Krixter/Repo / n0011hp /13.json
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{"novel_id": "n0011hp", "chapter": 13, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0011hp/13/", "title": "第十二話 同郷", "content": " 木の床板がきしむ音と扉の鍵が開く音がした。\n ヒーローの凱旋だ!\n\n ガバッとベッドから起き上がり、扉を見るとヒーローではなく普通の人が入ってきた。\n 赤毛で長身でパッと見で冴えない青年。\n かつての俺より……かはマシだがモテなさそうだ。\n\n「まあ、そこまで警戒しないで……」\n シーツにくるまっている俺を見て、どうどうと手振りをされる。\n 何か恥ずかしくなって、俺はくるまっているのをなかったかのように椅子に座り、その青年に向かいの椅子をすすめた。\n 実年齢では俺のほうが圧倒的に上だ、サキュバス的には0歳だが。\n\n ふんぞり返る俺に青年は気まずそうに衝撃の事実を打ち明けた。\n「実は、昨日のヒーローは僕なんだよね……」\n「はぁ!?」\n\n 俺だってヒーローが日常でもヒーローしているとは思っていない。\n 常にヒーロー装束を着て生活しているヒーローは最早ヒーローではなく、ギャグ漫画世界の住人だ。\n 確かに背格好はあのヒーローと似ている。\n どちらもデカい。\n だが、あのヒーローの中身とは思えないほど覇気がない!\n 良く言えば覇気がない。悪くいえば、目の前の男はなよなよしていたのである。\n\n いや、ヒーローの中身がなよなよしていて、弱そうなのも、ある意味お約束というやつなのかもしれない。\n そんなことを考えながら昨日のお礼をもう一度言う。\n\n\n 冗談ではなく俺の命運はこの男にかかっているのだ。\n\n「昨日はありがとうございました」\n「いや、僕がやったことじゃなくて……あれは僕なんだけど僕じゃないんだよね……」\n もう1人の僕!?\n 青年が背負っていたリュックの中からはカビ臭い本や、紙きれなどが次々と出てくる。\n それにランタンと、何に使うのかわからないような道具、巻物と羽ペン。\n\n そして昨日つけていた黒い仮面も。\n\n 青年は慣れた手付きでランタンに火をつけると口を開いた。\n「話すと長くなるんだけど……良いかい?」\n「はい」\n 頷いた俺を見て、その青年は自らがヒーローとなった経緯を話し始めた。\n それはとても突拍子もないことで、同時に非常に聞き覚えがあるものだった。\n\n\n「この仮面は僕が10歳の時、家の倉で見つけたものなんだ。親に聞いても、馴染みの鑑定師に鑑定させても分からずじまいの代物なんだけど……これを持った時にある人の記憶が流れ込んできたんだ。別の世界で生きて、死んだ人の記憶がね。その時から人が変わったってよく言われる。そしてその人の最後の記憶は、女神に『ヒーローになりたい』って願ったものだったんだ」\n 死んだ後に願いを叶えてもらえる女神に出会い、願いを叶えてもらう。\n 聞いたことがある展開だ。\n\n というか俺と全く同じだ。\n\n「まあ、その人の記憶を受け継いだ僕もヒーローには憧れたわけで。ワクワクしながら仮面をつけたんだよ……そしたらまるで映画……こっちの人になんて説明したら良いかな。自分の行動を遠くから見ているみたいな感じ……説明が難しいな……」\n「いや、映画で伝わる。要するに君もあの女神に願って、その願いを叶えられた存在ってことか」\n「ということは?」\n「ああ、俺もそうなんだよ……って言っても俺はサキュバスの状態で荒野に放り出されたけどな」\n\n そこからの話は早かった。\n\n ヒーローになれる仮面を貰ったものの、つけてもヒーローに自身がなれる体験はできないそうだ。\n 仮面をつけると映画を見ているような感覚になり、身体が勝手に動き、助けを求めている人を救う。\n そして助け終わり、安全な状態に戻ると自分に感覚が戻ってくるらしい。\n\n\n「結局テレビの前でヒーローを応援していたあの時と何も変わらないね。誰かを助けているのは確かに僕なんだけど、それは僕じゃないんだ。まあ、僕がヒーローになれたとも思わないけど……」\n 青年は自嘲的に笑った。\n あの女神、願いは確かに叶えるらしいが叶え方は……まあ、俺を見たらわかる通りだが、意地が悪い女神らしい。\n\n\n そして逆に俺の話が終わると、青年はドン引きした顔でこちらを見ていた。\n\n「それはその……」\n「男ならわかってくれよぉー」\n「まあ、ははは」\n 引きつった笑いだ。\n 前世は恐らくリア充だったに違いない。\n\n\n「まさか地球出身の人と出会うとは……わかりました。貴方のことは僕が責任を持ちましょう。僕は……昔の名前は合わないので、今の名前でいきましょうか。僕の名前はアラン・ゴート。本業は冒険者ギルド、副業でヒーローをやっている16歳です」\n え? 若くない? と一瞬ビックリしたものの、この世界での名前と年齢であることを思い出した。\n 実際は50歳ぐらいだろう。……となると俺よりも年上?\n 今まで余裕ぶっていたが、年上として敬わないといけないかもしれない。\n 俺はこの世界の年齢なら生まれたての赤ちゃんだからな。\n\n「俺は……エミリアだ。そう呼ばれたことがある」\n 流石にこの身体でガチガチの男性名を名乗るのは違う気がした。\n 俺の名前が中性的でも、この身体に日本人名は似合わない。\n\n「じゃあ、エミリア。これからよろしくお願いします」\n「おう、よろしくな。アラン」\n 俺たちは硬く握手をかわしたのだった。\n\n そしてアランがエロエロサキュバスを前にして全く発情していないことに気づき、この子16歳で大丈夫なのかな……と内心思ったのは秘密だ。", "afterword": "ありがとうございました。"}

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