Krixter/Repo / n0007ht /166.json
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{"novel_id": "n0007ht", "chapter": 166, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ht/166/", "title": "夢見心地", "content": "「ウソッ…………!?!?!?」\n\n アスリの一声に、絶句したのはティサだ。本能はさておき、アスリの理性が上げた心の叫びも、ティサと同一だ。見たいと願ったユニスに、あえてアスリの方から見てほしいと願い返したアスリは、自分で自分の頭が信じられない。\n\n「……んふふふふふ、上手に言えたね?アースーリ?やっぱアスリ、結構やり手だよね?」\n\n 称賛なのか、揶揄なのか、なんとも言い難い表現を挟んだのは、もう1人の女の変態だ。草しか見ていなかった視線を持ち上げて、アスリがその出所のラリーヤにわき目を送れば、見るのも無駄なほどであったほどに、予想通りの変態の笑みである。\n\n「やめてよ!!私今、マジで恥ずかしいんから!!ってか、なんそれ?やり手って?」\n「いいじゃん。私は良いよ?って思ってるってことだし?」\n「えっ、待って待って待って!!アスリ!!ホントに、今のマジなん!?!?」\n\n まだティサは、待ったをかける。体が炎上しそうなほどに恥にまみれたアスリは、もう一度同じ言葉を口にすることなど、もはや不可能であるが、アスリとしても二言はない。喋れないアスリを汲んでアスリの想いを代弁するのは、全く違った要因によってはいても、やはり喋れなくなった経験を有するラリーヤだ。\n\n「ティサ、アスリ頑張ったんから。マジ?とかさ、もっかい聞いたら、また恥ずかしくなっちゃうっしょ?」\n「……ごめん、アスリ。」\n\n 目くばせしたアスリの見たティサは、等しく羞恥だ。今、ラリーヤから諫められたことで、ティサまでアスリがユニスに願った言葉を、自身が発したように感じているのだろうか。\n 対して、ティサが目にするアスリは、アスリの目の前のティサ以上に恥ずかしがっているように見えるはずである。すでに火照るアスリの頬が、より一層熱を帯びる。またアスリが見るのは、腰を落とす草だ。壁の聖女の文字すら、どういう訳か恥ずかしい。\n\n「……ってかさ。」\n\n 今度は、ラリーヤが会話の流れを変えるために、一手を用意している。もう顔まで首が動かなかったアスリは、ラリーヤの無毛の割れ目に目を止め、待つ。いやらしい。\n\n「アスリ頑張ったんに、ユニスのお返事ないんけど?」\n\n 愛する人なのに、今なおアスリは見られない。だが、ラリーヤがアシストしたのだから、見ざるをえない。\n\n「…………………………。」\n\n ユニスも喋らない。普段腰布によって覆われて、腕やふくらはぎよりもやや色素の薄い、膝立ちをとる引き締まったふくらはぎが、まずアスリの目に入る。すぐに、だらりと下がった袋と、ティサとの結晶たる血潮を伴った、まっすぐ上を向いて涙する皮槍に、アスリよりももっと薄い茂みが続く。恥ずかしい中でこれを目にすると、地震でも起きたかのようにアスリの視界はぐらついてしまう。\n\n「…………ユニス?」\n\n 真横のティサも、ユニスの名前を口にした。無言は続く。アスリの瞳も、さらに上に向かって続く。\n 震源より上、引き締まって6つに割れた腹筋のこぶ、縦に続く側筋、先ほどアスリが転がした男子の小さな首が左右に載った、隆々とする胸筋、後頭部で1つにまとめられた後、胸の左側に流れる、ティサの噴き出した尿によって湿らされてしまった、長く美しい女子のような髪、相対する男子として成長する喉ぼとけ、やっとアスリがユニスの顔を見られた。垂れた前髪があの伏し目を隠し、まっすぐ結ばれた唇も、固く閉じられている。\n 汗ばんでいる。そして、顔中が赤らんでいる。\n\n アスリが、ユニスが見せない伏し目を凝視する。ふいに、ユニスがわずかに顔を上げて、座面から覗き込むような形の上目のアスリに、前髪の合間から両目を合わせた。\n すぐに、ユニスが逃げる。アスリも逃げる。アスリの目には、またユニスの太ももが映る。\n\n「………………………………………………アスリ。」\n\n ユニスの声だけが、アスリを追いかけてきた。また、涙の槍をアスリが見つめる。\n\n「………………なに?」\n「………………………………………………。」\n\n 間が、生じる。ラリーヤが、軽く咳払いをした。\n\n「………………………………いいん?」\n\n 問いが、生じる。ユニスのものだ。気づけばアスリは、草を見ている。指先は、草を折りたたんでいる。\n\n「………………………………いいよ。」\n「………………………………………………。」\n\n 再び、間が生じる。今度はラリーヤも、ユニスに専念させる。ティサはおそらく、驚きの表情を浮かべているだろう。\n\n「…………アスリ。」\n「…………何?」\n「…………ありがとう。」\n\n 2人の願いが、疎通した。ユニスの感謝に、上目遣いを浮かべたアスリが、またユニスの瞳に捕らえられる。再会に、ユニスは逃げず、アスリも逃げない。\n これで、ユニスはアスリを見られるし、アスリはユニスに見てもらえる。性とは恥ずかしく、愛も恥ずかしい。\n\n「…………見る?」\n\n アスリは、真面目で勤勉で、挫けない女だ。その実直さを、ほんの少し前に、ラリーヤも称賛していた。自主をティサに求めたアスリが、ティサすら打ち克った自己に、負けないはずがない。\n\n「……………………うん。」\n\n 表情は同じはずのユニスの目に、恥ずかしさがまた加わる。本当に、アスリは見せるのだ。\n 心臓が、痛い。恥ずかしくて、涙が出そうだ。それでも勇敢なアスリの両足は、草の上でたたむように座っていた形から、曲げて合わせる両膝を立てる形へと変えて、あとは両足を大きく開けば良いだけの形を取っていく。\n\n 逃げてしまった。アスリが草を見つめて、目前の羞恥に屈していく。なぜ、ティサにできた姿勢を、アスリは取れないのだろう。\n 弱いからだ。アスリは弱く、恥ずかしく、母に禁じられたことばかり行って、1人きりで心の中にユニスを飼い、満足してしまうほど、どうしようもないクズなのだ。\n 目の前に立ちはだかる壁は、あまりに高い。滝の真横の岩肌のように、ぴったりと閉じたアスリの両足は開かず、刻一刻と時間だけが4人を伴って進み、徐々にアスリの両肩もすくんでいく。\n\n「…………アスリ?」\n\n 小さく、右隣から、ラリーヤがアスリに声をかけた。すでにアスリの異変を、ラリーヤは勘づいている。\n 窮地だ。もう、絶対にここで、全てを無かったことにすることはできない。弱くて、クズなアスリは、どうすべきなのか。羞恥はまもなく、恐怖にすら変わろうとしている。\n\n 助けてほしい。アスリは、助けてほしい。アスリを、誰が助けてくれるのか。\n\n ユニスだ。サバンナの木陰で牛が襲われた時、助けてくれたユニスだ。その木陰で、命を狙われたあの日、自ら毒矢に侵されていながら、身を挺してアスリを救ったのも、ユニスだ。ぶっきらぼうで、何を考えているのかわからなくて、馬鹿で、変態で、どんなものでも狩りをして、なんでもできて、格好良くて、大好きで大好きで大好きで大好きな、ユニスだ。\n アスリを救えるのは、ユニスしかいない。アスリはもう、1人ではない。ユニスに、助けを求めるべきだ。\n\n「…………………………………………ユニス。」\n\n もう一度、アスリがはにかむ両目に、ユニスが合わせた。ユニスの瞳が、アスリを呼ぶ。想いをこめて、アスリが続ける。\n\n「あの……………………、ユニス。あの……………………、私ん、足……………………、広げなよ。」\n\n ユニスの頬に、力が入る。邪魔するプライドが、つい言葉を遠くに回したが、救助の要請はユニスに通ったか。あと一押しが、アスリに必要だ。\n\n「…………………………………………見たいんしょ?私の。」\n\n 力尽きたアスリが、ぐったりと首を真下に落として、閉じて広げられない両太ももをのぞき込む。羞恥が、肉体を認めない。終わりだ。\n\n その時、アスリの両膝に、熱い肌が触れる感触が伝わった。右手も左手も、弓で鍛えて、豆が固い皮膚に変わったところだらけだ。\n\n ユニスが、アスリを救いに来た。この奥だ。この奥で、アスリはユニスを、待っている。\n\n「アスリ。」\n\n 迷いのない声が、アスリに届く。アスリがまっすぐ、目の前でしゃがんで両膝を取ったユニスを見つめる。\n 凛々しい声を出しながら、顔はひどく恥ずかしがっている。だから、アスリは好きだ。\n\n「ユニス…………。」\n\n 瞼が下がる。唇を、整える。\n\n「…………っ!!」\n\n 暗闇に包まれたアスリの左隣で、ティサが喉を鳴らした。柔らかな吐息が、アスリの口元にかかった。\n\n 短い幸せが、短い長さでアスリを満たした。すぐに寂しくなった唇を追いかけるように、アスリが追いかけ、2つ目の幸せが続く。アスリが、強くなる。\n 自ら口元を離したアスリが、うっとりと瞼を持ち上げれば、すぐ目の前で、優しい人がアスリを見つめている。あと一度、伝えるべきだ。\n\n「…………好き。」\n\n 近い2人を、異なるはずで統一された恥ずかしさが、優しく包み込む。どこかこわばっていたユニスは、アスリの隣で楽しく過ごす時の笑顔を浮かべ、アスリもまたユニスの表情を、自身の顔に転写する。あと一度、願うべきだ。\n\n「…………お願い。ユニス、好き。」\n\n 微笑むユニスが、うなずいた。ユニスも、強くなれた。\n\n アスリが、両膝に置かれたユニスの両手に、自らの両手も重ねる。両太ももからふくらはぎまでに込められていた力は、反転するように力を緩ませていく。\n\n「……………………いくよ?」\n\n 笑みが凛々しさに変わり、瞳は最後の確認をアスリに問う。微笑みに羞恥が舞い戻ったアスリもまた、うなずいた。\n 膝の上の手に、外に開く力がこもる。閉ざされたアスリの門が、大きな翼を明らかにしていく。\n\n「わっ!!!」\n「やばい!!やばい!!すごい!!!!!」\n\n 左と右から、先に驚きの声が上がった。一気にこみ上げる何かに、こらえきれなくなったアスリがユニスの両手に置いた手を自身の口元に回す。目は覆ってはいけない。アスリは、アスリが見られるところが見たい。\n\n 愛する人が、見たい。愛する人は、輝いている。\n\n 愛する人が、目を輝かせている。幸せが、ユニスに満ちている。\n\n「やばい!!!!!夢みたいだ!!!!!」\n\n アスリに、ユニスの歓喜が届けられた。これが、ユニスの夢だ。"}

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