Krixter/Repo / n0007ht /147.json
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{"novel_id": "n0007ht", "chapter": 147, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/147/", "title": "こぼれた優しさ", "content": " つまりユニスも、この赤い一点がいかに過敏であるか、十分に認識していることになる。やはり男女の作りは、多少は違えども基本は同一だ。現にアスリも今日の水浴びでは、過剰な高揚によって、大して中央には触れられなかった。今、仮にもそこに手をやれば、少ない手数で確実に大波が到来するであろうし、母はそれを常に許さず、昨日のラリーヤも許さず、アスリもまだ自分を許せない。\n それでも、アスリは普段からその部分に触れて、母に禁じられた遊びを取りなせてはいるし、いやらしい思いさえ意識しなければ、中に水をかけて洗えるのだから、ユニスの楕円球はアスリのものよりもはるかに感度が高いのかもしれない。そうであるなら、アスリはユニスが泣いて叫んで煙が上がるほどにこすり上げて、ユニスの尊厳が粉々に砕けてしまうほどにいじめぬきたいし、その羞恥を自らにも分け与えた上で共感し、今度は母性でくるみこんで、ユニスを子どもに戻してもみたい。\n\n 剥き出しのユニスを見つめながら、アスリは無言で狂気を噛みしめているだけだが、ユニスの羞恥はティサの方にも何らかの衝撃を送ったのか、ティサもこれ以上はユニスに言葉をかけず、預かった攻撃の役目を終えた。大人を形どる狂気の1本だけがもうもうと立ち上る中、髪をかき上げながら、代わってラリーヤがユニスまみれの空気を大きく吸い込んで、吐き出した。\n\n「はぁーーー。ホント信じられん。カインタだったら、ちんちんの皮切る前の子も、ってかもっとちっちゃい子も、ちゃーんとみんなちんちんの皮おろして、中身洗えんだよ?あーーー、せかっく盛り上がってきたんに!こんなんじゃもっかいユニスのちんちん洗わんとじゃん?」\n\n 全て先回りして最短経路を選び続けてきたラリーヤも、ユニスのこの体たらくは完全な計算外だったのだろう。その口ぶりには怒りよりも呆れと徒労感が、ユニスで充満する洞窟の空気ほどに色濃く反映されている。\n ここでふと、ダカクの核への懸念を心の片隅に置きやってほどないアスリの脳裏に、ラリーヤのため息に対する解決策が一筋よぎった。アスリにはダカクを荒療治した、藪医者としてのキャリアがある。今回の症例はダカクの際と趣は異なるが、治療の手段に変わりはないはずだ。\n\n「あ、ねぇ、なんかでゴシゴシ拭いちゃうんはどう?ラリーヤ、さっきなんか拭くのも持ってこなかったん?」\n「そうだね。ちんちんの洗い方、あとでユニスに教えんとだけど、今から洗うのに下降りんの、めんどいし。ぬるぬるのお薬なら良い匂いだから、これそのくっさいとこにいっぱい塗って、きれいに拭いちゃおっか。」\n\n 乾布摩擦を想定していたアスリの案は、すぐに同調したラリーヤにより一段改良した様式となって、この場の面々に提示された。たしかに真の意味で香り高い薬液であれば、ユニスの狂気もかなり緩和されるであろうし、拭いた布はアスリがあとで洗うことを申し出て保管し、1人で母に謝罪する時に使いまわせるだろう。\n ところが、この完璧な案に異議を唱えたのは、自身の要点すら正しく洗えない男子だ。すでにアスリの視線は、器にすくわれておかれたままの薬液に向けられているが、焦ったようなユニスの声も、追いかけるように器の中の薬液に降り注ぐ。\n\n「は……?おい!!そんなんここに塗るんかよ!!」\n「そうだけど?なんか嫌?私もティサもラリーヤも、さっきお手てや腕に塗ってたよ?」\n「いや、手に塗んのとは違いすぎんだろ!」\n\n 先ほどアスリもティサと一緒になって薬液を腕に塗りたくり、今も含めて痛くもかゆくもなかったのだから、おそらく性器に塗ることに懸念はなく、そもそも問題があれば、レシピを提供したラリーヤが企画してこないはずだ。これからその触れるだけで敏感な汚れた個所に対して、薬液が塗布されるにあたり、先端からいかほどのぬめりが走り出すのかユニスも推察して、ただ嫌がっているだけだろう。だらしないユニスを甘やかすべきでないことは一目瞭然で、アスリも厳しく続けていく。\n\n「何?ちゃんときれいにできてないんだから、しょうがないじゃん?ラリーヤ、これっておちんちんに塗っても良いんよね?」\n「大丈夫だよ?さっきも言ったけど、なかよしする時も使うんだから、おまんこに塗っても大丈夫だし、口に入って、ってか新しいうちなら食べちゃっても大丈夫。」\n「じゃあティサ!塗ろ!」\n「おい!!バカッ!!ティサ!!ヤメロ!!」\n「こらっ!ユニス、動くな!待って、私、おちんちん押さえとかんと、ユニスが子どもに戻っちゃう!」\n「痛っ!!爪立てんな!!」\n「だから動くからっしょ!!」\n\n 焦るユニスは脱出を試みたいようであるが、ティサが要所を締めて、普段なら粘膜に密着しているはずの裏返した皮膚に爪まで立てている以上、ユニスはむやみに腰を引くことも、ゆさぶりをかけることもできない。門番のティサがユニスを大人に保つことで手一杯であると述べたのだから、アスリはラリーヤと協力して、薬液をユニスの狂気にかけやるしかない。向かい側で、アスリの握りしめるのと反対の手を同じようにつなぎユニスを制するラリーヤに、一目を送ったアスリが、4人の輪の中心に置かれている薬液の入った器に、空いている左手を伸ばしていった、その時だった。\n\n 突然、薬液が弾けた。愚かなことに、ユニスが器を蹴ったのだ。ひっくり返った器は、真正面のティサを目がけて、液体を飛び散らせていく。とっさにアスリも、伸ばしかけた左腕を胸のあたりまで持ち上げ、顔全体も左後方へ向けて逸らす。\n\n「痛っ!!」\n\n こつりとした一音のあと、ティサが小さく痛がった。すぐにアスリが視線を戻せば、喉元から両胸、腹部に至るまで薬液にまみれてしまったティサが、地面につけている両膝のうち、右手を右側の皿のところに当て、押さえていた。その前には、中身をぶちまけて空っぽになってしまった器が、むなしく転がっていた。\n\n「あーーー!!!」\n「ちょっと!!何してんの!?ユニス!!」\n\n 反射するようにアスリが上げた声に、ラリーヤの叱責も連鎖する。しかし、一番の被害者であるティサは、無言でユニスの顔を見上げて固まったままだ。その表情は、無い。\n 途端に洞窟が、窮屈になった。アスリの握りしめるユニスの手のひらも、ぬくもりに変化はないのに、弱くなる。\n\n ティサが、謝罪を求めている。3人の注目が集まる中、誰からも視線を外すユニスの瞳には、地面の上で斜めになったまま、落ち着きを取り戻した器が映っている。気づけば今のひと騒動で、ユニスは子どもに戻ってしまっているし、未だにティサが左手を残したままであるものの、槍は直前までよりも柔らかさを帯びつつあるようである。ラリーヤが一生懸命盛り立て、予想外の狂気に道筋までつけ、どうにかここまで作り上げてきた今日の場は、ユニスの一蹴りでとうとう壊れてしまった。\n\n「……………………ごめん。」\n\n ついに、耐えきれなくなったユニスが、最もシンプルにティサに詫びた。まだ、ティサの無表情は変わらない。変わりゆくのはティサの目の向け先で、長いまつげは徐々に徐々に、下へ下へと降りていく。アスリもティサを追い、ラリーヤも追って下っていく。\n 止まった。角度が落ちて、ちょうどティサの両目の高さに合わせて水平になった、子どもだ。\n\n「……………………バカ。」\n\n やっと、ティサが小さくユニスに応じた。一呼吸の間を置いて、器がぶつかった膝を押さえていたティサの右手が、動いた。\n\n 優しい手つきだ。その右手が、ユニスの左の太ももに、そっと触れた。\n\n「……何してんの?蹴っちゃって。」\n\n ティサの口元が、わずかに緩んだ。許したのだ。きっと今のこのひとときが、ユニスとティサが長い時間をかけて築き上げてきた、アスリにはなしえない、2人なりのいさかいの収め方なのだろう。\n ここまでアスリが耳にした2人の過去や、洞窟に閉じ込められた時までのティサの恥ずかしがり方を踏まえれば、以前は絶対にありえなかったであろう道程を、ユニスとティサはたしかに今歩んでいると言える。謝罪のユニスも、許しのティサも、まさに成長する。粗相を犯したユニスに対するティサの容赦の方法も、当然等しく進歩する。\n\n「………………もっとちゃんと、大人になんなきゃ?私がなんとかするから。」\n\n 想いのこもったティサの右手の、人差し指、中指、親指が、太ももからユニスの槍へと戻された。難解だ。単純に言葉通りに捉えるなら、アスリもティサが何をしようとしているのか、簡単に理解はできる。ほぼ確実に、ティサは子どもに戻ってしまったユニスを、大人にしようとしているのだろう。\n まもなくアスリの予想通り、真上を向いていた時よりも控えめな大きさにはなりながらも、ぬらりと輝く残滓に、むわりとまとう狂気はそのまま、ティサによってユニスは成人した。ただ、これでティサが全てを終えたとアスリは思わないし、ラリーヤもひたすら黙って、ティサに任せたままだ。\n\n ティサの肉体に散った後、重力に従った薬液は、ティサの母が遺した腰元の煌めきまで至って、たき火の柔らかな明かりを反射する。アスリの脳裏に、まさかがよぎる。それより早く、狂気が気配を消した。\n\n ティサが、大人になったユニスを、捕食した。壊れてしまった洞窟が、息を吹き返した。"}

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