| {"novel_id": "n0007ht", "chapter": 16, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/16/", "title": "続く記憶", "content": " 槍の元に戻ってきたアスリは、まず布袋から櫛と髪飾りを取り出すと、髪飾りの方は口にくわえ、髪を洗う時のように首を傾けて、すっかり乾いてしまった黒髪をとかし、元のように後ろで髪を1つにまとめてセットした。続いて槍に縛っておいた服をほどき、上着を羽織って簡単に結び目を作り、下半身には腰布も巻いて、こちらも着付けようとしながら、さらに次に身につける予定の履物の方へと目をやった。\n ここでアスリは、もう乾いてはしまっていたが、自慰に耽り出す前のこの場に到着した直後に、履物を脱ぐために座った岩に恥ずかしい染みを作ってしまっていたことを思い出した。また、この後岩に腰掛けて食事を摂るのであれば、このまま腰布まで着てしまうと、目一杯楽しんだ後の染みは岩の方ではなく、嫌な記憶のある腰布の内側の方に出来てしまう可能性が高いことにも気がついたのであった。\n ひとまずアスリは腰布は身につけないことにして、今一度腰布を剥がして槍に縛りなおした。これだけ着ないでいると、自慰の前と同様にある部分にだけサバンナの風が集中してしまうことにはなるが、もっとも食後にもう一度休息を設けるのであれば、その方が扇情的で都合が良いという魂胆もアスリにはあった。\n\n ついでにアスリは、布袋から大きな葉を紐で結んである弁当を取り出して、座る場所の横に置き、最後に岩に腰かけて履物にも足を通した。おおよそという言葉通りに身なりが整ったアスリは、弁当をくるんだ葉を腰布のかわりに自分のふとももの上にのせて、中身を紐解いていった。今日の昼食は蒸してつぶした芋に、香草を加えて煮込んだ肉を添えたものである。アスリは昨晩も同じものを食べているが、弁当にくるんだものは残り物というわけではなく、傷んでしまうのを避けるために、出来立てのうちに取り避けて用意していたものにあたる。父とダカクと同じく、アスリもこうして次の日の昼食を準備することは日課なのである。\n 早速、アスリはいつものように手で直接端の方から芋と肉を混ぜ1口大にして、次々と口に運んでいった。弁当はもちろん冷めてはいるが、香りの良い肉が芋とよく絡み、味わいは昨晩と遜色なく、アスリの食事はどんどん進んでいった。そして、あっという間に大きな葉の上は空になり、葉に残るソースとわずかな芋を指ですくって舐めとると、また川辺に戻って手を洗って水を飲み、アスリは腹を満たす方の休息を終えたのであった。\n\n 人間も結局のところ動物的な本能を持ち合わせているわけであり、アスリもまた例外なく同じであって、2つの欲を満たして、なお次に出てくるものは誰にでも想像の容易いものに他ならない。アスリは食事をした岩のそばの、木陰の下の柔らかそうな草が生い茂っているところに向かうと、爽快感の溢れる自然のベッドへと身を横たえた。\n 木陰から寝転んで見上げる木の枝葉と、そこから程よく差し込む木漏れ日は、アスリが先ほどまで思い出していた、あの日の記憶によく似ていた。\n\n 記憶は、当時アスリが到達してしまったところで、一度途絶えている。アスリがその次に思い出せるのは、身体中に残る快楽の余韻の中、優しい逆光のもとに心配そうな表情でアスリを覗き込む母の、アスリに呼びかける声である。\n\n あの時のアスリは、いつのまにかラダンの寝ていた台の上に寝転んでいた。まさか自分がラダンと入れ替わったのかと驚き、頭を少し上げれば、すぐ奥にすでに服を羽織ったラダンがいるのも見え、続けて起き上がろうとすると、母の手がアスリの首の左側に当てられていたのであった。\n\n「アスリ!大丈夫?」\n\n 母の問いかけを受け、アスリも首元に手を当ててみると、わずかにぬるりとした感触があり、手を離して見やれば、それは少量の血液であった。\n\n「大丈夫そう?ごめんね、アスリ。」\n「血…?」\n「本当にごめん。ママが悪かったね、アスリが倒れちゃって、ママも手を引いたんだけど、間に合わなくて…。」\n\n 状況としては、アスリはあまりに強烈すぎる絶頂感によって、意識を失い前のめりに倒れ、母も針を避けようとしたが手の角度が悪く、アスリの首を針で引っ掻いてしまっていたようである。母もラダンも、以前突然嘔吐した実績あるアスリが倒れたのは、直前までの刑の執行を目撃したことによるストレスが要因と考えているのか、少なくともアスリの快楽は明らかとなっていないようであり、ただただ心配と、特に母からは申し訳なさがひしひしと伝わってきた。\n アスリは痛がるようなこともせず半ば呆然としていると、2人もアスリに別状がないことがわかったのか、安堵の表情を浮かべた。\n\n「大丈夫そうだね。本当に良かった…、アスリ、ごめんね。」\n\n 母はそう言うと少し涙ぐみ、アスリを抱きしめた。そしてラダンの方も振り返り、腕を大きく広げた。\n\n「ラダンもごめんね、ママやりすぎだったね。」\n「ママ…、ごめんなさい。」\n\n ラダンもその腕の中に加わると、母は2人の肩を寄せ合って抱擁し、緊迫していた台の上には温もりの輪が広がっていった。\n\n「2人とも大好きだからね。」\n「ママー!ごめんなさい。」\n「良い子だからね。」\n\n ラダンはやっと全てが終わったことへの確信と併せて、母からの深い愛も感じ取ったようで、声をあげて号泣し、母も静かに涙していた。ただ1人、アスリだけは絶頂と失神の余韻によってどうにもそこまで感情が高ぶらず、あまり頭が働かないまま、母の思いだけはとりあえず受け取っていたのであった。\n\n しかし、安寧のひと時は長く続かなかった。突然母は2人を引き離すと、感情のこもっていない表情でアスリの正面を向き、冷たく告げた。\n\n「でもアスリ、アスリもやっちゃいけないことしてるよね?ママ、知ってるんだよ。何も知らないとでも思ったの?」\n\n 全身から一気に、冷や汗が噴き出してくるのをアスリは感じた。いつの間にか、ラダンはアスリの背の方へと回り込んでおり、あっという間にアスリを後方に倒して、仲間を道連れにするかのように、アスリの両膝を抱きかかえ、両脚を大きく広げさせた。昼食前に腰布を身につけなかったのは悪手で、今やアスリの大きくはみ出した蝶々の全てが丸出しである。\n\n「ラダンはもう半女になって、2年だよね。アスリももうラダンが半女になったのと同い年なのに、何でまだ半女になってないの?ママが知らないと思って、お股のところいっぱいお触りしてるからだよね?もしかしてラダンよりいっぱい、いじいじしてるの?全部知ってるけどね。」\n\n アスリは逃げ出そうともがくが、手足には全く力が入らず、声までも出すことができない。そうこうしているうちに、母はアスリの分厚い皮膚を押し広げ、輝く核を剥き出しにしてしまった。\n 祭に使う表情のない面のような顔をしたまま、あの針を手にして、母は続けた。\n\n「それじゃアスリもチクッとしようね。」\n\n いよいよアスリのルビーが貫かれようという瞬間、アスリは川辺の木陰で飛び起きた。途中から、明らかに記憶から悪夢へと遷移していた。せっかく水浴びをしたばかりであるにも関わらず、身体中の各所からひんやりとした汗の感覚が伝わってきた。\n\n アスリは激しく鼓動する心臓のあたりを押さえ何度も大きく息をつき、落ち着きが戻ってきたところで今の悪夢を打ち消すように、キラキラと陽光を反射する川面を見つめて、正史を振り返った。"} |
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