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{"novel_id": "n0008gd", "chapter": 3, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0008gd/3/", "title": "プロローグ2", "content": " 目が覚めるとそこは、知ってる天井だった。\n\n まぁ前世の記憶を思い出したというだけでクレアとして過ごした七年間の記憶が無くなった訳では無いので当然だ。\n お約束的に知らない天井だと頭に浮かんだが直ぐに頭の隅に追いやった。\n 現実逃避しても仕方ない。\n\n そもそも天蓋付きのベッドだ。\n 天井は見えない。\n\n 目が覚めて暫く、身動きもそんなに取れないのでそのままでいると、クリス母様が部屋へと入って来た。\n 今世での実の母親だ。\n\n「クレア? 起きてる?」\n「母様、おはようございます」\n\n 母の優し気な声に反射的に朝の挨拶を交わす。\n 腕にグググッと力を入れて上半身を起こそうとするがままならず、少しだけ浮いた体は重力に逆らう事無く力尽きてベッドにバフッと落ちた。\n\n「こらこら、無理しちゃだめじゃない……」\n「ごめんなさい……」\n「謝らなくてもいいわ。ほら、もう少ししたらお医者さんが来るから汗を拭いて、着替えておきましょ……」\n「はい」\n\n 特に意識せずに会話が出来た事に内心ほっとしつつ、自分のこの自由に動かない体が前世の記憶に引っ張られてストレスに感じてしまう。\n 七年という月日で慣れたと思っていた矢先に二〇数年分の記憶が付け足されたのだ。\n 塗り替えられたとしても仕方ない。\n\n「体起こすわね……よい、しょっと……」\n\n 優しい手つきで背中に腕が周り、それと同時に自分の腕がふにゅっとした柔らかい感触に襲われる。\n 少し顔が火照るのを感じたが、直ぐに気を持ち直した。\n というより、直ぐに他の事で頭がいっぱいになった。\n 手慣れた手つきでスルスルと俺の服は脱がされ、気付いた時にはパンツ一丁になっていたからだ。\n まぁ着ていたのは両開きの薄手のワンピースだ。脱がすのは簡単だろう。\n 素肌を晒すのに慣れてない男としての羞恥と、奇麗な女の人に裸同然の姿を見られているという事実に言いようのない不安感が押し寄せてくる。\n しかし、どれだけ美人でも自分の母親だ。\n ほぼ裸だけども恥ずかしくない、恥ずかしくない……\n\n 体を支えて貰いながら優しく丁寧にお湯に浸した手拭いで体を拭かれていく。\n くすぐったい様な気持ちいい様な、妙な感覚だった。\n\n「うーん、まだ少し体が熱い気がするわね……」\n「ふぇっ!? だ、だいじょうぶ、です……」\n\n 確かに体は火照っているが、これは熱があるせいでは無い気がする……\n 少し心配そうに俺に声をかける母様に返事を返した所で勢いよく扉が開いた。\n\n「クレアちゃん! ママが体を拭いてあげ……」\n「ひぇっ!?」\n\n 勢いよく開いたドアを抜けて部屋に飛び込んできたのはもう一人の母親、マリアナ母様だった。\n 脇にはお湯を張った洗面器を抱えており、何をしに来たのかは察する事が出来たのだが突然の来室に変な声が出てしまった。\n\n「あー! ずるい! 私が拭いてあげようと思ってたのに!」\n「マリアナ……いいからドアを閉めて……」\n「おっと、そうだった。クレアちゃんの艶肌を家族以外に見せる訳には……」\n「つ、つやはだ?」\n「まぁ我が娘ながら恐ろしい程の肌ね。若さだけでは到達しえない至宝だと思うわ」\n「……はぁ」\n「ほらほら! 一人だけでクレアちゃんを愛でようったってそうはいかないんだから! 私だってママなんだからねっ!」\n\n 何やら母親二人がよく解らない事を宣いつつ、マリアナ母様は脇に抱えた洗面器をベッドの傍に置いてクリス母様の反対側へと陣取った。\n こうして二人の美女に隅々まで体を拭いてもらったのだった。\n 恥ずかしいやらくすぐったいやら気持ちいいやらで訳が分からない事になった俺は思考を放棄しされるがままに身を委ねるしかなかったのだが、全て終わって新しい服に袖を通したあと、二人に両脇から抱きしめられた時にようやっと現実に引き戻された。\n\n「ほんとによかった……クレアが無事で……」\n「ほんとに……ぐすっ、よかったよぅ……」\n「母様、心配かけて、ごめんなさい……」\n「あなたの所為じゃないから謝らないで……」\n「そうだよ、クレアちゃんが助かった。それだけで私達には十分だよ……」\n\n 抱きしめられた頭の上にポツポツと数滴の雫が落ちた。\n この時、俺は何物にも代え難い愛情を注いでくれている二人の母親に感謝した。\n 気が付くと先程感じていた体が思う様に動かないストレスから解放されていた。\n いや、ようやく心が追い付いた感じだろうか。\n 昨日の今日でようやくという言葉も可笑しいかもしれないが、昨日合流した二十数年分の記憶の所為という事にして置こう。\n クレアはこの七年間でこの体を不便だと思いはしても呪った事は無かった。\n\n それはこうして傍に居る母二人が、二人の姉と父が、自分に確かな愛情を注いでくれていたお陰だと頭と心で理解したから。\n 俺はこの愛情に応える為に何でも頑張ろう。そう決意を新たにする。\n\n そして、俺が完全にクレアとして生きていく事を受け入れ、僕になった瞬間もこの時であった。"}

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