| {"novel_id": "n0009cd", "chapter": 7, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0009cd/7/", "title": "第七話 手術室にて──手術終了", "content": "「それでは神経──陰核背神経と周辺部の末梢神経への対処に移ります。──ステファニー、どうして、そんな後ろにいるのですか? 前に出てきなさい。あなたが私の指示に従って、それをやってみなさい。まず、ここで、この装置を使って患者の末梢神経を灼きなさい」\n サンダーソン先生は、そう言ってステファニーを自分の隣に招くと、先端が超極細の針状となっている半田ごてに似た器具をやや強引に握らせる。やはり、彼女も手先が器用な方で、どうやら先生は手術実習を研修医に行わせるにあたり、それなりに人選はしているようだった。\n ほんの僅かの間、躊躇していたステファニーだったが、覚悟を決めたようにサンダーソン先生から手渡された神経焼灼器具の先端を開創器で広げられた切開部の中へ慎重に挿し込んでいく。\n「陰核背神経から分岐している末梢神経の位置を確認しなさい。──そう、そこです。周囲の組織に触れないよう慎重に……。そうです。そのような感じで、他の部分も……」\n サンダーソン先生が焼灼すべき箇所について細かく指示を与える。そして、真剣な眼差しでステファニーが器具の柄にあるスイッチを押す度に、ジーッという音がして、末梢神経の走る組織に押し当てられた先端部あたりから薄い煙が少しだけ上がるのが確認できた。\n「──そう、上手くできています。それから、ここにも当てて……。そう……」\n そのようにしてステファニーによる緻密な作業が機械的に何度も繰り返され、ついに陰核周辺部の末梢神経のすべてが焼灼され尽くされた。残されたは陰核体を経て亀頭部に繋がる主神経だけとなった。\n「素晴らしい手際でした、ステファニー。次は陰核背神経の切断です。これを安易に切断した場合、患者に神経組織を残すことになります。それは刺激を受けた場合、苦痛もしくは快楽を引き起こすことに繋がります。その症状は、患者をとても苛立たせ、精神の不安定を招くことになるかもしれません。神経組織のすべてを完全に取り除くことにより、私たちは患者が不快な状態に陥らないようにできます。少しでも神経組織を残したならば、それは患者に苦痛と挫折感を与えることになります。──さあ、ステファニー、よく観察して──先ほど、デイビッドが陰核提靱帯と血管を切り離してみせたように、あなたも陰核背神経を切り離してみなさい」\n 説明をし終えたサンダーソン先生に促されて、ステファニーは、細長い外科用鋏を右手で取り上げると、それを白っぽい神経繊維にあてがっていく。しかし、微妙に震える刃先は、いつまで経っても位置が定まらない。\n 数日前に閨を共にした相手の、そして、自分自身でも愛撫した『もの』を断ち切ることに対して、彼女は明らかに躊躇いがあるようだった。あるいは怯えていると言っても差し支えない。\n「先生、すみません。私では、うまくできそうにありません」\n 陰核の主神経から外科用鋏を引いて、ステファニーは力なく呟いた。\n「そう? わかりました。それでは、シンディー、あなたがやってみなさい」\n サンダーソン先生は、とくに怒ったふうもなく、前列から下がっていたシンディーに声をかけた。彼女は、先月、私が関係を持った相手だ。そのときも事が発覚して、こってりと油を搾られている。\n シンディーもステファニーと同様、外科用鋏を細長い繊維状組織にあてがうところまでは行えたが、その先──陰核背神経を切断するまでは至らなかった。\n「先生、私も上手く行う自信がありません」\n そのシンディーの返答に対しても、サンダーソン先生は不満の色を見せず、後方に控えている別の女性研修医を新たに指名する。\n「それでは、ジェリー、あなたがやってみなさい」\n「は…、はい、先生」\n ジェリーは、あからさまに震えた声で返事をした。\n 私は、彼女との熱い逢瀬を思い返しつつ、その性格からして、絶対にできないだろうなと、まるで他人事のように考えていた。\n「わ…、私……、で…、でき……ません……」\n 結局、やや気弱な面を持つジェリーは、外科用鋏の刃先を開いて、術部へ持っていくことさえできなかった。\n 私は、なんとなくサンダーソン先生の意図が理解できた。これは、私への処罰であると同時に、私と関係を持った女性研修医たち全員に対する踏み絵でもあるのだ。彼女たちが、私のセックスライフに対して、最終的かつ決定的な終焉をもたらす陰核背神経の切断という処置を行うことができるかどうかを見定めているのだ。\n「リズ、あなたがやってみなさい」\n サンダーソン先生は、最後に一人残った女性研修医──エリザベスを指名した。\n エリザベスとは、ずいぶん前に一度だけ寝たことがあるが、それ以後は疎遠だった。というか、医学研修が進むにつれて、彼女とはライバル関係になっていったのだ。たぶん、この研修クラスでは、私に次ぐ成績のはずだ。\n「はい、先生」\n ついにいよいよかと私は覚悟を決めた──エリザベスなら、これまでの女性研修医たちと異なり、何ら躊躇せずに陰核背神経を切断することができるだろう。\n もうすぐ、二度と見ることができなくなるだろう自分の陰核の姿を目に焼き付けておこうと、私は小型モニターの映像を注視する。それは、すでに半分以上千切れかかっていて、まさに最後の断末魔の様相を呈していた。あと、鋏をほんの二回入れるだけでお終いなのだ。\n しかし、エリザベスは、なぜかだかはわからないが、外科用鋏の切っ先をおざなりにあてがっただけで、わざとらしく悩んだような態度を見せてから、サンダーソン先生の方に振り向くと、いかにも生真面目そうに告げる。\n「先生、私が行うには若干難易度が高いようです」\n いったいエリザベスは、どういうつもりなのだろう? 彼女ほどの腕前ならできないはずはない。不信に思いながら彼女を見上げた私は、目が合った瞬間に、その心情を理解する。\n エリザベスは、私に対して負い目を持ちたくなかったのだ。これから長く続くだろう二人のライバル関係に余計な軋轢を生じさせないために、今回は身を引いたらしい──彼女は、私とサンダーソン先生の様子から、今、行われつつある事態の真相を正確に洞察しているようだった。\n そして、それはエリザベスだけでなく、他の女性研修医たち全員にも言えた。彼女たちも、この臨床実習で、私に施されている『根本的な治療』が、私が自ら望んで受けているものではなく、実際にはサンダーソン先生によってなされている処罰であることをおぼろげながら理解しかけていた。\n「わりました。あなたたちの婦人科医学研修での最終課程──臨床実習は減点対象となります」\n 四人の女性研修医たちにそう宣告したサンダーソン先生は、眼鏡をかけた小柄なゴードンの方に向き直って話しかける。\n「それではゴードン、あなたの出番です。先ほど、デイビッドがやったのように上手にやってみなさい」\n「はい、先生」\n ようやく術者としての順番が回ってきたゴードンは、嬉しそうな顔でサンダーソン先生に返事をする。そのとき、他の者に気づかれないようにして、私に意地の悪そうな笑みを向けながら片目をつぶって見せた。その笑顔には、先日、成績の件で、私に矜持を深く傷つけられたことに対する意趣返しができるという喜悦以上に、もっと大きな心情の高ぶりが隠されているように感じられた。\n それに気づいたとき、私は自分が抱いていたゴードンに対する心証が間違っていないことを確信した。彼に対して、以前よりサディスティックな性向を有しているのではないかと密かに疑っていたが、どうやら正解だったようだ。彼は、臨床実習という名目の下、公然と女性器に致命的な損傷を負わせることができる今の状況を明らかに楽しんでいた。\n サンダーソン先生もゴードンのその性癖に気づいていたからこそ、手術実習の順番を一番後回しにして、彼が私の外性器に触れることがないように気遣ってくれたたのだろう。結果的には、女性研修医たちが全員パスしてしまったため、かえって、実際に私から陰核を断ち切るという、彼にとって最も大きな楽しみを与えてしまったようだが……。\n ゴードンは外科用鉗子をおもむろに取り上げると、それで陰核を挟んで持ち上げながら、神経の繋がり具合をわざとらしく時間をかけて調べる。それから、鉗子を左手に持ち替えて右手で細長い外科用鋏を取り上げると、いかにも乱雑な感じで刃先を切断部へあてがった。その無造作な手技に対して、すかさずサンダーソン先生が注意を与える。\n「ゴードン、もっと慎重に……。そう。そこです──そこで切りなさい。僅かなりとも神経組織を残せば、それは患者にとって不幸です」\n「はい、大丈夫です」\n サンダーソン先生のその注意に、ゴードンは、一応、真面目な表情で答えてみせたが、その刃先の動きは、繊細さを微塵も感じさせない乱暴なものだった。それによって下腹部内にかすかな痛み感じた私は、改めてモニターに映しだされているそれが自分の『もの』であり、今、自分の外性器が手術されているのだということを実感した。\n「先生、切ります」\n ゴードンは、言わずもがなの台詞を口にする──サンダーソン先生に知らせるというよりは、私に聞かせるために発したものに違いない。それと同時に、彼は外科用鋏の刃を無造作に閉じていく──私は目を大きく見開いて、情け容赦なく進められる陰核切除術の最終段階を凝視し続けていた。\n そして、ついに外科用鋏の先端部が完全に閉じ合わされる──その瞬間、私は、先ほど為された陰核堤靱帯の切断よりもやや低い断裂音を聞いた気がした。同時に、モニター内では切断された神経線維が勢いよく跳ね上がる様が映しだされていた──その直後、局部麻酔をかけられていたにもかかわらず、信じられないような痛みが下腹部から背骨を貫いて脳髄を直撃した。\n「──!」\n 思わず上げそうになる悲鳴を歯を食いしばって必死に堪える。私は、体を小刻みに震わせながら、今一度、これと同じ苦痛を体験しなければならないのかと恐怖におののいていた。だが、私のそんな心内など無頓着に、あるいは、知りつつ密かに楽しんでいるのか、ゴードンは、もう片方での切断作業も粛々と進めていく。\n そして、再度、切断箇所にあてがわれた外科用鋏の刃が閉じ合わされる。その一瞬後に、再び同じ痛みが私の背中を駆け上がる──あまりの激痛に、無意識のうちに目を閉ざしてしまう。\n 性的な中枢器官を最後まで体に繋ぎ止めていた陰核背神経が二本とも断ち切られ、ついに私の陰核は完全に切除されてしまったのだ──もう二度と取り戻せないのだ。そんなふうに思うと、巨大な喪失感と底なしの絶望感が私の心に広がっていく……。\n 外性器の快楽中枢である陰核を失った私は、もう女性とのセックスではオルガズムを得ることはできないだろう。私は、決してレズビアンというわけではなく、男性ともセックスすることもできるが、どちらにしても、私のセックスライフに大きな影を落とすことは間違いない。\n 絶望感に苛まれたまま、きつく目を閉ざしている私に、サンダーソン先生が声をかける。\n「ジョージー、目を開けなさい。まだ、婦人科医学研修の最終課程は終了していません。さあ、摘出された標本をよく観察しなさい」\n 私が閉じていた瞼を震わせながら開けると、目の前には、ゴードンによって差し出された外科用鉗子があった。そして、その長い鉗子の先には、真っ赤な血に染まった芋虫のようなものがぶら下がっている。それが芋虫と違うのは、頭の部分が少しくびれていて胴体が途中から二つ分かれているあたりだ。\n それにしても大きい! 血だらけの芋虫もどきは、確かに十五センチ近い長さがあった。サンダーソン先生が言っていたとおり、子どものものなら陰茎だと言っても誰も疑わないだろう。本当にこんな大きなものが私の陰核なのだろうか?\n だが、そう思ったのもつかの間、モニター越しではなく、生でそれを見つめていた私は、なぜだか、その芋虫の頭部に親近感を覚えた。\n 私がいつも自分自身で慰めるときに触れている部分にとても酷似している──そう自覚した途端、その芋虫状をした血まみれの器官が、つい今し方まで私の股間にあったはずの『もの』だと、ようやく事実として認識できた。\n ──その直後、私の意識は急激に暗闇に閉ざされた。", "preface": "【警告】本文中には女性に対する猟奇的な虐待を克明に描写しているシーンが多々あります。人体切断(具体的には性器切除)や流血の類が苦手な方は閲覧を控えてるようにしてください。"} |
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