| {"novel_id": "n0008gd", "chapter": 4, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0008gd/4/", "title": "1-1", "content": " 僕が転生した事を自覚してから二年の月日が流れた。\n\n 長い様で短い時間だった。\n まぁ色々とやる事があったので、充実した日々は過ごせたと思う。\n\n 朝目が覚めた僕はまず、うんしょうんしょっという具合に腕を使ってベッドの脇まで移動する。\n この二年で少しずつ鍛えた僕の二の腕はもうムキムキだ。\n こんな事は朝飯前と言える。\n\n ……うそだ。\n\n 朝ご飯の前なのはホントだけども、全然思う様に筋力が付かない。\n 相変わらず二の腕はぷにぷにだ。\n しかし多少なりとも筋力が付いたのは本当で、以前とは比べ物にならない程動く様になったのは確かだ。\n まぁそれも身体強化の魔術を使ってやっとという所だが……\n 足は相変わらず動かない。\n 元からの筋力が無いためにどれだけ強化しても動かないのだ。\n ゼロにはいくらかけてもゼロのまま。\n まぁ腕が少し動く様になったのでそれだけでも御の字だ。\n 相変わらず細かい作業は難しいし、少しの動きですぐ疲れるのだが字や簡単な絵ぐらいなら何とかなる。\n あとは自分の体を少し支える支柱や体を動かす補助といった所だろうか。\n\n さて、ベッドの脇まで移動した所で腕を使って体を起こし、足を下ろす。\n これだけでも一苦労でじんわりと額に汗が滲む。\n\n「ふぅ……」\n\n 取り敢えず一息ついた後、手の届く範囲に置いてある鏡を取り、寝癖が無いかをチェックする。\n ついでに滲んだ汗もハンカチで拭いておく。\n 一応身嗜みには気を付けなければいけない。\n 僕の恥は家族の恥だ。\n 僕がちゃんとしていないと家名に、姉や母、父にまで害が及ぶ可能性もあるのだ。\n ジルニクス家は侯爵の家系で結構な大貴族らしいので、本当に気を付けなければ。\n\n さて、ささっと髪を整えてマジマジと自分の顔を鏡越しに見る。\n 我ながら奇麗で艶やかな黒髪のロングヘアーは立つと恐らく腰の辺りまで伸びている。\n 手入れが大変なのだが母と姉が短くするのを許してくれないのだ。まぁ手入れをするのはその四人なので、手入れが大変そうというのが正解か。僕としては家族の負担を軽くしたいだけなのだが……\n そして染み一つない陶磁の様に白い肌は、病的とまでは行かないまでも透き通る様な白さと表現出来る程だ。\n 加えて母譲りの切れ長の目元に金色の瞳と、恐ろしい程に整った顔立ち。\n 自画自賛と笑わば笑え、前世の男としての記憶から見た自分の客観的な感想である。\n まぁ同じ様な言葉で母に姉、父までもが僕に対して常日頃からそんなお世辞を言いまくるので自分でもそうなのかも?と自惚れるぐらいは許してほしい。\n 流石に親馬鹿とシスコン二人が僕を褒めたたえるような国宝級だとか、世界の宝だとかまでは言うつもりは無い。\n\n さて、僕が転生したこの世界についてだが、ある程度お察しの通り、日本ではもちろん無い。\n 普通に貴族がいるし、更には魔術まであるファンタジーな異世界である。\n それに気づいた時は少しテンションが上がったのは間違いない。\n それで早速とばかりに僕は魔術の鍛錬に乗り出した。\n 最初、家族はあまり乗り気な様子では無く、姉二人に至っては私が一生守ってあげるからそんなの習わなくても大丈夫だと言い張っていた。\n 魔術を習いたいと言ったら姉二人にプロポーズ紛いの言葉を囁かれるとはこれ如何に。\n まぁそれで折れる様な僕では無い。\n 流石に一生姉におんぶに抱っこを許容する程僕の中の男は死んでいない!筈だ。\n 常日頃から御淑やかにという貴族令嬢の教育も相まって随分と怪しいものになってきているのは認めるが、自分で出来る事は出来る様になりたい。前世の男としてのプライドにかけて。\n それに魔術、使いたいじゃないか! 浪漫じゃないか!\n\n そしてようやっと魔術の修行にこぎ着けたのだが、最初は前途多難だった。\n 魔術の修行は精神力を消耗する。\n 使わなければ上達しない。\n 体内に循環する魔力量は幸いそれなりに多かったのだが、焦るあまりに枯渇直前まで魔術の練習をしてしまった僕は次の日から熱を出して三日程寝込んだ。\n 更に反対する両親と姉を説得するのに一ヶ月を要したのだが、それも今やいい思い出だ。\n\n 現在は更に魔力量も増えてそれなりに使える様にはなった。\n しかし、魔術を習い始めて少し経った時、僕の夢は儚く潰えた。\n 僕には攻撃魔術の才能がほぼ無かったのだ。\n というのも、この体がその理由の大部分を占める。\n\n 僕のこの体の障害はどうやら体内に循環する魔力の弁が腕では非常に狭く、足に至っては無い事に起因するらしいのだ。\n 故に手から放出する攻撃魔術の類はほぼ使えない。\n\n 辛うじて使えるのは初級の魔術ぐらいだ。\n それも威力はお察しという感じ。\n しかし、それに比べて僕にはどうやら支援魔術にはかなり優れた才能があったらしい。\n それに気づいてからは最早攻撃魔術をバンバン打ちたいという少年心は遥か彼方に追いやり、支援魔術の研鑽に勤しんだ。\n 支援魔術ならば少しでも家族の役にたてるかもしれないのだ。\n 頑張らない訳が無い。\n\n さて、そろそろ休憩も終わりにして次の行動に移ろう。\n\n そう思い立ち、視線をベッドの脇に置かれた車椅子に向ける。\n これはある程度身体強化の魔術が使える様になった時にペンを走らせ、下手糞ながら絵を描いて作ってもらった特注のモノだ。\n 前世で見知った形であり、口頭でも案外伝える事が出来たので直ぐに作ってもらえた。\n 黒を基調に所々に金の装飾が施されており、比較的軽い金属であるミスリルをメインに作ってもらった為に魔力伝導率も中々よく、魔力を流せば少し自走もできる優れものだ。\n 但しカメの歩みの様な速度なので、普段は普通の車椅子同様押してもらう事になっている。\n ちゃんと肘置きの部分が取り外しできるようにしてもらったので、ベッドから車椅子に移るのは問題無しだ。\n という訳で、うんしょうんしょっと車椅子に移り、肘置きを差し込んでバッチリだ。\n 寝る前に毎日練習した甲斐があったと言うモノだ。\n\n 日々成長する自分が怖いっ。\n\n と、ここでドアを勢いよく開いた音の後に、何時も通りの声が響く。\n\n「おはよー! クレア! 最愛のお姉ちゃんが来たわよ!」\n「おはようございます。アテナ姉様」\n\n 返事を返した所で、ピタリとアテナ姉様の動きが僕の姿を映した状態で固まる。\n\n「あ、あの、アテナ姉様?」\n「だ、だれか来たの? 今日は私の当番の日でしょ?」\n「え? いえ、誰も来ていませんけど……」\n「だって、車椅子に……」\n「あ、これは自分で乗ったんです!」\n「へ? 自分で?」\n「は、はい」\n\n 鳩が豆鉄砲を食ったようとはこの事なのか? 目が点とも言う。\n\n「な、ななななんでよぅ! 私が乗せてあげたかったのにぃ! ひどいひどいっ! クレアがお姉ちゃん離れしようとする!」\n「えぇぇ!? そ、そんなつもりでは……」\n\n びゅんっという勢いで近づいて来たアテナ姉様が慌てた様子で僕の頭を抱きしめた。\n 少し膨らんだ胸が僕の顔に当たってドギマギしてしまう……\n 落ち着け、今は同性でしかも姉だっ。\n でも柔らかい!\n\n「ちょちょ、ちょっと! アテナ姉様! む、むねが……」\n「ん? どしたの?」\n\n 胸が当たっていると言おうとして、尻すぼみに声が小さくなっていく。\n 胸が当たっているから何だというのか。同性でしかも僕は妹だ。\n 気にする方が可笑しいかもしれない。\n 何でそんな事を気にするの? と聞かれれば恥ずかしいからと答えるしかないが……\n 何で恥ずかしいの? と聞かれればもう何と返したらいいのか解らない。\n 意識していますとは言えないだろう。\n\n いくら体が女の子とは言っても前世は男で、しかも殆ど女性に免疫が無い様な奴だった。\n そう簡単に趣味趣向は変えられない!\n 僕は女の子だけど、女の子が好きなのだ!\n 家はかなりの美形家族で、両親はイケメンと美人で、その子供である姉、アテナも紛う事無き美少女である。\n クリッとした黒目は愛らしく、目鼻立ちは勿論整い過ぎている。\n しかも女の子特有のモノなのか、良い匂いまでするんだから、健全な精神を持った男なら意識しない方が無理という物だ。体だけは僕は女の子だけども!\n\n「んー? 何々? どうしたの?」\n「ちょっ、ちょっと、その……」\n\n そんな僕の葛藤というか苦悩というか、それを知ってか知らずか、アテナ姉様はワザとらしくグリグリふにふにと体を僕の頭に押し付けてくる。\n\n「は、はなれてください……」\n「えぇっ!? そんな……ほ、ほんとに? ほんとにお姉ちゃん離れしちゃうの?」\n「は、はなれませんから……」\n「じゃぁ明後日は私に甘えてくれる?」\n「う……も、もう僕、一人で乗れますから……」\n「じゃぁ離れないっ!」\n「わ、わかりました! 解りましたからはなれてくださいぃ……」\n「ふふー、よしよし。しょうがないなぁ」\n\n ようやっと離れてくれた。\n 姉離れというか、自分で出来る事をしようとしたら全力で阻止されてしまった。\n 少しぐらい褒めてくれてもいいのでは? という気持ちが無いでもないけど……\n\n「んー、でもすごいね。クレアは、一人で車椅子乗れるようになったんだね。えらいぞー。流石私の妹! そして嫁!」\n「よ、嫁は、ともかく……はい……」\n「んー! よしよしっ! えらいえらい! 世界一可愛いのに努力も惜しまないとか、どれだけお姉ちゃんを惚れさせれば気が済むんだ! こやつめっ!」\n「む……」\n\n かいぐりかいぐりと頭を両手で撫でられつつ、少し不貞腐れる。\n 少しぐらい褒めてくれても、と思った矢先に褒められたのだ。\n ひょっとして顔にでも出ていただろうか。\n 全力で止めた割に、人好きのするいい笑顔で僕を褒め殺していくスタイル。\n 嫁だ惚れたなんだは何時も通りの冗談にしても、まぁ褒められて悪い気はしないから取り敢えずよしとするか……\n\n「でもお姉ちゃんが居る時は甘えるのが妹の義務だからね? お姉ちゃんの前では頑張るの禁止です」\n「えぇー……」\n\n どういう理屈なのだろうか。\n まぁ何時も通りスルーしよう。\n まだ今日は更にやる事があるのだ。\n\n「アテナ姉様、もうすぐ朝食の時間ではないですか?」\n「おっとー、そうだね。妹成分を摂取するのに夢中になる所だった! じゃぁいこっかっ!」\n「はい。あ、あと、その、おトイレに、寄ってもらえますか?」\n「はいはいっ! 解ってるよー!」\n\n さて、やってきましたトイレです。\n 今日の為に、いや、これこそを至上の目的として僕は頑張って来たのだ。\n 流石にこの年になってトイレを手伝ってもらうのはいい加減恥ずかしくなってきたのだ。\n まぁ男の僕が合流してからというもの、ずっと恥ずかしかったけども。\n だから僕は今日、卒業する!\n\n「よしっと、じゃぁ移動するよー」\n「は、はい」\n「んー、しょっと。じゃぁ失礼して……」\n「ちょ、ちょっと! 待ってください、アテナ姉様!」\n「んぇ? 何? どしたの?」\n\n 楽々と身体強化の魔術を使い、何時も通りに僕が捕まる様にアテナ姉様に首に両手を回した所で慣れた手つきで軽く腰を抱いて、車椅子から便座に座らせる。\n 続いてスッと自然に僕の前に前かがみになり、何時も通り僕のスカートの中に手を突っ込んだ状態で僕がストップをかけるとピタリとアテナ姉様の動きが止まった。\n 訝し気な表情だ。\n だけどこれは必要な事なのだ。\n\n「あ、あの今日は、大丈夫です。僕、一人で出来ますから……」\n「っ!?」\n「あ、あの、アテナ姉様?」\n\n 僕が告げた言葉にこの世の終わりかと思う程のショックを受けた表情を浮かべる姉にたじろぐ。\n しかし、これは譲れない戦いだ。\n さっきの車椅子への移乗とは一線を画す問題のはず!\n\n「ま、またお姉ちゃんから離れようとするの?」\n「え? いえ! は、離れません! 離れませんけど!」\n「じゃぁなぜ?」\n「そ、それとこれとは話が違うと言いますか……」\n「何が違うの!? 話してみてよ! 話だ け は! 聞いてあげるから!」\n「いや、そもそも、その、おトイレを手伝ってもらうのは申し訳ないと常日頃から思っていたのです」\n「別に好きでしてるから大丈夫。よしじゃぁこの話はおしまい」\n「ままままってください! それだけじゃないんです!」\n「えー? まだあるの? 聞くだけだよ?」\n「くっ……、そ、その、もう僕も小さく無い訳ですし……は、恥ずかしいので……」\n「うっ……」\n「ど、どうしました!?」\n\n 急に胸を押さえて苦しそうに!?\n 一体何があった! 敵襲か!?\n\n「はぁっ……だ、大丈夫よ! ちょっとその、破壊力が凄かっただけで……」\n「は、はぁ……」\n「よし! わかったわ! じゃぁ私がチェックしてあげる! 見事合格したら泣く泣く、本当に! 泣く泣くだけど! もうおトイレはお手伝いしない!」\n「わ、わかりました」\n\n 何をどうチェックするのかは解らないが、これはチャンスだ。\n 気合いを入れて頑張ろう。\n\n さて、パタンッと音を立ててトイレのドアが閉まり、クレアになって初めて僕はこのプライベート空間に一人という状況を手に入れた。\n 片側のお尻を少し浮かしてパンツをずらし、左右交互にそれを繰り返して脱いでいく。\n 膝の手前までずらした所で、用を足す事に。\n\n 少し膀胱に力を入れると、チョロッと尿が溢れ、堰を切ったかのように自分の用を足す音が部屋に響いた。\n ドアを閉め切っている為か、ジョボボボッという水音がやけに反響して大きく聞こえる。\n 何時もは殆ど目の前で聞かれている様な状況だったにも関わらず、状況の違う今は新しい羞恥心と言うモノが沸々と湧いて来るのを感じた。\n\n(今、ドアのすぐそこにアテナ姉様がいるんですよね……音、聞こえてる、かも……)\n\n そう意識したが最後、滅茶苦茶恥ずかしい。\n\n「あ、アテナ姉様?」\n\n 未だ止まる事の無い尿の音に顔が火照るのを感じつつ、外に居る姉に声をかける。\n\n(聞こえてない?かな……)\n「アテナ姉様?」\n「んー? 何か言った?」\n「い、いえ! 何でも!」\n\n 尿の音を掻き消す様に少し声を張って外に居る姉を呼んでみたが、よく聞こえなかった様だ。\n よかった。\n どうやら防音性は結構高いみたいだ。\n 多分、きっと聞こえてない、はず。\n\n そしてようやっと収まった所で次の段階だ。\n トイレに備え付けられている紙を置いてある箱の中から取り出して、筋をなぞる様に拭き拭きと。\n 力を入れたりするのには慣れてきたが、余り自由に細かく動くことの無い腕を何とかぎこちないながら動かして拭いていく。\n 力の加減があまり解らないが、拭けてないという事は無いだろう。\n これでよし。\n\n あとはまたズリズリと少しずつパンツを上げて、バッチリだ!\n 水を流して、ドアをノック。\n\n「あ、アテナ姉様、終わった、よ」\n「ん? はいはいー」\n\n ガチャリッとドアが開き、姉様がトイレの中へ入ってくる。\n そして両手を上げてまた姉様の首に掴まり、少しお尻を上げた所でそこから動きが無い。\n あれ? と首を傾げていると……\n\n「どうしたの? チェックするっていったじゃない。ほら」\n「えぇ!? チェックって出来るかどうかじゃないんですか? ちゃ、ちゃんとできましたよ!?」\n「それは解ってるわよ。後はちゃんと大事な所を奇麗に出来ているかという所かしら?」\n「え、えぇぇ……ほ、ほんとに、チェックするのですか?」\n「当然でしょ!」\n「うぅぅ~……」\n\n そうして、スルスルと何時もの様にパンツを下ろされ、もう一度便座に腰を下ろされた。\n 大丈夫だ。ちゃんと拭いたから問題無いはず……\n そして、恐る恐る、それを見る。\n\n「ん~? クレア、これは、何かなー?」\n「ひぇっ!? え、えぇっと、その……」\n\n ずり下ろされたパンツのクロッチの部分には、白い布地に薄っすらと黄色い一本の筋が走っていた。\n 羞恥に顔が火照るのを感じる。\n ちゃ、ちゃんと拭けてなかった!?\n\n「お姉ちゃんに教えて? これは、なぁに?」\n「ひっ!? うぅ……」\n\n 少し声が冷たい感じがする。\n 普段発しない温度の声色だ。\n 何だか底冷えする様な温度にブルリッと体が震える。\n 呆れられた。\n そう思うと何だか今目の前のアテナ姉様がどんな顔をして僕の事を見ているのか怖くて見る事が出来ない。\n ギュッと目を瞑り、俯いてしまった。\n 一人で出来ると張り切り、自信満々だったはずがこの失態だ。\n\n「教えてくれないの?」\n「ぅ……お、おしっこ、です……」\n「誰の?」\n「ぼ、僕の、おしっこ、です……」\n\n そう告げた途端にボフッと音を立てて湯気が出たかのように顔が火照る。\n 恥ずかしすぎる……\n 穴があったら入りたいっ。\n 思わずサッと無意識の内に両手で顔を隠した。\n\n 次の瞬間、ギュッと僕は抱きしめられていた。\n フワッと鼻孔を擽る嗅ぎ慣れたアテナ姉様の匂いが僕を包み、少しだけ安堵した。\n そして優しく、ゆっくりと慈しむ様に僕の頭を撫でてくれた。\n\n「んー! よく頑張ったねぇ。クレアはホントに頑張り屋さんでお姉ちゃんは鼻が高いよー。もうちょっとだったのに、惜しかったね。でももう殆ど出来てるじゃない。心配しないで、出来る様になるまでお姉ちゃんがちゃんと面倒見てあげるから。またチェックもしてあげる。ね?」\n「は、はぃ……」\n\n 消え入りそうな声で返事をする。\n 良かった。呆れられては居ない様子だ。\n でもさっきの底冷えする様な冷たい声色は何だったのか、そう考えるとゾクリとした悪寒が走る。\n 果たしてこの優しい言葉をかけてくれる姉は今、どんな顔をして僕を見ているのか……\n\n 恐る恐る、顔を隠していた両手の指を開き、チラリと姉様を窺う。\n すると丁度姉様と目が合い、その表情を窺い知る事が出来た。\n 慈愛に満ちたかのような優しい微笑みだ。\n 僕はホッと胸を撫で下し、未だ僕の頭を撫で付ける優しい手つきに甘い安心感を覚えた。\n どうやらまだ僕には早かった様だ。\n もっと頑張ろう。\n そう素直に思えるようになるまで時間はかからなかった。\n\n「よしよし……じゃぁお姉ちゃんがキレイキレイしてあげるからね? ほら、足ちょっと開くよ?」\n「はぃ、お願いします……」\n「いい? クレア。お姉ちゃんの時以外の時に練習するんだよぉ?」\n「え? えっと……」\n「大丈夫だよー。ちゃんとチェックはしてあげるから、ね? ほら、私の知らないうちに出来る様になって、お姉ちゃんを驚かせてよ、ね?」\n「は、はい。わかりました」\n\n まぁ確かに今日は少し失望させてしまったかもしれない。\n 昨日の今日で直ぐにまたチェックしてもらうとなるとそれは虫が良すぎるし、そこまで僕は恥知らずでは無い。\n ちゃんと練習して出来る様になったと自信がついた時にまたチェックして貰えばいいか。\n\n こうして今日の僕の挑戦は散々な結果で終わってしまったのだった。\n もっと頑張ろう。"} |
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