Krixter/Repo / n0007ht /116.json
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{"novel_id": "n0007ht", "chapter": 116, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/116/", "title": "飛ぶ衣服", "content": " 一体、アスリは何を見せられているというのか。果たしてこれは、何だと言うのか。\n はっきり言って、ラリーヤのこの行為は不潔極まりないし、意味不明である。だが、それを補って余りあるほどに、アスリが目にしている光景は清らかで、何もない2人の地面のまわりには、まるであの果物と同じ、濃い黄色の花が咲き乱れているかのようだ。何より、ただ果物を切って食べるだけで、どうしてこれほどまでに官能的になるのであろうか。\n やはりラリーヤは、凄まじい。少なくとも今は、ラリーヤを気安く変態とは呼べない。この女は、性と美の化身だ。\n\n すでにイケメンの喉元が上下する動きは止まっているが、まだ2人の口づけは終わらない。それどころか、ラリーヤはイケメンと互い違いになっている頭をどんどん斜めにさせていて、上下の唇全体でイケメンの口元をくわえこんでいるかのようである。その狭間でほんの一瞬、唇と唇がごくわずかな距離を取って垣間見えた、ラリーヤの舌がイケメンの舌と触れ合っている事実を、アスリは見逃さなかった。\n\n これは口づけではない。舌づけだ。ラリーヤは今イケメンと、舌と舌を通じて、激しく絡み合っているのだ。\n アスリの頭が、視線を通して内側から殴打される。口だ。誰の顔にもついている、口だ。隠す場所でないところだ。なぜアスリは、人間の口を見ているだけで、自慰がしたくなるのか。まずい状況だ。\n\n それでもどうにか、ラリーヤの口遣いは落ち着いていき、その激しさがようやく鎮まると、ラリーヤの唇はイケメンの元から離れていった。瞼を開いていくイケメンも、アスリと同じく内側から殴られたのか、頭が抜けてしまったかのような顔で、ラリーヤもラリーヤでいつになく余裕のない、何かを噛みしめる表情を浮かべている。だが、性の至高たるラリーヤが、ここで立ち止まってしまうことなどもちろんなく、イケメンが受け止めきれずに頬に流してしまった、果物とラリーヤの混ぜ物を親指で拭うと、その指をペロリと舐めて、実に最高の笑顔をイケメンに送ったのだった。\n なんとかわいらしい笑顔だろうか。今の笑顔には、悪さも屈託もなかった。ラリーヤは女だが、ユニスがいなければ、アスリは今の笑顔でラリーヤに恋しまったことだろう。それを至近距離で振りぬかれたイケメンは、あれほど村で人気の噂があっても、今の一撃で確実にラリーヤに陥落したはずだ。\n 追い打ちをかけるように、ラリーヤはイケメンの唇と額に、続けざまに1回ずつ口づけをすると、イケメンの手を取り、その耳元で何かをささやいた。またイケメンが、かっと目を見開いた。ラリーヤは座ったままのイケメンの手を握ったまま立ち上がって、その手を三角柱の方へといざなっていく。イケメンも、腰を引いて前かがみに立ち上がる。その腰布の前面は、1点がやや張り出して見える。\n\n 角度からして、膨らむ途上にある槍だ。ダカクも膨らみ、ユニスも膨らむ、槍だ。イケメンの槍は、切なくなりつつある。口づけを見ただけで自慰をしたくなったのは、アスリだけではなかった。思わずアスリが、ユニスの顔を横目に見ると、獲物を狙うような真剣な眼差しが、そこにはあった。変態も極めれば、アスリを恋に落とした凛々しさで満ちるのだ。\n しかし、ユニスに見とれるのは後でもできることで、今は輝く2人の方に目を向けなければ、これだけの場を設けたラリーヤに失礼だ。その前に念のため、アスリが反対側のティサにも目をやると、こちらは剥き出しになったユニスのように真っ赤になって、しっかりと閉じた口からこぼれてしまった荒い息を、鼻から短い間隔で吐き出している。一昨日の帰り道、あちらのラリーヤも含めた4人全員が、自慰の実績を自供した。ティサもティサで、下腹の奥がうずきだしていて、やはり切なくなりつつあるのだろう。\n\n 再びアスリがラリーヤとイケメンに視線を戻せば、洞窟の中でアスリが見せつけられた手のつなぎ方で結ばれる2人は、三角柱の前で立ち止まって何かを語り合っていて、時々ラリーヤから軽い口づけがイケメンに飛ばされていた。こうして見ると、アスリの思っていたよりもイケメンは上背がなく、ラリーヤとほぼ同じぐらいで、ラリーヤよりもアスリの方が高さがあるのだから、もしイケメンとアスリが並べば、アスリの方が高いのだろう。それでも今は、向かい合った口同志が触れ合うのに2人の高さは最適で、布の上に座っていた時はラリーヤが上から果物を流し込んでいたのに、今は口づけの度に、はにかむ笑みを交換しあっている。\n 微笑ましいやりとりはまもなく、さらに仲良く深まって進化するのだろう。手を取り合ったままのラリーヤは、三角柱の1面の布をめくって、イケメンをその中へとなまめかしく押し込むと、顔だけアスリたちの方に向き直り、一度にやりと意味のある笑みを送ってから、布で仕切られた空間へと進んでいった。\n\n すぐに、その三角柱の上部から、まず履物が2つ、放物線を描きながら飛び出してきた。これはラリーヤのものだ。間髪を入れずに、イケメンの履物と、イケメンの上衣も空を舞う。\n\n「脱いでる。」\n\n ありのままの事実を、ティサが息でつぶやいた。アスリは真っ赤になっているティサの状況も把握したいが、これでは目が離せない。\n しかし、そうは言えども離せない目先では、三角柱を形作る布が太陽に干されるようにして照らし出されていて、アスリは中に入る2人のシルエットすら捉えられない。おそらく2人の影は、アスリたちから見るのとは反対側の布に浮かび上がっているのだろう。この位置では、中で何が行われているのか、3人は目視できない。\n\n そうこうしているうちに、今度はラリーヤの上衣が飛んで、次にラリーヤの腰布も飛んだ。もう、ラリーヤは全裸のはずだ。何も見えないのに、アスリの体は熱くなり、乾いたサバンナの空気に潤いを与えようと、少しずつ奥の泉が湯を沸かせていく。\n\n イケメンは、残りあと1枚だ。もし今、イケメンでなくユニスがラリーヤに対峙しているのなら、あと2枚だ。いや、イケメンにしても、作りが同じならあと2枚だ。\n なかなかそのうちの1枚が、上から飛ばない。あの彫りの深い顔立ちで、イケメンも脱がされる時のユニスと同じように、脱ぎたくないと駄々でもこねているのだろうか。それとも口づけか、舌づけの時間か、またはラリーヤによるそれ以外だろうか。\n\n 一拍の間を置いて、飛んだ。丸められたイケメンの腰布が、サバンナの空を飛んだ。\n\n「わぁー!!」\n\n 三角柱の中からラリーヤの歓声が、小さくアスリの耳にも届く。イケメンも全て脱いだのだ。\n アスリは別に、イケメン自体に興味はない。ただしその肉体と、特に性器については、ぜひ目にしておきたいし、ユニスやダカクとも比べたい。ラリーヤにしてみれば、カインタでさんざん眺めてきた上でのただ1本かもしれないが、アスリにとってあの中の1本は、幼少期の記憶を除けば3本目だ。\n だが、まだ目にすることができない。今日のサバンナは穏やかで、三角柱を形作る布をめくりあげてしまうほどの強い風も吹いていない。\n\n 静寂が続く。歓声のあと、三角柱の外壁は、中のラリーヤなのかイケメンなのかによる動きで時々揺れるが、大きな変化はない。\n\n「これさ……。」\n\n またティサが、何か言おうと息でつぶやいた。しびれを切らしそうなのは、アスリだけではないのだ。\n\n その時、三角柱の一面の袖から、人差し指を立てた左手が飛び出した。ラリーヤの手だ。\n 地面に平行に、横に向けられたその指の意味を、アスリが理解しきれないうちに、突如、アスリの右隣でユニスがごそりと動いた。アスリがユニスに目をやれば、ユニスは斜めに半身を起こして、背にかけた布の端から右手を2度、大きく左右に振って、すぐさま再び地面と同化したのであった。\n\n「今の何?」\n「呼んだ。」\n「は?」\n\n ティサと同じく、息で声をかけるアスリにユニスから返ってくるのは、いつもと同じ、どうしようもないユニスのわからない答えだ。あとで酸っぱい果物をティサと協同して口移しすれば、ユニスも改善するだろうか。\n その、わずかに苛立つアスリの視界の片隅から、2人の隠れる三角柱に向けて、一匹の獣が猛然と走りこんでいく。急遽、ユニスに弓による防衛を求めかける直前、アスリはその正体を見破った。\n\n ユニスの犬だ。先ほど毛皮の着ぐるみを着せられた、ユニスの犬である。つまり、ユニスは犬に合図を送ったのだ。普通、犬が近くにいるとわかるような吐息の音や地面を蹴る音を一切立てずに、全く違う毛質の毛皮まで被せられているその姿は、以前、ユニスに救ってもらった時に牛に襲い掛かろうとした獣さながらだ。そうして、一直線に三角柱に突き進んでいった犬は、毛皮を被せられる直前にユニスに指示を受けた槍の柄にかぶりつくと、低いうなり声をあげながら、首を大きく振り始めた。\n\n「え!おい!?」\n「何?何何!?」\n\n イケメンの動揺した声と、役者になったラリーヤの声が、三角柱から聞こえてくる。アスリももう分かった。やっと今日の全ての仕掛けが明らかになった。だからあの三角柱は、あまりにひどい安普請であったのだ。\n イケメンに駆り出された馬も、前足や後ろ足を大きく上げながら鳴き声を上げて、大慌てである。その間も脆い三角柱は大きく揺れる。そして続けざまに、犬が後ずさりするように大きく踏ん張る動きを見せると、とうとう犬の相手となった槍は倒されてしまったのであった。\n これでひとまず、無事に役目を終えた犬は、倒した戦利品である槍の束をくわえると、そのまま槍の穂を地面に引きずって、意気揚々とまたどこかに走り去っていった。自分の体よりも倍以上も長いものをくわえて、よくあれほど速く走れるものだ。さすがは優秀なユニスの従者だ。\n\n 一方、三角柱のあった現場には、枯れ木の間に1面だけ残された布と、布が覆い被せられた、低い塊が1つ出来上がった。身を寄せ合ってしゃがんだ2人の被る布の中では、何か怯えるような動きがある。\n ほどなくして、2人のうちのどちらかが、アスリたちが視線を送る方とは反対側の方から布を少しめくり上げて、辺りの様子を伺い始めた。まず馬の方を見ているようであるから、イケメンが布を持ち上げているのだろう。犬も優秀だったが、この馬もなかなか見どころがあり、今の騒動からまだほとんど時間が経っていない中、手綱の結ばれていた枯れ木が折れそうなほどに大きく鳴いていたにも関わらず、手綱が緩んだことをいいことに、早くも水場に首を伸ばして、がぶがぶと水を飲んでいる。その水場に、倒されてしまった幕に使われていた、2人が被らなかった方の布は落ちてしまっていて、ずぶ濡れになって置きやられている。\n\n 水場に平穏が戻った。平穏に、辺りを見渡すための窓は不要だ。2人はまた布の中の住人に戻り、より小さく、密着しつつあるようである。ラリーヤとイケメンだけの世界が、少しずつ、少しずつ、元の息遣いを取り戻していく。\n 今度はアスリもわかる。まだ布で見えないが、今、2人はまた、口づけでなく、舌づけをしている。\n ゆっくりと、2人が作る塊が、高さを伴っていく。それに合わせて、2人をサバンナから隠し続ける最後の布も、水場の湿った地面へ、するすると滑り落ちていく。\n\n 目を閉じて、熱く口元をつなぐラリーヤとイケメンの横顔が、まず明らかになった。布は、まだ落ちる。アスリはついに、全てを解き放った男女の肉体を目撃した。"}

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