Krixter/Repo / n0007ht /150.json
Krixter's picture
download
raw
11.4 kB
{"novel_id": "n0007ht", "chapter": 150, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/150/", "title": "洞窟のラダン", "content": "「はぁぁああああああ!?!?!?!?」\n\n ティサの声に乗せられていたのは、ただただ上ずった驚きだけだ。もう、ティサの声は低くない。\n 今のラリーヤの提案は、組み立て方に関しては強引であったものの、示唆そのものに難しさはなく、ティサもアスリと同じように、きっとラリーヤの結論を予想できたはずだ。それがこの反応なのだから、やはりユニスを口にすると、どうしても馬鹿になってしまうのだろう。アスリもユニスを飲んで、馬鹿になりたい。\n 対して、悪く賢いラリーヤは、ティサが大きな声を出しながら脱力したのとともに、太ももの下を囲うように回している両腕も、等しく緩ませたことを見逃さない。実践の面でも跳躍するラリーヤは、ティサの左膝の上で待機させていた左手を、一気にラリーヤの側に向けて押し倒す。\n\n「アスリ!!そっち!!」\n\n ラリーヤが、アスリに挟み撃ちを願った。瞬時、友人としてティサの自尊心を守ろうとする理性と、またとない絶好の機会を逃すまいとする、同性にすら向く本能による興味と好奇心が、アスリの心中でせめぎあう。\n 迷うアスリの隙を、羞恥に舞い戻ったティサも許さない。すぐさまティサは、ラリーヤの力が加わった膝に引っ張られるように体全体を横倒しすると、太ももの裏から両腕も引き抜いて、左手はラリーヤが行使する手首を掴み、右手は上から股へと回して、アスリが中身を目にする前に、股の中央を覆ってしまったのであった。\n\n「ちょっと!!!無理無理無理無理無理!!!ホント無理!!!ホント無理!!!ホント!!!ホントだめ!!!!!」\n\n 行動に見合ったティサの抑止の言葉が、後から続いて発せられた。アスリは甘かった。こうなればもうティサは岩であり、難儀するに違いない。\n\n ところが、ラリーヤの方に向くティサの横顔に浮かんでいるのは、じゃれあって遊ぶ最中の、純真な子どものような笑みである。見れば、ティサのまっすぐ伸ばした右足は、かかとを突き出しつつ、つま先を手前に引き、ふくらはぎを張りつめさせているだけで、ラリーヤが数を数えながら洞窟に追い込んだ時に比べて、守備の度合いを高め切っていない。\n\n アスリが再度、ティサを審理する。次は、アスリも迷わなかった。\n ユニスを飲み干したティサは、本当に馬鹿になって、狂ってしまっているのだ。故に、アスリと同じように理性と本能が並立し、理性はこれまでと同じく貞淑であろうとしているのにも関わらず、本能の方は先走って笑い、あえて無防備を見せているのだろう。そうであるのであれば、この真っすぐ伸びた右足も、ラリーヤの方の左足と同じく大きく開脚させて、ティサは辱められるべきだ。今、アスリがラリーヤの側に加勢すれば、ダカクを押さえつける時と同程度の力で、まず伸びた右足を折りたたんでアスリの方へと押さえ、広げてしまうところまでは容易だ。\n しかし、力ずくでティサをこじ開けたとして、果たしてそれでティサは良いのだろうか。たしかにティサはそれなりに満足し、ふざけ合う線の延長で楽しんではくれるはずではある。\n\n 普通だ。今日は濃い1日であるのに、糧として一回り小さい。仮にたった今、アスリとティサが立場を置き換えたとして、歯茎も目玉も全て飛び出してしまいそうな羞恥とは、何か。\n\n 自主による、意思をもとにした行動だ。先ほどアスリが自ら脱ぐ申し出をして、自分で裸になった時のように、ティサも自己意志で飛び降り、打ち克ったばかりの理性を今度は殺すのだ。\n 悪さがいやらしいラリーヤと手段は異なれど、ティサを連れていく先はアスリと同一だ。基調を揃えるように、悪をたぎらせたアスリは、伸びきったティサの右太ももに右手をそっと置き、左手はラリーヤと同じく茶色い髪を撫でてやりながら、耳に吐息を当てるように語りかけていく。\n\n「…………なんでー?ユニスのおちんちんみたいに、ティサも洗ってこなかったんー?」\n「いや、洗ってきたし!!」\n\n アスリがティサへ、言葉による攻撃を開始した。直後にティサは、びくりと体を正面に戻し、アスリに乱れた茶髪の載った顔を向けて、それ以外に解のない答えを強く主張する。その表情は、耳にした問いの内容だけでなく、アスリの矢の放ち方自体にも驚いているのか、微笑みを元にしながらも、やや崩れている。\n 一方、ティサの伸ばした右足はわずかに曲がって、つま先を丸めて内側へと向かうようになった。ティサの意識は早速足にも向けられているようで、まだ内向きであっても、こちらは良い傾向かもしれない。\n\n「じゃあ良いじゃん?」\n「いや、普通に無理っしょ!?ってか、アスリだって無理っしょ?」\n\n 打てば響くように、ティサがアスリの想定内を走っている。今でこそティサはアスリの術中にはまっているが、ラリーヤからしてみれば、この数日のアスリとティサとユニスの、3人との触れ合いは、全てがこのような状況であったのだろう。\n アスリが掴みかけているラリーヤの定石に従えば、ティサに返すべき言葉の原則は意外性だ。常識を振舞うようにするアスリが、さも当然と言わんばかりにラリーヤの真っすぐな道筋を進んで、ティサの前提に立ちふさがっていく。\n\n「…………そうかな?」\n「はぁああああああああ!?!?!?いや……、嘘っしょ!?だって、あんなとこ…………、なめられるとか……!!!」\n\n 務めて冷静にアスリもティサを追い詰めたが、ティサの述べた通り、あの部分を、それもユニスに真正面から舌で触れられることを思い浮かべると、非常に厳しい。アスリにとって、たった一瞬で全身が流されてしまいそうなほどに気が引けるし、信じられないほどに魅力的な試みだ。現に発想が脳裏をよぎっただけで、まるでアスリの乗っている草の山全体は、ぐらぐらと大きく揺れているかのようだ。\n\n「ユニスはー?ユニスもペロペロできるよね?」\n「俺っ……!?」\n「バカ!!無理っしょ!?汚いから!!」\n\n 泉に潤いを加えながら、次が続かなかったアスリを前に、すかさずラリーヤが割って入り、ユニスにやり水した。恥ずかしいばかりのティサとアスリを、ラリーヤはよく見ている。\n 先にティサの口内にまで全部出してしまって、もう恥ずかしがる必要などないはずのユニスは、例の伏し目だ。この目を見つめながら、アスリはずっと耽っていたいが、ティサが堂々巡りを試みたからには、アスリも誘惑を振り切って応じるしかない。\n\n「……だからティサ、洗ってこなかったん?」\n「違って!!違うって!!でも、汚いから!!」\n「ユニスんなら、汚くないんしょ?ねぇ!ユニスはどうなん?」\n「ティサ!?」\n\n 4人の声が、錯綜する。この間も勝手なアスリの本能による右手は、優しくかつ淡々とティサの右ひざの裏を取り、ティサの自主を重視するアスリの理性が、慌ててそれより先の動きを止めさせる。\n\n「バカ!!!!!ダメッ!!!ダメ!!!」\n\n 今度はティサから、ふざけた趣きが全て消え、完全に本気の拒否を発した。ティサは自分で自分を殺す、意思を固めきれるのか。\n\n 今の声色では、ティサには難しいかもしれない。ほんの少しだけ、アスリの手助けが必要だろう。\n\n「ティサ、大丈夫だから!!」\n\n 根拠もなければ、出所がどこかもわからない言葉を、アスリがティサにかける。ラリーヤが勢いで突破したように、アスリも波を送る。\n 心も、鬼にする。本能も理性も悪で包まれたアスリが、ティサの右膝を強く持ち上げながら、自身の側へと引き広げていく。\n\n「いやぁぁああああああああああああ!!!!!」\n\n アスリの物理に、悲鳴を上げるティサは、頭から真後ろに倒れようとする。とっさにアスリもラリーヤも、それぞれ左腕と右腕で、ティサの背後をカバーする。\n しかし、理性の配慮に反して、鬼と化したアスリのもう一方の腕は容赦がなく、ティサの右膝はさらに外へと向かう。それはラリーヤも同様で、降り曲がった膝の先、ティサの左右のかかとは、大きくユニスの前に掲げられていく。\n 嫌がるティサは、全身をこわばらせるようにねじって動き、腰全体が地すべりを起こす。ラリーヤを構っていられなくなったティサの左手も、右手と合わせて、中央の防御に動く。\n\n 何度も何度も何度も何度も、孤独なアスリが母に謝罪しながら思い返した、見覚えのある眺めができた。ラダンだ。成長の証を没収され、針の刑までも宣告されたラダンだ。\n\n 目がやけどしてしまいそうな視界の再現を、アスリがくまなく観察する。あの日、涙のラダンを照らした木漏れ日は、今日は洞窟のたき火をユニスの背が遮って、地面とティサの口内に漏らしたユニスを漏らす灯りだ。また、言いつけを守らなかった娘に向ける厳格な母の眼差しは、ティサの直前の動きで前に回転した腰飾りの宝石の煌めきとなって、娘をにらむ役を担っている。何より、かつてラダンが開示した全てを、ティサはまだ両手で覆って秘匿している。\n 明かりの差異は小さい。どこにもないはずの母の視線も、なぜかあの日に近い。ティサの手だけは、決定的に違う。\n\n あと少しだ。残された違いがいかに脆いか、もうアスリは直感している。あと少しで、羞恥のラダンが洞窟の中にティサとなって蘇る。"}

Xet Storage Details

Size:
11.4 kB
·
Xet hash:
97b1905d0670beabe66d710158dce83bea91fab4836ebfb30bb706a0af68b31a

Xet efficiently stores files, intelligently splitting them into unique chunks and accelerating uploads and downloads. More info.