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{"novel_id": "n0009fk", "chapter": 1, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0009fk/1/", "title": "着任", "content": "「キリエ・リューガー少尉、辞令により参りました」\n ナクルガ砦の司令官室に凛とした着任の挨拶が響き渡る。\n「うむ、よく来てくれたリューガー少尉。私がこのナクルガ砦の司令官であるニック・バウゼン大佐だ」\n 司令官の椅子に座っていた壮年の男が目を細めて正面に立つ少女……少女にしか見えない少尉を観察する。\n 身長は140センチに届いていないだろう。意志の強そうな大きな瞳と短く刈られた銀の髪が彼女の実直な性格をよく表していた。特注サイズの軍服を皺ひとつなくピッチリと見に纏い、直立不動するその様は軍人ごっこをしている少女としか思えないが、これでもちゃんと士官学校を優秀な成績で卒業した成人である……と履歴書には書かれているが、それでもバウゼン大佐は自分の目が信じられなかった。\n(まさかここまで条件に合致している軍人がいるとはな……)\n その幸運に感謝しつつも、バウゼンは不動のまま指示を待つキリエに対し、仕事をこなすべく口を開く。\n「さて、君に来てもらったのは他でもない。君にしかこなせない特別な任務を任せたい、と思ったからだ」\n「特別な任務……ですか?」\n キリエの目に困惑と……期待の色が浮かぶ。真っ当な軍人ならば「君にしかできない任務」と言われれば警戒心と誇りに思う心が浮かぶのは自然な反応。その意味でキリエの反応はバウゼンには予想の範疇だった。\n「君は辞令についてどのように聞いている?」\n「新兵器のテストだと聞いておりますが……」\n「あぁ、新兵器だ。今までの常識を覆すような、な」\n そもそも表ざたにはなっていないもののこのナクルガ砦自体が「新兵器」の開発のために作られた実験施設なのだ。そしてようやくその研究成果が一つの完成を見ようとしている時……問題が生じてしまった。\n その問題を解決できる軍内では恐らく唯一の人材……それがキリエ・リューガー少尉だったのである。\n「さて、リューガー少尉。早速ですまないが決断してくれたまえ」\n「…………?」\n 突然のバウゼンの言葉にキリエの困惑の色が強くなる。\n「ここまでの話ならばまだ引き返せる。このような怪しげな任務を受けたくない、と言うならば元の駐屯地に帰って今まで通りの任務に就いてもらって結構だ。それが今後の査定に響くことはないと保証しよう。だが、ここから先を聞いた場合……君には守秘義務が生じる。この任務を受ける以外の選択肢は一切なくなるのだ」\n「…………」\n キリエがゴクリと唾を呑む。それほどまでにバウゼンの眼差しが真剣だったのだ。\n「選択するにもあまりに情報が乏しい、と思うだろうが守秘義務のない範囲で言えるのは本当にこれが限界なのだ。だが、せめて一つだけ明かそう……この任務は過酷だ。それも君の予想をはるかに上回るだろう形の過酷さだ。君がこの任務を受けるならば、我々は君にあまりに理不尽な命令を下さなければならなくなる。正直に言えば、私個人としてはここで君が断ってくれた方がまだ心情的に楽だとすら思える。それが軍人としては間違った感情だとしても、だ」\n そこでバウゼンは一つ息を吐く。\n「だからこそ、軍人としては君がこの任務を受けてくれることを願う。この過酷な任務に君が堂々と臨んでくれることを願う。祖国のために、君だけができる義務を果たしてくれることを期待している」\n バウゼンは真っ直ぐに、偽りのない感情だけを宿した視線をキリエに向ける。キリエは突然課せられたあまりに重大な選択肢にしばらく困惑していたが……ややあって頷く。\n「……承りました。キリエ・リューガー少尉、極秘任務を受領します」\n 胸に手を当て、敬礼しながら任務を引き受けるその表情は間違いなく一人の軍人そのものであった。\n「……君の覚悟はよくわかった。繰り返し確認するのは野暮だな」\n 満足げに一つ頷くとバウゼンは立ち上がる。\n「ついてきたまえ。君が関わることになる新兵器を見せよう」"}

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