Krixter/Repo / n0009fk /16.json
Krixter's picture
download
raw
14.1 kB
{"novel_id": "n0009fk", "chapter": 16, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0009fk/16/", "title": "大暴走", "content": " キリエの搭乗した白い駆動鎧がゆっくりと森の中を進んでいく。姿を隠そうという意思はまるでなく、むしろ見せつけるように、森の王者であるかのように。\n その背後からはかなり離れて魔道士やゴーレムたちが警戒に当たっている。マインとタークは流石にここまで着いてきても足手まといにしかならないため、ベースキャンプで待機している。\n そしてリーシャの赤い駆動鎧は、この一団の最後列にいるため、キリエからは見えない。\n 全体で見ると、白と赤の巨人に挟まれた長い列になったこの集団の目的はもちろん大暴走で発生した魔物たちの集団暴走を阻止することである。完全に根絶することはもちろん不可能であるし、そもそもそんなことをすればかえって森の生態バランスが崩れるため、過度に増えた分を間引きしつつ、魔物たちに恐怖心を与えて森から出ないようにする、というのが大体の目標であった。\n\n キリエは警戒心を最大限に高めつつも、気疲れを起こさない程度にリラックスするという矛盾した精神状態を保つように努力していた。……そのためには、腸内で存在感を増すディルドーが少々邪魔だったが、既にそれを自然なものとして受け入れることはできていた。\n 既にこの辺りは魔物たちの活動領域である。大暴走で活性化している現在、いつ遭遇したとしても不思議はない。\n そして、大型の魔獣と直接渡り合って足止めできるのは、2機の駆動鎧だけなのだからその責任は極めて重大だった。\n「……来ましたね」\n キリエの視線が右側の森から飛び出す影を捉える。全長3メートルほどの大きな鹿型の魔物だった。普段なら大人しい種だが、今の森の状態に興奮しているのか、巨大な闖入者に臆することもなく、警告を与える間すら惜しいといわんばかりに突っ込んでくる。\n にわかに背後の集団がざわめき出すが、キリエは落ち着いて背負った剣を抜刀する。\n 実戦用に急造された無骨な長剣である。もちろん長剣と言っても、駆動鎧の基準なので刃渡りだけで4メートルはある。\n キリエはそれを正眼に構え、一つ呼吸を置くと―\n「ふっ」\n 一閃。ただそれだけで鹿の魔物の首は断ち切られていた。\n「……恨みはありませんが、これも仕事なので」\n 自分の死も理解できずいまだに駆け出さんとピクピクと痙攣する鹿の遺体にわずかに目礼し、キリエはそのまま剣を鞘に納めると再び歩き出す。\n 正直な話、急造品である上に大きすぎてまともな手入れもできていないこの長剣の切れ味はお世辞にも良いとは言えない。しかしそのハンデを補って余りあるほどに、長剣自体の重量と駆動鎧の筋力が優れていた、ということである。無論、キリエ自身の技量もあってのことだが。\n 人一人より大きな魔物を一撃で仕留めた駆動鎧の姿に、未だにその実力を疑問視していた魔道士たちからは賞賛の声がちらほらと上がっていたが、キリエの思考は既に次の獲物に向かっていた。\n\n ◆ ◆ ◆ ◆ ◆\n\n その後もちらほらと散発的に魔物は出てきたが、いずれも駆動鎧の敵ではなく、あっという間に片付けられていく。後衛のリーシャの方がどうなっているかはよくわからなかったが、恐らくは似たような状況だろう、とキリエは推測する。\n「すいません、剣に血が付いたので清掃をお願いします」\n 何頭目かの魔物を切り倒し、いい加減べっとりと脂がついて切れ味が鈍った剣を後ろのゴーレムに手渡す。\n 慌てて魔術師たちがゴーレムに命じて剣の清掃を始め、一時小休止と言った空気になる。\n「……ん?」\n キリエの感覚がぞくり、と何か嫌なものを感じ取る。森の中から今までの魔物たちとは比べ物にならない殺気が濃密に漂ってきている。\n「大きい……伝令を! 急ぎリーシャ伍長をこちらに向かわせてください!」\n まだ清掃も半ばの剣をひったくるようにゴーレム達から受け取りながら、キリエは魔術師たちに命じる。これは単騎で相手どれる存在ではない。後ろの守りを薄くしても、リーシャの手助けがなければ厳しいだろう、と判断した。\n にわかにざわめき出し、緊急の伝令が隊列の後ろに向けて走っていく中、ややあって、気配の主が森の中からその姿を見せる。\n それは真っ黒な巨大猪だった。全長は5メートル、体高は3メートルはあるだろうか。駆動鎧と比べても、高さは乏しくても全体的な重量感は遜色ないサイズの怪物だった。\n 何頭もの外敵を屠って来ただろう大きな牙を振りかざし威嚇してくる巨大猪に、キリエは姿勢を改め腸内のディルドーの存在をより深く感じ取る。\n「ッ!」\n 突如として、巨大猪が白い巨人に向けてその牙を向けて突進を敢行してきた。\n 巨大猪が数度地面をひっかく動作を見逃していれば、キリエの駆動鎧はそのまま引き倒されて背後の魔術師たちを蹂躙することを許していただろう。だが、その予備動作から突進を予期していたキリエは剣を放り捨てて両手で猪の全力の突進を受け止める。\n「こ、の……!」\n キリエが肛門括約筋に力を込めると、金属の巨躯が軋みを上げてじりじりと猪を押し返す。しかしながら、猪の方もその全身の筋肉を震わせて不躾な乱入者を押し倒そうとより興奮も露になる。\n と、その時巨大猪の脳天めがけて鎖付きの拳が飛来してきた。\n「大丈夫ッスか、キリエ少尉!」\n 森をかき分けて、赤い駆動鎧が追い付いてきたのだった。その声の主はもちろんリーシャである。\n「助かりました!」\n 一撃で戦闘力を奪うまでは至らなかったが、それでもひるんだ巨大猪の隙を突き、剣を拾うことに成功する。そしてそのままいまだ何が起きたかわからない様子の猪の首筋に剣を振るう。\n「くっ……大人しく、しなさい!」\n 渾身の力を込めて振り切った剣はしかし、巨大猪の分厚い毛皮に阻まれて太刀傷を入れただけにとどまる。驚異的な生命力でかえって怒り狂う巨大猪に、キリエは剣を抜くこともできずじりじりと剣を推し進めること以外に何もできない。\n とはいえ、急所に傷を入れた以上、このままならば時間はかかるが間もなく仕留めきれるだろう、とキリエが踏んだその時だった。\n「もう一頭!?」\n 森の中から恐らくこの巨大猪の番と思われる別の巨大猪がその黒い影を走らせんとしていることに、キリエは気づく。そのターゲットはパートナーを今まさに仕留めようとしているキリエ……ではなく、\n「リーシャさん、危ない!」\n いまだ拳を伸ばしたままで、背負った剣にも手を伸ばせていない赤い駆動鎧だった。リーシャもまた遅まきながら自分が狙われていることに気付くも、背後に魔術師たちを抱えている以上、引くこともできず判断が遅れる。\n「ぬおおおぉぉぉぉぉぉっ!」\n せめてもの抵抗と赤い駆動鎧が片手で剣を振り切るが、その太刀筋は搭乗者の戦闘経験が浅いことを鑑みても、あまりにも弱弱しかった。魔術師たちも足止めしようとゴーレムをけしかけ、魔法の矢を放つが、当然森の王者たる巨大猪はその程度の抵抗は一顧だにせず生意気な巨人を仕留めようと全身の筋肉に力を込める。\n「リーシャさん!」\n あの不安定な体勢で本気のタックルを食らえば流石に頑丈な駆動鎧と言えど無事では済まないかもしれない。仮にリーシャは大丈夫でも、その背後から決死の抵抗を続ける魔術師たちはどうやっても犠牲になる。\n だからと言って、今現在キリエが足止めしているこの巨大猪を放置して助けに行くのは論外だった。首からは大量の血が溢れ出ているが、いまだにその瞳は闘争心を湛えており、仮にキリエが力を抜けばその身に残された最後の力で以って蹂躙しようという気概に満ち溢れていた。\n ……迷いは一瞬だった。実戦に向けて新たに増設されたコックピット内のボタンをキリエは躊躇わず押し込む。\n と、同時にキリエの腸内に差し込まれたディルドーの先端から生暖かい液体が直腸内に勢いよく注ぎ込まれ―\n「でりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」\n 教え込まれた男性の射精に合わせた絶頂感。それに合わせるように全力で剣を振り切り、一撃で巨大猪の首を余すことなく断ち切る。\n と、同時にその勢いのまま体躯を反転。今まさに走り出そうとするもう一頭の巨大猪に向けて……\n「そこだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」\n 構わず、全長4メートルの鋼の塊を投げつける。駆動鎧の桁外れの筋力に剣自体の質量が合わさった世界最大だろう投げナイフが巨大猪の分厚い頭蓋骨に容赦なく突き刺さる。\n「ありがとうございますッス、キリエ少尉!」\n 既に致命傷を負っていた巨大猪に、追撃でとどめを刺したのはリーシャだった。\n\n ◆ ◆ ◆ ◆ ◆\n\n「キリエ少尉、キリエ少尉ッ! 大丈夫ッスか!」\n 辛くも2頭の巨大猪を仕留めた直後、白い駆動鎧は突然動きを止めてしまった。たった今目の当たりにした英雄譚に興奮していた魔術師たちも心配そうだった。もちろんリーシャも自分の駆動鎧を止めて飛び降り、器用に動きを止めた白い駆動鎧を駆けあがる。まさか、とは思ったが万が一の可能性もある。コックピットを開ける手間ももどかしく、リーシャは内部をのぞき込む。\n「……ぁあ……リーシャさん……ですか……」\n 果たして息も絶え絶えながらキリエは生きていた。それに安心しながらも、リーシャは違和感に気付く。\n「これは……」\n「……すいません、あまりまじまじと見ないでください……」\n 狭いコックピットの床に黄金の水たまりがなみなみとできていたのだ。それの発生源はどう見ても……\n「はいはい! キリエ少尉は無事だったッスから! 大丈夫ッスから! 無関係な人は降りて降りて! 男連中は特に真っ先に!」\n 瞬時に状況を理解したリーシャは心配そうに白い駆動鎧の周りに集まって来た人々を追い払う。中にはコックピットをのぞき込もうとしていた者もいたのでそれは特に念入りに。\n「……ありがとうございます……」\n「……使ったんッスね、あの機能……」\n 実戦を前に、急ピッチで追加された駆動鎧の新機能……「ボタンを押すだけで特濃の媚薬がディルドーの先端から放出される」というものである。\n 快楽を感じれば感じるほどより深く繋がれる、という駆動鎧の仕組みを考えればなるほど、と思わせる機能だったが、キリエもリーシャも訓練で一度使ったっきり二度と使うものかと心に固く誓ったのだった。\n 確かに大幅に操作性は良くなるのだが、あまりの絶頂感の強さに使用してしばらくの間は通常行動すらとれなくなる完全なる諸刃の剣だったのだ。二人とも訓練で使ったその夜は直腸の疼きのあまりの強さに悶々として一睡もできなかったほどだった。\n 今現在のコックピット内の大惨事も、戦闘行為が終わり緊張感が抜けた瞬間にやってきた絶頂の深さにキリエの全身の力が抜けた結果だった。\n「……まぁ多分あれが今回の大暴走での一番の大物ッスから……後は残党狩りみたいなものになるッスから、キリエさんは動けるようになるまでここで休憩しているといいッス」\n「……はい」\n キリエはその言葉に素直に従うことにする。何よりも疲労感が半端ではなく、このまま脱力して寝てしまいそうなほどだった。\n\n\n その後も数日程掃討作戦が行われたが、やはりあの二頭の巨大猪が最大の大物だったらしく、次第に魔物たちの出現頻度は下がっていった。\n そして、作戦開始から一週間後、軍上層部は正式に大暴走の発生阻止と、それにあたって尽力した最新兵器の存在を公表したのだった。", "preface": "投降間隔空いて申し訳ありません。\n戦闘回です。", "afterword": "次回最終話です。"}

Xet Storage Details

Size:
14.1 kB
·
Xet hash:
4b54dae7e8daf73a6cf7c6533a583915dca07b7a7acba815cdcce9e26a5c6664

Xet efficiently stores files, intelligently splitting them into unique chunks and accelerating uploads and downloads. More info.