| {"novel_id": "n0007ht", "chapter": 133, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/133/", "title": "悪あがき", "content": " 笑顔のままに、ラリーヤが声をかけた先にアスリが振り向けば、洞窟からそのまま薄暗さを運んできたかのようなユニスとティサが、ようやく階段を下りようとするところである。この2人が後悔なく行えないのであれば、せめてユニスがこれから作る記憶だけでも守るべく、アスリは先に代執行せざるをえないかもしれない。\n\n「どうだった!?」\n「…………何が?」\n\n 快活なラリーヤの声が、2人に向けて明るく響いた。ユニスは口を挟むことすらできず、ラリーヤに返すのはティサだけだ。\n\n「なかなか来ないから、もうなかよし始まったんかと思った!」\n「バカ!!!するわけないっしょ!?」\n「でも、これから。」\n「うっさい!いいから!わかってるから!その前にごはん食べたいって言ったん、ラリーヤなんだし、食べんでしょ?」\n「私は、ちんちん先でもいいよ?」\n「ごはんが先!」\n\n この日の昼食、4人が持ち寄った弁当は、燻された肉によって遠く霞んだ。最も心に余裕を残すラリーヤが、火を通した肉のブロックの入った、灰にまみれた大きな葉を紐解けば、肉そのものの持つ香りと、ともに包んだ香草が、口にする前から味わい深い風味となってアスリの鼻孔に広がったのであった。\n その肉塊をさらにラリーヤが半分に割ると、中央のあたりは血も滴っていて、まだ火が通り切っておらず、今も同じように燻し続けているものは、今日の帰りまでは火にかけなければならないようである。ただ、すでに白と桃色の中間の、絶妙な色合いとなった外周部分だけでも、4人が弁当に加えて食べるには多すぎるほどであって、少し離れたところから、犬が尾を振りながら存在感を大きくしていた。\n ここからラリーヤがまず4切れを大きく切り出し、早速アスリがつまんだ一口目は、当然絶品だ。この調理法は、必ず母にも教えなければならない。改めて、アスリの弁当は霞む。\n\n ところが、これほど最高の肉を頬張りながら、いつもと同じく愛嬌とともに会話の起点を振りまくのはラリーヤだけで、それをコミュニケーションとして成立させるために応じるのもアスリのみで、ティサもユニスも、無心で肉と弁当を食べ進めているばかりだ。ユニスは早くも弁当を平らげた上に、ラリーヤが客をもてなすように次々切り出す肉を、あっという間に5切れ食し、また次の1枚に手を伸ばしているし、ティサに至っては弁当をほとんど残したまま、肉ばかり4切れも食べている。\n 大仕事を前にする2人にとっては、これほどの肉をいくら食べても、味はわからないのだろう。なお、ラリーヤは2切れで止め、アスリは1切れ半で限界であった。\n\n「いやー、めっちゃおいしかったね?」\n\n 食後、人間が食べるにはもう少し火を通さなければならなかった部分を切り出し、ティサの残した弁当と混ぜ、喜ぶ犬に少しずつ分け与えながら、ラリーヤが再び会話を送った。その顔は肉を切る手元でも、犬に対してでもなく、明らかにティサとユニスの方へと向けられている。今度はアスリでなく、2人が返事をするべきだ。\n\n「…………うん。」\n\n 大して片付けるものもないのに、そわそわと4人の前に並んでいた葉を1か所に重ねながら、ティサが小さく答えた。ユニスは近くに落ちていた石を拾い上げて、その表面を何やら指で擦って伸ばしている。\n\n「随分元気ないじゃん?まぁ、2人ともあんなにいっぱいお肉食べたんだし、元気ないわけないよね?」\n\n ユニスもティサも答えず、相変わらず落ち着きがないまま、挙動不審で膠着してしまっている。これではアスリも下手に身動きが取れないし、せっかく最高の肉を食べた直後だというのに、周囲の空気があまりにいたたまれない。ユニスと同じように石でも拾い上げたい衝動に駆られたアスリは、救いを求めるようにラリーヤに次を促していった。\n\n「……で、どうするん?これから。」\n「そうだね。もうみんなお仕事終わったし、お腹もいっぱいになったからー。あとやんなきゃなんは……、なんだと思う?」\n\n 仕事が終わったかの確認を挟まず、終わったと断定するラリーヤの判断は正しい。仮にその段が入れば、ティサは何かを見つけて午後の時間を先送りしようとするかもしれない。そして、続けて何をすべきかを、ラリーヤは問いかけの形式で進めるとして、問う相手をアスリにしたのも正しい。こちらもアスリ以外では、回答が成立しない。返しにくい問題に、アスリが慎重に解を求めていく。\n\n「いや、そんなん、知らんけど。今からユニスとティサ、本当にアレすんなら……。」\n「……本当にやんなきゃなんよね?」\n\n 思慮を巡らせながらつぶやいたアスリの言葉に、ティサが割って入って、ラリーヤに問いかけた。先ほど洞窟の中で、ティサはユニスとの間に合意まで形成した上で、やはりまだ最後の覚悟が固まらないのだろうか。すぐさまラリーヤが、逸れる恐れのある脇道をふさぎにかかる。\n\n「そうだよ?ティサ、今日はなかよししよーよの印、ちゃんとつけてきたじゃん。」\n「バカ!」\n「だからさ。やなら、私が。」\n「いいから!私がやるから!」\n「じゃあティサ、最初に何やんなきゃかなー?」\n\n 回答権が、アスリからティサへと移った。安堵のアスリは、ひとまず傍観だ。\n\n「はっ!?知らんし、そんなん!」\n「そうなん?私がせっかく昨日、最初から最後まで全部、ぜーんぶ、見せてあげたんにー?」\n「っ…………。」\n\n 器代わりに使った葉の端を丸めながら、詰まってしまったティサを尻目に、犬に肉を与え終えたラリーヤは立ち上がって、ティサから目を離さないまま、滝から流れる小川へと向かっていく。すでにラリーヤの表情は完全に性に染まっていて、まだ服を1枚も脱いでいないというのに、いやらしさが体中から染み出してしまっている。\n\n「ほらー、何かなー?もっかい教えてあげないと、わからんー?」\n\n 浅瀬の前でしゃがみ、犬に舐められた指を水で流しながら、ラリーヤがティサをからかうような口調で続けた。ここでティサも何かをひらめいたのか、上目遣いでラリーヤを捉えて、怒りを伴っていないにらみを利かせて、続けた。\n\n「だから、今朝あんなに布持ってきたんか。じゃあ今から昨日みたく、アスリの槍借りて、そこに立てんだね?」\n「あれはさ、ロマドウの人らって、あれ張ってから脱ぐんしょ?あーゆーのあった方が、ちょっとは自然かなって。今日はもう私らしかいないんだし、持ってきたんは、また別。」\n\n ティサの丸める葉が、さらに折りたたまれた。おそらくティサは今、全体を遅延させるために布の三角柱を建てる作業を見出したはずだ。だが、ラリーヤはこれ以上の遠回りを許さない。それでもティサは、昨日のもうひと手間を手札にして、時間を使おうとする。\n\n「じゃあ、あの黄色いの食べるん?」\n「それでもいいけど、ちゃんと昨日の私みたく、ユニスとちゅっちゅしながら、大丈夫そ?ま、もうさっき採ってきといたから、今食べるなら、すぐ切ってあげるよ?このまま普通にちゅっちゅしたら、お肉の味になっちゃうし。」\n\n デザートの果物の手も、ティサはふさがれた。むしろ、道としては開け放たれているが、ティサは進めない。\n 3日前から全て先回りをしているラリーヤは、今日も先見の明を保ち続けていて、先ほど話ついでにアスリに投げてよこした濃い黄色の果物も、実のところはティサに対しての布石でしかないのだ。果物を拒否し、その前の布を張ることも否定されれば、昨日との状況上の共通点として、残るものは何か。\n\n 手詰まりとなったティサに向けて、勝ち誇ったように顎を少し斜め上へと向けたラリーヤが、すらりと立ち上がっていく。ラリーヤが、来る。\n\n 直後に、ラリーヤが腰布の結び目を、一気にほどいていった。まっすぐに腰布が落下するのとともに、あの一直線が、アスリの視界に飛び込んできた。\n\n「ちょっと!!!」\n\n ティサが叫ぶ。まぶしい割れ目に、アスリは一瞬で目がくらまされてしまったにも関わらず、ラリーヤから一切目が離せない。昨日も見たばかりだというのに、どうしてこれほどまでにラリーヤの縦筋は美しく、いやらしいのか。\n 勢いに任せて、ラリーヤは上衣も脱いで、高く放り投げる。今度は、2つの大きな乳輪と、乳房だ。いやらしい。\n\n 唐突に現れたラリーヤの全裸は、ティサへの最後通牒に違いない。脱衣によって乱れた髪を流すように、ラリーヤが頭を後ろに倒して首を振りながら、勝利が確実の攻勢をティサにかける。\n\n「……とりあえずさ、まずは体キレイにしようよ?」"} |
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