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{"novel_id": "n0009cd", "chapter": 8, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0009cd/8/", "title": "第八話 419号室にて──臨床実習後", "content": "「おはよう、ジョージー」\n サンダーソン先生の声に、私は驚いて目を覚ました。\n そこは、あの419号室だった。私は、その部屋の中央にある病院ベッドの上に横たわっていた。\n ──夢?\n あれは、私の強迫観念が生み出した悪夢だったのだろうか!?\n「あまりに動かないで。あれは夢ではなかったのだから。すべては現実。私は、今、あなたが混乱していることを理解しているわ。それも当然ね。あなたは自分の体から切り取られたクリトリスを間近に見た瞬間、気絶してしまったのよ」\n「そ…、それじゃ、わ…、私のあそこにはもう……?」\n 私は外性器に鈍い痛みを感じながら、これからの自分自身の人生にとって非常に重要な質問を発した。\n「ええ。あなた自身を悩ませ続けていた悪の芽は無事に摘み取られたわ。あなたには、もうクリトリスはないわ。体内にあった勃起性組織も陰核神経も、すべて完全に摘出したわ。でも、あなたの小陰唇の一部は残したわ──傷口が治れば、あなたのあそこはまだとても可愛らしく見えるはずよ。二、三日したら、あなたに手鏡を渡すわ。さしあたり今は、とても腫れあがって、青黒くなっている状態だから」\n その説明を聞いた私は、外性器──正確には陰核があったあたりの痛みが増すのを感じた。\n「それで……、その……摘出されたクリトリスは……?」\n「ここにあるわよ。私は、それをホルマリンで保存したわ──とてもよい標本よ。正直に言って、もはや、あなたの『もの』だったようには見えなくなっているけど。血液が抜けるやいなや、あなたのクリトリスは萎んでしまったわ。でも、この萎びた状態でさえ、まだ通常のものよりはずいぶんと大きいわよ」\n サンダーソン先生が黒い布袋から引っばり出したビンには、やや大きめの頭を持った芋虫のような青白い標本が封入されていた。全長が十二センチほどで、胴体の途中から二つに分かれている。確かに最後に見たときよりもずいぶんと縮んでいる感じがした。\n そして、それは透明なホルマリン液の中を本当に心地よさそうに漂っていて、何というか、とても無邪気な感じに見えた。その微笑ましい姿は、私の体から摘出された『もの』とは思えなかった。\n「……この処罰の内容を事前に聞いていたら、決して同意しませんでした」\n 私は、ぼそりと呟いた。\n「いいえ。あなたは、確かに同意したわ! あなたは、どんな処罰でも受け入ると、私に誓ったわ。そして、今回のような状況下では、とても寛大な処置だったと思うわ。いずれにしろ、選択を迫られたあなたは、最終的には、この処罰を受け入れたはずよ」\n そうだ。あの時、確かにそう思った。しかし……。\n「でも、どうして、そう言い切れるのですか!?」\n 私の睨みつけるような視線にも動ぜず、サンダーソン先生は落ちついて答えた。\n「私にはわかるわ。蛙の子は蛙──ジョージー、今、私の机の上には二つの美しい石膏標本が飾られているわ。今度、あなたが私の部屋に来たときに、その二つがどれくらい酷似しているか見比べてみるといいわ」\n「……申し訳ありません。先生のおっしゃっている意味がよくわかりません」\n 私は、サンダーソン先生が何を言っているのか本当にわからなかった。\n「今も言ったように、蛙の子は蛙──つまり、あなたのお母さまは、自ら進んで私の処罰を受け入れたわ。だから、あなたも自ら進んで、それを受け入れたに違いないわ。あなたのお母さまも、自分自身の『もの』を封入したビンを持っているわ。あなたのお母さまが、これまでのあなたと同じようなふしだらな生活を過ごしていたとしたら、今の成功があったと思って?」\n あの謹厳実直な母が陰核切除術を受けていた!? いや、受けさせられていた!! 自分が母と同じ医師の道を志しただけではなく、同じように道を踏み外しかけていたという現実、そして、母が私と同じようにサンダーソン先生によって陰核切除術を施されたという過去に、私は言いようのない衝撃を受けた。\n 驚きのあまり茫然自失となっていた私だったが、しだいに落ちつきを取り戻すと、ある方程式が見えてきた。私の母は、この苛酷な試練を乗り越えて現在の大成を勝ち得たのだ。それならば、私にも未来を掴むチャンスがあるはずだった……。\n 私は、ふと思い当たって尋ねてみた。\n「サンダーソン先生、先生も私たち母子と同じようなビンを持ってらっしゃいますか?」\n「……さあ、どうかしらね? あなたの想像に任せるわ。──ともかく、あと三日ほどは安静にしていなさい」\n エメラルドグリーンの瞳に柔らかい笑みを浮かべて、そう答えたサンダーソン先生は、机の上に大きめの封筒と私の陰核が入ったビンをそっと置くと、静かに部屋を出ていった。\n 私は股間からの鈍痛に耐えながら病院用ベッドから降りると、ゆっくりと机に近づいた。私の陰核が封入されたビンの隣に置かれた封筒を取り上げると、その中を覗いてみた──数枚の写真とペーパーが一枚入っていた。\n 袋から取り出してみると、それは摘出された陰核と定規をいろいろな方向に並べて写した医学用の記録写真で、それぞれに各部のサイズを表す数値が克明に記入されていた。そして、やや厚めのペーパーの方は公的な証明書だった。\n\n『婦人科医学研修課程修了証書\n\n                               200X年12月1日\n\n    ジョセフィーヌ・ホーカー殿\n\n ここに上記の者が聖ジョセフ病院における婦人科医学研修の全課程をレベル3Aの成績で修了したことを証明する。\n\n       聖ジョセフ病院婦人科部長 マーガレット・サンダーソン』\n\n 私は自分自身の陰核と引き替えに手にすることができた婦人科医学研修課程の修了証書を机の上にに戻すと、ビンの中身に視線を向けて、それをじっと見つめた。\n 唐突に、乳房の先端に疼きを感じて自分の胸を見下ろした。私は、それを信じることができなかった。二つの膨らみの先端を飾る乳首は固く勃起していた。自分自身の体から切り離された『もの』を眺めているだけで、私の体は性的に興奮し始めていたのだ。\n 私は、陰核が自分から切り取られたことに安堵している一方で、まだ自分が持つことができる性的な快楽があることに嬉しさを感じていた。", "afterword": " この小説は海外の femcirc fantasy(女子割礼妄想)小説を翻訳したもので、原作は今は亡き femcirc fantasy グループに投稿された Meredith 氏による、\"Making Rounds.\"です。日本と違って海外では非常に多くの femcirc fantasy 小説が書かれていますが、その中でもベスト10に入るだろうと訳者が個人的に思っている傑作中の傑作です。\n Meredith 氏は、この作品以外にもいくつの femcirc fantasy 小説を書いていますが、残念なことに femcirc fantasy 界から去ってしまっており、ここ何年も新作を執筆していません。\n 作品のタイトルについてですが、これにはずいぶんと悩みました。原題の \"Making Rounds.\" は単純に訳すと『巡回』となります。しかし、話の内容からすると、どうもしっくりしません。単語レベルでいろいろと意味をすり合わせた結果、\"Making\" を『作ること』あるいは『製作』とし、\"Rounds\" を『丸彫り(像)』とし、それを組み合わせて \"Making Rounds.\" を『彫像造型』という意味合いに取ってみました。さらに、それを内容に合わせて『石膏標本』と意訳してみました。\n なお、自分には医学的な知識はまったくありませんので、本文中の陰核を切除する手術シーンの描写や手術中の登場人物たちのセリフに関しては、けっこういい加減です──というか、ほとんど妄想の産物です(笑)"}

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