さんと一緒ってことね…。人間の赤ちゃん、産まれるとこは見たことないけど。」\n「えっ!?待ってよ!待って!生まれたばっかの赤ちゃんって、どんぐらいおっきいん?あんなちっちゃいとこから!?」\n「ティサ、ちゃんと見たことなかったのに作りたかったの?」\n「いいじゃん!女の子なんだから、欲しいのは…んっ!ちょっとラリーヤ!!!」\n\n 知識の差で優位に立つラリーヤは、慌てふためくアスリとティサが面白くて仕方ないのだろう。この状況でラリーヤは、ティサが侵攻を阻止している下腹部に当てたままだった右手を、何やらおかしく動かしたようである。\n\n「大丈夫、ここって、ちゃんと広がるから。」\n「ちょっ…!ラリーヤやめて!ねぇってば!ってか!じゃあユニスのおちんちん、私の、その…、おっ、おまん…、お股に入れないとって…、いやいやいやいや!えぇ…!?ってか出てくる前に、入んないよ!」\n\n 凄まじい。父と母が何をしたか、これを考えるとなぜかどうしても気分が悪くなるが、ユニスがティサの中に入るなら、作りとしてはアスリにもユニスが入ることになる。ユニスが渋りに渋って、やっと見せたというのに、また隠している羞恥を、ティサと、アスリの最大の羞恥でもって、つなげてしまうのだ。想像する前から、すでに砕けている脳が、ぐずぐずに煮立ちそうである。\n ただ、そうは言っても、ティサの言い分にはアスリも同意できる。あの泉は、これまでアスリが遊んだり苦しくなったりすると湯を沸かせていたが、そもそも出口の大きさは、入り口と呼べるほどの広さもなかったはずであって、ユニスを受け入れるのは相当苦労するに違いない。こんな話になるのがわかっていたのなら、アスリは大粒の方ばかりで戯れるのではなく、1度や2度は、しっかりとそちらの広さや深さも調査しておくべきだったと、今更ながら後悔したのであった。\n\n「だからティサ、おまんこね。入るよ?ってかユニスのなんて、ふにゃふにゃの時よりおっきくなったんだろうけど、全然おっきくないし?それに…。」\n\n ユニスの両眉が、わずかに中央に寄った。勢いに乗っているラリーヤはユニスには全く気を向けず、一呼吸してから、さらにティサに続けていった。\n\n「ティサ、ティサがつけてる、ティサのママのその石。それさ、何なんか知っててなんかと思ったけど…。うーん、いやでも…、ティサのママのだし、言わんとくか。」\n「はっ!?なんの話!?何かあんなら言ってよ!」\n「やっぱ知らんのね…。一応なんけどさ、ティサのママって、元々カインタの人?」\n「パパもママも、カインタで育ったって言ってた。それがなんか関係…、ねぇ!ラリーヤ!そこ触んないで!」\n「やっぱりね。まぁ、知らんのもアレだし…じゃあ、それって、カインタでつけてるとどんな意味になるか、わかる?」\n「わからん。知ってたらこんな話、なんないじゃん…?なんなんっ?ラリーヤ?怒るよ?」\n\n 怒ると言いながら声に迫力のないティサの一方で、ラリーヤの笑みが強くなる。今のラリーヤは、理詰めであるようでいて、性を説く脅威である。\n\n「へへへ、怒んないで。そのさ、カインタだと、ティサのみたいに立派な宝石の、そこまでのは滅多に見たことないんだけど、やっぱりそうやって綺麗な石とか、好きな男の子に会う時、こっそり腰布の下につけとくんだよ。…で、なかよししたくなった時に、好きな人にだけ見せてあげて、そすうると今日なかよししよーよ?って意味になって。」\n「なかよし…?」\n「おまんこに、ちんちん入れてよしよしすること。なかよし。」\n\n 牛と人間の同一性を見出したアスリに続いて、ティサの中で何かがつながっていくのが、その表情を目にするアスリにも、手に取るように分かった。きっと何らかの、これまで気にすることすらなかった小さなかけらが、意味を持って1つとなったのだ。半信半疑だったティサも、やっと父と母の過去に直面し、アスリのように言い難い気分の悪さを噛み殺し始めているようである。\n 呆然とするティサは、何も喋れない。この状況に陥っても、性の鬼になってしまったラリーヤは、ティサを仕留めにかかっていく。\n\n「だからティサ、それつけてるってことは、なかよししよーよ?ってユニスに言ってるってことだし、ユニスのこと好きって言ってるってことなんだよ?まぁ…、赤ちゃん欲しいって言ってんだから、ユニスに好きって言ってんのと、もうおんなじだけどさ。」"} |
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