Krixter/Repo / n0010fm /46.json
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{"novel_id": "n0010fm", "chapter": 46, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0010fm/46/", "title": "45話:変わり始める雄馬", "content": "山口刑事に匿名でタレコミをすれば、もう僕にできる事はなかった\n後は警察が動いてくれる\nうまくいけば、ミキは……\n\nそれは儚い希望だとは本当は知っているんだ\nミキが失踪してから、もう3週間は経っているのだから\n横浜の倉庫にそんなに長い間人が閉じ込められていて、そこから無事に救出されるなんて事にはならないだろう事は明白だ\n\nつまり、横浜の倉庫にミキはいないと考えるのが普通なんだ\nでも、倉庫で何かの手掛かりが見つかればミキの発見に繋がるとかも知れない\n僕にできることはそんな希望を持つぐらいのことだった\n\nそして、数日、僕はミキの事で加奈子さんに何か連絡が入るのではないかと息を殺して待っていた\n当然、加奈子さんには暴力団の件や、山口警部の事など話せる訳もないので、警察から連絡がないかと聞くわけにも行かない\n\nジリジリと1週間も経った頃、僕は我慢が出来なくなって加奈子さんの様子を見に行ってしまう\nすると、外は既に暗いのに電気も付けない家の中で、加奈子さんがひとりで泣いている\n僕は、胸に湧く不吉な思いを締め出して、極力普通を装って加奈子さんに近づいて行く\n\n「雄馬君、来てくれたんだ」\n\n僕の姿を見た加奈子さんはこっそりと涙を拭き、気丈な態度で僕に話し掛けてくる\nでも、真っ赤に腫らした目が今まで加奈子さんが泣いていた事を教えてくれる\n\n「加奈子さん、電気も付けないで泣いていたでしょう、ミキの事で何かあったんですか?」\n\n失敗した、もっと良い聞き方があったのに\n僕のストレートな聞き方で無理やり泣き止んだはずの加奈子さんの目から再び涙が溢れて出し始める\n\n「ウッ、ウッ、今日ね、警察から連絡が来て横浜の倉庫で見つけた物を見て欲しいって連絡があったの\nそれで見に言ったら、色んな物の中にミキがカバンに付けていたのと同じ白いフクロウのバックチャームがあったの\nドロドロに汚れていたけど、あれはミキが付けていたのと同じだった\nそれで、この証拠からミキは見つかりますかって聞いても何も言ってくれないし……」\n\n「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ」\n\n「ねえ、雄馬君、それが見つかったのって横浜港の倉庫なんだって\n港、港だよ、どうしよう、ミキ、どこに連れていかれたの\nねえ、ねえ、どこにミキは居ると思う」\n\n「ウワアアアアアアンンン」\n\n「港、海だよ、ミキは遠い所に連れていかれたの\nそれとも、それとも、海だよ、海だよ、ねえ、海に捨てられてたらどうなっちゃうの、ねえ、ミキ、生きてるよね、ねえ、ねえ、生きてるよね、答えてよ雄馬君」\n\n肩を震わせて泣くじゃくる加奈子さんに僕が出来ることが思い浮かばない、加奈子さんが1人で苦しんでいるのに\nこんな時こその家族なのに、加奈子さんの旦那さん、ミキの父親は加奈子さんを支えようともしていない\nミキがいなくなって、加奈子さんがこんなになって、それなのに加奈子さんのご主人は単身赴任先から帰ってこないのだ\n実質的に離婚状態だと聞いていたけど、あまりに薄情だ\n\nだから僕に出来ることを考えて実行する\n僕は泣きじゃくる加奈子さんを抱きしめる\n加奈子さんの悲しみが震える体を通して伝わってくる\nただただ、僕は加奈子さんが眠りに落ちるまで抱きしめ続けた\n\n\nーーーーーーーーー\n\n\n夜中には僕は家に帰り自分の部屋にいた\n天井を見つめて考える\n僕には何も出来なかった\n\n本当か、僕には人には無い力がある\nそれを使うこともせずに、警察や大人が何かをしてくれると思っていた\nミキが居なくなってもその内に発見されると根拠も無く信じて居た\n\nその結果が今だ\nこのままでは半年後も一年後も10年後も死ぬ間際でさえ同じことを言ってそうだ\n力を持っているのに碌に使えなかったと\n\nそれで良いのか\nでも何ができるんだろう\n特に今回のように相手が広域暴力団な場合に\n\n広域暴力団に僕の力を使うのは、学生という身分に守られている中でクラスメート達に僕の力を使うのとはわけが違う\n相手が本気になれば、僕だけではなく、僕の大切な人や、その家族だって危険になるかも知れない\nそんな相手だ\nそれだけのリスクを負う覚悟が持てるのか\nそもそも、それだけのリスクを取ったとして、ミキが無事に戻れるのか\n生死さえ不明じゃないか\n\nもう遅いんだ、いやまだ間に合う\nどっちだ、どっちだ\nそれに僕に何が出来るんだ\n\nダメだ、考え込んで居ても何も進まない\n取り敢えず何ができるかもう一度僕の能力を見直してみよう\n\n色々と出来る気がしていたけど、整理すると出来ることは大きく2つにまとまってしまう\n1つ目は、他人の記憶にアクセスして内容を知る事と、内容を改ざんする事\nもう1つは肉体の一部の収奪と破棄、首にある頚椎を収奪すれば、相手を全身麻痺にだって出来るはずだ\n\n戦いという観点では、『相手を知り操る』、『相手を無力化する』の2つと言える\n\nどちらも言葉だけみれば強力な力だ\n\nでも、僕の今の練度では咄嗟に早く、正確に発動させる自信が無いので暴力団員相手の武器に出来る気がしない\nどれだけ正確に、どれだけ早く、どれだけ多く行使できるか\nこれにより、僕の力は、使えない力にも、強力な武器にでもなるはぅだ\n\nどうする、相手は暴力団だ、本気でやるなら絶対的な自信が持てるだけの訓練が必要だ\n\nそうだ訓練だ\nまずはクラスメート、信二の腰巾着を練習台にすることにしよう\nそこで、まずは1人の人間に、時間は掛かっても、正確に2つの能力をいつでも使えるようになるまで練習を重ねることにしよう\n\nその次は、フィールドに出て実地練習だ、ここは相手を慎重に選ぶ必要がある\nそして選んだ相手に対して正確に素早く力を行使する必要がある\n\n僕は覚悟を決めた\nそして次の日、授業中に信二の腰巾着だった、宏を知り、操ることに挑戦する\n宏を知ろうと能力を使うが判るのはぼんやりとした宏の感情までだった\n自分に意識を向けて居ない相手ではこの位が今の僕の限界だ\n\nでも、こんなにぼんやりした感情が判る程度では使い物にならない\n自分に強く意識を向けていないの状態の相手でも記憶を得たり、操ったりできるようになりたいのだ\n\nそれから、毎日宏を実験台にして練習を続けた\nしかし、僕の力は一向に覚醒しない\n時間だけが過ぎて行き、僕は焦る心に潰されそうになっている\n\nそんな日々の中で疲れ果てて居たのか、ある日、僕は知らないおやじと衝突してしまう\n\n「すいません、大丈夫ですか」\n\n焦った僕は、そのおやじにともかく謝る\n\n『ふざけんなよ、ガキが、前を見て歩けよ』\n\n「ああ、怪我はしてないし、大丈夫みたいだな」\n\n声に出た言葉と心の言葉、それが二重奏で聞こえる\nああ、こうすれば捕まえられるんだ、なんだ簡単な事だったんだ\nそして僕は心の声が聞こえたおやじに、ぶつかった事を忘れろと命じる\n\nするとおやじは僕がいないかのように少し片足を引きずり歩き出す\n本当は少し脚を痛めて居たようだ\n僕はおやじの脚の痛みを奪う、その瞬間、おやじは普通に歩き始める\n\n興味を引けば、心が繋がる、そうすれば相手に僕の力は使えるんだ\nどうやら、宏を相手にした訓練は意味が無かったようだ\n\n僕は、気付かされたこの力の行使の方法を、自分の体に覚えこませて、自由に扱えるように訓練に励むことにした"}

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