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{"novel_id": "n0007ik", "chapter": 3, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0007ik/3/", "title": "【1日目】邂逅", "content": "「私ね、本当の友達がいなかったの。だから多分誰の記憶にも残ってないのよ。」\n居酒屋で彼女はそう言った。\n俺たちは10数年ぶりの再会を牛丼屋で済ませてしまったわけだが、それで終わるのはあまりにも虚しいので場所を移すことにした。久方ぶりに会ってもそれくらいの展開にはなるくらいの関係性だったのだろう。実際、中学時代もフラれるまではそれなりに仲が良かった。俺は意を決した。\n「あのさ、本当に申し訳ないんだけど…」\n「何?」\n「名前なんだっけ?」\n「忘れちゃったの?私はヒカル君のことずっと覚えてたよ。」\n「ごめん…」\n「葵」\n「ん?」\n「私の名前は葵。ア・オ・イ。今度は忘れないでね。」\nそうだったか。人の記憶は存外適当なものらしい。俺はたった今彼女の名前を聞いたのに、思い出したという感情に一切ならない。\nしかし慣れない酒を飲んでいるからか、少し体調が悪くなってきたようだ。そしてそれは葵も同じらしい。\n「葵、酒強くないのか?俺も人のこと言えないけど。」\n「そうよ。生まれつきかも。それに今までほとんど飲んでこなかったし。」\n葵と俺は実はかなり似たような境遇でこの年齢まで生きてきたのかもしれない、と俺は直感した。外から見たら明らかに違うはずなのに。\n「大して飲めないのになんで飲みに来たんだよ笑」\n「それは光君が誘ってくれたからでしょ笑」\n葵自身がどういうつもりなのか分からないが、誘われたら行くというような言い方にも聞こえる。\n葵の経歴を想像してみれば合理的である。その容姿とスペックからすれば、周りに人が絶えなかっただろうし、誘いもさぞかし多かったに違いない。\n「やっぱり、葵は俺とは違って人気だったんだろうなあ。羨ましいよ。」\n「そんなことないよ。私って、結構思ったことそのまま口にしちゃうタイプでしょ。小さい頃は、それでも余りある他の要素で補てたけど、大人になるにつれてそれを好ましく思わない人も増えてくるのよ。だから、光君が知ってる私と、今の私は違うの。」\nそんなものか、と俺は釈然としない自分を適当に納得させた。\n「じゃあ、もしかしたら人付き合いとかあまり深くしてこなかったんじゃないの?」\n俺は聞いた。\n「そうなの。さすが光君だね。やっぱりお見通しかな。」\n「なんとなくね。俺も同じだから。」\n「そっか。私たち似たもの同士なのかもね。」\nそうかもしれない。俺は直感が正しかったことを確信した。\nならば次に俺が返す言葉は決まっている。\n「じゃあ、俺が誘ったから来てくれたってのは、俺じゃなきゃ来なかったってこと?」\nかなり無粋な言い方であるが、これも人と関わるのが得意ではない自分なりの言葉である。\n「言い方ストレートすぎだよね笑 まあ、そういうふうに考えてもらっても間違いじゃないかもね。」\n「はっきりしないなぁ笑」\n「察するのも大事だよ」\n「そんなもんかね。」\n俺は意を決した。人生で本当のチャンスは数回だと聞いたことがある。今回がそのうちの貴重な1回かもしれない。\n「葵、このあと時間あるか?」\n「明日仕事休みだし、大丈夫だよ」\n「久しぶりに会ったんだし、今日は俺と一緒にいないか?」\n俺はエゴを抽象的に表現した。さらにこの場合のエゴという表現も、抽象的なものである。平たく言えば性欲ということになろう。\n「んー、いいけど、何するの」\n「落ち着いてゆっくり休みながら話すんだよ」\n俺はそう言うと居酒屋の会計を済ませ、葵とある場所へ向かった。ここまで真面目に読んできた読者ならそのある場所というのがすぐに理解できるであろう。\n俺たちは数分歩いて目的の場所にたどり着いた。\n「ここ、ラブホテルってやつ?」\n葵は疑問を率直に口にした。\n「そう。嫌ならやめるけど」\n俺は至って平常心である。葵と再開した時からずっとダメ元で事を運んでいるからである。そしてそれが今のところなぜか全部上手くいっている。\n「いいよ。光君なら。」\n俺たちは建物に入り、部屋を選んで入った。\n「へぇ、こんな感じになってるんだ」\n葵は開口一番そう言った。\nなんの変哲もないホテルだが、よく見ると俺たちがこれから致すのに必要そうなものは全て揃っている。\n「とりあえずどうするか。」\n俺はもちろんこういう場所に来ることは初めてだし、今から行われるであろう行為も未だ未経験である。葵に振られたあの日から今の今までずっと女性と接するのを避けてきたからだ。\n「お風呂でも入ろっか?どうする?一緒に入る?」\n俺は早くも選択に迫られた。これではどちらがリードしているのか分からない。\n「いいね。初っ端からハードル高い提案だけど、葵は相当な修羅場を潜り抜けて生きてきたの?笑」\n「そういうわけじゃないけど、男の人ってそういうシチュエーション好きって聞いたことあるから。」\n葵の脳内はどうやら一般的な自然さよりも伝聞で処理されているようだ。\n「なるほどね。確かにそういうの憧れはあるよね。」\n俺たちは一緒に風呂に入った。どっちが先に入ったとか、シャワーを浴びただとかは重要ではないので書かない。\n「光君、私のこと見過ぎ。私の顔に落書きでもしてあるの?」\n「そうじゃないんだ。やっぱり可愛いなって単純に思ってるだけ。」\n「なに、あれから10年以上経ってるのに、まだ私のこと好きなの?」\n「そうかも。俺、多分こういうこと好きでもない女の子とできないし。」\n「大層古い考えをお持ちのようだね笑 ま、私もそうかも知れないんだけどね。そもそもしたことがないから分かんないけど。」\n「この歳でお互い未経験は絶滅危惧種なんじゃ?笑」\n「そんなことないよ、光君。最近そういう人達結構増えてるっていう動画どこかで見たもん。」\n「それ俺も見たことあるけど、どこ情報なのよ?笑」\n「そんなの知らないよ笑」\nくだらない話の方が面白いとはよく言ったものである。\n俺たちはひとしきり風呂を楽しんでからベッドに向かった。\n「風呂では楽しく話してたから気づかなかったけど、葵って結構胸でかいんだな。着痩せするタイプか?」\n「そうかな?普通くらいだと思うけど。」\n「あ、自分で言ってて気づかなかったけど、俺、葵の以外見たことないから相場知らないわ笑」\n「余計なこと言わないの笑 そのまま褒めときゃいいのよ」\n「それもそうだな」\n俺は葵の目を見つめ、そっと唇を合わせた。"}

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