| {"novel_id": "n0009fk", "chapter": 14, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0009fk/14/", "title": "罰", "content": "「よ、ようこそ皆さま……わ、私が試験機のパイロットを務めさせていただいている……キリエ・リューガー少尉で、ん、ございます……」\n「……大丈夫かね、君? どうも顔色が良くないようだが」\n 心配そうな表情を浮かべた壮年の軍人がキリエに声をかける。一方キリエはビクンと体を跳ねさせ、慌てて否定する。\n「い、いえ! 大丈夫です! どうかお気になさらず!」\n キリエは慌てて手をブンブンと振って取り繕う。\n「こ、こちらにどうぞ……実際に動かしているところをご覧いただきます」\n 精一杯の笑顔を浮かべて高位軍人を案内しながらも、キリエの頭の中はこんな状況へと追いやった連中への呪詛でいっぱいだった。\n\n ◆ ◆ ◆ ◆ ◆\n\n「というわけで、敗北したキリエちゃんには罰として数日後にあるお偉いさんの視察の案内係を担当してもらいます」\n「……は? それだけですか?」\n 屈辱の壁尻訓練は当然のようにキリエの敗北に終わった。もはやそこに言い訳するつもりは微塵もなく、大人しく罰ゲームの宣告を待っていたキリエに告げられたのは、思ったよりは遥かに穏当なものだった。\n「てっきりそのお偉いさんたちの相手でもしろと言われるかと思いましたが」\n「君がそれを望むなら我々もやぶさかではないが」\n「いえ! 全く望んでいません!」\n 思わずポロリと零した言葉が舌禍に繋がりそうなことを察してキリエは慌てて否定する。どうも自分自身、だいぶ感覚がこの連中に毒されてきたな、と内心危惧するキリエであった。\n「というか、詳しい操縦方法はいまだに上の方には誤魔化しているのよね。流石にこんなもん真面目に上申したら激怒されそうな気もするし」\n「……その懸念は正確だと思います」\n 軍の上層部というのは、基本的に慣例を守らせることが仕事であり、破らせることは仕事ではない。別にそれがダメというわけではなく、むしろそういう平時の運営がキチンとできてなければ緊急時に対応できないのも道理ではあるのだろうが、この砦で行われている破天荒な研究が真面目に認められる可能性は限りなく低いだろう。\n「だが、流石に誤魔化し続けるのも無理が出てきたのでな、実際に動いている場面を見せないことには上からの風当たりもだいぶ厳しくなってきたらしい」\n タークが続ける。どうもバウゼンがその辺りの折衝を担当しているようだが、多分キリエにわかる数十倍の苦労をしているに違いない。\n「実際のコクピットの中身は適当に誤魔化すにしても、動いているところを見せれば満足するでしょ。もう実戦投入も考えられるところまで来ています、って言い張れるところまで来ているのは事実なんだし」\n「所詮専門家ではない連中だ。要は使えるか使えないかだけが問題で、細かいところはそこまで気にはしないだろう」\n どこかしら上層部に対するあざけりが含まれるような口ぶりにキリエは少し不安になるが、まぁその辺りはこの二人は色々な意味で「手練れ」そうなので、任せて大丈夫だろう。自分は案内係を任されたならそれに専念するだけである。\n「で、まぁそれだけじゃ罰にはならないので」\n しかし、もちろんそれだけで終わるわけがないのがこの二人だった。マインがどこからか浣腸液が詰まった浣腸器を取り出し、キリエは青ざめる。それをどうするのかがわかった……わかるようにされてしまった自分がもの悲しい。\n「キリエちゃんには、この特製浣腸をたっぷりお腹に入れたまま案内してもらいます」\n「……バレたらどうなると思っているんですか?」\n「まぁものすごく怒られるでしょうね。下手したらプロジェクト中止とかもあるかも」\n「だからこそ緊張感を養う訓練になるだろう?」\n「…………」\n「頑張ってね、全てはキリエちゃんの肛門括約筋にかかっている!」\n「…………」\n\n ◆ ◆ ◆ ◆ ◆\n\n 回想を終えたところで、キリエの腸内で荒れ狂う浣腸液の奔流は消えてなくなったりはしなかった。一歩一歩、高位軍人たちを案内して地下への階段を降りる度に苦痛と快楽が交互にキリエに襲い掛かる。\n 背後から心配そうな視線が突き刺さるのを感じるが、ここで転んだりしたら全てが台無しである。今はとにかく失態だけは犯さないようそれだけしか考えられなかった。\n「こ、こちらです……」\n ようやく慣れ親しんだ地下の格納庫にたどり着いた時、キリエはホッと一息吐いた。少なくともここまで来ればお偉いさんたちの興味の対象は新兵器の方に移るだろう。\n「おぉ、これが……」\n「噂には聞いていたが、実際に完成していたとはな」\n 予想通り直立不動で立つ赤い機体……既にリーシャが乗り込んでいるそれに、彼らの視線は一斉に集まる。\n「それでは、実際に動いているところをご覧いただきます」\n ここまで来れば無理に動くこともない。キリエが軽く手を挙げてサインを示すと、赤い巨人が大きく一歩踏み出す。\n ズン、と今まで経験したことがないだろう地響きが軍人たちの間を走り、彼らが一斉に硬直し、直後に軽く一歩後ずさった。\n(まぁ無理もないだろうけど……)\n 話に聞くのと目で見て体験するのとではレベルが違う。7メートルはある巨人が動いているところを目の当たりにすれば、ショックを受けても仕方あるまい。\n 自分があれを動かせるのだ、という優越感を抱きながら高位軍人たちを眺めていると落ち着きを取り戻したのか彼らの一人がクルリと振り返る。\n「……それで、実戦投入はいつ頃できるのだね?」\n「はい。おおよそ半年後程度をめどに量産と部隊編成を進めていく方針です」\n 細かい技術的なところはともかくとして、この程度の想定された質問は事前にシミュレーション済みである。というかこの程度答えられなければ案内役の意味がない。\n「一機当たりの予算はどの程度を考えている? パイロットの養成期間は?」\n「それについては……」\n 実際に動く姿に興奮したのか、矢継ぎ早に質問が繰り出されていくが、いずれも想定済みだったのでキリエはよどみなく答えていく。その姿に先ほどまでの調子の悪そうな姿を忘れたのか、軍人たちは満足げに頷く。\n「……ふむ。なるほど、大体のところはわかった。それで話は変わるのだが……貴官は実際にアレを動かしているのだろう? 今まで答えてくれたのは外側の話ばかりだが……率直に動かしている当人として意見を聞かせてくれたまえ。当人としてあの兵器への感想はどうだね?」\n「それは……」\n 想定していなかった質問にここに来て初めてキリエが言いよどむ。正直に「気持ちいいです」などと答えたら変態を疑われるだけだろうし、「辛いです」などと嘘を言うのも兵器として不安を抱かせるだけだろう。\n「……困難なこともありますが、やはり全くの新しい兵器に携われるのはやりがいがあると思います。それに……私としましては、この小さな体格のコンプレックスを解消してくれるこの駆動鎧は、小さな全能感をもたらしてくれる部分もあります」\n 肝心な場所ははぐらかしながらも、結局正直に言うことにした。言ってしまってから、少し言い過ぎたかな、とキリエは思ったが高位軍人たちは何やら納得しているようなのでよしとした。\n「……なるほど、その小さな体をコンプレックスに、辛い訓練にも耐えてここまで頑張って来たのだな。私たちは貴官を尊敬するよ、貴官のような人物こそ真の軍人だ」\n「ははは……」\n 率直に褒められてかえって気恥ずかしくなるキリエだった。というかいい加減腸内の容量が限界なのでそろそろ解放して欲しかった。\n「では、もう少し専門的なところを聞かせてもらおうかな。詳しい操縦方法は……」\n「それは……」\n「そこからは私が説明させていただきます」\n じっとりと脂汗を浮かべながらも答えづらいところを答えようとしたキリエに助け船が出される。普段よりは愛想のよい笑みを浮かべたタークだった。営業スマイルなのかもしれないが、普段を知っているキリエからすると気味が悪かった。\n「少尉は少し体調が悪そうですので……こちらで休まさせていただきます。申し訳ありませんが、これで失礼させていただきます」\n さらにマインがやってきて、キリエの手を引く。少し強引すぎる気もするが、キリエからすると強引だろうがこの状況から逃れて排便できるならなんでもよかった。\n ありがたく助け船に乗せてもらうことにし、キリエは少々慌ただしく敬礼をしてマインと共にその場を後にした。\n\n ◆ ◆ ◆ ◆ ◆\n\n「全く……今回は本当に肝を冷やしましたよ。いつ漏らすのかハラハラしっぱなしでしたから」\n「アハハ、ごめーん。でも気持ち良かったでしょー?」\n「…………」\n すっかり慣れたガラス張りの便器で排泄しながら傍らで話しかけてくるキリエが顔を真っ赤にして背けたのはそれが事実だったからだ。「漏らしたら終わり」という緊張感の中で排便を堪え続けるのに背徳的な快楽があったのは間違いなかったのだ。なんだかいい加減自分の体がヤバいことになっている気がしてキリエは気が重くなる。\n ハァ、と息を吐きながら水を流してキリエが立ち上がろうとしたその時だった。\n「マズイことになったぞ、君たち」\n タークが突然やってきて声をかけてきたので、キリエは半脱ぎのズボンに足を取られて転びかけた。\n「な! 何いきなり来ているんですか! 乙女のトイレ中に!」\n「アナルセックスまでまじまじと見せつけておきながら今更隠すものでもあるまい。そんなことよりも大変なことになった、と言っているのだ」\n「……乙女のトイレを覗いてでも伝えるべき緊急事項でないと判断したら相応の措置を取らせてもらいますから」\n キリエもタークの様子から、嫌がらせで乱入してきたわけではないことを察し、話の続きを促す。\n「南東のデザン森林地帯を知っているな?」\n「はぁ、行ったことはありませんが」\n いまだ未踏の地の多い大森林である。外周部は林業で多少人の行き来もあるが、中心部だと帰って来た者もほとんどいない危険地帯だ。\n「そこに大型魔獣が集結しつつあるらしい。どうも数十年ぶりの大暴走の前兆ではないか、と軍上層部では情報を収集している。私もたった今聞かされた」\n「な……!」\n「まさか……!」\n キリエとマインは同時に絶句する。大暴走とは、魔獣が突然群れを成して大移動を始める現象である。群れの拡大に伴う引っ越しではないか、などと言われているが詳しい理由はわかっていない。\n ただ一つ確かなのは、一度大暴走が始まったらその進路上にあるものはことごとく粉砕されるだけである、ということだ。\n「今は進路を予想しつつ混乱を避けるために情報統制をしている段階だ。開拓村程度なら最悪村を放棄して住民を避難させればいいが、大都市に直撃するコースだと群れそのものを壊滅させる他はない」\n「もしや視察を急いでいたのは……」\n「……うむ。駆動鎧を魔獣の群れに当てるために投入できないかを検討していた、らしい……」\n「そして極秘のはずの大暴走の情報がここまで明かされたということは……」\n「わかっているだろう? 良い事か悪い事か、お眼鏡に適ってしまった、ということだ。その時が来れば間違いなく招集がかかるだろうな」\n ……どうやら初の実戦が否応なく迫っているようである、とキリエは覚悟を決めた。", "preface": "お久しぶりです。エロ描写薄めですが投稿します。", "afterword": "後3~4話ぐらいで完結できたらいいな、と思っています。"} |
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