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{"novel_id": "n0008gd", "chapter": 8, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0008gd/8/", "title": "2-2", "content": " ☆アンジュ(とある新入生)☆\n\n 今日から私はここ、フレイア女学園に通う事になった新入生だ。\n 正直滅茶苦茶緊張している。\n 私の家は名誉貴族という立場で、父が戦場で武功を上げ、一世代のみ貴族を名乗る事を許された所謂成り上がりというやつだ。\n 必然的に私も貴族の令嬢という立場になったのだが、父が亡くなれば平民に戻ってしまうという微妙な立場でもある。\n それでもここ、フレイア女学園に通えるのは自分にとってもかなりプラスになるのでこの話が来た時は二つ返事で飛びついた。\n 現在国に存在する騎士団の内、二つは女性のみで編成された騎士団でそこに入る事さえ出来ればエリート街道まっしぐら。平民に急に戻ってしまったとしても問題無い。\n それがかなわなくともここの卒業生という箔があれば就職先ぐらいは何とか見つかるだろう。\n という事で私は勉学と鍛錬に励み、いい成績を持ってこの学園を卒業するという人生の目標があるのだ。\n\n 十分に気合いを入れて、いざ出陣と女学園に併設された寮を出て、校門近くまで辿り着いた所で少し人だかりが出来ている為に足を止めざるを得なかった。\n 校門から数十メートルに及んで並ぶ馬車の列にほえーと間抜けな感じで目をやり、今現在校門前に止まっている一際豪奢な馬車に目が引き寄せられる。\n\n 流石貴族の通う学校だ。\n 田舎の領地から出て来た私にとっては見るモノ全てが新鮮だ。\n\n 未だ人だかりが進む気配を見せないのでぼーっとその人だかりが見つめる先、豪奢な馬車を眺めていると、上品な老紳士然とした御者に手を引かれて中から出て来たのは物語に出てくるかのような見た事も無い美少女だった。\n ウェーブが掛かった金髪はキラキラと朝の日を反射して輝き、目鼻立ちの整ったその美貌はとても同い年の子供には見えない。\n 同じ制服を身に着けている筈なのに着る人が違うとこうまで上品に、オシャレに見えるモノなのだろうか。\n\n「あ、あれってジュリアナ王女殿下だよね?」\n「わー、話には聞いてたけど凄く奇麗だね」\n\n ひそひそと話す声が周りから聞こえて来た。\n どうやら王女殿下らしい。\n そういえば、同級生として王女殿下が同じ学園に通う事になるって言ってたっけと父の言葉を思い出した。\n 見た目通りどうやら雲の上の存在らしい彼女に暫し見惚れ、此方の騒めきには目もくれずに颯爽と歩いて行くその後ろ姿を見送った。\n\n 未だ進まない人だかりに少し億劫になって来た私は少しだけ前に進み、何とか入学式の会場まで向かおうとしたのだが……\n 続いて校門の前で止まった馬車から降りて来た女の子に目を奪われた。\n\n 何とか人の間を縫って前に出た所で少しの騒めき。\n チラリと其方を見ると茶色の髪をショートカットにした美少年の様な女の子が目に入った。\n スカートを履いて居なければ間違える程だ。\n 続いて降りて来たのは赤い髪の美少女に抱かれた黒髪の美少女。\n いや、美少女なんてモノじゃない。\n\n まるで作り物めいた美しさと言えばいいのか、人形の様に可愛らしく美しい小柄な女の子だった。\n 陶器の様な白い肌に、まるで光を吸いつくして煌く艶やかな黒髪。\n そして恐ろしい程に整った容姿は本当に人形の様だった。\n 息を呑む。\n その女の子が登場したと同時に耳に痛い程の沈黙が場を包み、ゴクリと唾を呑んだ音がやけに響いた気がした。\n そして次の瞬間、見たことの無い黒い椅子に車輪のついた物に腰を下ろした彼女は少し照れた様に微笑み、赤髪の美少女に何か言った様子だった。\n\n その微笑みに今度はキュッと心臓を掴まれた様な気がして動悸が激しくなる。\n\n その笑顔は決して人形の笑顔ではない。\n 歳相応と言える可愛らしい笑顔だった。\n\n「可愛い……」\n\n その私の呟きが漣の様に周りに伝播するのにそう長い時間は掛からなかった。\n\n それ以上先に進めなくなった私は人だかりの最前列からその子が進んでいくのに続いた。\n ゾロゾロと行列の様になっていても誰も先に行こうとはしなかった。\n\n 少し離れているので会話はハッキリとは聞こえないが、同じ馬車から降りた事を考えると恐らく三人は姉妹だろうと何となく解る。\n 少し進んだ所で男装をした美少年然とした先輩と話をしているのを少し眺めていたのだが、そこでも彼女は表情豊かに四人で談笑していた。\n そういえばあの椅子はどうやら誰かが押してあげないといけない様子だ。\n ひょっとして、足が不自由なのかな……\n\n それにしても、慌てた様な顔に少し困った様な顔、そのどれもが愛らしくて可愛い。\n そしてトドメにお姉さん二人になんと、き、キスされて顔を真っ赤にして照れた顔を見せた時は少し鼻の奥が痛くなった気がする。\n\n 大丈夫? 鼻血出てないよね?\n\n あぁ、願わくば同じクラスになれますようにっ!\n 友達になりたいとは言わない! せめて同じ教室で眺めていたい!\n 今日ほど熱心に神様に祈った事等ないだろう。\n\n そして現在。\n 私の願いが神に通じた!\n 今期に入学した新入生は全部で六〇人で二〇人ずつ、計三クラスに分かれている。\n 私はBクラスで、なんと彼女も同じクラス!\n しかも今隣に座っている!\n\n 何だか舞い上がってしまって式の話、在校生挨拶やら新入生挨拶やら全く以て頭に入ってこなかった。\n\n ソワソワと落ち着かない気持ちでチラチラと隣の彼女を覗き見ている間にどうやら式が終わってしまったらしい。\n これから教室に移動して、説明会が終われば今日の学園は終わりだ。\n 何だか酷く短い様に感じてしまう。\n もうちょっと彼女を見ていたかったのだけど……\n と、少し億劫な気持ちになりながら席を立った所で声が掛かった。\n\n「あ、あの……」\n「ひゃっ、はいっ!?」\n\n 急に掛けられた可愛らしい声にビクつき、少し声が裏返ってしまった。\n 誰だ?\n と思ったら彼女だった!\n あわわわわ、どうしよう! どうすれば!?\n\n「す、すいません。急に声をかけてしまって……」\n「いいいいいえ! 大丈夫です! 大丈夫……えっと、ど、どうかしました?」\n\n 努めて、努めて冷静になるのよ……\n\n「その、これから教室に移動するのですよね?」\n「は、はい、そうですよ?」\n「ええっと、それで、もしよろしければ、一緒に連れて行ってほしいのですけど……」\n「え? えぇっと、勿論構いませんけど……」\n「よかったっ! ありがとうございます!」\n\n あ、そうかとここでようやっとピンときた。\n 彼女は足が不自由な様子なので私が彼女の椅子を押してあげればいいのかと。\n これは役得かもしれない!\n これで少しだけ仲良くなれるかもっ!\n\n「あ、そういえばすいません。申し遅れましたが、僕はクレア・ジルニクスと申します。貴女のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」\n「は、はい! 私はアンジュ・レンダイトと申します!」\n「アンジュ、さんですね。よろしくお願いします」\n「そんなさんづけしなくてもっ! 私なんかアンジュでいいですからっ!」\n「では僕の事もクレアと呼んでください」\n「ええぇっと! それは……」\n\n 嬉しい申し出だが畏れ多いっ!\n そ、それに、ジルニクスって確か侯爵様じゃないの!?\n 等とアタフタして居る所で誰かが此方に近づいてきて、声をかけられた。\n\n「クレア! ……どうしよう。教室が違うんだけど、先生に言って私が先に教室まで送ろうか?」\n「レオナ姉様、いえ、大丈夫です。さっきお友達が出来まして、アンジュが教室まで連れて行ってくれる事になったので……」\n「ふぇっ!?」\n「そうなの……?」\n「はい」\n\n お、お、お、お友達だとうっ!?\n い、いいのかな? 私にこんな幸運な事が起こるなんて、神様一体どうしちゃったの?\n 出血大サービスなの?\n\n「ふーん、じゃぁ、クレアをお願いできるかな? アンジュさん?」\n「ひゃっ! ひゃいっ! クレアさんは任せて下さいっ!」\n「……お願いします」\n\n あれ、ちょっとジト目で見られてる。\n 呼び捨てにしなかったから?\n あ、でもそんな顔も可愛い……\n\n「じゃぁまた後で」\n「はい、レオナ姉様」\n\n ううん。ほんとに呼び捨てにしなきゃダメなのかな?\n お友達と言って貰えてうれしいけど流石にちょっと馴れ馴れしすぎる様な……\n でも本人が良いって言ってるんだし……\n ええいっ! 母さんも言ってた! 女は度胸っ!\n\n「えっと、じゃぁ、行きますか? く、クレア?」\n「ふふっ、はい。よろしくお願いします、アンジュ」\n\n うえーん。可愛いよー。\n\n さて、続いてやってきました。\n 階段です!\n そう言えば一年の教室って二階じゃん!\n これはどうすれば?\n はっ!\n そう言えば馬車の階段を降りる時、クレアのお姉さんが確かお姫様抱っこをしていたのを思い出した。\n うわっ! ハードル高いっ! でも役得!\n どどどどどうしよう。\n\n「え、ええっと、二階なのですか?」\n「は、はい。ど、どうしましょう、か?」\n「うーん……誰か先生でも、呼んで運んでいただきましょうか……」\n\n そんな!\n 目の前に! 友達! 友達が居るよ!?\n アピール! そうだ! アピールしないとっ!\n\n「よ、よければ! 私が運びますっ!」\n「え? そ、それは流石に悪い様な……」\n「大丈夫ですっ! こう見えて身体強化の魔術が使えるのでっ!」\n「ええっと、そ、それではお願いしても良いですか?」\n「わっ! 任せて下さいっ!」\n\n 言ってみるもんだなぁ。\n やったー。\n では早速……\n っと、身体強化の魔術はオッケー。\n よし、いざ!\n と、少し前かがみになったところで慣れた感じで私の首にクレアの両手が回る。\n 近い近い近いっ。\n 良い匂いがする。\n\n なんて変態みたいな事を考えてないでささっと持ち上げないとっ。\n\n ふわっ、軽っ!\n ナニコレ羽?\n 体、柔らか……\n\n「んぅっ……」\n「わっ、ごめん! どこか痛かった?」\n「い、いえっ! その、そうでは無くて……」\n\n 何か妖しい声が出たので慌てて首に掴まるクレアの方を見ると目と鼻の先にクレアの顔があった。\n まつ毛長っ、金色の奇麗な瞳に吸い込まれそう。\n 少し顔が火照って赤い気がする。\n 私の顔も間違いなく赤いだろう。\n ちょっと暑いくらいだし。\n それにしても何処も彼処も柔らかくて、ずっと触っていたくなる様な……\n\n「んっ……と、アンジュ、少しだけ手を膝のほうに、ずらして……」\n「ふぇ?」\n\n 手をずらす……\n うぉわっ!?\n わわわわっ! 私の手、クレアのお尻にっ!\n 慌てて膝の方にずらす!\n\n「ごご、ごめんなさいっ!? 慣れてなくてっ!」\n「い、いえ! 大丈夫ですから! あ、ありがとうございます、アンジュ」\n\n 何かバランス悪いと思った……\n ようやく安定した。\n 決してワザとじゃない!\n でも柔らかかったな……じゃなくてっ!\n 膝の後ろに回した手が少し汗ばんでる気がしてちょと恥ずかしい。\n 柔らかさはちょっと無くなったけど、その分クレアの素肌に直に触れて……\n\n「すいません、えっと、この車椅子を階段の上まで運んでいただけますか?」\n「え? ああー! うん! 勿論いいよ! まっ、任せてっ!」\n\n 何か邪まな事を考えている間に話が進んでいく。\n 私が気を回すべきだったかも。\n 近くにいた同じクラスの女の子が横にあった車椅子?と言う名前の椅子を階段の上に運んでくれた。\n\n よし、いざ、出陣。\n\n ゆっくりと階段を昇っていく。\n それにしてもこのお姫様抱っこって、密着度ヤバイ……\n 心臓がどきどきと早鐘の様に鳴っているのが解る。\n 聞こえているかもしれないと思うと恥ずかしいがこの役得、最後まで勤め上げねば。\n\n「お、重くないですか?」\n「へっ? ぜ、全然平気ですよ! ホントに! 羽みたいに軽いぐらいです!」\n\n 少し顔を赤くして可愛い事を聞いて来るクレアに自然と頬が緩む。\n 今日は人生で最良の日かもしれない。\n 周りに一緒に教室へ向かう女の子達の目が羨ましいと暗に語っている様で、少し優越感。\n\n「じゃぁ降ろしますよ?」\n「はい」\n\n 酷く短い楽園だった。\n\n「アンジュ、ありがとうございます」\n「っ!! ど、どういたしまして!」\n\n 可愛い微笑みでお礼を言ってくれるクレアの顔に一気に顔が熱くなる。\n そうだ、これは何も一度限りの事では無い。\n この学園に通う限り、数限りなくチャンスがあるのだ。\n\n「い、いつでも私が手伝いますからね? 何でも! 私に言ってくださいね? クレア」\n「え? は、はい、では、お願いします」\n「う、うん!」\n\n やった!\n 私の学園生活に薔薇色の楽園が約束された瞬間であった。\n 私は彼女の友達になれたのだ!\n こんなに可愛いクレアが私を頼って、あ、甘えてくれるかも?\n\n そして軽い足取りで教室へと向かい、明日からの学園生活の説明を受ける事数十分。\n いざ帰宅時間となって張り切った私の気持ちは空振りに終わったのだが、クレアを迎えに来たレオナさんと一緒に校門までご一緒する事は出来た。\n 階段ではお姫様抱っこをレオナさんに取られてしまったが、明日からは教室の移動等もあるのだ。\n チャンスはこれから先幾らでもある!\n\n クレアとレオナさん、帰る前に紹介してもらったアテナさんとに手を振ってその日はお別れとなった。\n\n 一人帰路につき、寮の部屋でベッドにダイブする。\n\n ふと自分の手に視線が行き、クレアの柔らかさを思い出してしまった私は一人ベッドの上で身悶えるのだった……"}

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