Krixter/Repo / n0008gd /17.json
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{"novel_id": "n0008gd", "chapter": 17, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0008gd/17/", "title": "2-11", "content": " ☆セラ☆\n\n 学園に通い始めて一ヶ月以上が過ぎた。\n 通い始めるまでは、今までとは違う慣れない生活に戸惑いや不安等を覚えたのだが、それは長くは続かなかった。\n 今では一日一日がとても短く感じ、休みの日には早く学園に行きたいと思う様になっていた。\n\n というのも、学園に通い始めて直ぐに出来た友達二人の存在が大きく関わっている。\n エミ以外に初めて出来た仲の良い友達だ。\n 領地に居た頃もそれなりに楽しかったが、同年代と呼べる様な子供が余り居なかった事と、農村の多い領地で過ごす貴族以外の子供等は家の手伝い等があって余り一緒に遊ぶ事は無かった。\n\n エミとはお互いの領地を行き来する程親同士の仲が良かった事も手伝って直ぐに打ち解ける事が出来、お互いに姉妹の様に育ったと言える。\n エミの領地も似た様なモノで、領地の方には余り仲の良い友達は居なかった様子だ。\n しかも、辺境とも言えるお互いの領地の位置も手伝って、社交の場にも数える程しか出た事が無いので、同じ貴族の子弟とも仲が良くなる機会は余り無かったのだ。\n\n お互いに二人しか知り合いがいない様な都会での生活に、少し不安を覚えていたのだが、そんな不安は早々に杞憂に終わってしまったのは有難い事だった。\n 今では新しく出来た二人の友達のお陰で、学園生活が楽しくて仕方が無い。\n 一人はアンジュという可愛い女の子で、私達と同じく田舎と言っていい領地から出て来たという事も手伝ってか、打ち解けるのは早かった。\n しかも、その可憐な見た目にそぐわない実力は、学年上位に食い込める程だ。\n 友人として鼻が高いのは勿論だが、使用する武器は違えど、私としても頭を使うより体を動かす方が得意なので良きライバルとしても見ている。\n 頭の出来はどうやらライバルにはなれそうも無いけれど……\n\n そしてもう一人は、クレアという絶世の美少女とも言える女の子だ。\n 小柄な体躯に類稀な容姿も相まって正しく人形の様なと形容できる女の子。\n しかし、そんな人形の様な容姿と裏腹に、非常に感情豊かであり、解りやすい程に愛らしい反応や表情を浮かべる彼女は、意図せずともまるで魅了を振りまいているかのように、見るものを虜にしている様だ。\n 高名な侯爵家の令嬢でありながら、変に気取った所も無く、身分の違いも気にせず分け隔てが無い。\n 誰に対しても優しく丁寧な物腰は誰の目にも好意的に映るだろう。\n 当初その容姿のみでも注目を浴びていた彼女であったが、現在はそれ以上の熱っぽい視線を所々から感じる程に周りを魅了している様子だった。\n 学園生活の殆どの時間を私達三人に囲まれているか、彼女の姉の二人が脇を固めているかという状況なのだが、最近は私達に対しての視線も少し痛い。\n 敵意とまでは行かないが、大なり小なりの嫉妬や羨望の視線は少し居心地が悪いが、少し、ほんの少しだが優越感も覚えてしまう。\n\n 純真無垢を体現したかのような奇麗で無邪気なクレアは、領地を出る前には殆ど姉離れしてしまった妹と弟の幼い頃を思い出させ、私の庇護欲を駆り立てられて仕方ない。\n 幼子の世話をする様に、クレアの事も世話を焼きたいという気持ちが日に日に強くなっているのは自分でも自覚している。\n あの小さい体を膝に乗せて目一杯、それこそ一日中でも愛でたい。\n\n この一ヶ月で数度程クレアの姉二人と一緒に食堂で食事をする事があったのだが、妹や弟が幼い時分に、熱を出したりした時に数度程してあげた覚えがある食事の世話を彷彿とさせる行為を、平時で躊躇いなく行っていたのを目の当たりにした私は、その行為を見るたびに徐々に羨ましいと感じる様になった。\n まるで親鳥がヒナに餌をやる様な、それは慈愛と愛情に満ちた尊い行為の様にも思える。\n\n この一ヶ月の間で教室で食事を食べた時に一度だけ機会があり、私にもそのお世話をさせてもらったのだが……。\n 正しく慈愛の気持ちと愛情が沸々と湧き上がり、背筋をゾクゾクと電流が走ったのを感じた。\n あの凄まじい充足感は得難い幸福感を伴って私の中に残り続けている。\n\n アンジュとエミがクレアに熱を上げているのは感じていたが、今や私も同じ穴の狢だろうか。\n この気持ちの正確な所は解らないが、武術訓練や魔術訓練の授業の時に二人共が見せるクラス内の他の追随を許さない程の集中力に納得がいった。\n そしてクレアの二人の姉であるアテナさんとレオナさんのあの年齢にそぐわない強さの秘密も何となく理解した。\n 勿論相応の才能と努力もあっただろうが、それ以上に守るモノの、守りたいモノの存在が大きく関与しているのではないだろうか。\n 何故ならば私は今まで以上に力が欲しいと感じている。\n ここ最近の訓練に対する身の入り様は、彼女の存在が大きい事を自覚する。\n クレアを守ってあげたいのだ。\n 彼女に仇名す全ての脅威を射抜く。\n そんな大それた目標を未だ未熟な心身ながら、しかし真摯に騎士の誓いを掲げて私は弓を引く。\n\n そして今現在、弓術師団の訓練場の隅で椅子に座っているクレアを横目で見る。\n その視線に気付いたのか、偶々此方を見ていたのかは定かでは無いが、お互いに視線が交錯した直ぐに私に対して可愛い笑顔を向けてくる。\n その笑顔に絆されて集中力が途切れたのを自覚し、続けてヘマをしてしまった。\n\n「っ!?」\n\n 番えていた矢が明後日の方向へ飛んでいき、爪の間に弦を引っ掛けてしまった私は手を押さえて顔を顰めた。\n\n「セラ!?だいじょうぶですか!?」\n「だ、だいじょぶだいじょぶ!これぐらい……」\n「おいおい大丈夫か?救護室に行ってくるか?」\n\n クレアの横の椅子に座って休憩していた師団長も心配そうに此方に視線を向けて来ていた。\n どうやら何時の間にか休憩に入り、お気に入りのクレアの隣に陣取って紅茶まで飲んでいる彼女だが、当初、「まぁ、一日ぐらいは構わないが、弓術訓練場は託児所ではないぞ?」と、嫌味と威圧感たっぷりに告げられたのは何だったのかという程に今ではクレアにデレデレだ。\n 凛とした佇まいに猛禽を思わせる鋭い目つき。\n 黒髪をポニーテールに纏めたクールな美人という感じだが、本人としては目付きの悪さにコンプレックスがあるらしい。\n 弓使いとしては名誉な『鷹の目』の異名を持っているクリスティーナ師団長は、名実ともに師団一の実力者だ。\n 自分にも他人にも厳しいという彼女が、ほんの数日でここまでデレるのだから、クレアの魅了の力は疑いようも無く本物だろう。\n\n「セラ、こっちに来てください」\n「うん?あぁ、これぐらい舐めとけば治るよ」\n「いいですから」\n\n 少し血が出ているが、爪はそれ程浮いていないので軽傷と言える。\n カッコ悪い所を見せてしまった事に内心落ち込みつつ、有無を言わさない態度で手招きをしているクレアの傍にいくと、血が流れる私の手を両手で包み、目を瞑って数秒程で痛みは完全に消えてしまった。\n\n「はい、これで治りました」\n「あ、あぁ……、ありがとうクレア」\n「治療魔術か、流石はクレアだな。速度も効果も素晴らしい」\n「ふふん、支援魔術だけは得意ですからね!」\n\n 少し得意気に胸を張るクレアは、その美しい容姿ながら幼い子供の様な無邪気さを誇り、控えめに言って滅茶苦茶可愛い。\n\n「どれ、そろそろ私も訓練に戻るか。セラは少し休憩していろ、ずっと休みなしで弓を引くにも限界があるぞ」\n「は、はい」\n「ではまた後でなクレア」\n「はい、クリス先輩。訓練頑張ってください」\n\n 手を振って訓練に戻っていくクリスティーナ師団長を見送り、先程まで彼女が座っていた席へと腰を下ろした。\n\n「あまり無茶をしてはいけませんよ?セラ」\n「うん?あー……、いや、別に無茶してた訳じゃないよ。ちょっと、集中が途切れちゃっただけだから」\n「そうですか?集中が……あ、ひょっとして僕の所為ですか?」\n「えっ!?いや!そんな訳無いじゃん!」\n\n 急に不安気な瞳で私の顔を上目遣いに覗き込んで来るクレアに慌てる。\n 確かに彼女と目が合い、笑顔を向けられた事で集中が途切れたのは確かだが、それを認めてしまうには少し、かなりカッコ悪い様な気がしたのだ。\n\n「セラが弓を引く姿がかっこよくて見惚れてしまっていたので……、ジロジロと見過ぎてしまったかもしれません。それで集中を切らしてしまったのでは……?」\n「ふぇっ!?か、かっこよかった、の?」\n「はい!集中している時のセラの顔は凛々しくてかっこよかったですよ?それに、的に吸い込まれる様に飛んでいく淀みのない矢は見ていて気持ちいいモノですね!」\n\n 偶々目が合ったと思っていたのだが、実際は私をずっと見ていたというクレアの言葉に自然と口元が緩んでしまったのを自覚した。\n 心底楽しそうに、嬉しそうに先の訓練の様子を語るクレアに得意になりそうな自分を律する様に努める。\n\n「あっ!すいません、女性に対して格好良いとはあまり誉め言葉では無かったですかね……?」\n「え?いや!そんな事無いよ!ほ、ほら!私なんてガサツで落ち着き無いしさ!可愛いなんて似合わないし、かっこいいって言われる方が誉め言葉だよ!事実そう言って貰えて、嬉しいしさ」\n\n 女性に対して格好いいとは本来ならあまり誉め言葉としてどうかと取られる事の方が多いかもしれないが、私としては結構嬉しい誉め言葉だ。\n 御淑やかになんてのは柄じゃないし、男勝りなのも自覚してる。\n 弓に関してはまだまだ未熟ながらも、同年代であれば男子に負けるつもりもない。\n 私は現在女の子らしくという想いよりも、目の前の彼女、クレアを守りたいなんて思っている様な奴だ。\n 多少男の子寄りな考えではあるが、彼女にかっこいいと言われるのは思った以上に嬉しい。\n 自然とニヤけてしまう程度には嬉しいと思っているのは確実だ。\n\n「そんな事無いですよ」\n「う、うん?」\n「確かにセラは弓を引いてる時はカッコイイですけど……、普段のセラは僕は可愛いと思います」\n「ぇ……、いや、そんな事……」\n「むぅ……、アンジュもそうでしたけど、セラも信じてくれないとは……、本当に僕はセラの事可愛いと思ってますからね?」\n「えぇ……や、えっと、うん、あ、ありがと……?」\n\n かっこいいと言われて嬉しく感じたのは確かだ。\n 自然と頬が緩む程に……。\n しかし現在、真顔で身を乗り出して私の事が可愛いと力説する彼女に、今度はカァッと顔が熱くなったのを自覚した。\n 彼女にそう言われて、嬉しい、と感じては居ると思うが、これは先のただ嬉しいとか誇らしいとか言う気持ちとはまた別の感情も同時に発生していると感じる。\n 未だニコニコとした顔で私を見るクレアを、正面から見る事が出来ず、熱く火照った顔に戸惑うしかない私であった。\n\n そして、漸く顔の火照りが治まった所で、ふと隣に座るクレアの方を見る。\n 今はどうやら他の師団員達の訓練姿を眺めている様だ。\n 他人の訓練等見てもあまり面白いと思えないのだが、彼女が言うには、幼少の頃から姉二人が訓練をする様子を眺めるのが好きだったらしく、今でも他人の訓練する姿を眺めるのが好きらしい。\n\n しかし、何だか今、その瞳の中に私が映っていない事に不満、嫉妬の様な感情を覚えた私は、つい彼女の頭に手をやってしまった。\n 深く考えずに自然と手が伸びてしまったのだが、その滑らかでサラサラとした手触りは魔性とも言うべきモノで、そのままゆっくりと撫で付ける様に手が動く。\n\n「ひゃっ!?んっ……せ、セラ?どうしました?」\n「あっ……、ごめん、嫌だった?」\n\n 突然頭を撫でられたクレアの肩がぴくっと跳ね、擽ったそうに身を捩りながら私の方に視線が移り、彼女の奇麗な金色の瞳に私の姿が映った。\n その事に満足感を覚えながらも、突然手を伸ばしてしまった事に申し訳ない気持ちも沸いて来たので手を少し離す。\n すると、彼女は柔らかい笑みを浮かべながら首を軽く振り、口を開いた。\n\n「いえ、全然嫌では無いですよ?ただ急だったので少し驚きましたけど……」\n「じゃぁもうちょっと撫でていい?」\n「え?か、構いませんけど……」\n「ありがと。クレアの髪って手触りが良いよね、凄い奇麗だし……」\n「んんっ……そう、ですか?ありがとうございます。んっ、ふっ、擽ったいです」\n\n\n 許可が出たので遠慮なく撫でつけていく。\n クレアの髪は本当に奇麗で触り心地が良い。\n 手櫛を通せば何の抵抗も無く指の間をスルスルと流れていく髪に、まるで手を愛撫して貰っているかのような錯覚を覚える程気持ちが良い。\n 癖になりそうだ。\n\n「も、もういいですか?」\n「んー……、もうちょっと。だめ?」\n「んっ、だめ、じゃないですけど……ちょっと、恥ずかしいというか……」\n\n 自分の中に初めて沸いた醜い嫉妬心に意識的に蓋をして、優しく、愛でる様にクレアの頭を撫でる。\n 擽ったそうに身を捩りながらも、目を細めて気持ち良さそうな様子のクレアに、まるで毛繕いをされている子猫の様な愛らしさを覚えた。\n せめて私が隣に居る時だけは私だけを見て欲しい。\n そんな気持ちが沸いたのは何故だろうか。\n ここまで友達に対して嫉妬、ヤキモチや独占欲の様なモノが生まれるとは思ってもみなかった。\n 幼い頃から仲の良かったエミにも抱いた事のない感情だ。\n 彼女が他の誰かと仲良くしていたとしてもこんな気持ちにはならないだろう。\n それだけクレアが私にとって特別だと言う事だろうか。\n 彼女にとっての私もそうなりたいなと、自然と頭に浮かんだ。\n まぁ今は深くは考えず、目の前の可愛いクレアを愛でるのに集中する事にするのだった。\n\n\n そういえば、領地に居た頃にエミが私に無理矢理、押し付ける様にして読まされた本の事をふと思い出した。\n あれは、そう、女エルフの守り人と辺境の領主の令嬢のお話だった。\n 女エルフの狩人と病弱な令嬢が主人公で、そのエルフの狩人が弓を使う所はまぁ当然として性格も私に似ているとか言って無理矢理読まされたのだ。\n じゃぁその令嬢の方はエミに似てるのかと聞いたらそんな事は無いと首を振られたのが懐かしい。\n まぁその時は流し読み程度にしか読まなかったが、今になってその話が無性に気になってしまった。\n 世界で一番見目麗しいエルフに感情移入が出来る程自惚れる事は出来ないが、何となく、その令嬢がクレアに重なったのだ。\n まぁ多少は、確かに男勝りな印象を受けたエルフの性格は私よりだった覚えはある。\n 確か、あの時のエミが興奮した様に言っていた言葉は、エルフが攻めで令嬢は受けだとかなんとか……。\n 何だか無性に気になった私は、その日の内にエミに件の本をもう一度借りに行く事を決めた。", "afterword": "最近、見切り発車的に手を広げ過ぎて申し訳ないですorz\n今書いてるお話に詰まる度に気分転換に他のお話を考えてしまうんです……。\nノッている時はスラスラと書けるんですけど、詰まると中々出てこない……。\n拙い文才と想像力基、妄想力を駆使して頑張ります(; ・`д・´)\n\n読んでくださっている方、ブックマーク、評価、感想を頂いた方に感謝を!\n皆様の暖かい応援は大変励みになっております。\nこれからも、少しでも楽しんで頂ければ、幸いでございます。"}

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