Krixter/Repo / n0007ht /110.json
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{"novel_id": "n0007ht", "chapter": 110, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/110/", "title": "ティサのたまに", "content": "「やっぱり言わん……!」\n「そう……。」\n\n ティサの声が、冷たくなった。ユニスは痛がりもしない。ティサの、ユニスとアスリに対する失望が、手に取るようにアスリに伝わってくる。きっと、いくら勘の鈍いユニスも、ある程度はアスリとは同じように受け止めているはずだ。\n この瞬間、アスリから見るユニスは、危険な木陰でアスリに刺さろうと飛んでくる矢に向けて、自らの太ももを躊躇なく投げ出したユニスと重なった。ユニスは、アスリを守ろうとしている。たしかに馬鹿なユニスが、どう考えても蛇足となるところでアスリの名前を、それもごく短い時間に2度も出してしまったせいで、このどうにもならない局面がある。\n 獲物に向かう時のように、ユニスが本能的にアスリの名前を口にしてしまった理由は、おおよそアスリも察しがついている。アスリは直接教えてはいないが、月夜に照らされたラダンをアスリがこっそりと真似たように、ユニスはアスリの一部始終を見ながら学んで、試してしまったからだろう。\n だが、子を成したいとせがまれ、事実上の愛を開示した幼馴染から向けられる失望を前にして、アスリに言うなと言われて、言わないと誓ったことを、ユニスはどうにか死守している。今、女子に局部を握られて、大粒の汗を額に浮かべているユニスは、言いようのないほどに、どう見ても情けない姿である。しかし、この背後には、アスリを守る強い意志が控えていているのであって、本来、将来が約束された相手からの負の感情もどうにか受け止め、自分が悪者になってでも、どうにか場を取りもとうとしているのだ。\n\n アスリは身を恥じた。ユニスという男は、弱くなってしまう時はあれど、常に勇敢で一貫している。そもそも、愛する人に罪を全て背負わせようという魂胆そのものが、間違っているのだ。今のこれと、ユニスを責めて性を感じるのとは話が別で、愛する人が将来の相手から失意を受けるようなことも、自身への意図を無下にすることも、あってはならない。\n\n 太陽は夕焼けになろうと、刻一刻と、赤く、今日最後の暗い輝きを増していく。もう、このまま隠し事は続けられないだろう。昼間の裸の告白だけでは、アスリのコミュニケーションは絶対的に不足していた。全てはアスリの見通しの甘さが原因だ。アスリはティサには誠実であらねばならないし、大好きで大好きで大好きなユニスに、守られてばかりではいけない。\n\n「いいよ、ユニス。絶対に言わないでってお願いしたこと、言いなよ。私が、どうしても……、やめられないこと。私が……、アレ、やってるとこ見て、やってみたくなっちゃたんでしょ?」\n「はっ!?」\n「えっ?何?そういうこと?」\n「嘘!?え?ホントにアスリ、ユニスとなかよししてないよね!?」\n「ティサ、大丈夫。本当に、本当に、本当に、私はユニスとなかよししてない。でもごめん、私……、サイテーなんだ。ごめんなさい。」\n\n 針を刺される覚悟は、すでにできている。アスリは悪いのだ。5回でも10回でも刺されて、涙の中、耐えるしかない。\n\n「いや、アスリ!!!」\n「ユニス!」\n「だって!」\n「いいから!!!」\n\n ユニスがアスリと、目を合わせた。アスリは、ユニスに目から思いを送る。一拍の間を置いた後、ユニスは両目でのやり取りを終えて、伏し目になった。\n\n「ぐっ……!!!そっ、その……、アスリが、アスリが……。」\n\n 弱く、風が吹いた。\n\n「ぎっ、きもち……!よさっ、そう、だった…から。」\n\n 尻すぼみに小さくなる声とともに、ユニスの顔は地面に向けられていった。とうとう、ユニスはアスリの快楽を明らかにした。\n\n 予想通り、アスリにもたらされたのは、猛烈な羞恥だった。また、アスリの腹の奥は疼き、火の海と化している。これからユニスはおそらく、アスリが先ほど洞窟の中でしたことや、ユニスの背の上で行ったこと、ユニスの精製した結晶と一体になったこと、全てを洗いざらい話すのだろう。もう今日は村まで帰れずに、ティサに一晩中はみ出た部分を引っ張られ、飛び出た中央部が潰れてしまいそうなほどにつままれて、その嫉妬全てを身をもって受け止めなければならないかもしれない。\n\n「えっ……、それってアスリも、裸になってる時、その……。」\n「うわああああああああ!!!!!」\n\n 何も掴まれていないというのに、大きく声を上げたアスリは、両手で顔を隠すと、その場に一気にしゃがみこんだ。もう何も見ることができないし、顔を向けることもできない。\n 最悪で、最高だ。アスリはクズな自分に、陶酔した。もうみんな知ってしまった。そうであれば、今からティサとラリーヤにも、自分がどんなことをしているのか、見てもらうべきだ。\n\n ただ、幸いなことに、または残念なことに、嫉妬に傾きかけていたティサの目にも、アスリはあまりに痛ましく映ったのか、アスリの頭上で続いたのは、ユニスへの激しい叱咤であった。\n\n「そんなん……!このバカユニス!!!アスリの何見てんじゃ!!!」\n「ヤメロ!痛い!痛い!痛い!」\n「そんなに見たいんなら、私が見せるから私に言え!」\n「はっ!?」\n「しかも、おちんちんいじって、自分でお乳出してたん!?バカ!潰す!コロス!ヘンタイ!」\n「うわぁあああ!!!痛い!ヤメロ!」\n「ちょっと、ティサッ!潰したら、ユニスがホントに死んじゃう!」\n\n すでに夕焼けに照らされるこの場の状況は、潰した芋と肉を混ぜた、口に含む直前の食事のように収拾がつかない。ただ、ユニスのぶらさげる球と棒だけは潰さずに保全しようと、変態でなかった頃の大人びたラリーヤが、顔を伏せるアスリの真上で、何らかの物理的介入を行ったようであった。\n\n「……ほら、ティサ。これ潰しちゃったら、ユニスのお乳出なくなって、赤ちゃん作れなくなっちゃうよ?」\n「くっ……!サイテー。ユニスのバカ。今度、私が見てる前でやりな。」\n\n 何も反論はなかったが、足音とともにユニスが少しだけ遠くなる気配があった。ティサがユニスを解放したのだろう。\n アスリはもう、これから自分がどうすべきかわからない。ユニスも自慰の事実を明かしたが、ユニスもアスリの事実を明かした以上、もうティサにもラリーヤにも、気軽に顔向けすることはできない。\n 元来、ユニスは全てを知っていたし、それでもアスリがユニスに強く出られたのは、ユニスがあまりに情けなく、不甲斐なかったからだ。自慰に限らず性がもろ出しのラリーヤはさておき、おそらくティサはきっとこれから、アスリが何を言っても、結局この人物は自慰すら我慢もできないと、まともに取り合ってくれなくなるだろう。やはり、母が強く禁じるほどのことなのだから、その習慣を断てなかったアスリの自業自得だ。アスリは罵られながら、自慰がしたい。\n\n その悔しさの中に火照るアスリの背に、優しく手が置かれた。ぬくもりを通してアスリに広がってくるのは、無言の共感である。今のアスリの感情に寄り添えるのは、自分の身をいじりまわしていることを平気で公言している、ラリーヤ以外にはいないだろう。\n\n「……ねぇ、アスリ。恥ずかしいよね?ごめん、私、何も考えないで、余計なことしちゃったかも。ユニスにまで見られて、もう最悪なんは十分なはずなんに。」\n\n ティサだった。もう声は、低くない。このタイミングでもたらされる今日2度目の慈悲は、アスリにはこたえる。\n やや、間が空いた。深く吐き出すティサの息遣いが、アスリの背にも広がる。静寂の一時に、ティサが進む。\n\n「ねぇ、大丈夫。私もその……、あの、アレ……、たまにするから。」"}

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