| {"novel_id": "n0011mi", "chapter": 11, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0011mi/11/", "title": "謁見", "content": "3週間の船旅が終わり、商品は目的地に到着した。\nそこは日本から遠く離れた異国の地。\n乾いた空気に砂の匂いが混じるそこは世界有数の大都市として知られ、高層ビル群が建ち並ぶ近代的な街並みをしている。\nその中でも特に高い超高層ビルの最上階。\n白い高級家具が並ぶ、リビングルームの中心。\nキングサイズよりも大きな円形ベッドの上で、実里は糸の切れた人形のように四肢を投げ出して横たわっていた。\n\n「………」\n\n実里はSNSで話題になった画像や動画と同じく、青いユニフォームに短パン姿にされて、睡眠薬で眠らされていた。\n豊満な胸の膨らみがゆっくりと上下し、安らかな寝息を立てている。\n\nギィ……\n\n重厚な扉が開き、男が部屋に入ってきた。\n白い被り物と民族衣装を纏った大柄な男性。\n年齢は30代半ばほどだろうか。\n彫りの深い顔立ちに髭を蓄え、威厳ある風格を漂わせている。\n服から覗く肉体は鋼のように鍛えられており、見る者に圧倒的な存在感を与える。\n彼こそが“組織“に依頼して、実里を買い取った人物だ。\n名前はムハドゥル。\n彼は所謂石油王として君臨し、莫大な富と権力を有していた。\nムハドゥルはベッドに近づくと、裸の女を一瞥し、満足げに鼻を鳴らした。\n\n『起きなさい』\n\nムハドゥルは女の頬を軽く叩きながら、日本語でも英語でもない言語で命令した。\n\n「…ん……っ…」\n\n実里はピクリと身体を震わせてゆっくりと瞼を開く。焦点の合わない瞳が虚空を彷徨う。\n意識は朦朧としており、状況を把握できない。\n\n『お目覚めかな?我が“勝利の女神“よ』\n\nムハドゥルが重厚な声で実里に話しかける。\nだが、その言葉は彼の母国語であり、実里には理解できない。\n\n「…ぁ………」\n\n突如現れた知らない男をようやく認識した実里の口から、言葉にならない声が漏れる。\n彼の覇気によるものか、船での教育の賜物か。\n実里には目の前の男がまるで神のように見えていた。\n\n「ぁ…あ……っ」\n\n洗脳装置が植え付けた“仕える喜び“が、彼女を突き動かしていた。\n実里は命じられてもいないのに、ベッドを降りて床で正座になる。\nそして、額を床に擦り付けるように深く頭を下げる。\nそれはまさに絶対服従の証であった。\n\n『ふむ……良い心がけだ』\n\nムハドゥルは満足げに頷き、実里の顎に手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。\n虚ろな実里の瞳と、欲望に満ちた彼の視線が交錯した。\n\n「んっ…」\n\n『ふむ……素晴らしい…やはり私の目に狂いはなかった』\n\n世界でも有数の富豪である彼は、美しいものを収集することを趣味としていた。\nコレクションには生きた女性も含まれており、今回はW杯の映像で話題になった日本人配信者を入手することに成功したのだ。\nムハドゥルは嬉しそうに実里の顔を観察しながら口を開く。\n\n『君は今日から私のペットだ…わかったね』\n\n「は、はい…っ」\n\n言葉は通じてないはずなのに、実里は何となく意味を理解して、首を縦に振りながら受け入れた。\n洗脳装置によって深層心理に植え付けられた忠誠心がそうさせるのか。\nあるいは、ムハドゥルの威圧感に圧倒されたのか。\nとにかく、実里はこの男に逆らうという選択肢を持っていなかった。\n\n「あぁ……っ」\n\n実里は主人を見上げながら、諦めたような、だが恍惚を含んだ声を漏らす。\n出会ったばかりだというのに、実里の心は完全に屈服していた。\n彼女の瞳には涙が溜まり、溢れ出る。\nそれは恐怖から来るものではない。\n自分より格上の存在に出会えた歓喜によるものだった。"} |
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