| {"novel_id": "n0011kh", "chapter": 66, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0011kh/66/", "title": "夜に墓地で死体を掘り返す勇者達", "content": " そんなやり取りを傍目で見ながら朝食を食べるのであった。まあ、俺達にとってはいつもの日常だしな……。\n そして食事も終わるとモイラは今日の行動について話し出す。\n\n「今日は貴方達に私の仕事を手伝ってもらおうかしら……」\n「何の仕事をするんだ? 錬金術師の居場所でも探りに行くのか?」\n\n 俺がそう聞くと彼女は首を横に振り答える。\n\n「いいえ違うわ……彼の居場所は私が長い年月をかけて探し出したから……」\n「え? だったら、場所は分かっているんだよな……」\n\n 彼女の目的が解らぬまま言い淀んでいると魔女は首を縦に振る。\n\n「ええ……でも、彼がいる場所は普通の人が行ける場所じゃないわ」\n\n そう言うと魔女は俺達に説明を始める。\n\n「彼の屋敷は、何処にあるか使い魔を送って判明してるの……だけど、そこに行くには特殊な結界を解かなければならないのよ」\n\n 彼女はそう言うとロザミアが手を挙げる。\n\n「その結界の中を入れる方法はあるのですか?」\n「ええ……大丈夫よ、これがあるから……」\n\n モイラがそう答えると机の上に昨日、ダークエルフ達が古エルフの結界を破った黒曜石の砂時計を置いたのである。\n\n「これを使って結界を壊すんだな……?」\n「そうよ……結界さえ破壊出来れば、後は彼の屋敷に直接乗り込むだけよ」\n\n 彼女は解説すると更に説明を続ける。\n\n「でも、結界以外にどんな罠が張り巡らしているか……。それが分からないから囮が必要よ……」\n「それで俺達が囮になるのか……?」\n\n 俺が聞くと魔女は首を横に振るのであった。\n\n「違うわ……死霊魔術を使い生ける死人を作ろうと思っている」\n「死人を作るだと!?」\n\n 驚きの声を上げると魔女は口角を上げ不気味な笑みを浮かべて答える。\n\n「そうよ……私は死霊魔術も使えるのよ。そして、彼等を盾にして罠があるかどうか確かめるの」\n\n 彼女の言葉に俺は、とんでもない奴の手下になってしまったなと後悔するのだった。\n その思いは俺だけでなくロザミアも感じたようで寝ぼけていたディアーネが一瞬にして覚醒していく。\n\n「だから、夜になったら墓場まで行って新鮮な死体を数体掘りおこしてきて頂戴……」\n「ま……待ってくれ! 俺達に墓荒らしをしろなんて……そんな事出来るわけがない!」\n\n 俺が呼び止めると彼女は立ち上がり背を向けると振り返る事はなく食堂から出て行こうとしていた。\n そして、後姿のまま彼女は低い声で呟くように言う。\n\n「これは命令よ……逆らったら、貴方達が嵌めている首輪で躾けることになるけど……」\n\n 魔女はそう言うと食堂の扉を開けて出て行ったのである。彼女の背中しか見えないが、その表情は能面の様な無表情であろうと物語っている。\n 俺達に出来る事は、嫌々ながらも命令に従い死体を用意する事であった……。\n モイラが食堂から出て行くと俺達3人は、お互いの顔を見詰めながら深いため息を吐く……。\n 憂鬱な気持ちで食堂を出て、ディアーネとロザミアと共に自分の部屋に入ると椅子に座って今後の事を考える。\n\n「さてと、どうしたものか……」\n\n 俺が頭を抱えながら考え込んでいると、対面に座ったロザミアが話し掛けて来る。\n\n「取り敢えずはモイラ様が指示した通り……墓場に行って新鮮な死体を調達しなければなりませんね……」\n「でも、墓から死体を掘り起こすなんて罰当たりもいいとこだな」\n\n 俺がそう答えると彼女は頷き同意する。そして、ディアーネが俺達の会話に割って入る。\n\n「墓場泥棒みたいな真似はしたくないけど……楯突いたら、私達の首に嵌めている首輪を絞めつけてくるからね……」\n「ああ、わかってる。下手に逆らうのはよそう……今は従うしか他にない」\n\n ディアーネに同意するとロザミアが不安そうに語り出す。\n\n「ですが、墓荒らしが見つかったら牢獄送りにされませんか?」\n\n 確かにその通りだろう……魔女の命令とは言え、墓場荒らしは重罪に違いない。\n まあ、今更悩んだところで俺達に選択肢はないのだが……。\n\n「見つかればだ……墓を掘りおこすのは夜だから見つかるリスクは低い筈だ」\n\n その答えに2人は黙って聞くのであった。そして俺は更に話を続ける。\n\n「取り敢えずは夜になるまで時間があるから、その間は英気を養おうぜ……」\n\n 俺の言葉に従い2人は頷く。そして、3人で昼まで雑談をした後はロザミアは書庫で調べ物をし、俺とディアーネは体を動かして夕方になるのであった。\n\n\n\n 夕食を食べ終わった後は魔女モイラの指示通り、レハの町の郊外にある墓場に行って新鮮な死体を調達すべく3人で夜の墓地を彷徨っている。\n 月明かりが照らす中、全員シャベルを持ちランタンを片手に歩き回り墓を掘りおこそうとしていたのである……。\n\n「でも……新しい死体なんて何処から掘り起こせばいいんだ……?」\n「掘った跡が、最近のものであれば最近埋められた墓ですよ……」\n\n 俺の疑問にロザミアが答える。確かに彼女の言う通りだ……古い死体か新しい死体かは墓の掘りかえした跡でわかる事だろう。\n\n「最近のものと思う墓を掘っておこうぜ」\n\n ランタンの灯りを頼りに最近だと思われる墓を黙々と掘り返してみると、墓の蓋が開き中から白骨化した死体が見つかったのだ。\n\n「あっ! くそっ! 埋められて時間が経った墓だったか……」\n「そうみたいね……でも、まだ新しい死体も見つかるかもしれないわ」\n\n ディアーネはそう言うと白骨化した死体をシャベルで埋め戻し始める。そして、暫くして彼女はまた新たな遺体を掘り起こすのであった。\n\n「あ! 今度は新しい死体よ!」\n\n 俺達はその遺体を墓から取り出すとランタンの明かりに照らして確認をするが、どうやら女性の遺体のようだ。\n 比較的新しい死体で所々に腐乱した跡が見受けられる。年代は中年女性の様であった。\n\n「これは、まだ新しいな……」\n「うん……この女性はまだ死んで日が浅いよ!」\n\n ディアーネはそう言うと女性の遺体を人が1人入れるぐらいの麻袋に放り込む。\n 麻袋はモイラが魔法を掛けて中に物を入れれば重量が見かけよりは軽くなるという説明だ。\n そして再び別人の墓を掘り返し始めたのである。\n 結局、3人で掘り返せれたのは2体の遺体であった。2体目は男性であり50代ぐらいと思われた。\n\n「意外と、新鮮な死体なんて見つからないな……」\n「そうですね……取り敢えず、これで十分でしょう……」\n\n 3人でそう話すと墓から遺体を掘り出し麻袋に入れ背負う。その時、墓場の入り口からランタンの灯りが見え近付いて来る足音が聞こえてきたのであった。\n\n「やばい…… 誰か来たぞ……」\n\n 俺は2人にヒソヒソ声で警戒するように促すと、ランタンの灯りを消し墓石の後ろに隠れようとしたのだが……遅かったようである。\n 人影は俺達の前に現れて逃げ道を塞いでしまったのだ。暗闇の中、現れたのは墓守の老人男性だった……。\n そして、彼はランタンの明かりを墓の上に掲げてこちらの様子を伺うのであった。\n\n「うん……? お前達、夜の墓で何をしておるのじゃ? ん……もしかして墓荒らしかの!?」\n「いや……その……違うんです!」\n「そ……そうですよ! 墓場で夜空を3人で見ていただけですよ……」\n\n 俺達は焦りながらも必死に弁明しようとするが、老人は死体が入った麻袋を見るなり大声で怒鳴りつける。\n\n「墓から死体を掘り起こすとは不届き千万!! 自警団に言いつけてやるぞい!!」\n\n 老人は叫ぶと同時に身をひるがえし、俺達の前から走り去る。\n\n「まずい……たれ込まれて捕まれば牢獄行きだ……!」\n\n 俺が逃げる老人を追いかけようとするとディアーネも一緒に追いかける。\n\n「爺さんを捕まえるわ!」\n\n 2人で慌てて老人を追いかける。一方、ロザミアは麻袋を持ったままオロオロするだけであった……。\n 年寄りが走って逃げても俺達に走りで敵う筈もなく墓地の入り口付近で足がつまずき転んだのであった。\n\n「おお――いっ!! 助けてくれぇ――!!」\n\n 転倒して喚く老人を取り押さえるとディアーネが彼の後に立ち首筋目掛けて手刀を当てたのだ。\n\n「うげっ……!」\n\n バシッと音がし老人は短く呻くと気を失う。彼女は老人の身体を肩に担ぎ上げるとロザミアの所まで戻って行く。\n\n「ディアーネ……その爺さん、どうする?」\n\n 俺が聞くとディアーネはしょうがなく答える。\n\n「取り敢えずはモイラの所まで運んで行くわ……」\n「……仕方ないな……」\n\n そして3人で各々麻袋を担ぐと、森の中の魔女の屋敷に帰るのであった……。", "afterword": "読まれた方はブックマーク、評価をよろしければお願いします。\n今後の励みやモチベーションの維持の為にもよろしくお願いします。"} |
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