| {"novel_id": "n0012iz", "chapter": 28, "url": "https://novel18.syosetu.com/n0012iz/28/", "title": "向井ととある研究員", "content": " おかしい。何故うまくいかない。どういうことだ? 親父から借り受けた005の運用が全く思うようにいかない。\n\n まさか、山中の秘書とこの005シリーズは関係ないのか……? いやそんなはずは……。\n\n あまりにも納得ができないので、俺は親父を介して005を開発したというフタバ研究所と連絡をとった。すると、一人の研究員が俺のもとを訪ねてきた。\n\n「005に資産運用を任せたがいまいち成果があがらない、ですか。あの……どうしてそんなことを? そりゃ005は大半の人間よりはよっぽど頭がいいので、できなくはないと思いますよ。でも、005のメイン機能はそれではない。あくまで兵器なんです。そんな、資産運用の成績が上がらないのは不良品だから直せなんて言われても困ります」\n\n 親父に紹介してもらったフタバ研究所の職員、白衣姿の小太りで禿げた職員はそういった。\n\n「それに運用成績を見せてもらいましたが、十分良い運用じゃないですか。堅実に資産を増やしている。これの何が不満なんです?」\n「違う! こいつはもっと大きなリターンの得られる運用ができるはずなんだ。でなければおかしい!」\n\n そうだ、確かに多少の利益は出ているが、この程度の運用益では到底山中の投資成績には及ばない。この程度のはずがない。ならば俺のところの005は能力が低めに抑えられているか、あるいは故障している。\n\n「アンドロイドにどんな幻想を抱いているのか知りませんが、そんなことは不可能ですよ。いくら知能が高いと言っても、未来が正確に予知できるわけでわありません。あくまでも確率の高い健全な投資しかできないはずです。伝説の投資家でもあるまいし」\n\n そんな馬鹿な。それでは山中はいったいどうしたというのだ。\n 早く成果を上げなければ、親父に005を取り上げられてしまう。他にどう005を使えば、成果が出せる?\n\n「向井さん、どうやらあなたは005の能力を勘違いされているようだ。なので、一度きちんと能力を説明させていただきます。まずはこちらをご覧ください」\n\n そういうと小太りの研究員は俺の前に資料とノートパソコンを差し出してきた。\n\n パソコンの画面には005と思われる人物と一般的な車が映っている。どうやら動画のようだ。005はおもむろに車に近づくと、なんと軽々とそれを持ち上げた。そして高く飛びあがりそれを地面にたたきつける。車の窓ガラスが割れ、潰れる。さらに、潰れた車に体当たりすると車は一気に吹き飛び画面外に。\n\n そして、映像が切り替わる。今度は005に重火器が突きつけられている映像だ。005が様々な弾で撃たれている。さらに、最後は火炎放射器であぶられる。しばらくすると、炎の中から005が現れる。衣服は燃え尽きて全裸になっているが、美しい肌には傷一つない。\n\n「いかがです? これこそが005の真の能力。強靭なパワーと傷一つつかない鉄壁の防御力。そして人の中に紛れ込める姿。彼女たちの能力は、テロ、破壊工作、暗殺に向いているんです。ちまちま投資なんかさせるより、もっと良い使い道があると思いませんか? ――例えばそう、ライバル企業を物理的につぶす、とか」\n\n なる……ほど? 俺の頭にふと、無くなって欲しい企業の数々が浮かぶ。\n\n「あなたのお父様は、どうやらそのように使うつもりみたいですよ。あなたに一体貸したのは、005の武力性能を確かめてほしいからでしょう。そして最終的には、その強い武力でもっていずれは独立した国を作るつもり、だとか」\n\n 国を作る、だと? バカな、何を考えているんだ親父は。そんなこと、一企業にできるわけがない。\n\n「不可能だと思いますか? ですが、武力があれば何でもできるんです。誰だって、命は惜しい。多数の人間に紛れ、突然現れる無敵の暗殺者。どんな建物に逃げても、容易にそれらを破壊し侵入してくる。……恐ろしいと思いませんか? そんな存在に脅されれば、首相だって大統領だって話くらい聞くでしょう?」\n「それは……いやしかしそれだけでは……」\n「向井さん、005はまだまだ数が少ない。しかし、お金があればもっと量産できるんです。どうです、うちにもっと投資しませんか? 005で、無敵の軍隊を作りましょう。そうすればなんだってできる。世界だって簡単に手に入りますよ」\n\n\n\n\n\n「くっくっく、まいどありっと」\n\n 俺は独り言をつぶやいた。白衣を脱ぎ、研究所の営業車に乗り込んでハンドルを握る。\n\n やれやれ、頭の悪い人間と話をするのは骨が折れる。なんでわざわざ投資させることにこだわっていたのやら。\n\n とりあえず、新たな金づるを捕まえる事には成功した。向井の息子は良い金づるになるだろう。親より与しやすい。005を自分たちだけが所持できると勘違いしてやがる。スポンサー様は他にもいるというのに。\n\n うちの所長は未完成だからと、005のさらなる量産には否定的だ。しかし説得は出来るだろう。金が無いと研究は続けられない。所長は結局のところ、研究にしか興味が無い。研究さえ続けられればそこまで文句は言わないだろう。そもそもあのアンドロイドたちをあれほど強力な性能にしたのだって、研究費をスポンサーから集めるためだ。\n\n 所長、あなたはいつまでも研究を続けていてください。永遠に完成することのない研究をね。俺はあなたの研究を利用して、この世界をとってみせますよ。"} |
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