| {"novel_id": "n0008jp", "chapter": 17, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0008jp/17/", "title": "17.ピロートークと、それから", "content": "「僕たちの関係のことで、言いたいことがあるんだけど」\n「……うん」\n\n ギシ……と僕たちが身じろぎをするとベッドのスプリングが軋んだ。\n\n 僕たちは対面座位でのセックスを終えた直後で、けれどもまだ繋がっていた。僕のモノはいまだに萎えていなくて、悠里の中で杭みたいに大きくなっていた。だから悠里はあえてソレを抜こうともせず、僕の腰の上に乗っかってこちらの首の後ろに両腕を回している状態だった。\n\n 時間としては今は夕方で、カーテンの閉め切られた窓の向こうでは日が沈んでいっているタイミングだった。だから徐々に部屋の中は暗くなり始めていたけれど、それでも僕たちはただ見つめ合っていた。\n\n 表情の読めない悠里の目が至近距離に見えていて、その目がこちらの心情を伺うような色をたたえているのがはっきりと見えている。\n\n「僕は悠里のことが好きだけど……異性として好きだけど、悠里は僕のことが好き?」と僕は単刀直入に尋ねてみた。\n\n「好き」と悠里はシンプルに答えた。\n\n「いつから好き?」\n「……おしえてあげない。でも、昔から」\n「そっか。じゃあ僕と同じだ」\n「……ん」\n\n ここまでは知っていた。悠里の口からそう聞いていたし、お風呂場や、先ほどセックスしているときにも確認できていた。\n\n まだ話していないのは『これから』のことだ。\n\n 僕と悠里は両思いである。言い換えれば相思相愛で、しかし今はまだただの幼馴染の延長でしかない。だって僕たちはまだ好意を伝え合っただけで約束をしていない。関係性を改めるような約束を。それが終わるまでは僕たちはただの幼馴染だろう。\n\n だから僕は悠里の目を見た。\n\n「じゃあさ、僕のことを一生好きでいてくれない?」\n「……? うん」\n「あ、つまり、死ぬまで一緒に居よう、結婚してください、みたいな意味だけど……えっと、そういう覚悟をもって、僕の恋人になってほしいと言いますか……」\n「……? うん、最初からそのつもり」\n「え、あ、そう……?」\n「うん」\n「えーっと……つまり、僕と付き合ってくれる、みたいな感じ?」\n「うん」\n\n 決死の覚悟で僕は告白をした。\n\n したのだけれど、悠里はごく当たり前のような表情をしていた。彼女は僕の首に腕を回したままジッとこちらの顔を眺めている。ほんの少しだけ目が笑っているのと、彼女の膣部がぎゅーっ♡と収縮していること以外はいつもと変わらない感じだった。\n\n かなり思い切って告白をしたつもりだったのだけれど、悠里の方ではそのあたりの覚悟はどうやらとっくに決まっていたらしい。何を今更、ということなのかもしれない。\n\n「上手に告白できて、えらい」\n「う……悠里、それ、バカにしてるだろ……」\n「してない、してない。わたしそんなに上手に好きって言えないもん。わたしより上手」\n「なんじゃそりゃ……」\n「んー……」\n\n こちらが困惑──というか呆然としていると、悠里はスッと目を閉じた。そしてやや上を向くような角度でこちらに唇を突き出した。\n\n その唇はかすかに開いていて、その奥で小さく舌が見えている。その舌は、赤い。それは明らかにキス待ちの顔だった。\n\n 悠里はその表情のまま小さな声で言う。\n\n「わたしは言葉で話すのが苦手だから……あなたが告白してくれて嬉しいというのを態度で表すことにする。んー……♡って」\n「えっと、キスしたいってこと……?」\n「キスしてほしい、ってこと」\n\n そう言われてしまっては返す言葉もない。\n\n だから僕はもう黙って彼女の唇に自分の唇を重ねた。先端でちょん、ちょんとつついて、鼻同士がぶつからないように角度をずらしながら深いキスをしていく。\n\n すると悠里の腕がこちらの背中と後頭部を支えるように移動していって、同時に彼女の中が嬉しそうに、きゅーっ♡と収縮をする。それが嬉しくて僕もまた彼女の背中と腰を抱くと、悠里は「ん、んんー……♡」と幸せそうに喉を鳴らす。\n\n 確かに悠里は全身で『好き』を表現していた。\n\n 唇が離れて、今度は額を重ねて見つめ合うと悠里はこう尋ねてくる。\n\n「今、心の中でなんて言ったか伝わった……?」\n「……たぶん」\n「んふー……♡」\n\n こちらが頷くと、悠里はスッと目を細めた。笑っているらしい。\n\n そして、いきなり、繋がったまま後ろへ倒れていく。\n\n「──あッ」\n\n と慌てて彼女の背中を支え、スッとベッドに軟着陸させる。\n\n 必然的に正常位の形になった。まだ硬いままの僕のモノを膣内に受け入れた状態で、悠里はこちらを見上げて両腕をこちらに差しのばしている。\n\n「睦月……思いっきり、抱いて」\n\n 悠里はそう言って目を細めた。\n\n そうして求められてしまっては僕には返す言葉もなくなってしまう。だって僕は悠里のことが好きで、悠里も僕のことを好きでいてくれて、こうして全身で僕のことを求めてきてくれているのだ。\n\n 結局、僕たちに必要だったのは『好き』と告げるだけの一歩を踏み出す勇気だったのだろう。\n\n そしてその一歩を踏み出したあとは、もう恋人同士としての関係性が待ち受けているのだった。\n\n\n──だから、このあとめちゃくちゃセックスした。\n\n\n◇◇◇\n\n\n「あれ……珍しい。睦月くんと悠里ちゃんが並んで歩いてる……」\n\n 睦月と悠里がセックスをして、正式に恋仲となった日の翌朝。ふたりのクラスメイトである与木遥奈は通学路で彼らの姿を見かけた。\n\n 彼らは並んで同じ歩幅で歩いていた。\n\n べつに手を繋いだり、腕を組んでいるわけではない。ただ隣り合ってゆっくりと歩いているだけだ。けれども、そのふたりの距離が普段よりも半歩近いことに遥奈は気が付いた。\n\n なんというか、腰の位置が近い気がするのだ。そして時折見つめ合って互いにスッと目を細め、とくに会話をすることもなく歩いている。\n\n「むむむ……っ」と遥奈は腕を組み、人さし指を自分の顎に当てながら唸った。\n\n 彼らの態度が前日までと異なっていることを感じ取ったのだ。彼らは昨日までは決して並んで歩かなかった。一緒に歩くときもどちらかが一歩分だけ前を歩いていたし、こんな風な和やかな雰囲気はなかった。もうすこし緊張感というか、張り詰めた感じがあったのだ。\n\n その緊張感が消えている。今はただ穏やかな朝の男女といった感じだ。そこにはギスギスした感じはまったくなかった。\n\n「これはいわゆる、ヤッた……ってこと?」\n\n そう思ってふたりを眺めれば、確かにそう見える。べつに着衣が乱れていたり顔が発情したりしているわけではないが、やや背の高い睦月が小柄な悠里の歩幅を気遣うその様子が完全に番いのそれだったのだ。\n\n なるほど、と遥奈は思う。\n\n クラスメイトである遥奈の目から見てもふたりはずっと両思いだった。当人たち──特に睦月の側は腐れ縁の幼馴染でしかない、ほとんど家族のようなものだと強弁していたが、しかし互いが互いを意識しているのは誰の目にも明らかだった。\n\n けれどふたりの関係がそれ以上進展する様子は見られず、傍で見ている遥奈は非常にやきもきしたものだった。\n\n 与木遥奈は恋をしている。\n\n 恋をしている相手は遥奈の実の兄で、だから彼女の恋が実る可能性はない。そのことは遥奈自身も諦めている。近親での成立はハードルが高すぎるのだ。\n\n けれども、だからこそ、遥奈はこの睦月と悠里がつかず離れずの距離にいることに対して放っておけない感情を抱いていた。\n\n 睦月と悠里は三歳のころから続く腐れ縁の幼馴染だ。ほとんど家族のようなものだといっても血は繋がっていないし、家族ではない。仮に睦月と悠里が結婚をしたとしてもソレを咎める者はだれもいない。法律的にも合法である。その距離の『遠さ』が、近親に恋をしている遥奈にとってはうらやましかった。\n\n ようするに、両思いならさっさと付き合えや! という感情である。\n\n だから遥奈はふたりを煽ってくっつけようとここのところ運動をしていたのだが、それがようやく実を結んだというわけだ。\n\n「──よっしゃあ!」と遥奈は両腕でガッツポーズを取った。\n\n そして後ろ手を組んで、リズムよくステップを踏みながら睦月と悠里の前に躍り出た。\n\n「おはよっ! 睦月くんと悠里ちゃんは本当に仲が良いねっ」\n\n 遥奈がそう言うと、ふたりは一瞬だけ見つめ合って、それからすぐにかあぁ……っと顔を赤くした。実に素直な反応である。\n\n 普段ならばこのあたりで睦月が『いや、僕たちはただの腐れ縁の幼馴染で……』とか言い出すタイミングなのであるが、今日の彼はそれを言わなかった。ああ、本当にヤッたんだな、と遥奈は思う。\n\n「えっと……おふたり、何かあったのかなっ?」\n\n「いや、べつに、ただ僕たちは仲良しだっていうだけで──あ痛っ」\n\n 睦月が言いかけたところで悠里がゲシッとローキックをした。余計なことを言うな、ということなのだろう。\n\n そんな悠里の顔もまだ赤いあたり、色々な感情が透けて見えている。きっと彼が自分の『恋人』であるという事実をまだ受け止め切れていないのだろう。\n\n ほんと、ふたりとも可愛いなあ……などと遥奈は思った。\n\n だから遥奈はクスクスと笑ってふたりの顔を交互に眺め、真っ赤になっている彼らをよく観察して、それからくるっと身を翻した。\n\n「はいはい、ご馳走さまっ! 仲良きことは美しきことなのだぜっ! えへへ、じゃあ、わたしは先に行くから、睦月くん、悠里ちゃん、また学校でねっ!」\n\n そして遥奈は半ばスキップをするように朝の通学路を学校の方へ向けて駆けだしたのだった。\n\n 今日もいい一日になりそうだな、と思いながら。\n\n そんな遥奈の後ろ姿を眺めていた睦月と悠里はそのまま顔を見合わせて、お互いの唖然としている表情にクスッと笑った。\n\n「まあ、仲良きことは美しきこと、だよね」\n「んー……」\n「悠里、えっと……手とか、繋いでみませんか?」\n「うん」\n\n そうして睦月と悠里は手を繋いで、朝の通学路をのんびりと歩き始めたのだった。ふたりで並んで、ゆっくりと。"} |
Xet Storage Details
- Size:
- 12.4 kB
- Xet hash:
- 36104b4964473f98bba6030cd81e56fd13b2b587fc26cd68f10d5a70c871a596
·
Xet efficiently stores files, intelligently splitting them into unique chunks and accelerating uploads and downloads. More info.